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Yamareco

記録ID: 2189
全員に公開
沢登り
東北

焼石岳/胆沢川水系 尿前沢左俣

2006年09月30日(土) ~ 2006年10月01日(日)
 - 拍手
kamog その他4人
GPS
32:00
距離
9.4km
登り
752m
下り
752m
過去天気図(気象庁) 2006年09月の天気図
アクセス
ファイル
非公開 2189.xls
計画書
(更新時刻:2010/07/28 08:54)
中沼登山口の駐車場。トイレあり。30台程度駐車可
2006年09月30日 06:42撮影 by  SO506i, DoCoMo
9/30 6:42
中沼登山口の駐車場。トイレあり。30台程度駐車可
尿前沢入渓点
2006年09月30日 07:12撮影 by  SO506i, DoCoMo
9/30 7:12
尿前沢入渓点
入渓してすぐの6m滝
入渓してすぐの6m滝
この沢は濁ったブルー
この沢は濁ったブルー
ゴルジュ左岸からの大高巻き
2006年09月30日 08:34撮影 by  SO506i, DoCoMo
1
9/30 8:34
ゴルジュ左岸からの大高巻き
同じく大高巻き中
同じく大高巻き中
大滝。右岸から大高巻き
大滝。右岸から大高巻き
大滝
2006年10月01日 05:09撮影 by  SO506i, DoCoMo
10/1 5:09
大滝
大滝左壁。過去記録によると落ち口に向かいトラバースとあるが、我々は更に上部へ登り尾根を越えた。
2006年09月30日 13:39撮影 by  SO506i, DoCoMo
9/30 13:39
大滝左壁。過去記録によると落ち口に向かいトラバースとあるが、我々は更に上部へ登り尾根を越えた。
大滝左壁の落ち口に向かうトラバースポイント辺り。
2006年09月30日 14:17撮影 by  SO506i, DoCoMo
9/30 14:17
大滝左壁の落ち口に向かうトラバースポイント辺り。
トラバースせず更に上部へ登る
2006年09月30日 15:35撮影 by  SO506i, DoCoMo
9/30 15:35
トラバースせず更に上部へ登る
大滝を超えたあとの5m滝
2006年09月30日 17:25撮影 by  SO506i, DoCoMo
9/30 17:25
大滝を超えたあとの5m滝
Y字5m滝手前で幕営
Y字5m滝手前で幕営
Y字5m滝(左を容易に登れる)
2006年10月01日 06:05撮影 by  SO506i, DoCoMo
10/1 6:05
Y字5m滝(左を容易に登れる)
7m堰堤状の滝。右岸側壁を微妙なトラバースで越える。左岸を容易に高巻くことも可能。
7m堰堤状の滝。右岸側壁を微妙なトラバースで越える。左岸を容易に高巻くことも可能。
尿前沢の絶景、幅広いナメ
尿前沢の絶景、幅広いナメ
二俣に架かる夫婦滝。右俣女滝の落ち口上部まで左岸支沢ナメ滝から大高巻き。
二俣に架かる夫婦滝。右俣女滝の落ち口上部まで左岸支沢ナメ滝から大高巻き。
夫婦滝右俣女滝上部から更に中間尾根を高巻き開始。
2006年10月01日 10:26撮影 by  SO506i, DoCoMo
10/1 10:26
夫婦滝右俣女滝上部から更に中間尾根を高巻き開始。
高巻き途中から夫婦滝右俣女滝を臨む
高巻き途中から夫婦滝右俣女滝を臨む
中間尾根高巻き途中から目指す左俣男滝上部の百ナメ滝を臨む
中間尾根高巻き途中から目指す左俣男滝上部の百ナメ滝を臨む
中間尾根を左俣に向かい高巻き中
2006年10月01日 14:24撮影 by  SO506i, DoCoMo
10/1 14:24
中間尾根を左俣に向かい高巻き中
1220mのCS滝を高巻いた後、雪渓が出てきた。
2006年10月01日 15:23撮影 by  SO506i, DoCoMo
10/1 15:23
1220mのCS滝を高巻いた後、雪渓が出てきた。
ようやく平凡な源頭へ
2006年10月01日 15:40撮影 by  SO506i, DoCoMo
10/1 15:40
ようやく平凡な源頭へ
登山道にゴール。ようやく解放された。
登山道にゴール。ようやく解放された。
紅葉真っ盛りの焼石岳
紅葉真っ盛りの焼石岳
尿前沢の位置
撮影機器:

感想

過去これだけ高巻きに終始した遡行はなかった。
今回はどちらかというと急遽参加させてもらった山行であったので
リーダーさんたちとルート選択方法に若干温度差があったのだけれども
それはそれでなかなか勉強になった。

