ヒグマの巣窟「日高3大カール」で眠る〜戸蔦別岳・幌尻岳・1967峰・ピパイロ岳
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- GPS
- 56:00
- 距離
- 35.6km
- 登り
- 3,413m
- 下り
- 3,419m
コースタイム
- 山行
- 6:50
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 7:30
- 山行
- 10:00
- 休憩
- 2:00
- 合計
- 12:00
天候 | 9/19 曇りのちガス、強風 9/20 晴れ一時雨 9/21 晴れのち曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2020年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
ルート全般通してヒグマの痕跡は意外にもほとんどなかった。七つ沼カールでもカール全体をゆっくり見まわしても1頭も見つけることができなかった。カムエクの八ノ沢カールでは遠くに1〜2頭すぐに見つかるくらい熊は多い。ヒグマに関してはカムエクの方が数段危険度が高いと思う。 北戸蔦別までの登りとそこから幌尻岳までの一般道は特に問題になるところはない。日高の山の登山道ではかなり楽に稜線に立てるコースだろう。二の沢では6〜8回程度渡渉があるが、自分は登山靴で問題なかった。不安であれば、サンダルを持っていけばよく、沢靴を準備するほどではないと思う。 北戸蔦別岳〜ピパイロ岳の間はハイマツのヤブが酷く、準登山道。ただ下道はハッキリしているので、ルートミスの可能性はあまりないのは救い。エサオマン〜カムエクなど中部日高の稜線に比べればワンランク難易度は低い。 日高3大カールの七つ沼カールはぜひともオススメな泊まり場。ちなみに私は今回の山行で3大カールの宿泊をコンプリート。その他二つの記録は以下: ペテガリ岳Cカールの宿泊: https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-45340.html カムイエクウチカウシ山八ノ沢カールの宿泊: https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-933060.html |
その他周辺情報 | 平取温泉ゆから 500円 |
写真
感想
9/19(土) ガスと強風: 二岐沢出合〜額平岳〜戸蔦別岳〜七つ沼カール△
前日夜に新千歳空港でレンタカーを借り、登山口に夜の12時半に到着、仮眠した。夜の時点ですでに車は10台ほどあり、朝になって更に5台くらい続けざまに到着した。さすが4連休だ。
もともと今回の計画はポンチロロ川を遡行し、まずピパイロ岳に登る計画だったが、昨日の雨でチロロ川は増水している。前日までの天気でほぼあきらめていたが、目の前の川を見てこりゃやっぱり駄目だと本当にあきらめがついた、、一般道から登ることにした。補助ロープと沢靴は車に置いてゆくので荷物がだいぶ軽くなったのは救いだった。明日の午前の天気が午後より良さそうなので、メインディッシュである幌尻岳を先に登るべく、今日の目的地を七つ沼カールに変更し、出発した。
取水ダムで林道は終わり、二岐沢沿いの登山道になるが、渡渉はなく、ずっと左岸を歩く。急な崖を巻くところが1か所あり、ロープもあって少し緊張するが、それ以外は問題になるところはない。踏み跡も日高にはありえないほど明瞭だ。おそらく、本年はコロナのため幌尻岳の額平川コースが閉鎖になっているため、こちらのルートに登山者が集中しているのだろう。
二の沢の分岐も踏み跡はわかりやすく、迷いようがなかった。ただニの沢に入るとすぐに渡渉を繰り返すようになり、傾斜も急になってくる。やがて大きな滝が目の前に見えるところで尾根に取り付く。取り付きは崩れていて若干危ないので注意する。ただ、ここもロープが張り巡らされていて、登山者への配慮が感じられる。
尾根の登りは急だが、相変わらず道はよく、標高はぐんぐん上がってゆく。トッタの泉は標高1380mくらい。湧き水の水量は思っていたより多く、水筒4.5Lはあっという間に満杯になった。沢地形ではない斜面に貴重な水場だ。七つ沼カールで湧き水が得られるか不明なので、重いが頑張って担いでゆく。
額平岳のピーク近くまで来ると強風が吹くようになり寒くなってきた。今日は下界は晴れの予報だが、この風ではガスが発生してしまう。このあと、結局天気は一日中パッとしなかった。北戸蔦別岳の山頂では、まだ午前中にも関わらず、何人かがテントを張る準備をしていた。明日ポロシリを往復するのだろう。七つ沼まで行く私はここから強風の中苦しい稜線歩きが続くが仕方ない。気合を入れて進むことにする。
