地蔵杉〜長老ヶ岳〜仏岩〜和知富士:丹波高原の霧氷の回廊へ
- GPS
- 08:34
- 距離
- 17.9km
- 登り
- 1,310m
- 下り
- 1,431m
コースタイム
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
地蔵杉の西尾根は岩場のナイフリッジあり、積雪期は危険箇所となる |
写真
感想
先週の半ば、北日本から北陸地方に記録的な大雪をもたらした強い寒波は関西の北部においてもあそれなりの雪を降らせた筈だが、その後は12月とは思えぬ暖かい日が続いたせいで、山々の雪も急速に融けたことだろう。それなりの積雪と霧氷が期待できるような雪山はどこかと考え、いくつかの山行先を悩んだ挙句、長老ヶ岳を選択する。折しも丹波の北部は前日の夜から降雪の予報である。
この長老ヶ岳に登るには北の仏主、南の音海から登山道が通じているが、地蔵杉から長老ヶ岳を経て和知富士へと至る尾根を縦走することを考える。この尾根は若丹国境の頭巾山から南に延びる長大な尾根の南端部に相当する。春に頭巾山から天狗畑を経て洞峠まで縦走したところだったので、洞峠よりも南の尾根を踏破したいと思っていたのだった。
登山口となる仏主への京丹波町の町営バスは日曜祝日は運休であり、平日に休みを取らない限りここにアプローチするのは土曜日に限られる。この仏主は地理院の地図では「ほどす」と読みがなが記されているが、読みがながなければ読めない難読地名である。
山陰線で北に向かうが周囲の山々にも全く雪が見られない。和知の駅に到着するとすぐに仏主行きのバスに接続する。バスに乗り込むと運転手が申し訳なさそうに話す「ご存知でしょうか、本日は土曜日なので帰りの便は・・・」
「了解しております」
「ここに来られる方は皆さんよく調べておられるのですが、念のためと思いまして」
土曜日は運休となる便が多いのだ。
出発予定の時間になってもバスが出発する気配がない。運転手によると乗客が乗降することがないために予定時刻に出発すると予定時刻よりも早くバス停を通過することになってしまうらしいのだ。とはいえ、この駅以外で人がバスに乗車することは滅多にないらしいが。
駅の周りは全く雪が見当たらないが、運転手に聞くと山の上の方はかなりの雪があるとのこと。バスが出発するとすぐにもあたりは濃霧が立ちこめる。山の上からは雲海が見えることだろう。河の右岸の物々しい採石場を過ぎて仏主の集落に近づくとあたりは突然、一面の雪景色に変わる。先週の大雪の直後では仏主のあたりは30cmほど積雪していたとのことである。
バスを降りて林道を奥へと進む。アマゴの養殖場とバーベキューのための建屋があるが、営業をしている気配は感じられない。谷の奥の出合からその間にある尾根に取り付く。植林の急登をひとしきり登るとすぐにも尾根は緩やかになり自然林が広がる。
P?で小さなコルを挟んで北側の尾根に乗り換える。尾根の右手の斜面には広い切り開きがあり、正面に長老ヶ岳の山容が大きく広がる。左手には地蔵杉からの長い尾根道が続いている。
尾根には梢の高い自然林の疎林が広がる。下生がほとんどないせいだろう、
少し尾根を登ると唐突に林道の終点に出る。林道の上からは洞峠を挟んで北側の天狗畑が間近に見える。着雪した樹林が雲の間から差し込む光に白く輝いている。尾根を登るにつれて天狗畑の彼方には青葉山と思われる山が姿を見せるが、山々の上には重苦しい灰色の暗雲が広がっている。
このあたりになると尾根上の木々は着雪が見られなくなる。風が強いせいだろうか。足元の雪も湿り気が少ないような気がする。しかしわずかに高度が上がると樹々のシルエットが白くなる。霧氷の樹林が始まったのだ。尾根上には立派な山毛欅の樹林となる。霧が気まぐれに樹林の中を彷徨う。
ジャンクション・ピークで南に大きく向きを変える。鞍部からわずかに登り返すと地蔵杉のピークだ。地蔵杉という山名からは杉の樹が多いことが予想されるが、杉の樹はほとんど見当たらない。杉があったのはかなり昔のことなのだろう。地蔵杉への東側に見える山が白く霞んでいる。雪雲が近づいてきたようだ。山頂からは東側が開けているが、眺望は全くなくなった。
地蔵杉から長老ヶ岳へ向かう尾根は山頂から西へと伸びているが、西側斜面はかなり急峻な斜面である。夏道は尾根を一度南に下ってから、斜面をトラバースして尾根に乗るようだ。南尾根を下ると広い伐採斜面の上部に出る。大岩山、向山など長老ヶ岳の南側に広がる山々の展望が大きく広がるが、通り過ぎてゆく雪が眺望をわずかに遮る。
伐採地からは地蔵杉の西側斜面をトラバースして尾根に乗る。下生のない植林の斜面は急斜面ではあるがトラバースにさほどの困難はない。おそらくどこかに夏道があるのだろうが、雪に埋もれた夏道を見つけることは出来ない。斜面を無事トラバースして目指す尾根を捉えると、すぐにも思わぬ困難が待ち構えていた。
目指す尾根はかなりの痩せ尾根であり、小さな岩峰が目の前に立ちはだかる。地図には現れないいわゆるヒドゥン・ピークと呼ばれるものだ。岩場はナイフリッジとなり、展望は良いのだが、眺望を楽しむ余裕はない。霧氷をまとった樹を掴みつつ、慎重に岩場を通過する。このような岩場が連続したらどうなることかと思ったが、幸いにして難所はそれほど長くは続かない。
苦あれば楽ありだ。先ほどの岩場のナイフリッジはなんだったのだろうと思うほど歩きやすい自然林の尾根が広がるようになる。
