北アルプス/爺ヶ岳〜鹿島槍ヶ岳
- GPS
- 32:00
- 距離
- 20.0km
- 登り
- 2,144m
- 下り
- 2,144m
過去天気図(気象庁) | 2012年07月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
北アルプス/後立山エリア/爺ヶ岳と鹿島槍ヶ岳 原新道登山口からピストン テント泊
with climb-like氏
雨続きの休日…今年は残雪が多いといわれるアルプス山域…とマイナス要因が多く、出遅れてる感がハンパない今シーズンですが、
今回の日程の天気予報は確実に晴れ!(降水確率20%)
梅雨明け宣言!
まさに夏山シーズン到来!
のはずが…。
7月23日(前日)
22:00
私の車でK氏宅まで迎えに行きました。
東海環状自動車道の豊田東ICから中央道を経由して長野道の豊科ICまで高速道路を利用しました。私の自宅から扇沢の柏原新道登山口まで、ナビが算出した総距離は300Km弱。意外に近いですね。
扇沢エリアに行く事自体が初めてで、駐車事情が全く分からないので早めに出発して現地で仮眠する予定にしました。
豊科ICを夜中に降りるとガソリンの給油に困るということだけはこれまでの経験から知っていたので梓川のSAで給油しておきました。私の車は軽自動車なので、燃費と高速料金はお得ですが、燃料タンクのキャパシティが少ないので給油に苦労します。今回、豊科ICから扇沢に向かう間に存在したガソリンスタンドは予想通り全滅でした。同じような環境の方はこのあたりに注意が必要です。
扇沢に続く道の入り口にあるセブンイレブンが最終の食料調達ポイントです。ここは24時間営業なので安心です。
7月24日(1日目)
2:00過ぎ
柏原新道の真ん前の路肩駐車場に到着しました。ここにはトイレがありません。朝のお勤めが必須の私としてはここが唯一の不安材料でした。柏原新道の前後には大きな路肩や無料駐車場が点在しています。日本中から観光客が押し寄せる「扇沢」…「夏山シーズン」…「梅雨明け直後」…というキーワードから「平日」という条件を差し引いたとしても、駐車ポイントの空きスペースが多かったので、余裕をブッこき、とりあえず全駐車スペースをスルーして扇沢駅にあるトイレに向かいました。ここのトイレは夜中でも利用できました。省エネのための夜間消灯で、暗闇の中スイッチを探すのに苦労しましたが無事にお勤めを果たすことができました。管理者の方、どうも有難うございました。
それから登山道の真ん前の路肩駐車スペースまで戻り、無事ピットイン完了しました。
ちなみに扇沢駅にも少し離れた場所に無料スペースがあります。そこから柏原新道の登山口まで徒歩でも行くことができますが距離は微妙です。
そして6時半に目覚ましをセットして仮眠しました。
6:30
起床。外はあいにくの曇天ですが、この時点では
「これからどんどん青空に変わっていくでしょう!」
としか思っていなかったので、憧れの扇沢に来ているという実感からテンションはMAXでした。
<柏原登山口〜種池山荘>
7:25
気温22℃ 気圧869hpa 高度1350m
登山口に設置された仮設テントの係員の方に登山計画書を提出していよいよ出発しました。
仮設テントをスルーして、その先にあるポストに投函しようと思っていたら係りの人に呼び止められ、登山計画書の提出を促されました。どうやらここは届けの提出が必須のようです。
私は自宅でプリントアウトした届けを渡しただけですが、元々持参していなかったグループは備え付けの用紙と筆記具で一生懸命記入していたようです。
登山道に入ると、道は九十九折になっていて、高度を一気に上げていく感じでした。
林道などでアイドリングしないまま、寝起きで歩き始めるにはややキツ目かも知れません。
このような感じで最初のチェックポイントである爛吋襯鶚瓩泙播个蠅泙后
足場は良いですし、適当な距離をおいてベンチや2.3人なら休憩できるスペースがありますから歩きやすいと思います。
狷鮫甅犂波牒甅爛戰鵐銑瓩寮鞍も良く、ここを切り開いたと思われる柏原さんの愛情と情熱を感じます。人通りが多いにも拘らずゴミも落ちていなかったので、登山者のモラルもそれに答えているかのようでした。良い道です。
7:55
八ツ見ベンチで5分小休止
