広河原から高嶺・地蔵岳を経て御座石鉱泉へ
- GPS
- 24:54
- 距離
- 11.4km
- 登り
- 1,426m
- 下り
- 1,988m
コースタイム
天候 | 晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・日曜の6時55分甲府駅発のバスは10人も乗りませんでした… ・広河原から白鳳峠までは上りでも左右に逸れそうなところがありますが、赤テープやペンキは必ずありました。 ・高嶺から赤抜沢ノ頭までは北斜面に崩落箇所があります。道は概ね南側を巻いています。 ・鳳凰小屋から御座石鉱泉まで、特に旭岳周辺は南側が崩落しています。ロープによる保護も薄いです。 ・西の平の道標付近は寧ろロープばかりです。道標の指す方向ではなく、ロープに沿って先の尾根を乗り越します。 |
写真
感想
赤抜沢ノ頭から高嶺、白鳳峠の高度感溢れる稜線と広河原までの長大な急斜面。
今年の目標に近い山域で自分を鍛えるのならば、そのコースを逆に行く他はな
いと考えた。甲府駅前の安ホテルに前泊して早朝のバスに乗り、地蔵岳を経由
して鳳凰小屋に投宿、翌月曜に御座石鉱泉に下りれば帰りのバスもある。
不安要素は自分の体力とそれによる時間切れ、それに天候だった。前夜になっ
ても予報は見る度に二転三転した。最悪甲府観光をして石和温泉へ…と考えた
翌朝、ホテルの窓の外は高曇りだった。行けるところまで行こう。
広河原行きのバスの混み具合が読めず、6時5分発の便を5時から待つ事にした。
ところがバス停の時刻表を見ると5分ではなく55分、更に4時台もあった事を知
る。2時間自分の愚かさを嘆いて待ったバスには10名も乗っていなかった。
登山口からは前回鷹ノ巣山で上手くやったように、14-15分のタイマーをスマ
ホで設定し、鳴るまでは止まらない。鳴れば止まって息を整え、必要なら水
を飲む。効果はあったが、大きな岩や段差に度々息を乱された。昨年降った
時には気付かなかったが、通り難い箇所には周り道があった。だが復帰する
際に脇に逸れてしまう事が何度かあった。また徒に登山道を広げてしまう事
の問題もあるだろう。
数度のインターバルを終えて登山開始から1時間弱程で道が西に巻き始め、突
き当たりで梯子に迎えられた。最初のプラスチックで覆われたものは歩き辛く、
大した斜面でもないので直接岩を登ったほうが楽かと思った。去年は怖い思い
をした4連の鉄梯子も―下りと登りとで違うのは当然だが―楽に超えた。
時々見上げた先の樹間から空が見えるが、そんなに早く先が見通せる筈もない。
無心に登っていると這松と明るい空が突然現れた。白鳳峠まで残り1/3のところで
2時間弱経過、悪くない。身体は温まって柔らかくなってきた。
這松が出れば峠まではずっとゴーロ沢だ。ここは歩き辛いのは勿論、どうして
も気が滅入ってくる。森の中のように生命を感じられないからかもしれない。
確か古井由吉の小説にこんな場所で歩けなくなる女性の話があったが、今その
気持ちが分かった。
余計な事を考えていると右足を石に取られて躓き、前方へ転んだ。左膝を石に
打ち付けた。もっと激しく転んだら行動不能になっただろう。石を慎重に選んで
はその上を早く動くようにした。
沢では二組とすれ違い、白鳳峠らしい森に着いた。コースタイムの1.2倍で計
画していたものが、20分程早い。天候も文句無い晴れだ。このまま進めば、下
らない失敗をしない限り計画を完遂出来るだろう。北岳を眺めながら菓子パン
で昼飯にした。
峠からは再び森の中、勾配は徐々にきつくなる。昼休憩で固くなった足をもて
