火打山(過去レコです)。
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- GPS
- 140264:00
- 距離
- 18.5km
- 登り
- 1,371m
- 下り
- 1,369m
天候 | 1日目 曇り。 2日目 雨。 |
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過去天気図(気象庁) | 2005年08月の天気図 |
アクセス | 木曽川ICから東海北陸道にのり、名神、中央高速、長野道を経由し、上信越自動車道で新潟県に入る。妙高高原ICで高速道路をおり、妙高高原公園線に入り、笹ヶ峰へ。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
危険個所はありません。 |
写真
感想
親友が利尻岳に登ったというので、わたしも行くべくJTBに申し込んだところ、今頃云われても飛行機がありませんと門前払いを食った。じゃ、飛行機を使わなくても行ける所と云う事で色々調べ、結局は火打、妙高を選んだ。2004年8月10日、午後1時に出発。木曽川インターから東海北陸道にのり、名神から中央高速、長野道を経由し、上信越自動車道で新潟県に入る。妙高高原インターで高速道路をおり、妙高高原公園線に入り、笹ヶ峰に向かう。カーブは多いが舗装された立派な道を走り、今夜の宿である国民休暇村「笹ヶ峰ロッジ」に到着する。山小屋ではなく6畳間程度の部屋に一人で眠る事が出来、快適。台風9号が日本からはずれ中国大陸に上陸し、そこから延びた前線の影響で北陸から新潟にかけ、明日は曇り後雨、雷を伴うところがあるとの予報である。
翌朝4時に起床し準備にかかるが、外はまだ暗い。昨晩作ってもらったオムスビを食べながら明るくなるのを待って外に出る。駐車場の奥に登山口があり、登山届けを提出して丁度5時に登山道に入る。平坦な木道歩きが格好の準備運動になり、朝の澄んだ空気を吸いながら気持ち良く歩いと、およそ50分程で黒沢の流れに着く。案内本には水場と記されており、ここで補給すべ空の1.5Lのペットボトルを持って来たが、本流なので生では飲めないだろうと汲むのはよす。立派な黒沢橋を渡るといよいよ十二曲がりの登りとなる。木の根っこの階段や大石の重なりなど、急登を心臓と相談しながらゆっくりと登る。30分程で十二曲がりの急登が終わり、尾根道となる。傾斜は少し緩やかになり、登り始めから1時間半の所で小休止をとる。オオシラビソの林の中の登山道は、シャジン、ヨツバシオガマ、クルマユリが散見されるぐらいで花は少ない。やがて高谷池と黒沢池の分岐に出る。環境省・上越森林管理署の案内図があり、現在地は富士見平とある。岐阜と長野の境にある広々とした富士見台を想像していたが、この富士見平には広さは無い。案内本によると富士見平からの眺めは素晴らしいものだそうだが、あいにくの曇り空で眺望は全く得られない。黒沢山の東斜面をトラバースする道となり、高谷池小屋の三角屋根が見え始め、道は下りとなるがまだまだ遠く、途中で一服。オオシラビソは矮小化し、ダケカンバやウラジロナナカマドの落葉広葉樹の下に笹が茂っている。8時20分、登山口から3時間20分かけて高谷池小屋に到着した。小屋の前には湿原が広がり、池塘が点在し、火打山はその向こう、ガスの中に隠れている。ベンチに腰を下ろし、朝飯のオムスビを取り出し1個食べる。水場で補給しようとするも、「充分消毒していないから生水では飲めない」と書かれてあるので止める。大休止のあと小屋を発つと、すぐ火打山と黒沢池の分岐に出る。ここにザックをデポし、雨具とお茶をいれたサブザックを背にする。高谷池から別れ少し登り、振り返ると高谷池全体を見下ろせる。もう少し登ると湿原の中にお花畑が現れ、こんな山の中に木道が続く。クルマユリ、モミジカラマツ、キオン、サクラソウ、ミヤマダイコン、シナノオトギリ、カヤブキキョウマ、エゾシオガマ、ハクサンボウフウ、遅咲きのコイワカガミなどが咲き乱れている。木道がとぎれ、ほんの少し下ると広々とした「天狗の原」が目に飛び込んでくる。池塘が浮かぶ湿原の向こう、右手に「鬼ケ城」が赤茶けた岸肌を露出して切り立ち、左手の目指す火打山は相変わらずガスの中に埋もれている。こじんまりとした高谷池に比べ、壮大な景色が広がる。真っ白なふわふわした小鳥の羽毛を思わせるワタスゲが、今にも大空に飛んでいきそうに風になびいている。昨年登った西吾妻山の乾きそうな湿原と違い、たっぷりと水をたたえた池塘が光る、活き活きした湿原を木道をたどって回り込み登山道に取り付く。さすが日本一の豪雪地帯、未だ雪渓が残っている。ミョウコウトリカブトかハクバブシか、濃い紺色のトリカブトが群生し、対して薄い青色のヒメシャジンの花が負けじと広がっている中、残雪を見下ろしながら登る。