前穂高屏風岩クライミング(ソロ)
- GPS
- 49:00
- 距離
- 24.0km
- 登り
- 1,233m
- 下り
- 1,216m
コースタイム
- 山行
- 0:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:00
天候 | 3日とも晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年08月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
三年ぶりの山へ。
結果
1日目:上高地〜横尾〜T4〜フリークライミングルート1P目〜2P目敗退〜T4
2日目:T4〜雲稜ルート1P目〜3P目(フリー試登)〜徳沢
3日目:徳沢〜上高地
※以下記録(長いです)
各ピッチの記録もありますので、オンサイトトライの方はご注意。
土曜日まで仕事だったので一旦帰宅してバタバタと準備を済ませて、2時間ほど仮眠を取り、日付が変わる頃に千葉を出発する。
5時前に沢渡駐車場に到着するが、既にさわんどバスターミナルに近い駐車場は満車であったので、仕方がなく少し上にある車庫前駐車場に駐車。
始発バスは5時半なので慌ててパッキングを済ませる。
バスの乗車列と切符購入列が分かれており、間違えて乗車列に並んでしまい時間をロスする。複数の人は同時に並んでいたりした。
結局始発バスから3本くらい見送った所で、車庫前始発の臨時バスが出て6時半前に上高地に到着。
登山届を提出し、監視員付きとなったチップトイレで用を済ませて出発。
結局殆ど寝ないままだが、ザックの重量が20kgを余裕で超えている割には足が軽い。
河童橋から見る景色は相変わらず美しく、そこからの道程も横目に見える明神と前穂が力を与えてくれる。
2時間ほどで横尾に到着。
テントはそれほど多くない。
横尾で冷たい水を4L汲み、さらに4キロ増しになったザックは片手では上がらず、担ぎ上げる度に声が漏れる。
横尾から岩小屋跡までは20分ほど。
元岩小屋前の渡渉ポイントはケルンが積まれてわかりやすい。
最初の渡渉ポイントは靴を脱がずに済んだが、最後の渡渉は裸足になって通過。
梓川の激しい冷たさに眼が覚める。
枯れた沢を詰めていよいよ本格的なアプローチに入る。
最初は平坦だが徐々に大きな岩が現れ始めて屏風岩が目前に迫る。
T4への取り付き手前に残った雪渓があり、その脇を溶けた水で体を濡らしながら通る・・・。
そして、ようやくT4取り付きに到着。
まだアプローチの段階ではあるが、T4までも元蘢度の登攀になる。
一度ザックを下ろし、装備を身につけて10時に登攀開始。
今回の装備はナチュプロ中心で重量に余裕がなかったのでヌンチャクは五本だけなので残置支点を使うにしても取れる数が限られている。
ハーケンとカムを半々にして支点を取り、1ピッチこなしていつもの様にビレイ点にロープをFIXして懸垂下降。
ザックを背負ってのユマールは本当にキツイ。高度も上がり、いくら息を吸い込んでも酸素が足りずに思わず泣き言の一つでも漏れる。
そんな時にドゴーンと大きな音が鳴って振り返ると先程自分が通過した雪渓の上部が崩壊していた。あの氷の塊に巻き込まれていたらとゾッとする。
2ピッチ目のリードもそれなりの緊張の中でこなし、草付きの2ピッチ目の終了点についた時に下降する人とすれ違い、上はそれなりに人がいる事を教えてもらう。
どうしても緩い斜面の懸垂は小石を巻き込むので注意して進む事にする。
2ピッチ目を終えるとそこからはロープを首にかけて無理やりT4まで登る。
13時過ぎにT4に到着すると4人組が雲稜から降りてきている所で、壁には他にもパーティが見えた。
ここまでの登攀ですっかりくたびれてしまった自分は、このままビバークする事も考えていたが、特にする事も見当たらずに再び装備を整え始める。
気持ちは落ち込んでいるが、まだ身体は動く。
とりあえずルートだけでも見上げようと、フィックスロープを辿ってフリークライミングルートの取り付き点へ。
写真で見るよりもずっと大きいハング。
フリークライミング1P目5.10a