戸蔦別岳まで順調に到着。あの鋭鋒はどんなに大変なのかと思っていたが、急な区間は短いので思ったより楽だった。立っていられないほどの強風でガスって寒いので、写真だけ撮って七つ沼方面に降りてゆく。カールへの分岐は目印も何もないが、踏み跡は明瞭だった。すこし前方に同じくカールへ向けて下っている人がいる。自分ひとりで宿泊だったら怖いなと思っていたので一安心だった。
カール底に到着。前を歩いていた方と少し話をする。4人パーティのようだが、ほかの3人は幌尻岳を登ってから戻ってくるそうだ。一番上の沼の北側に砂丘があるのでそこにテントを張ることにする。うまい具合に中央部に小さな丘があり、丘を挟んでとなりのパーティとプライベート空間が保たれるように幕営することができた。まだ13時半で時間はたっぷりあるので、昨晩の寝不足を解消するべく一寝入りする。
30分ほど昼寝して落ち着いたので、七つ沼を探検する。これにて日高3大カール(ペテガリ岳Cカール、カムイエクウチカウシ山八ノ沢カール、七つ沼カール)すべてに宿泊することになるのだが、カールとしては七つ沼カールが一番大きい。そして、居心地も一番よい。ただ人間が居心地が良いということはヒグマも居心地が良いということだ。前日まで雨だったせいで沼はだいぶ水が溜まっていた。夏でもこれほど溜まっていることはないのではないか。そしてなんと一番上の沼のほとりにはこんこんと湧き水がわいていた。トッタの泉からわざわざ重いものを担いでくる必要は無かった。ゲンナリである。天気が今一つだったのが残念だが、カール底のガスが晴れていたのは幸いだった。七つ沼を十分堪能できた。
結局この夜はヒグマも出ることもなく、なんと10時間も睡眠をとったのだった。日高3大カールでこれほどのびのび寝られたのは初めてだった(ペテガリもカムエクも、一人だったせいもあり、ヒグマの恐怖で夜中に何回か目が覚めてしまった)。
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9/20(日) 晴れ一時雨: 七つ沼カール〜幌尻岳〜北戸蔦別岳〜1967峰〜ピパイロ岳〜P1856△
朝は雲が多かったが、幌尻方面は晴れており良い日になりそうだ。快適な夜を過ごした七つ沼カールを名残惜しいがあとにする。カールバンドを登っているうちに天気はみるみるよくなってきた。幌尻岳の肩から見る七つ沼は芸術品そのもの。こんなところは日本にはそうそうない。そして人が少ないのが内地ではあり得ないことである。肩から山頂までは良い道をタラタラ歩けばよい。山頂手前でキャンプしている人がいた。まさかここまでテントを担いでくる?物好きというかなんというか… 山頂はガスっていたが上に太陽は見えており陽の光たっぷりだ。21年ぶりの幌尻岳再訪は大満足のうち終えることができた。
北戸蔦別岳まで順調にもどった。北戸蔦別岳はテントは満杯。日帰りで登ってくる人も多く賑わっていた。昼食後、予定通りピパイロ方面に進むが歩き始めると突然周囲がひんやりしてきて、冷たい雨が降ってきた。悪いことにすぐにとんでもないハイマツのヤブになってきた。ずぶ濡れになりながらヤブをかき分ける。荷物が引っ掛かりまくってなかなか進めないし、十勝側の急斜面に出ると泥で滑りまくる。最悪であった。ほうほうの体で1856に到着。ここより先に荷を担いで進むのはもう嫌になり、予定より早いがここにテントを張ることにした。ちょうど同時に到着したカップルも同じく嫌になったようで、同じくテントを張りだした。寒いのでカップラーメンを作って食べたが、これで体が温まり、先に進む元気も出てきた。
P1856から1967峰まではヤブはほとんどなく、それほど大変ではなかった。1967峰は日高で3番手の標高を誇り、山容もかなり立派なもんだが、名前がない。このように名無しのまま捨て置かれているカッコイイ名峰が、日高にはいくつかあるが、内地の山では信じられないことだ。残念ながらガスが晴れないが、自分一人しかいない雰囲気のよいピークを満喫した。時間と体力が厳しければピパイロまで行かずに引き返そうと思っていたが、なんとか行けそうなので先に進むことにする。
今日の目的地ピパイロ岳は1967峰のすぐお隣の山。しかし、ピパイロとの鞍部を見下ろすとはるか下にあり、とにかくやる気をそがれる。あとのことは考えずにもう無心になって下ってゆくだけだ。鞍部までの下りは全く藪がないが、そこから先は絶望的なハイマツのヤブだ。ピパイロの肩が目の前にあるのに全然近づかない。体力的にもかなりきつく、ヘロヘロになって肩に到着した。驚いたことにここで2人の人に出会った。私と同じで北戸蔦から来たそうで、これから戻るそうだ。ピパイロの肩まで来てほぼ満足だった私はここで引き返そうと思っていたが、ここからピパイロのピークまでは道は楽だそうだ。そのアドバイスに引きずられ、結局ピパイロのピークを目指すことにした。
