【南アへの布石】農鳥岳【凌雲作戦】【甲60.5】
- GPS
- 11:37
- 距離
- 23.2km
- 登り
- 2,987m
- 下り
- 2,969m
コースタイム
- 山行
- 10:07
- 休憩
- 1:30
- 合計
- 11:37
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
道の状況:NKK(長い・急・キツイ) 登山ポスト:発電所の辺り 下山後の温泉:奈良田の里温泉500円 |
写真
感想
中央道を走りつつ、ふと目を見やると西の空に広がる大きな雲、いや、あれは稜線だ。明日、あの雲の高みを歩くことになるのかと思うと不安でいっぱいになった。
【企画立案】
南アルプス。いろんな所からその雄姿を眺め、いつかはあそこを歩いてみようと思ってはいたものの、実際歩くとなると、どのくらいかかるのかなどよくわからない。何しろ3000m超級の山々だ。今まで歩いた山々とはまた勝手も違うのだろう。
夏ともなれば積乱雲の発達も考慮に入れなければならない。
長野県側からのアプローチを除くと概ね広河原か奈良田からのスタートとなるだろう。しかし、初動を大事とする私からすると広河原へのバスの便は遅すぎるし、今はシーズン中だから大勢の人がいて、同時スタートで渋滞するということも考えられる。というわけで、奈良田からスタートし、「行ける所まで」行くこととする。「行ける所まで」というのはアバウトだが大事なことでもある。また、可能と判断すれば北岳まで一気に行くのは当然である。しかし、広河原発奈良田行きの最終バスは16:40だ。そのため、ターニングポイントを設定する。大まかな計画は、
1.奈良田第2駐車場を未明に出立する。
2.9:30までに農鳥岳に到達できなければ農鳥岳でターンする。
3.間ノ岳に到達後、正午までに中白根山に到達できそうなら北岳まで行く。
4.中白根から距離的には約8kmなので、広河原に降りる(総行程25km)。
とした。心配なのは高さと距離とバスの時間だ。3000m級の稜線を歩く私を見て他の人は何と思うだろうか。ワクワクと言うよりドキドキだ。不安でしょうがない。
【前日〜出発まで】
16:30頃東京を発ち、中央道を西へ向かう。山梨県に入る頃には強い日差しも雲によって和らいだ。西の空遠方にたなびく雲。と同時に雲の縁と思ったものが稜線であることに気づく。雲と同じ高さの山々を明日単独で歩くのだ。腹にズシーンと来るものがある。力尽きてぶっ倒れるようなことでもあれば、新聞沙汰になって「山を舐めているからだ」等とバッシュされてしまう。今回は小学生以来20年振りの3000m超級ということもあって「無事に帰る」ということについてややナーバスになっていたと思う。
※南アルプス街道について
・県道52号線(富士川街道)から入った後コンビニは無い。県道52号線北側なら入る地点の手前10kmくらいにあるセブンイレブン、南側なら手前数kmくらいにあるローソンが最後のコンビニと思われる。
・奈良田温泉8km手前くらい、道がボコボコ。
6月の金峰山・瑞牆山(第二次瑞金作戦)では睡眠時間がほぼゼロといってもよい状態で酷い目にあったので、今回は睡眠を十分とるつもりであり、奈良田到着も21時過ぎと上々であった。
しかし、何ということであろうか、最初の1時間ほどウトウトしたかなと思った後は全く寝られなかったのである。第二次瑞金作戦時の轍を踏むまいと体を伸ばして寝られる車、クッション、ブリーズライトまで用意したのにこの様だ。
犬の鳴き声に目を覚ます。まだ23:00だ。やけに明るいなと思ったら丸い月が上空に輝いていた。明日は良い天気だろうと安心してまた寝ようとするのだが、なかなか意識が遠ざからない。
寝る前に夕食を詰め込んだからか、駐車場近くの犬達が人が通るたびに吠えるからか、月光が明るすぎるからか、後から来た若者が長々と喋っていたのが気になったからか(大声を出していないつもりでも静かな空間では音が響く。気をつけよう。)、やはり潜在的不安感が拭えないからか…。
それとも車中で飲んだコーヒーか?職場では効かないのにプライベートでは効くカフェイン!?
