奥秩父・雁峠-雁坂峠-破風山-甲武信ヶ岳-三宝山-十文字峠-赤沢山-栃本関所跡縦走と台風17号


- GPS
- 97:30
- 距離
- 38.4km
- 登り
- 2,886m
- 下り
- 3,193m
コースタイム
10:07新地平出発-12:30昼食13:00-15:10雁峠・雁峠山荘宿泊
28日
6:40出発-9:35水晶山-10:45雁坂小屋(S氏と合流・西沢渓谷から)11:30-14:35東破風山-18:20木賊山・甲武信小屋分岐-18:45甲武信小屋・素泊まり
29日(S氏を見送る・西沢渓谷へ)
出発時間不明8:30くらいだったかなぁ-10:20三宝山10:30-11:40尻岩11:50-12:30武信白岩山13:00-14:35大山-16:00十文字小屋17:10-17:40四里観音-18:30四里観音避難小屋・宿泊
30日
6:00出発-8:35三里観音?-10:10昼食10:40-12:40二里観音・白泰山避難小屋(台風接近の為、下山を断念)宿泊
10月1日
6:30出発-8:35一里観音?-9:20栃本広場への林道分岐-10:10東屋・昼食11:00-11:15登山道入り口-11:40栃本関所跡
天候 | 27日雲天 28日時々小雨から雨 29日雲天 30日雲天から台風17号 1日台風一過 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
山梨市営バス9:12発、西沢渓谷行きで新地平下車 栃本関所跡・秩父市営バス 川又・秩父市営バス・西武バス |
コース状況/ 危険箇所等 |
新地平からの亀田林業林道途中にプレハブがあって、トイレもあるのですが、登山者も使用OKとありがたい看板あり。 (雁峠) 旧・雁峠山荘地図上の水場(旧ポンプ給水場所)の沢は、水量少なく微妙でした。 林業林道から上がった雁峠手前にも水源があるものの、鹿の糞が大量にあったこと・灯油なのか油系の物が浮いていたこと・虫(この時期大量にみかける小さなムカデみたいなやつ)が大量に水場で死んでいたこと、この3点で使用しませんでした。(水場が不明瞭だったので、事前に十分持参していました) 雁峠小屋は泊まるに十分ですが、2階は少し傾いています。 毛布類は、全て湿っていました。 正面入り口ではなくて、北側裏口から入れます。 (破風山・西破風山) 露岩帯通過なので、足元に注意。 穴に足を取られて、骨折する人は少なからずいるものです。 避難小屋間の急坂も、岩稜帯なのでゆっくり確実に通過するのが安全だと思います。 (~木賊・甲武信小屋分岐) 花崗岩の地質があり、登山道が深くえぐれている場所が数箇所あり。 1mを超える段差があるので、危険というよりは厄介。 (甲武信ヶ岳~三宝山) ピークからすぐは、急坂。 多少ガレているので、浮石に注意したい。 (三宝山~十文字小屋) 三宝山から尻岩までの間だったか、苔むした森深さを堪能できる。 奥秩父特有の、森の空気の濃さを味わえる。 (四里観音避難小屋) 地図を見ると、コース上にあるように見えるが、分岐があります。 コース上に道標があるので、見落とすことはないと思う。 水場がなんと、1番危険。 サブザックで両手をフリーにしておかないと、滑落もありえる。 雨・雨上がり・降雪時は、充分な注意を。(ポールを1本持つのもあり) (三里観音~二里観音・赤沢山付近) 道中会った人や避難小屋の落書き帳にもありましたが、この区間、厄介です。 ザレたトラバース系のルートが続き、か細い足場の区間が点在します。 日帰りや軽量装備なら良いかもしれませんが、縦走用装備だとあなどれません。 その辺は経験なのかもしれませんが、ここでコース図以上に時間を費やす人は多いように思います。 (白泰山避難小屋) 水場・トイレはありません。 (栃本関所跡) 西武のバスは通過しません。 |
写真
感想
前回、師匠との沢登りデビューから、またまたやってきました奥秩父。
重ね重ね述べますが、大きく影響を受けたのは、1冊の本が原因。
山田哲哉氏の「奥秩父 山、谷、峠そして人」