まさに別世界。感激しながらゆっくり登り、ライチョウ平で一服。目をこらして辺りを見るも雷鳥は現れず。這い松地帯をさらに登ると、かわりに白い上着をまとったような小柄なホシガラスが迎えてくれる。目指す火打山はあい変わらずガスの中で、岩がごろごろする中に作られた木道から、急坂をゆっくり登り切るとそこが頂上広場であった10時8分、登山口から5時間8分の行程であった。頚城三山の盟主である火打山の頂上からは、遠く北アルプス、南に高妻山、東に苗場山が見えるとのことであるが、目の前にある筈の焼山、妙高山さえガスの中に隠れてしまっている。雨が降らぬうちに今夜の宿泊先である黒沢池ヒュッテまで行くべく、記念撮影をしただけで早々と頂上をあとにする。岩ごろごろの木道では、雷鳥が2羽、逃げることもなくわたしの前をチョコチョコ歩いていく。人を恐れない、世俗を超越した世界を感じ、嬉しい限りである。高谷池に戻り、デポしたザックにサブザックを詰め込み、「←黒沢池、妙高山」の案内に従ってオヤマリンドウの咲く山道を登る。茶臼山という、どこかで聞いたような名前の山であるが、この山の頂上から一歩下ると視界が開け、広々とした黒沢湿原が目に飛び込んでくる。池塘が光り、湿原の端にドーム状の黒沢池ヒュッテが小さく見え、目を上げれば外輪山からニョキッと飛び出ている山がある。一目で妙高山であることがわかる。これまた、天狗の原以上に雄大な眺めである。茶臼山を下り、12時半にヒュッテに到着。オムスビを二個食べ、700円也の大きい缶ビールを空け、玄関前のベンチに横になりウトウトとする。時間はたっぷりあるが、小屋の主人が「今日は新潟大学の養護教員課程の学生が50人来るので、先に手続きをしましょう。わっはっは」と云う。別棟の2階の、布団が6人分づつ3列に並んでいる大部屋に案内され、「今日はここに5人とまるだけだ。好きな場所をとれば良い。わっはっは」。まだ誰もいないので特上席を確保する。今ここで眠ったら、夜は眠る事ができなくなるだろうからと、ドーム状の本館の食堂に行く。食堂には山やスキー関係の本が並べてあり、これを読むうちに、この小屋の「わっはっは」の主人は植木毅という名で、全日本アルペンスキー教室の校長で、わたしもスキーを始めた頃に読んだことのあるスキー教則本を書いた人であるということがわかった。植木さんは、マッキンレイ、アルプス、ヒマラヤなど、世界の山を始めて滑降した有名なスキーヤーであり、わたしも何処かでその名を聞いた覚えがある。夕食前にもう1本大きい缶ビールを開けていると例の新潟大学別科の女学生さんが、先生を先頭に笹ヶ峰方面から降りてきた。小屋のまわりは急に賑々しく華やかになり、そのうちの1人に聞くと、明日火打山に登り、明日もここに泊まって帰るとの事である。何とも余裕のある行程である。団体さんの食べる前に個人客の夕食が始まり、もう1本大きい缶ビールを飲むと、植木さんが「良く飲まれますね。わっはっは」と云う。6時には食べ終えて部屋に戻るが、いくらなんでも寝るには早すぎる。誰かが「白馬で崩壊があり、遭難事故があったそうだ」と云うのをききながら、ウイスキーをチョビチョビやるうち、まだ暗くならないのにいつの間にか眠り込んでしまった。窓は閉めていたが夜中は寒さでふるえるほどで、明け方は大雨で雷が鳴り響いていた。雷にうたれたりしたらえらい事だ、妙高はあきらめてこのまま笹ヶ峰におりようと、ウトウト寝ながら夢の中で考えていた。
4時起きの予定だったが誰も起きる人はなく、外が明るくなり始めたのでようやく起きる。クレープにジャム、コーヒー、スープ、洋ナシという洒落た朝食を済ませ、6時に雨の中を出発。小屋の前の妙高山方面と笹ヶ峰方面の分かれ道、夢の中で考えたとおり迷わず笹ヶ峰方面に進む。少し登ると黒沢湿原が広がり、その中を木道が伸びている。クマさんがひょこっと顔を出しても不思議でない光景だが、鈴もラジオも持っていない。誰もいない湿原を、折角の景色を楽しむ余裕もなく、時折り大きな声を出しながら見えないクマさんを脅しながら歩くが、これがなかなか大変で息が切れる。湿原の端で黒沢の上にかかった板をつたって向こう岸に渡る。登山道を歩き、富士見平の分岐に至る。前回、聖岳の下りで膝がガクガクになった経験から、富士見平からはストックを使い、左膝の負担を軽減しながら下る。雨で木の根っこや岩は滑りやすくなっており、慎重に足場を選んでゆっくりと下る。十二曲の途中で雨は止み、雨具の上着をぬぎながら、ひょっとすると妙高山も雨は止んでいるのかしらという思いが頭をよぎる。山は逃げない、いずれまた登る機会もあるだろう。8時前にはもう笹ヶ峰ロッジの駐車場に帰り着いていた。
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