「尿前」を「しとまえ」とはなかなか読めないであろう。
松尾芭蕉が『奥の細道』紀行の際、詠んだ句に出てくるらしい。

前夜21時、秋葉原駅集合。
泊まりレベルのザックを担いで電車に乗ったのは久し振りだ。
Hさんの車で遠路岩手水沢を目指す。
この一月は東北遠征が多く、山形の前川大滝沢、岩手栗駒の産女沢、
そして今回の岩手焼石の尿前沢と、普段は考えもしない東北エリアに
もう随分慣れている。
休憩は福島の安達太良PAだけで午前2時には水沢IC。
国道397号を西走すると空が赤く染まっている。
精錬所というかアトラクションパークというか
真夜中でも煌々とライトを灯した石淵ダムのせいだ。
トンネルを抜け道がぐるっと回ると、焼石岳中沼登山口方面の案内板に導かれ右折。
すぐ未舗装の林道となり、途中何カ所かある土砂止めの板に気を付けながら
30分も車を走らせれば広々とした中沼登山口駐車場に着いた。
トイレあり。車は他に数台。テントを張り仮眠する。

【9/30 中沼駐車場〜尿前沢本流Y字滝手前】
6時起床、6:45発。
中沼登山口から尿前沢入渓点までは、金明水方面の登山道を行く。
エアリアでは破線になっているが通常の登山道並で明瞭だ。
入渓してすぐの6m滝は右側を容易に越す。
少しでハタシロ沢、風呂沢を左に分け、すぐに尿前沢本流と六沢の二俣。
本流出合には6m滝。左側を直登もできそうだが、初級者もいるとのことで
早速右側から高巻きに入る。藪を多少漕ぎながら2番目の4m滝も一緒に巻く。

谷はゴルジュ状で、次の15m滝も左岸草付きから巻くことになる。
ここはかなり大きく高巻いた。
ロープを出し2P登るが、途中の急な土壁はよく滑りブッシュ頼りに身体を上げていく。
その時、上空からヘリが近づいてきて、我々の上でホバリングを開始し出した。
「俺たちゃ遭難者じゃないってば」
下手に合図するとまずいが、音がうるさくてメンバーとのコールが聞こえない。
しばらくするとヘリは少し上流の大滝へ移動しホバリング。
「こりゃ前の3人組が事故ったな」と思いつつも
こちらはこちらで一杯一杯。
どうやらピックアップが完了したようでヘリは飛び去ってくれた。
下山後、温泉施設で新聞を確認したところ、大滝で滑落死されたようであった。
合掌。

樹林の急斜を距離にして200mくらいトラバース気味に進む。
落ちればさよならなので5人アンザイレンし
途中ブッシュでランニングを取りながら慎重に下降路を探す。
何となくある踏み跡を見つけながら川床に向かい斜めに下り
最後は細いブッシュに掛けてあった残置スリングを頼りに懸垂で降りた。
いやいや大変だった・・・しかしこれが数ある困難の始まりに過ぎなかった。

沢は河原状になって右に曲がると眼前にこの沢最大の40m大滝が出現。
直登するにせよ流芯左側の下部5mが難しそうだ。
記録によると右岸(左側)草付きを50m登り
落ち口に向かい50mトラバース一杯トラバースして抜けたという。
たしかに下から見ると落ち口に向かう草付きバンド状が確認できる。
右岸草付きは悪そうなので、我々は更に左側のルンゼ状から登る。(1P目)
比較的しっかりしたブッシュでビレイを取り
2P目は最初の数mが脆そうな岩場を登る。
ここは滑ったり、落石を起こしたりとちょっと微妙だった。
この岩場を乗り越し安定したテラスでピッチを切る。
3P目は滝の落ち口から伸びている(と思われる)バンドの取り付きまで。
ブッシュを漕ぎながらだが足元は悪かった。
さて、落ち口まで約50mトラバースするバンド状は予想していたが
怖くて行く気にならなかったようだ。
何せランニングになりそうな支点は小さなブッシュだけだし
落ちれば先ほどの事故者と同じように数十mはダイブしてしまう。
リードのHRさんはマモのO薗さんの友人であり相当な本チャン経験者だが
それでも「ここはだめだよぉ」と更に上部尾根に向かい
脆くて微妙な草付きやブッシュ帯にどんどんロープを伸ばしていった。
もう何ピッチ目か曖昧になった(たぶん8Pくらいか)頃
最後に落ち口右岸尾根のだいぶ奥の弱点を強引に乗り越して
反対側の斜度が寝たあたりから滝上50mに抜けられた。