八ヶ岳が見えると言うことが由来だと想像されましたが、生憎の天気で全く見えませんでしたし、方向が違うような気もしたので一生懸命探しはしませんでした。
8:25
ケルン通過。
実はケルンを通り過ぎてから、そこがケルンと言われる場所だと気付きました。
ケルンの手前で谷側が草付の急斜面になっており、足場も細いので混雑時にはすれ違いに時間が掛かりそうです。そんなことを考えていると、この状況を何かの書籍で読んだことを思い出しました。しかし、この日は平日だったので人が少なく1組とすれ違っただけなので楽勝でした。
ケルンはその狭い道の末端に有るのですが、1m無いような高さですし…ひとつですし…小ぶりですし…ケルンの前で休憩されている方に隠れて気付かなかった程です。
ケルンを過ぎると傾斜が随分緩くなり、
狎仂み甅狄緤親鮫瓩覆匹隆波弔付けられているのでしっかり調べてからここを歩けば現在位置も明確に把握できると思います。
ケルンを過ぎると前方の尾根上に種池山荘も見えてきます。初見は近くに見えますが、道は右側の斜面に沿って湾曲したコースを辿るので実際に歩く距離は数倍かかります。
高度2000mを越してくると登りに体も慣れてきて、まだ見ぬ稜線からの景色を期待する気持ちでテンションは高まります。
途中で一回休憩し、さらに進むと5m幅と10m幅の雪渓が横切ります。10m幅の方は手前に落石の心配のある10mほどの細い道があり、ここが最大の要注意ポイントだと思いました。
そこをクリアし、ほぼ水平の道から稜線へ続く短い急登を抜けたら
10:24
種池山荘がありました。
予約してある訳でもないのに、山荘のおねいさんが窓からわざわざ顔を出して
「こんにちはぁ!」
と声をかけてくれるとても気持ちの良い山荘です。
建物の前は広場になっており、いくつかのベンチもありますし、谷側の石垣に腰掛けて休憩することもできるので、ここを通過するだけの人にも大変よい場所です。
建物に向かって左に木のテーブルベンチセットが2つあり、その左が犲鐫哭瓩箸い小さな池です。
1周10m弱くらいの小さな池です。水芭蕉が一輪だけ咲いていたので和みました。
ここで30分過ごしました。
<種池山荘〜冷池山荘>
11:11
種池山荘をあとにして、本日最初のピークである猝譽岳北峰瓩妨かいました。
相変わらずの曇天で
「いつになったら晴れてくるんですかねぇ〜…?」
この頃はまだそんな呑気なことを言っていました(笑)
雲の色は白かったので、雨が降るとは思いませんでしたが前日の北陸・金沢の平地天気予報の「晴れ・降水確率20%」がずっと頭にあったので、天気が快方に向かうことに以外は考えられませんでした。※冷池山荘のホームページによると天気予報は「金沢」を参考にするとよいとのこと。
しかし、私の頭上では低い雲の塊が無限に流れていきますし、更に上空にはびくとも動かないうろこ雲も広がっていました。稜線に対して左側(北ア最深部方向)からどんどんガスも湧き上がっては右側(大町・信州方面)に滝雲となって足元を流れていきます。
爺ヶ岳は3つのピークで構成されています。
南峰26??m、中峰2669m、北峰2631mとなっており、一般登山道は稜線よりやや下の西側を通っています。それぞれのピークに立つには登山道から数10m更に登る必要があります。
北峰までの道のりは長いですが、傾斜は緩やかですし、幅も広いし、両側共に切り立ってはいないので安全かつ快適に歩くことが出来ます。
11:50
爺ヶ岳北峰に立ちました。
地形図にも高度は記載されていませんし、現地で高度を表記したものを探さなかったので高度は不明としておきます。
本当なら、北方に犲島槍ヶ岳瓠沈省に猯山と剱岳瓠墜酳に針ノ木岳から北アルプス南部…穂高の峰々が見えるハズでしたが…
「なぁ〜んにも見えないっスね…」
「…はい…」
という残念なタイミングでした。
でも、
「明日は、太陽が嫌になるくらいの天気に違いないですから展望とか写真とかは明日に期待しましょう!」
「はぁ〜いっ!!」
と、まだモチベーションは高い位置をキープしていました。
一旦登山道まで戻って、爺ヶ岳の最高地点である中峰方面に歩き出しました。
南峰から中峰は比較的近いです。
中峰の取り付けは迷わずスルーしました。ガスに包まれていたので何も見えないし、天気の良い明日登ればよいと思ったからです。