その後、岳友からの勧めで読んだ「雁峠だより」
師匠から借りた「オオカミの護符」
歳を重ねてから、湧き上がる探究心と興味。
我々日本人の中に流れる、太古からの血と歴史。
はたして、日本人とはいかなる人種なのか。
価値観や、道徳心の根源。
仏教が伝来する以前より、脈々と血の中に受け継がれてきた日本人の道徳の奥底に、山岳信仰や自然信仰の神童から受け継がれる「血」を確信的に感じ始めました。
けっして本の虫ではなく、それほど読書に興味があるわけではないのだが、最近は暇つぶしを兼ねて、少々読んだりしています。
とまあ・・・前置きは置いておいて。
故・加藤氏著書「雁峠たより」の愛した雁峠山荘。
岳友、三重県のS氏との久々の再会。
大和王朝にも屈しなかった、秩父民族の地と交易の峠道。
信濃川・荒川・笛吹川の源流を有し、本州中部の生活を支える水源。
そんな理由付けも良いのだが、前回の奥秩父縦走ですっかりハマッてしまった訳である。
特急あずさ3号で駅弁を喰らい、久々の列車の旅も満喫。
小屋番のいなくなった雁峠山荘も、このまま朽ちていってしまうのだろうか。
ここに道路が開通する予定で、有力者が先見の目のつもりでこの小屋の管理を受け持ったのだと、甲武信小屋の徳さんにこの旅で聞いた。
反対運動により、開発は中止され、故・加藤氏がこの小屋番として名乗りを上げたが、数年で追い出され廃墟となった。
それでも、いくばくかの登山家の避難所として、今もそこにある。
そんな小屋での夜も、雨男健在で、より物悲しい一夜となりました。
小雨の降る中、S氏との合流に向けて出発。
水晶山を越えた辺りから、雨粒が大きくなった。
途中、S氏との連絡を試みるが、Auは圏外にならない場所もあるのだが、送受信ができず。
雁坂峠に到着する頃に、雁坂小屋で待つ!と受信。
まぁ・・・この雨だもの、外で1時間も1人でいるわけはないよなぁと。
巻き道前で受信できればよかったけど、小屋まで戻る形に。
土日くらいしかいないという雁坂小屋の小屋番さんが滞在しており、久々に再開したS氏を交えて昼食を小屋内で作る許可が出たので、談笑しながら雨宿り。
「和名倉山って皆言うけど、あそこは白石山なんだ。和名倉は、もっと低い山だ。」そんな貴重な話も聞けた。
本当は、S氏にその山を見せたかったのだが・・・。
3度目のこの道、逆に辿るのは初めてだったが、いつもの亀足でゆっくり案内しながら進んだ。
雨なら避難小屋か甲武信小屋の素泊まりと話をしていたので、S氏は寸前でテントを置いてきたという。
破不山避難小屋に着く頃には、すっかり遅い時間。
シュラフは持参したが、気温が低く不安というので、強行で甲武信小屋へ向かうことにした。
これは・・・怒られるなぁと予感。
木賊と小屋の分岐では、すでに真っ暗だったが、ここでやっと小屋に電話。
怒られる前のワンクッションと、嫌らしい考えもあったが、いきなり行く無礼よりはマシかなと。
案の定、は?これからか!今、どこにいるんだ?と・・・。
山での非常識だという自覚はあったので、ここはもう、平謝り。
小屋に到着したのは19時寸前。
3名とも12時間を超える、山行時間となってしまいました。
怒られながら、素泊まりの手続き。
そして、恐る恐る、手土産に用意していた芋焼酎を北爪さんに差し出す。
これは、春先に師匠と来た時に、北爪さんが振舞ってくれた焼酎のお礼だった。
あー!と思い出してくれて、顔がほころんでくれた。
すぐに夕食を作り、消灯の20時までにすませた。
宿泊者の迷惑にならないように、外で雑談。
北爪さん登場で、酒盛り再開。
色々な話を聞かせてもらいました。
S氏も山小屋で、こんな時間を過ごしたことがなかったようで、共に良い想い出を作れました。
ソバの残り汁で炊き上げた、うるち米の炊き込みご飯で朝食。
網で焼き上げた餅に、フリーズドライの大根おろしでからみ餅。
翌日の仕事に備え、S氏はここで下山。
仕事が終わってから、強行で現地入り。
そして12時間を超える登山。
早々に下山し、三重まで戻る。
本当に、わざわざ来ていただき、ありがとうございました。