オールナチュプロのルートだが、東壁ルンゼルートの残置支点が多く見える。
出だしにクラックは無いのでハーケンとボルトにアンカーを取って登攀開始。
適度にカムで支点が取れるので、残置支点は極力無視して進む。
最近やっているフリーのラインよりずっと長く、下から垂れ下げたロープが徐々に重くなり、壁から引き離されそうになるのを耐えつつ高度を上げる。
しかし、1P目はソロの恐怖感はあるものの、岩もそれなりにしっかりしており、爽快で楽しい。
途中雨がパラついていたが、何とかハングを超え、ビレイ点が見えたのでそこでピッチを切る。
ここでロープをフィックスして明日に持ち越しても良かったが、まだ空は明るい。
もう1ピッチ伸ばす事にする。
2ピッチ目は5.10bPD
出だしからプロテクションを取れる場所がないので、早々にビビって残置ハーケンにクリップ。
草付きのバンドをトラバースしていくと、残置ハーケンのラインが見える。これを東壁ルンゼルートのラインと見て更にトラバース。
途中で微妙なフレークにカムを取る。
しかし、そこからのラインがわからない。
奥に行きすぎると東稜のラインにも見える。
行き詰まる。
見るからに登れそうな綺麗なフレークが見えるが、リスクがあるクライミングに見えた。
が、他にフリーで登れそうなラインもないので
登り進める。アンダー気味のフレークにカムが決まる事を期待していたが、思ったよりフレアしていて脆くもあり効きが悪い。
仕方がないので手を伸ばすが、ガバフレークはそこまでで、フリーの動きをしないと先に進めない。やはりしっかりとした支点が欲しい所だ。
もう一手アンダーに手を突っ込んで寄せた時に、電子音にも似た「キーッ」という音が鳴る。
驚いて手を引っ込めてフレークを覗き込むと、口を広げて威嚇するように歯を見せた何かが見える。
前に鳳来でポケットの中に鳥が巣を作っていて似たような経験をしたのを思い出す。
本当に鳥なのか、もしくは蛇なのか、、、
出来ればこの巣穴にカムを決めたいが、何となく気が引けてしまう。
現時点ランナウトした状態で巣穴で無理やりムーブ起こして噛まれたりしたら、、
フレークが壊れたら、、
ただでさえライン取りに自信もないので気持ちがどんどん萎えてくる。
終了点の位置も曖昧だ。
しかもトラバースラインの場合ピッチを伸ばしたとしてもその後の懸垂とユマールにはリスクが伴う。どの道にしろ時間的に今日中には抜けられない。
壁に取り付いた時から頭の中に渦巻いていた敗退という言葉がどんどん大きくなり、ついに屈することにした。
1P目終了点まで支点を回収しながら慎重にクライムダウンする。
ここからでも50mロープでは懸垂できないのでサブロープを出して下降。
敗退となった。
T4に戻ってくると誰もおらず、屏風岩は貸切となっていた。
雨の心配もあったが、今日はここで終了とした。
2日目。
このまま降りるか、フリークライミングに再挑戦するか、それとも別のルートに取り付くか。
朝になってそんな三択に悩んでいた。
どうせこのまま降りるくらいならと、4年前にも登ったことがある雲稜ルートに取り付く。
雲稜ルート1P目5.7 30m
ヌンチャクが少ないので残置を使って快適にとはいかないので、ナチュプロを積極的に使って登る。
殆ど弾が尽きる頃に終了点までフリーで抜ける。
確か四年前にはA0を使っていたはずなので多少の成長を感じる。
しかし、5.7にしては相変わらず難しい・・・。
2P目5.8 30m
出だしに少しトラバースしてプチ扇岩を跨いで壁に取り付くが、ナチュプロは取れそうにない。仕方がないのでリングボルトにクリップしてそれなりに悪いクライミングをこなすと、その後は簡単だがプロテクションが取りにくいので残置と微妙なカムも併せて扇岩の右下にある斜上するバンドに出る。
支点を取ると面倒なのでバンドは支点を取らずに抜ける。
久しぶりの扇岩テラス。
綺麗な白いフェイスが姿を見せる。
3P目元A1 40m
人工をやるつもりはなかったので装備が貧弱で、アブミはユマール用の1本。ヌンチャクは5本しか持ってきていない。
記憶ではかなり快適な人工ピッチだったのでカムのカラビナとスリングでヌンチャクを作ってヌンチャクを少し水増しして登り始める。