ここが本日の最高所となり、あとは下りを残すのみです。今日の宿泊地である冷池山荘テント場に向かって歩き始めました。北峰には最初から行く予定はなかったので、この辺りから
猯笋燭だ献咫璽覘
牾擇靴ぅ謄鵐叛験茘
璢採錣雰岳の夕景
これが頭の中をグルグル廻っているだけの
ノーテンキ脱力自動歩行に切り替えていました。
そんな時、先行のパーティーが立ち止まっていました。その先にはすれ違う別のパーティーがスタンバイしていました。両パーティーはハイマツの細い道を譲り合うかのようにお見合いをしています。我々がどんどん近づいても一向にその均衡は破られませんでした。
「……?……」
我々がかなり近づくと先行パーティーがやっと先に進みました。
我々は対向パーティーに先に言ってもらおうと
「どうぞぉ〜!」
と言うと
「雷鳥がいますよぉ〜!」
と教えてくれました。
…そういうことか。
さらに
「お先にどうぞっ!」
と美味しいところをパスしてくださったので、お言葉に甘えてハイマツ畦道のすぐ横でくつろぐ雷鳥を見ることが出来ました。
K氏は素早く一眼レフを取り出し、構え、無心にシャッターを切っていました。
その時、ハイマツの中からかわいい子供の雷鳥が2匹出てきました。
ひょこひょこ…ひょこ…
「こ・ど・も・も・イタアアアアアアアア!!!!!!」
クールな私も流石にテンションが上がりました(笑)
毎シーズン必ず雷鳥は見ますが、子供と親が遊んでいるのを至近距離から見るのは初めてです。
ゆっくり先に進みながら写真を撮っていると、子雷鳥は我々と反対方向に登山道をひょこひょこ歩いていき、その先に別のパーティーがいることに気づくと身を翻して飛び立ち、一気に我々の背後まで移動しました。
「KAWAEEEEEEEEEEE!!!!!!」
まるまると太った雀の様な容姿で、短い羽を目一杯広げてパタパタさせていましたが、機能していませんでした。飛ぶと言うよりも大ジャンプする感じで懸命に動くその姿はカワイ過ぎます。「萌え」とはまさにこのことだと思いました。
そのあと、ずっとスタンバイしてくれた対向のパーティーにお礼を言って、通り過ぎましたがなかなか興奮が覚めませんでした。
中峰から北峰を過ぎ、冷乗越までは以外に遠く感じました。ガスが濃かったので冷池山荘があとどれくらい離れているのか見当もつかず、冷乗越を通り過ぎる時に地形図で確認すると、地図上では目と鼻の先でした。
「もうすぐですよ!」
と後ろのK氏に声を掛けて、もう一度前を向くと、ガスの切れ間から本日お世話になる猯簔啝柿餃瓩姿を現しました。
13:05
山荘の受付に到着しました。
<冷池山荘>
テント1張り2名で1000円。500円づつです。
私は勿論待望の生ビールをオーダー。受付でビール券を購入し、登山道と共用の通路にあるビール受け渡し用の窓から魅惑の液体が注ぎ込まれたジョッキを受け取ります。
さらに水販売用の窓から水3ℓを購入し、広場の木のテーブル&ベンチセットでビールを飲みました。
「ぷふぁ〜!」
これだから山は止められません。
高所でアルコールは良くないと分かっていても…。
おそらくこれが一因となって毎回高山病と思われる頭痛に悩まされるとわかっていても…。
近頃は自宅でも飲まないのに…。
アホですね。実際。
一気にジョッキを空にして、少しクラクラしながらテント場に向かいました。
冷池山荘のテント場は小屋から徒歩10分離れています。
しかも、小屋を出てすぐに東側が崖になった細い山道を通過しなければなりません。
テント場にはトイレも水場もありませんから、暗くなる前に全て済ませる必要があると思いました。ビールで軽く良い気分になりかけていましたが、少し血の気が引いてビシッと気が引き締まっていきました。それぐらい爐笋箚躙鵜瓩淵▲廛蹇璽舛任后
そして、崖の先の短い急登を登りきるとハイマツが無くなり、テント場が広がっていました。
一足先に場所取りをしてくれていたclimb-likeさんが良い場所をキープしてくれていました。
受付で貰ったお札は1番でしたが、先に2張りほどテントがありました。
何故、K氏が先に場所取りしてくれていたかと言うと。このテント場は恐怖の爛淵淵瓩辰討襯謄鵐半讚瓩世らです。
ナナメってる場所でテントを張ったことのある方でしたら想像はつくかと思います。
水平でない寝床は寝付きが悪いですし、何より恐怖なのが、
目覚めるとテントの壁に張り付いている!