ピパイロ岳は学生時代以来で実に24年ぶり。当時は伏美岳の登山口から尾根伝いに到達した。今回で伏美岳登山口から幌尻岳ピークまでつながったことになる。日高の稜線の足跡がつながると他の山域よりも数倍うれしいものだ。
テントを張ったP1856まで日没までに頑張って戻らねばならない。1967までが本当にきつかった。1967でポンチロロ川を遡行してきたパーティがテントを張っていた(私の見間違いでなければ、道内の沢登りでは有名なganさんのパーティではなかろうか…)。私がもともと登るルートだったのでうらやましかった。皆さんとても充実した表情で満足そうだった。やはり沢を登るには複数人数じゃないと厳しいし、楽しくないだろうなと思った。そこから少し先でピパイロ肩でお会いした2人組に追いついた。北戸蔦まで戻るとすると、もう真っ暗だろう。お気をつけてと別れた。
ここから先、天気が急速に回復し、夕陽の斜陽のなか、充実したハイクを楽しむことができた。この連休、わざわざ日高まで来て本当に良かったな〜と思えた時間だった。最後は日没と競争になったが、無事P1856に戻ってきた。思わず「やったー」と叫ぶ。延々12時間の戦い、一日で幌尻とピパイロをやっつけた。疲れたが充実感でいっぱい。同じ場所にテントを張った二人が「ピパイロまで行ったんですか?」と歓迎してくれたのもとてもうれしかった。
‐‐‐
9/21(月) 晴れのち曇り: P1856〜北戸蔦別岳〜二岐沢出合[下山]
明け方に結構雨が降ったので、あえて寝坊する。重責はすでに終え、どうせ今日は下山するだけだ。北戸蔦までは例のハイマツの激ヤブをまた通過するが、雨も降っていないので昨日より楽だった。北戸蔦で30分も休憩し最後のパノラマを満喫する。やはり戸蔦別から幌尻岳の稜線が素晴らしい。思わずまた歩いていきたくなった。額平岳との鞍部で昨日ピパイロでお会いしたご夫婦がテントを片付けているところに再会。昨晩はヘッ電歩きで無事テントまで戻ったそうだ。1856から北戸蔦までのヤブ難路を無事に戻れたかどうか、心配していたのだ。よかったよかった。
その後も順調に下り、登山口まで無事戻ってきた。完璧な晴天とはいかない3日間で予定していたポンチロロ川の遡行もお預けだったが、日高のエッセンスは十分に堪能して登山を終えることができた。やはり日高が好きだと再認識させられた日々だった。
おしまい。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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triglavさん
ごぶさたしております。
chiroro_から改名のro-shonenです。
年齢的にも本当の老少年になってきました。
今年6月に計画した北戸蔦別岳〜幌尻岳は天候不順により直前に中止し、ようやく秋色に染まっているだろう日高の山への出発直前になりました。
最近の記録をを思ってチェックするとtriglavさんの記録を拝見することができました。大いに参考になります。
七ッ沼の水場(湧水)から水が得られるとは助かります。
2012年に七ッ沼に下りたときは何とかなるかなというような水量でしたが、つい最近の確かな情報はありがたいことです。
今回、ペテガリ岳や1839峰も候補に上がっていたのですが、寒い時期の藪は鬱陶しいなということで北戸蔦別岳〜幌尻岳に落ち着きました。
日高の山は何度登ってもいいですね。日高の山とヒグマは切っても切ることが出いない自然情景の一つですが、ヒグマとはわざわざ出会いたくない
ものですね。
ro-shonenさん、ご無沙汰してます。
北戸蔦から幌尻まで行かれるのですね。先週も紅葉は始まっていましたが、最盛期はもう少し先という感じでした。10月上旬頃が多分一番良いときではないかと思います。4連休も終わったので、静かな山行が味わえるのではと思います。
今北海道でも結構な雨が降っているようですので、七つ沼の湧水は恐らく月末でも大丈夫じゃないかと思います(秋ではかなり珍しいのでは…)。
七つ沼での幕営も良かったですが、戸蔦別の北戸蔦寄りにも良いサイトがありました。戸蔦別岳と、額平川下降点の中間くらいだと思います(ひょとすると既にご存知かもしれませんが…) 戸蔦別カールの真上にあり眺めはよく、日高側からの風も避けられる良い場所でした。
是非ご安全に楽しんでください。レポートの方、楽しみにしております。
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