鹿島槍ヶ岳(過去レコです)。


- GPS
- 32:00
- 距離
- 21.3km
- 登り
- 2,331m
- 下り
- 2,317m
天候 | 1日目 雨。 2日目 晴れ。 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ここは北アルプス、それなりに危険個所もあります。 |
写真
感想
松本で所用があるのを機に、鹿島槍に登る計画を立てた。昨日は集中豪雨が発生し各地で大雨の被害が出ていたので、柏原新道の崩壊地は果たして大丈夫かと心配し小屋に電話を入れたところ、大丈夫との事であったので登る事にした。2008年8月30日、朝五時前にホテルブエナビスタを出て雨の中を扇沢に向かった。大町からは雨も少なくなり、柏原新道の入り口に着いた時には雨は止んでいた。柏原新道の入り口には大型バスが止まっていて、ぞろぞろと大勢の登山者が降りてくるところであったが、橋を渡った所にある駐車場は5〜6台とまっているだけで楽々駐車可能であった。6時33分に、「爺ヶ岳登山口」に入る。この道は4年前に針の木岳に登った時に通った事があるので心配は無いが、「熊出没注意」の標識には緊張する。ペースが掴めず、もみじ坂のいきなりの急登で息が切れ、汗をかきかき登る。先に登っていた団体さんが休んでいるので、わたしも立ち止まって長袖シャツを脱ぎ、腰に巻きつける。団体さんは和歌山からバスでやってきて、種池山荘まで行くと云う。総勢35名が5名ずつグループになって登っているのだが、連なって登っているのでなかなか追い越せない。この団体は種池まで登るだけなのでゆっくり登れば良いが、わたしはそうはいかないので、ひとグループずつ順番に追い越して登る。1時間ちょっとで石が積まれている「ケルン」に到着したが、そのままやり過ごし登り続ける。雨が本格的になってきたのでカッパを着込み、レイン用の帽子に変え、ザックカバーをかける。風は無く、雨はどれだけ降っても大した事は無いが、雷さんだけは来ない事を願う。ケルンから40分程で「一枚岩」。辺りを見回してもそれらしき岩は見つからない。さらに20分程のところの「石畳」は結構な急登で、雨に濡れた石に足を滑らせないようゆっくり登る。10分ちょっとで「水平道」、その名の通り平らな道となるがそれも束の間、再び登り、「落石注意」を横目に地震が来ないようにと祈りつつ、丸太で補強された崖を渡る。「ガラ場通過注意事項」と書かれた板が立ち、崩壊地へ。何時崩れても不思議でない崩壊地を、息を止めてそっと通過。ここから種池山荘はもうすぐだという感覚があったがまだまだ長く、ようやく山荘が見えてもここからがまだ大変だ。前回は山荘が見えホットしたが、バテ気味でなかなか山荘まで辿り付く事が出来なかった記憶がある。今回も結構しんどい登りであったが、時間を計ってみると僅か6分であった。登山口から3時間13分、標高差1100m、誰にも追い越されず、ひたすら登り続けて種池山荘に着いた。小屋に入り乾燥室にカッパを掛け、150円也のインスタントコーヒーを自炊室で飲む。山荘の岩小屋沢岳側にある小さな池が「種池」で、山荘の名前に付けられて有名になったが、何の変哲も無いものである。20分程休んで小屋を出発。すぐに爺ヶ岳が全容を見せ、それから続く稜線が左にカーブし、いくつものピークを経て下り、鞍部から少し上がったところに赤い屋根の小屋が小さく見える。目指す冷池山荘だろう、種池山荘とほとんど同じ高さにあるようだ。そしてその向こう、鹿島槍が雨の中でぼんやりと姿を現している。正面の爺ヶ岳南峰に向かうハイマツ帯の尾根をジグザグに登る。急そうに見えても、小刻みにジグザグが切ってあるので左程のものでは無い。頂上も近くなって右に頂上への道が分かれるが、そちらは帰りに登ることにしてそのまま南峰をジグザグに下る。爺ヶ岳中央峰も頂上には行かず、巻き道を通って北峰に向かう。昔、山麓の人は鹿島槍を背比岳と呼んだそうだが、ここら辺りからは鬼の角が2本並んでいるようにわたしには見える。爺ヶ岳北峰に登る道はあるのか無いのか、やがて信州側は切り立った崖となり、やせ尾根をどんどん下って冷乗越に降り立つ。赤岩尾根への登山道が分かれ、「爺ヶ岳3km、鹿島槍ヶ岳4km」と書かれた黄色い標識が立っている。崖の上に建っている冷池山荘はもうすぐだ。右側がスパッと切れ落ちた岩礫の尾根を下り、鞍部からは信州側の崖を避け、越中側の林の中に登山道が作られている。きれいに整備された石積みの階段を登って冷池山荘に到着。山荘の前に小さな池があり、これが冷池。岐阜県山岳連盟の堀井さんから、「チベタイケ」と何度も聞かされた名前であるが、種池同様唯の小さな池だった。まだ12時前、予定より随分早く到着。小屋に入り手続きを済ませ、2階の10号室に案内されて片隅の布団を1枚あてがわれる。まだ時間も早い。受付けの女の子に聞くと、「往復4時間です。5時から夕食ですのでそれまでにはお帰りください」と云う。