という点です。
しかも、今夜はおっさん二人のテント生活…。
怖くないっすか?起きたらオッサン二人が密着していたら…(笑)
でも、K氏が良い場所をチョイスしてくれていたので比較的水平で、風の影響を受け難かったです。
ハッキリ言いましょう!
「このテント場で完璧に水平にテントを張れる場所はないっ!」
であると。
ほぼ水平が5箇所以下。何とか寝付けそうだけど張る方向によっては朝方には壁に密着しそうな場所が更に5箇所。その他は相当なテント生活上級者でないと眠ることさえできそうもない…と私的には判断しました。ある程度は土を削って水平にする努力をしているスペースもありますが、そういう場所は一人用の200×100のシングルウォールテントしかまともに張れなさそうでした。ただ、綺麗に保たれていますし、晴れていれば1級の猯山・剱岳瓩療庫沼罎任垢ら需要はあるのでしょう。
そう…晴れていれば…。
私たちがテントを張り、生活用品をテントの中に展開した頃も、次々に剱岳の方からガスが流れ込んできて、広くもないテント場を見渡すがやっとのレベルでした。
この日は他に4張りのテントが設置され、計5張り。おそらく全テントの方は比較的水平なスペースで快適にお休みになったと思います。
15:30
アナログ気温計を確認すると24℃。ここの標高が2400m強ですから
「平地はさぞ暑かろうて・・・」
などと考えながら、テントの中で横になったり、晩御飯に使うものを出したり、明朝出発する時に持っていく装備とテントに置いていく物を仕分けて過ごしました。
17時を過ぎた頃、お湯を沸かして夕食の準備をしました。準備と言ってもアルファ米1人前と
カップヌードルリフィルに注ぐ分440ccとテルモス用の爐い弔任眞箸いモノが飲めるようにキープしておく為のお湯瓩鮑遒襪世韻任后最近はもっぱらアルファ米1択です。個人的には美味しく食べられるので必要充分ですし、余計な鍋も必要としないのでコンパクト&軽量化に随分貢献してくれています。
18時頃、立山・剱岳方面が急に明るくなってきました。といっても日は沈みかけていましたので昼間のような明るさは無いですが、出発からずっと曇天に包まれていたので妙に明るく感じました。
K氏は、待っていましたと言わんばかりに1眼レフを取り出し、三脚をセットし、貪るようにシャッタトーを切り始めました。そう、それは
相愛の男女のたがが外れ、激しく求め合うように・・・。
・・・・・・そんな勢いでした(笑)。
私このチャンスに鹿島槍ケ岳方面を偵察に行きました。
明朝は1時に起きて2時から歩き出す予定です。真っ暗闇の中初めての道を歩く訳ですから危険箇所を把握しておきたかったのです。
寝る時用のウールのアンダーウェアを着ていたので、汗が出てこない程度に片道数百mくらい先まで歩きました。1歩間違えば死んでしまいそうなほど危ない箇所はありませんでした。ヘッデンだけでも安全に歩けそうでした。こういう偵察には単眼鏡が役立ちました。
その後、すでに薄暗くなっていましたが本日最後のトイレに行きました。冷池山荘の外のトイレは非常に管理の行き届いた綺麗なトイレでした。
テントに帰って、寝袋に入ると直ぐに寝てしまいました。
<冷池山荘テント場〜鹿島槍ケ岳南峰>
1:00
テントの中で携帯電話のアラームを目覚ましに起きました。端末の電源を落としていてもアラーム時刻に自動で起動するから便利です。
珍しく夢も見ずに爆睡できました。頭痛もなしっ!
これは昨日の日中から意識的(なかば強制的に)に水を飲んだり、夕方ポカリスウェットの粉末を溶かした水500ccをゆっくりと飲み干したからだろうか?