余し、インターバルを無視して休んだ。周りのダケカンバが低くなって来た頃、
眼の前の頂の左上に黄色く紅葉した高嶺が現れた。
水を飲んで塩飴を口に入れ、最後の急登へ臨む。稜線はやせ細り、取り付くべ
き岩は石灰質なのか脆そうだ。一切気を抜けない。時間の貯金を使って確実に、
しがみついて登った。
13時25分、登頂。白鳳峠からだと昭文社のコースタイムを割り込んでいる。そ
れでも去年降りた時に感じた程の恐怖感はなく登れた事に満足した。
山頂で昼飯の残りを食べようと思っていたが、誰も居ないにも拘わらずコバエ
の類が夥しい。写真を数枚撮って次の山へ進んだ。
次の赤抜沢ノ頭までは白砂の上の痩せ尾根を辿る。息は上がったまま、足は腫
れ上がったままで登り返しをやっつける。前後の急登と急降下に気を取られ、
ここにそれなりの登り返しがあるとは覚えていなかった。「尾根縦走のアホウ」
と意味不明な事を呟いているうちに赤抜沢ノ頭に着いた。
せり立つ岩の南側に廻る。北岳、仙丈ヶ岳、そして高嶺が見える。その場に座
り込んだ。
高嶺の雄々しく峻険な山肌を、初秋の陽射しが照らしている。上部の黄葉がた
だ輝いていた。
山行の途中に、その時の目標だった山をこれ程美しく眺められる所を他に知ら
ない。早川尾根という雄大な山稜を登ったからこその褒美だろう。「これ以上
に満ち足りた気分はない」。陽射しは心地良く、沢から一千メートルを超
えて届く風を楽しんだ。
地蔵岳から鳳凰小屋までの前半は白砂の斜面で、「道を崩すのは駄目だ」と思
いつつも浮足立って滑り落ちた。小屋では暖かく迎え入れられるも、テントの
設営に石を使うなと指示された。ツェルトはいつも石を細引きに結わえてテン
ションをかけていたが、今回は木の間に吊るした。尤もご主人は元に戻すなら
石は使っても良いと仰っていた。
その日は私以外には小屋泊の男性三人組のみ。新潟から鳳凰三山を登りに来ら
れたそうで、バーボンをご馳走になって山中の夕暮れを楽しく過ごした。
翌朝は5時半頃に起き、1時間後に下山開始。その前にご主人お勧めの湧き水を
味わったところ、頗る美味かった。小屋前に引いているものとも明らかに味が
違う。ご主人を含めたお三方ともとても暖かく、今度は小屋泊で泊まりたいと
思った。
分かっていたことだが下りは激烈だ。釣瓶落としの底を見る度に登りは大変そ
うだと思うが、こちらもたまらない。昨夜新潟の男性に「足を『く』の字にし
ろ」と教わったので、早速試した。膝だけではうまくいかないので上半身を軽
く前傾すると、確かに楽になった。いつもやってしまう、爪先を前に滑らせて
転けるのも減った。ただ翌日腰に負担が来た。
10時過ぎに御座石鉱泉に到着。12時半のバスまでアルカリ性の濃い風呂を堪能
した。
最後に今回の反省点。
・遠征であっても天気予報に頼って自重し過ぎない。今回のように二転三転す
るなら、それ程の荒天にならない可能性が高い。外れれば甲府や広河原で遊べ
ば良い。
・夕食に150ccの水を沸かすのに40ccの燃料用アルコールで足りたが、朝食で
は120ccは使った。見た目以上に風の影響を受けたのかもしれない。風防を見
直すと同時に、経験をもっと積まねばならない。
・今回は登りで一回、下りで二回転んだ。うち二回は足が思い通りに上がらな
かった事による。トレーニング方法を見直す。
・バスの時間は前日に見直す。馬鹿馬鹿しい。登山以前の問題。
今回は不安を克服して計画を完遂し、大きな自信を得られた。南アルプスへは
雪が降る前にもう一度来るつもりだ。
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