日が変わる頃からか何回も犬の遠吠えが聞こえた。もしかしてもう出発しているのか。ご苦労様です。お気をつけて。ああ寝られない…。
結局、寝られないんなら作戦開始してしまおうということで、予定より早く起き、出発の準備をする。天気は晴れでも前途に暗雲ありだ。
【道程】
2時23分、駐車場を発つ。自分も犬の遠吠えに見送られると思っていたのだが、一匹も鳴かず、ちょっと寂しい。
発電所まではバスも通る道、発電所から先は工事車両等が通る道で、さほど怖くはない。しかし、水が流れ込んでいたりするので足元は要注意だ。柵で通行止めになっている手前右側から登山道となる。
登山道に入ってすぐに吊橋その1を渡り、その後、吊橋その2。結構ゆれる。取水口を経て明かりがついているなと思ったら吊橋その3。上流側に傾いている。下を見ずに足元に集中しながらゆっくりと渡る。
この吊橋を渡ってからが若干ハードな道だ。歩き始めから結構な出迎え方。暗い中崖っぷちや足場の悪い所を歩くので慎重になる。そこをクリアすれば今度は八丁坂だ。なんとなく道はわかったので感性に任せて歩く。とりあえず、それまで足元がしっかりしていたのが、急に地面が軟らかくなったりしたら道を外れているので矯正すべし。最も注意すべきは橋の無い渡渉点。なかなかわかりづらく大きく道を外れてしまい、強引に進みながら戻る。GPSを持っていたので、沢を渡った後に道に戻るのはさほど困難ではなかった。しかし、復路、明るい中でも道がわかりにくかったので、この地点は慎重に見極めねばなるまい。
渡渉の連続が終わるとだんだんと登りが急になる。山頂までの直線距離と標高差がそれほど変わらない程度の急な登りだ。それに加えて木々の高さが低くなってきて陽光が差し込むほどに暑くなってくる。水分の消費が尋常ではない。日向をサクサク登った後、木陰で一休みというのを続けていたが、直前では頼みになるほどの木陰ももはや無く、諦めてゆっくりとではあるが、ギラギラした太陽の熱射を浴びながら最後のひと踏ん張り。それにしてもこの光線の熱いことよ。
大門沢下降点に至るも森林限界を超えているので木陰などあるはずも無く、低い岩陰に座って涼をとる。
さて、これからどうしたものか。午前7時にしてこの状況だ。当初予想より1時間くらい早く稜線に到達したものの、これから昼過ぎにかけてますます暑くなっていくだろうことを考えると、ほとんど一睡もしていない我が身では耐え切れないだろう。ここは大事をとるか。その前に農鳥岳だけでも到達しておきたい。
おもむろに立ち上がって山頂へ歩き出す。大門沢下降点までの急登に比べればかなり楽になったものだが、ピークだと思ったらその奥にまた本当のピークというのは精神的に来るものがある。それにしても今日は本当に良い天気だ。塩見に白峰、鳳凰、中ア、北ア…もったいないなあ、あーもったいない。
既に何人か休んでいる農鳥岳の山頂に至り、その一角に腰を下ろす。目前に西農鳥、間ノ岳、北岳。近いな。恐らく、暑さが落ち着いた季節であれば、そのままサクサクと稜線散歩を楽しめるだろう。だがこの日照りの中じゃ起伏をヒイコラとぼとぼ歩くだけになってしまうだろうなあ。うーん、岩陰は涼しいなあ。
西農鳥、農鳥小屋、間ノ岳まで統制前進しようか等といろいろと考えもしたのだが、この暑さに参ってしまって、涼しい岩陰で時折おこじょと顔を見合わせたりしながらまったりと時間を過ごす。結局9時30分まで山頂で憩った後、後図を期すこととし、今日のところは自分の登頂最高峰を更新したことで一定の成果を得たと考え来た道を戻ることとした。
時間にも余裕ができたからか、下りは登りの時にはよく顧みられなかったものを見ることができた。しかし、一箇所渡渉点を探すのに難儀した所があったので次回は気をつけたい。道をよくよく見ると、よく真っ暗な中歩いてこられたなあと思う所が多々ある。そして、長い。物凄く長い。とにかく長い。よく揺れる吊橋を見たときにはほっとしたのだった。今回は単峰戦で大事をとって終了したが、つかみはオーケーだ。遠からず同地域において楽しい稜線散歩を実現できるだろう。
【総括】
暑い熱いと言っても前年の八ヶ岳山行等暑さを苦にすることなく完遂した山行が厳然として存在する。それら山行と今回の山行で何が違うのかよくよく検証してみたい。
〜夏山稜線到達まで比較〜
A.鳳凰三山(地蔵岳) :7/18 33℃(甲府) 2764m
B.八ヶ岳(阿弥陀岳) :7/10 31℃(長野) 2805m
C.農鳥岳(大門沢分岐):8/ 4 35℃(甲府) 2820m
距離 標高差 時間 睡眠
A.:約 6.0km 約1650m 4時間17分(0557時〜1014時) ○
B.:約 6.0km 約1290m 3時間10分(0350時〜0700時) ○
C.:約10.5km 約2000m 4時間57分(0223時〜0720時) ×
こうしてみると、気温、距離、標高差、体調全てにおいてハードモードだったのだなあと思う。また、今年の夏の日差しは例年になく厳しいように感じた。無理をしなくて正解だったと言えるかもしれない。単純に睡眠不足と暑さのせいかと思っていたが、それ以上に山がでかかった。
しかし、彼を知り己を知らば百戦殆うからず。彼を知ったからには己を修めて偉大な山々に抱かれに行こう。
〜おしまい〜
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