フライシートのファスナーを開けて外をチェック。
「・・・星出てますよKさん」
そう小声で言いながらもすこし白く霞んでいるのが気になっていました。寝起きなので目が機能していないかとも思い、目を擦ってしっかり凝らして見てみましたがやっぱり・・・今日もガスに包まれています。でも、歩行に問題あるとも思えなかったので、できる限り音を立てないように出発の準備や着替えをして、
2:10
冷池山荘のテント場を出発しました。
テントは張りっぱなしです。
鹿島槍ケ岳で折り返して帰ってくるので、泊まり専用装備は置いていきました。
さぁ、人生初の森林限界以上での夜間歩行です。スキューバダイビング免許の爛▲疋丱鵐広瓩任睫覺崟水という科目があるくらいですから、山歩きも夜間をこなせば経験値が上がるような気がします…多分…。
「水中よりは安全だろ・・・?」(スキューバの免許は持ってないですが)
と心の中でツブやきながらゆっくり確実に進みました。正直ひとりでは狄肝邯従歸瓩憤嫐でも心細いですが、K氏と2人だと安心です。それなりに一緒に山を歩いてきましたし、知り合ってそろそろ10年近くなります。
いつもは猖が一瓩諒欷荏備として携行しているヘッデン(ヘッドライト)も今日は大活躍です。やたらと頼もしい(笑)。テント生活でも使いますが、いつも日没後は寝袋の中なので大して使いません。でも今回は電池交換というスキルアップチャンスもありそうです。
2:50
布引山のピークに立ちました。
まだ辺りは真っ暗です。むしろ遠く離れた大町や新潟?富山?の夜景の方が明るいです。
山頂に寝転がって流れ星を見つけようとしましたが、今回は見ることは出来ませんでした。K氏は見つけたそうです。くやしい。
今日の日の出時刻は4時48分なのであと2時間近くあります。
早く着き過ぎてしまいました。
ここから鹿島槍ケ岳南峰のピークまでは標準コースタイムで50分です。
少し時間調整しようかとも思いましたが、立ち止まっていると寒いのでゆっくり先に進むことにしました。
南峰の斜面に取り付いた頃、足元はまだ暗かったですが、遠くのスカイライン付近は青くなりかけていてすごく綺麗でした。剱岳のシルエットも鳥肌モノにカッコ良く、
「このコースに来てよかったなぁ〜・・・」
と感慨に浸りながら歩きました。
高度が増すのと比例するように日の出てくる方向が明るくなってゆき、景色が少しずつ見えてくるようになりました。
どうやら今日こそ好天に恵まれそうです。
3:53
まだヘッデン無しではちょっと歩けないくらいの明るさの中、鹿島槍ケ岳南峰2889mに到着しました。山頂スペースは100人近く休憩できそうなほど広い空間でした。でも、
「風強ぉっ!」
「そして・・・寒っ!」
写真を撮るにはまだ暗かったので、風の当たらない岩影に荷物を降ろし、雨具の上下と化繊のベストを着込んで座り込みました。
少し落ち着いてから、北峰の方を覗き込んでみましたが暗くて全容が見えませんでした。こちら(南峰)の方が随分高度があったので、朝日を撮影するスポットをここに決めました。
私はテルモスに入れておいた白湯で体を温めながら、ゆっくりと朝日に照らされていく後立山連峰南部方面を眺めていました。K氏はやっぱり貪るように写真を撮っていました。
とにかく寒かったので、白湯を飲んで内臓を暖めては風裏の岩陰から強風のピーク広場に飛び出して、北方の白馬三山方面の稜線や東方の北峰やそこから連なる八峰キレット・・・西方の立山や剱岳も綺麗に見えていましたが、写真を撮ろうとカメラのシャッターを切っても、光は足りないし・・・強風で安定しないのでブレブレ写真しか撮れない・・・。
景色を見ようにも寒すぎて集中できず・・・。
冬期の様にこの風で死んでしまうとは思いませんが、
「このままでは風邪を引く・・・」
と思えてくるので、また岩陰に隠れて白湯を飲む・・・。
そんなパターンの繰り返しでした。
日の出時間になって景色はすっかり明るくなりましたが、東の地平線に停滞する雲に隠れてハッキリとした日の出は見えず・・・。
もう限界でした・・・。
ちょうどその時、K氏に
「北峰行きます?」
と聞かれました・・・。座り込んでいるよりも歩いた方がマシかと思いましたが、
ちょうどその時、
「ぐるるるるぅ〜」
私の内臓の最深部で熱いマグマのウネリが・・・。
「はうっ!!!!」
「・・・・・・」
「すいません。ちょっとお先に下山します。のっぴきならない用事ができたもんで・・・」
5:18
一足お先に下山を開始しました。
ちょうど登ってこられる方たち何人かとすれ違う度に
「山頂に青いザック(K氏の)がデポしてありますが、ツレが北峰に行っていますので気にしないでください」
と伝えることが精一杯で、ほとんど記憶にありません。
森林限界でのビックウェーブ(腹痛)ほど強烈なプレッシャーを受けることは他にありません。
だって、物陰なんて無いし・・・。
朝日の中をさわやかな表情の登山者がどんどん歩いてくる・・・。
有るのは膝の高さのハイマツ帯だけで大きな岩も無い・・・しかも山荘まで標準コースタイムで1時間半!