アブミが1本なのでスリングで簡易アブミを作って抜ける。
人工とは言えヌンチャクが少ないので、ランナウトして気持ち悪い。
リングボルトのリングが飛んだ支点には簡易的なU字金物が細いネジを通してある。
終了点でロープをFIXしてテラスに降りる。
下からは別パーティが登って来ているのが見えた。
ここに来た目的である3P目のフリーラインをアッサンダーで確保しながらムーブを探る。
グレードは11cだが、アルパインとは言え花崗岩のフリールートと遜色ない壁で、ホールドも細かく、テンションかけながら徐々に高度を上げる。
3ピン目をクリップする辺りから簡単になるので、そこから後は楽しいフリークライミングで終了点へ。
下部さえこなせれば支点もしっかりあるし、RPの可能性を感じた。
しかし、このレベルのクライミングをこの高所でオンサイトできる日が自分に来るのだろうか・・・。
残り数ピッチは後続にも追いつかれたところで下降を決める。
3P目を真っ直ぐに降りながら、かつてヤジさんが初登したファイナルカットのラインを観察する。オリジナルなボルトとRCCボルトとハーケンが残置されているが、明らかに支点が抜けてしまっているという話は本当のようだ。
多少ブッシュな感じではあるが、壁の弱点を付いてホールドもしっかりしていそうだし、もっと注目されても良いラインに見えた。
残念なのはあんまりナチュプロが決まるところが少ない事だろうか・・・。
扇岩を左側から懸垂すると1P目の終了点まで降りれる。
更にもう一度降りると50m2本でT4に到着した。
11時過ぎに一休みしてカム類をザックに詰めてT4を下る。
ロープを2本だして水も捨てているとは言えザックの重さにうんざりする。
懸垂は微妙な土の斜面を3回に分けて降り、T4下部の壁面を2回に区切って降りて取り付きに12時ちょうどくらいで到達した。
もう降りられると思うと気持ちが晴れて足取りが軽い。
梓川に到着すると、汗だくの身体を冷たい川の水で流して渡渉する。
13時過ぎに横尾に到着。
昼過ぎの横尾にはかなりの人が居て皆日陰を求めて休憩している。
迷わずビール500mlを購入し、一気に流し込む。
4年前は登攀をやりきった気持ちがあったが今回は終始グダグダな展開となってしまった。
しかし、高所の壁をフリーのゲレンデのように遊ぶという感覚は新鮮で、今後のクライミングに対する広がりを感じられたような気がした。
今日は徳沢まで降りると決めているので、歩き始めるが、酒の酔いもあってか足取りが重い。これほどまでに横尾から上高地方面にかけて人に追い抜かれた事はない。
思ったよりも消耗しているらしい自分にがっかりしながらとにかく歩く。
1時間ほどかけて15時前に徳沢に到着。
テン場は思ったより空いているが道に近い木を狙ってツェルトを張ろうと思っていた目論見が外れて場所がない。仕方がないので、中央の木を使ってロープを張って何とか形にした。ペグを持ってきて居ないのであんまり綺麗にはいかなかった。
驚いた事に徳沢でテン場代を払うと、日清のカレーメシがプレゼントされた。
横尾よりテン場代は高いが得した気分だった。
少しだけ豪華な夕食を取りながら、徐々に学生などの団体でテン場は溢れていき、賑やかな声をBGMに眠りに付いた。
3日目。
朝3時に学生の大きな声でテン場全体が目を覚ます。
これは好都合と自分も起きて食事の支度をして撤収を開始。
5時前には出発。
帰りはただ真っ直ぐ帰るのではなく明神池方面から帰る事にした。
嘉門次小屋を見たことがなかったので立ち寄ったが、明神池が有料なのをその時、初めて知った。
朝のスッキリした空気の中をのんびり歩き、くたびれて来た頃に河童橋に到着。
7時に上高地BT到着で始発のバスに合わせて丁度良い頃合いだった。
恒例の野沢菜おやきを買って食べ、お土産を買ってバスに乗り込む。
駐車場は少し空きが出ていて、台風目前の為か、少し人が引けたようだった。
車庫前駐車場の向かいにある木漏れ日の湯600円で一番風呂を貰いすっきりした所で、上高地を後にした。
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