別れを惜しむ時間もなく、甲武信ヶ岳のピークを足早に踏んで下山していきました。
ゆっくりと出発準備をしていると、台風17号接近の一報。
は?18号上陸で、中止になりかけたこの山行。
まさか17号が、西に転進してくるのは、予想外だった。
超大型の台風17号。
地図を広げ、作戦会議。
気象図を確認し、到達時間を予測。
行程全てを消化するには、ちょっと微妙な感じ。
道中、十文字小屋と四里・二里観音避難小屋と、避難する場所はある。
そういえば、山の中で台風に遭遇したことはないし、ここはひとつ・・・体験してみたいという気持ちがムクムクと湧き上がる。
いかんいかん・・・甘く見ては、いかん。
とにかく、今日中に進めるだけ進み、翌日の11時46分に間に合わせて下山できれば、下界で台風をやり過ごせる。
そうと決まれば、即出発。
と、思った矢先に「時間あるなら、コーヒーでも飲んでいかないか?」と北爪さん。(笑)
小1時間近く、美味しいコーヒーと談笑。
出発は、8時を過ぎてしまいましたとさ。
そして相変わらずの亀足マイペース。
眺望のない、三宝山ピークで小休憩。
奥秩父らしい苔むした登山道を、楽しみながら満喫。
武信白岩山で、昼食。
Kちゃんが餅入り具沢山のちゃんぽんを作っている間に、ピークへ登ってきた。
トラロープは、立ち入り禁止の意だったのかもしれないが・・・。
パッとみで、ルートが見えたので、180cmのスリングを一応1本用意して行きました。
狭いピークに、三角点?と、捨てられた煙草の吸殻が1つ。
ゴミを回収し、昼食を食べて、十文字を目指した。
十文字小屋へ着く頃には、夕暮れ間際。
馴染みの常連さんが、3人で出迎えてくれた。
4里観音の水場の状況を、女小屋番さんに尋ねると「水は枯れないと思うけど、危ないなぁ」と。
それを、枯れている事があるかもしれないという意味で、危ないなと言ったと思い、ry
料金を払い水を汲むが、なんか・・・水が濁っている。
ほどほどに給水し、きのこ汁を注文。
色々と談笑しているうちに、日没間際。
「まだ、行かなくていいのかい?」と言われて、やっと出発。
4里観音のすぐ近くに避難小屋があると思っていたので、ゆっくりしていた。
4里観音で、ヘッドライト装着。
えー・・・結構先なのね。
ガスが出始め、視界が悪くなる。
小屋を見落とさないように、2人で分担して注意深く先へ進んでいった。
小屋の分岐にきて、へ?登山路から離れていたのかとびっくり。
見落とすような道標ではないが、焦りやガスの濃さがあれば、危険性はあったかもしれない。
小屋からもれる光、先客がいるようだ。
貸切のところ、すいませんと中へ。
単独の1名様が、ラジオを聴いてくつろいでいた。
水場を聞くと、非常に危険なので、ストックを1本持っていくようにと言われた。
行ってみると、なかなかの急勾配と岩壁。
足元は緩い土壌で、体重を乗せると崩れやすかった。
彼が1度落ちたと言ったように、途中、滑る落ちた跡があった。
結構な滑落痕、場所が悪ければ20m落ちそうな場所もある。
やっとのことで下に降り、水を汲んで、両手が使えるように、2.5Lを口に咥えて上に戻った。
翌朝の悩みは、水の携行量。
バスに間に合わせるのなら、重量は軽くしたい。
が、台風の様子で停滞なら、食事の分を含めて充分確保したかった。
ここで汲んだ2・5Lに、十文字の濁った水が少々。
もう一度汲みにいくかと思ったところで、単独の方が捨てる水があるが?と1Lほど分けてもらった。
日の出から遅れて、出発。
さー!急ごう!!
と思ったが、なかなかペースが上げることが出来なかった。
落書き帳や事前情報どおり、赤沢山付近で思った以上に時間を消費していく。
ペースを上げるには、それなりの安全性が欲しい。
が、道が狭く、ザレたトラバース系のルートが続き、慎重に進むしかなかった。
午後になれば、いつ雨が降ってきてもおかしくない。
途中で雨が降ってきて、バスに間に合うのか?
台風に間に合っても、秩父で宿にありつけるのか?
栃本広場にトイレがあることや、麓の神社で台風をやり過ごせるか?
栃本に数件民宿があるらしいが、そこに泊まれるか?