どうする俺!?
<鹿島槍ケ岳南峰〜冷池山荘>
AM6時前後
この日、テントで起きてから1度もトイレに行っていなかったので、当然のように生理現象が発生しました。
日に出前の山頂で寒さに震えている時はあまり気になりませんでしたが、日出(ひ、いずる)と共に今度は私からイズリタイ者が騒ぎ出しました(笑)
ここは標高2600m以上…森林限界以上の日本北アルプスの稜線上です。
人口建造のトイレなんてある訳がないですし、茂みすらほぼありません。
「やばい…やばすぎる…。」
私も今年で40歳です。
事故を起こすわけには行かないのですっ!
「…でも、どうしよう…。」
これから冷池山荘に到着する前に必ずXデーは来てしまうでしょう…。
山荘より手前に、背丈ほどの樹林帯が少ないながら有ったはず…。
でも、そこまでも1時間弱掛かりそうだし…。
考えろっ!どうするベキか…。
チッチッチッ…チィ〜ンッ!
「そうだっ!絶好の茂みがあったハズだっ!」
ここで思い出したのが、山頂までの往路で目星をつけておいたトイレスポットです。
この時、私の脳の計算処理速度はスーパーコンピューター犁瓩防づ┐靴討い燭隼廚い泙后並進)。
いつもは見渡しの良いこの森林限界の稜線歩きが楽しくて苦労して登ってくるのですが、もう出口までアイツが降りてきている今となっては、茂みの無さがひと目で確認できるこの稜線の景色がウラメシい…。一箇所、地形の関係でこの場所から見えない窪みの底にオアシスが必ずあると信じて内股かつ早足で下りました。往路で見つけた場所がそこになければ完全に事故ります。
その窪みの底は直前まで目視できませんでした。
窪みの直前に来た時、前後の登山者の位置関係を確認しました。
「前方良しっ!後方も良しっ!」
「…あとはこの窪みの中にオアシスがあるハズだ…」
そう信じて身を乗り出すと…ありました。まさに絶好の場所。
「もらったぁ〜!!」
助かりました。そこは登山道からも死角。でも距離は5m未満…。
我が人生でも屈指のスリリングなトイレタイムでした。
絶好の位置だけに先人の形跡もいくつかありましたが…。
そんなこんなで事なきを得た私は、チリ紙とウェットティッシュを回収し、ごみ回収用防水バックに詰め込んで、何も無かったような涼しい顔をして登山道に復帰しました。
厳密に言うと、街の食事を主成分とした人間の排泄物はアルプスの稜線上では異物ですし、植物にとっては過栄養となり、与える影響は少なからず良くありません。ですから登山者として自然を愛して山に入るも、結果的にはインパクトを与えてしまうのです。でも、それがリアルな爛劵箸砲箸辰討了貝瓩覆里任后出来る事はそのインパクトを最小限に抑えるという意識だと思います。はい。
それからテント場までの足取りは軽快でした。
6:44
冷池山荘のテント場まで戻ってきました。
とりあえず座って一服しながら剱岳の方角を見てみましたが雲で何も見えません。
テント場自体も、黒部の谷底から沸きあがってくるガスに包まれている時間が長い事に気づきました。このテント場はこの主稜線の中ではコルのようなポジションになる為、ガス(雲)の通り道になっていました。
張りっぱなしのテントのフライシートも、雨上がりの様にビショ濡れです。
手ぬぐいを何度も絞りながらその露をふき取り、テントの中の荷物をパッキングし、テントを畳んでザックのパッキングを完了しました。
ちょうどその頃、K氏も帰ってきたので一緒に冷池山荘まで移動して、広場のベンチで朝食を作って食べました。
その時K氏からお伺いした話では、鹿島槍ヶ岳の南峰から北峰に着いた時にはガスに包まれて景色は何も見えなかったそうです。でも、キレット小屋を朝立ちした方と有意義なお話ができたそうで満足したとのこと。
8:52
ポカリスウェットを500cc作ってテルモスに入れ、1.5ℓのハイドレーションパックが満タンになるまで山荘で水を購入しました。この日こそは暑くなりそうだったので…。
そして、お世話になった冷池山荘を出発しました。
<冷池山荘〜柏原新道登山口>
8:52