4時間もかかるのかとちょっと元気が無くなるが、これから5時までここでボーっとしていても仕方が無い、行ける所まで行って見ようと、サブザックに水筒とウイダーゼリーを入れ12時20分、小屋を出発。テン場を過ぎ、コブを一つ巻いて鹿島槍に向けて真っ直ぐ続く緩やかな稜線を登る。布引山が見え、その向こうの鹿島槍はまだまだ遠い。振り返れば爺ヶ岳の三つの峰が遠く霞んでいる。トウヤクリンドウやトリカブトの大群落、ミネウスユキソウやハクサンシャジンも雨に濡れ、稜線上でけなげに咲いている。布引山への登り、疲れたとかシンドイとかいう思いを通り越し、ただひたすらに足を上げ、膝窩を後ろに押し出す。黒いゴツゴツした岩の塊、谷に雪を残した劔がぼんやりと現れ、また雲の中に隠れる。朝から登り続けて思考能力が衰えたわたしの目に一瞬写った劔は、神々しささえ感じさせる姿であった。山荘から50分程で布引山の頂上に到着。山頂といっても稜線上の肩のようなものである。もう鹿島槍は目の先、吊り尾根は縮まり、近づいた双耳峰がキリット並んで立っている。布引山から少し下り、いよいよ鹿島槍本体に取り付く。稜線に付けられたジグザグ道を、ダブルストックを後ろに突き、その勢いで身体を持ち上げながらドンドン登る。雨は相変わらず降り続き、劔ももう姿を現す事はないが、登るたびにどんどん鹿島槍は大きくなり、何故か笑いが込み上げてくる。頑張って登ってきた成果がもうすぐ現れると思うと、喜びで自然に笑えるのである。13時50分、冷池山荘からおよそ1時間半で鹿島槍南峰山頂に到着。思わず、「着いた~」。誰もいない頂上で、「鹿島槍ヶ岳頂上」と書かれた黄色い柱の横に立ち記念撮影。周りは只々真っ白。すぐ先の北峰さえも見えない。長居は無用、早々に下山開始。時間はたっぷりあるので、ゆっくりと花の写真を撮りながら下る。登りと同じく1時間半かかって山荘に帰り着いた。五時の夕食まで缶ビールとウイスキー、夕食時にも缶ビール、6時には布団にもぐり込んでいた。
翌朝は雨も止み、遠くの山々も見渡せる。山荘前の広場から眺める鹿島槍は耳をぴしっと立て、まさに「せいくらべ」。遠見尾根の向こうには妙高、火打、焼山の頚城三山、それに続く雨飾が。雲に覆われた長野台地の向こうには噴煙たなびく浅間山が。さらに右に目を転じれば、雲の上に八ヶ岳連峰が頭を連ねている。眼下、ピカッと光っているのは青木湖だろう。5時からの朝食を済ませ、5時半に山荘を発つ。今日はたっぷり時間はある。ゆっくりと冷乗越に登る。黒部峡谷をへだてて、劔と立山が朝陽を浴びて悠然と構えている。前方にはこれから登る爺ヶ岳の3っつの峰が連なり、南峯から右にカーブして下ったところに種池山荘の赤い屋根が見える。少し登ると信州側の展望が開け、八ヶ岳の左手に、富士が端正な姿を雲の上にすっきりと浮かべている。「待ってろよ〜」。劔に見守られながら北峰をかすめて登り、中央峰の巻き道の途中から中央峰頂上に向かう岩場を登る。カメラを2台、それぞれ三脚に立て、鹿島槍を狙っている男が一人、頂上を陣取っている。2本の角をはやした鬼、その顔にあたる部分に朝陽が差し込み、冷池山荘から頂上まで続く稜線をくっきりと際立たせている。南側には槍が天を指し、右手に西鎌、手前に北鎌、左手に東鎌を広げている。今日は良い天気になりそうだ。中央峰を降り、再び稜線上を南峰に向かって歩く。青空が広がり7時を過ぎて一段と明るさを増し、南峰頂上で眺望をしばし楽しむ。正面に劔を眺め、背後から当たる朝陽で、斜面に映った自分の長い影を追いかけながら爺ヶ岳を下る。「サラバ鹿島槍」、種池山荘手前で鹿島槍と別れ、7時43分に山荘に到着。インスタントコーヒーを頼み、山荘前の広場のベンチに腰をかけ周囲の山々を見渡す。4年前に通った、岩小屋沢岳、鳴沢岳、赤沢岳、スバリ岳、そして針の木岳に続く稜線。広場の掃除をしている小屋番に、赤沢岳とスバリ岳の間から輝いている遠くの山を指し、あれは何ていう山かと聞くと、「薬師」と教えてくれる。じゃ、針の木峠の向こうに見えるのは?と聞くと、「水晶」。4週前にはあそこにいたんだ、遠〜いな。先ほど見た富士はすっきりしていたが、今はもう頂上に雲が掛かり始めている。7時52分、山荘を発ち石積みの道を下り始める。「ガラ場注意」、「落石注意」、「クマ出没注意」、どう注意すれば良いのか知らないが、これらを横目に柏原新道をひたすら下る。1時間ほど下ったところでひと休み。見え隠れする針の木、そこから続く雪渓、その下に扇沢のターミナルが見え始める。見え始めてからが長い。昨日の雨で濡れたもみじ坂の急坂を、ここで滑っては大変と、次に足を置く場所を慎重に見極めながら下る。種池山荘から2時間20分、無事駐車場に帰り着いた。
大町温泉郷の「薬師の湯」で、冷池山荘で貰った「600円→500円 割引券」を使って汗を流した。
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