時間を見ながら、色々と思考をめぐらせた。
気持ちは焦るが、連日のナイトウォークで、足取りも重かった。
午前中急げなかったものが、午後急げるという夢見たいな考えは捨てたい。
11:30、二里観音を過ぎていなかったら、停滞。
これだけは、守ろうと思った。
そして、あと少しというところで、その時間が過ぎた。
そんな矢先に前方から「ドスン!」という轟音と共に、音が振動で体に届いた。
ビクッ!と体が、硬直する。
前方20m程前を、躍動し左へ走り抜ける物体。
ドスン・・・ドスン・・・と、足音。
凄い速度で、一瞬で視界から消えた。
「何?」と聞かれて、わかんないけど・・・・猪かなぁと答えた。
はー・・・びっくりしたね・・・と、何事もなかったように、歩き始めたが・・・。
ゆっくりと記憶を、巻き戻す。
ドスン?空気が震えるほどの音、足音にしては不自然すぎる。
躍動してはいたが、鹿のそれではないし。
猪にしては、ゆるやかな躍動と、まず足音の歩幅が違う。
そう・・・色は、黒かったのではないか?
・・・・・・・・。
木から、熊が落ちた音?
全身の毛穴が、開くのがわかった。
熊だ・・・。
確信は無いが、合点はいった。
最初の轟音は、人間の接近に気づいた熊が、木の上から落ちた音。
跳ねるでもなく、這うようにでもない、あの躍動するフォーム。
ドスン・ドスンという、足音。
熊よ・・・よくぞ先に見つけて、逃げてくれた。
二里観音に到着したのが、12時過ぎ。
全速で降りれば、まだ間に合う時間ではあるが、さほど考えずに停滞をきめた。
避難小屋の中へ入ると、ヤマネの糞が床一面に。
換気をしながら、中を隅々まで綺麗に掃除。
蒔きストーブがあったので、前日の雨で多少湿っているが、蒔き集め開始。
14時頃?に、1人の下山に会う。
停滞を勧めてみるが、明日の仕事に行きたいと、走るように降りていった。
中にツェルトを張り、準備万端。
火付けは得意なので、一発着火。
15時頃には、一瞬で豪雨になった。
念のために、屋根から落ちる雨水を鍋にためる。
1時間ほどで、2L近くも溜まった。
十文字の水より、綺麗なほど。(笑)
沸かして使うには、充分綺麗だった。
ゆっくりと夕食を作り、この雨の中を歩くことにならなかった事を、停滞してよかったと思った。
19時頃から、暴風域。
戸締りを確認し、早々に寝袋に入った。
時折くる扉が開くような音や、轟音。
2度ほどライトを入口に向けて、「誰かいますかー」と。(笑)
夜明け前まで、すっかり爆睡。
扉が開いていたのには、びっくり。
鉄のカンヌキなのだが、度重なる振動で開いたのだろうか?
そそくさと朝食を済ませ、下山開始。
思うように早くはなかったが、亀足で順調に下山。
途中、昼食をとり、4里観音で汲んだ以外の水をやっと捨てた。
バス停に到着して、事件発覚。
川又発の西武のバスも、栃本を通過すると思っていたが、秩父市営バスのみだった。
川又は隣のバス停だが、数キロある。
間に合わない・・・・。
次の上りは、15時。
途方にくれているところに、川又行きの下りの秩父バス。
とりあえず、止めて状況を話す。
が、やはり川又まで行っても、西武の上りも次は14時半。
とりあえず、川又まで行くか・・・ヒッチハイクでもするかと話をしていると。
「お急ぎなんですか?」と運転手。
まぁ・・・急ではないですけど、さすがに今から3時間以上待つのは・・・と答えた。
最悪タクシーか?とも、思っていた。
少し考えた風にしてから「実はこれから、大滝温泉に用があっていくんです。そこまででよかったら、どうぞ」と。
大滝温泉まで乗せてもらい、タクシー使ったらと思えばと4000円程用意。
人が良さそうだから、受け取らないかもと思い、じゃあ中を取って2000円!。
多分、こんな話で受け取ってくれるだろうと。(笑)
しかし、一銭も受け取ってはくれなかった。
予想は外れ、では運賃だけでもと言ったら、「ああ~そうですね」みたいな・・・。
運賃も取らない気だったの?。
そしてバスは、温泉に停まることなく、走り去って行った。
「内緒にしていてくださいね、本当は駄目ですから」と・・・・。
大滝温泉に、用事などなかったろうに・・・・。
人情やなぁ・・・・と、目頭が熱くなる出来事だった。
山と峠に、人情とは出来すぎな山行だった。
三重からの人、山小屋の人、バスの人。
人情と、山、最高の思い出深い日々でした。
また、いつかどこかで。
ありがとうございました。
(11月7日・23時40分記載)
以下、後日
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