ポカリスウェットを500cc作ってテルモスに入れ、1.5ℓのハイドレーションパックが満タンになるまで山荘で水を購入しました。この日こそは暑くなりそうだったので…。
そして、お世話になった冷池山荘を出発しました。
歩き始めてすぐに違和感を覚えました。ザックが重く感じるのです。
濡れたテントの重量増ではこれほど重くないし…
「なんか、昨日登り始めた時より重く感じる…」
やっぱりハイドレーションパックに1.5ℓ給水したのが余分だったのか・・・。
それから爺ヶ岳の北峰に向かう間に随分体力を消耗しました。
ザックのハーネスの調整も良くなかったようで、中峰のピークで調整し直した後は少し楽になりました。さらに南峰のピークから先は緩やかな長い下りになり、ザックの重さは気にならなくなりました。
10:56
種池山荘まで帰ってきました。
相変わらず多くの登山者で賑わっています。
しかも、K氏が仕入れてきた情報によるとこれから中学生が集団登山でここまで登ってくるとの事。
「また・・・「コンニチハ」百烈拳の刑か・・・」
苦笑いするものの若い人たちから活力を貰えるので楽しみでもあります。
あとは種池山荘から一気に登山口までコースタイム2時間半の下りを残すのみ!
この辺から頭の中は麓の大町で温泉に入ることで一杯でした。
11:13
種池山荘を出発しました。
正確な位置はメモしていませんので忘れましたが水平道の前後で中学生百数十名とすれ違いました。
「こんにちはぁ〜!」
・・・始まったか!・・・よぉ〜っし!おじさん負けないぞぉ〜!!
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
大きい声や小さな声、女の子や男の子の声・・・私の次男と同い年か・・・・
などと考えながらひたすら声を掛け合います。
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
中学生が「こんにちは」と言われなくてもこちらから「こんにちは」。
ここで大人である私がサボる訳にはいきません。
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
「こんにちはぁ〜!」
最後に引率の先生に挨拶し終わると
まるで、
ジャッキーチェンの映画に出てきた猝攷遊瓩旅唸圓鮟えた気分でした。
それから30分も経たない内に急に来たのです。
体力・気力の限界が・・・(笑)
突然すぎて最初はなかなか受け入れられませんでしたが、どう頑張っても足取りは重く、どんなにテンションを上げようとしても気力が沸いてこない・・・。1歩1歩がとても辛く谷底の扇沢の駅が段々近くに見えてくるのですが一向にその距離が縮まらず・・・。
最後の1時間は地獄でした。去年の蝶ヶ岳からの帰り道を思い出します。
「中学生との戦いで想像以上に体力を使っていたようだ・・・」
アホです。
おそらく向こう(中学生)は私と戦ったことも・・・いや・・・戦っていたとすら思ってないでしょう(笑)
13:36
体力・気力を使い果たしたまま、惰性と無気力の脱力自動歩行で何とか帰って来れました。
と、いっても大した距離でもないですが・・・。
それから大町温泉定番の温泉「薬師の湯」に浸かって帰路に着きました。
特徴の無いお湯ですが、ロケーションや露天風呂の開放感は良かったです。
おわり。
全て読んで頂けたら光栄です。有難うございました。
大町から長野道の蓼科ICに向かう間ののどかな夏の田園風景・・・それを見守るように聳え立つ常念山脈・・・
「できることならここに住みたい・・・」
いつもそう思います。
やっと2012年のテント山行シーズンが開幕しました。今年は何回山に向かえるでしょうか・・・何回満天の星空や流れ星を見られるでしょうか・・・何時間森林限界以上の高度に滞在できるでしょうか・・・。今年こそ個人的な至高のテント場にめぐり合えるでしょうか・・・。
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