尾根上のピークca850mでようやく柔らかな日差しに照らされた長老ヶ岳への稜線が視界に入る。いくつもの小さなピークの先に大きなピークが長老ヶ岳のようだが、山頂部分のみに灰色の雲がかかっている。意外にもアップダウンがあることに焦燥を覚える。地蔵杉から長老ヶ岳は安易にたどり着けるものかと思っていたが、それは地図を注意深く読んでいなかったことによる皮算用であった。
長老ヶ岳が近づくと、再び山頂にかかる雲の中へと入ってゆく。手前のピーク、p831では雲が薄くなり、一瞬、長老ヶ岳の山肌が姿を見せると、斜面の白銀の霧氷が視界に飛び込んでくる。おそらく長老ヶ岳のあたりは丁度、風の通り道になっているのだろう。このピークとさほど標高は変わらないところでも樹々の霧氷の様相がまるで異なる。
鞍部では再び林道が現れ、小さな四阿がある。ここで軽くランチをとり、ピークへの最後の登りに備える。
長老ヶ岳、一瞬、青空が覗くが、すぐに白い雲が上空を覆う。長老ヶ岳からは先は尾根を下るだけ、と思っていたのは甘かった。音海への登山道への分岐となるp884にかけて、高度はほとんど下がらことなく、霧氷の回廊が続いている。尾根は随所に展望が開けているようだが、残念ながら眺望は全て白い雲の中だ。
p884からは晴れていれば音海展望台に立ち寄りたいと思っていたが、展望台からの眺望も全く期待できそうもない。諦めて先に進むことににする。南側は植林であるが、西に気持ちの良さそうな自然林の霧氷の尾根が続いているので、霧氷の尾根へと入り込む。しかし、どうも様子がおかしいと思って地図を確認すると、先へ進むには植林の回り込んで、南に進む必要があるのだった。
植林の縁を辿るとついに樹々の霧氷は消える。次第に尾根は痩せ尾根となり、ここでも岩場が現れる。岩場を下降するにはスノーシューは到底無理だ。スノーシュー を脱いで、三点支持で岩場を下降する。無事、岩場を下降し、再びスノーシューを履いたところでふと気がつくと先ほどまで携えていたトレッキング・ポールが無い。視線を上に向けると岩場の上の樹に立てかけてあるのが目に入る。再度、岩場をと登り降りする。
p822にかけて尾根を登る、ようやく雲の下に出たようだ。南側には随所に展望が広がるようになる。送電線鉄塔を抱いたピークは大岩山だろう。その右手の彼方には愛宕山のシルエットが見える。尾根の先にはまだまだいくつもの小ピークが連なっている。アップダウンを繰り返し、仏岩に到着する。
和知富士からの尾根は大きく南に向きを変える。南斜面のせいか、和知富士からの下りは急に雪がなくなり、ついにスノーシューを脱ぐ。濡れた木の葉の堆積した斜面は滑りやすい。足を滑らせて手を思わず左手をついたところが鋭い岩の上だった。直後に手掌に鋭い痛みを感じたので、手袋を脱いでみると、数センチに渡って手の皮が剥けているのだった。
痛みを我慢しつつ、滑らないように気をつけながら急下降の尾根を下る。急に西の空が晴れて、空には黄金色の夕空が広がるようになる。夕陽の写真を撮ろうとカメラを取り出すが、レンズが曇っており、写真が撮れない。p386を過ぎて、送電線鉄塔にたどり着いたところで丁度、西側の三峠山の肩に夕陽が沈むところであった。
送電線鉄塔からは送電線巡視路の歩きやすい明瞭な道が続いている。最後は獣避けのフェンスの扉を開けて、府道に降り立つとすぐに大迫のバス停がある。時刻は17時前、なんとわずか二〜三分前に和知駅行きのバスが通過したところだった。和知駅まで歩くつもりであったが、和知駅発の山陰本線は17時半過ぎの京都駅行きには間に合わない。次の列車は1時間以上後である。
しかし、わずかに500mほど歩いた次のバス停の篠原では仏主からのバスがあることを思い出す。待合小屋のある篠原のバス停に着くと10分ほどでバスが来る。バスは一瞬、バス停を通り過ぎようとする。バスに乗り込むと朝とは違う運転手であった。「薄暗くて見えなったもので・・・」と申し訳なさそうに言う。おそらく滅多に乗客はいないのだろう、それは無理もない、気がついて頂ければそれで十分である。バスは丁度、JRの列車に接続しており、和知駅発の山陰本線に間に合うように駅まで運んでくれるのだった。
コメント
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二年前の新緑の季節に、三楚〜仏主峠〜地蔵杉〜西尾根〜三楚の周回をしました。
仏主峠から地蔵杉はアップダウンが多く、地蔵杉直下のナイフリッジの岩場を慎重に三点支持で渡ったのを覚えています。また地蔵杉南尾根は激登でした。雪が付いた岩場は大変だったでしょう。そんな難所を積雪期に歩かれるとは…。
流石yamanekoさんです 👏。想像しただけでも足が震えます
地蔵杉の過去レコは少ないのでnaojiroさんのレコはすぐに出てきますね。naojiroさん達が辿られたコースは地蔵杉の南西尾根になると思われますが、地図の等高線の込み具合から判断する限り、ここを下るのは大変そうですね。それにしても三楚からの周回とは渋い周回ルートを歩かれましたね。
長老ヶ岳、地蔵杉はまた季節を変えて歩いてみたいと思います。
確かに冬の季節はこのナイフリッジの通過が難易度が高いと思います。
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