もうそろそろ行動限界時刻に迫っているので
幕営できそうな場所を求めて小滝やナメを越えていく。
ヘッデンも登場した頃、Y字5m滝下の右岸に何とかなりそうな幕営地を選定。
川床からそれ程離れていないので増水すればえらいことだが
今晩の天気はもつことを予測し湿った斜地にツエルトとフライを張る。
秋の東北エリアでしかも滝のマイナスイオンが間近に飛び散る川床なので
さすがに寒いし。早速濡れてはいるが焚き火を何とか起こし身体を温める。
夕食はSさんのゴーヤチャンプル丼。旨かった。
やれやれこれで核心は抜けたな、とこの晩は安堵の眠りについたのであった。

【10月1日 Y字滝幕営地〜左俣〜中沼駐車場】

夕べは夏用シュラフ+カバーでも何とか暖を取れた。
東向きの沢なのですぐに太陽が沢をキラキラ映し出す。
朝食のスパゲティミートソースをいただき、Y字滝の釜に膝まで入る。
朝一番はやっぱり冷たい★
左側を比較的簡単に登りしばらく歩くと7m堰堤状の滝。
ルートを見極める。
この時僕は左壁からトラバース気味に抜けるルートをリードのHRさんに伝える。
結構シビアな感じだが、途中ハーケン・カム・イボイノシシと3カ所ランニングを
取って抜けていかれた。
Tさんは初級者がいるからと言って左岸から高巻いて行った。
たしかに登ると微妙なトラバースであり
落ちると振られるというリスクもあったが
登攀優先とあくまで高巻き優先の温度差を感じ一瞬違和感を覚えずにはいられなかった。
それはそれで状況による選択肢の多さを客観的に判断するという意味で
よい経験をしたのかもしれない。

ここを越えるとようやく尿前沢のウリでもある
だだっ広い美しいナメが出現。
記録を見るとここだけが妙にクローズアップされるので
「癒し系の沢」というイメージが先行してしまうのだが
二俣の両門にかかる夫婦の滝ですぐにその妄想も消え失せる。
「おいおいこれもどこを登るんだよぉ」

ルートは2通りか。
1.左俣にかかる男滝の左草付き壁を登り、2P目で滝の落ち口を乗り越すか
2.夫婦滝左岸手前に入ってくる25mナメ滝の支沢から
  右俣にかかる4段以上ありそうな女滝の上部まで大高巻きして一旦降り
  そこから左と右俣の中間尾根をトラバースしながら乗り越し
  左俣男滝の上に降りるか
ここも登攀要素の強い1案より高巻系の2案となった。
急がば回れということだ。

左岸手前の支沢を5m登り、これも何となく付いている踏み跡を追って
左のブッシュに入り、尾根状をひたすら登る。
尾根は段々痩せてきて、先に見えるザレ壁の更に上まで巻き上がり
夫婦滝の落ち口もだいぶ下に見える頃
ようやく斜め下降に入る。
ここもアンザイレンしながら同時に進んだ。
最後は急なブッシュ帯を何とか懸垂なしで右俣女滝上部の河原に降りる。
すぐに中間尾根を乗り越えるべく滑りやすいブッシュ帯を登る。
草付きのアップダウンとトラバースを繰り返しながら
左俣百ナメ滝の下部4m滝あたりに飛び出した。
この高巻きに3時間半を要した。

百ナメ滝は流芯右側を容易に登るが
その上の3段12m滝は手前左側のルンゼから尾根を乗り越してまたまた高巻いた。
1220m地点にある3段15mCS滝も左岸の岩場から上部をトラバースして
高巻いたので、本当にこの2日間で沢を遡行したのは時間的に2割程度だった。
ようやく沢床を歩けるとほっとしていると前方に雪渓が・・・
「おいおいこれに雪渓処理も加わるのかよぉ」
とまた一瞬絶望的になったが
近づいてみると流芯は現れており問題なく遡行できました。

ようやく源頭の様相を呈し斜度も次第に平坦になる。
ふと周りに目を移せば、そこはもう秋・・・萌えるような紅葉の連続で
ここにきて初めて安堵の世界。
「登山道だ!」
「やった、解放された!!」
本当に「解放された」が的を得ていた。
みんなにようやく笑顔が戻った。

下りの中沼コースは紅葉真っ盛り。
今までの苦労がすべてすっ飛ぶような光景を提供してくれている。
思ったより大きな中沼辺りからまたまたヘッデンのお世話になり
18:20駐車場に戻る。
国道397を水沢方面に下れば左側に「ひめかゆ温泉」が2件続いている。
汗(冷や汗?)を流し帰路に着いたのはもう20時近く。
交替しながら東北道を飛ばすがすでに終電はなく
Hさんがわざわざ横浜経由、品川、千葉方面へと送って下さった。

今まで大高巻きは極力避けてきたが
今回の遡行で随分技の選択肢も増えてきたと思う。
あの沢を日帰りでこなしているという岩手の沢屋さんに拍手を送りたい。

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