岩の稜線へ 不帰ノ嶮
- GPS
- 14:57
- 距離
- 18.0km
- 登り
- 2,259m
- 下り
- 1,669m
コースタイム
06:25八方第5駐車場-06:50猿倉-08:00白馬尻(雷雨のため撤退決定)-09:00猿倉(時間は推定)
【8/2】
05:50八方第5駐車場-06:41猿倉-10:44白馬鑓温泉-13:46天狗山荘
【8/3】
05:47天狗山荘-07:29天狗大下りコル辺り-2峰辺り08:47-09:23唐松岳-11:54リフト乗り場
天候 | 8/1:雷雨 8/2:曇り時々雨 8/3:晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2013年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
猿倉-鑓温泉 ・杓子沢付近落石多数あり、危険。 ・鑓温泉直下雪渓あり。アイゼン装着推奨。 鑓温泉-天狗山荘 ・鎖場が沢水で濡れて非常に滑る。危険。 天狗山荘-天狗大下り頭 ・すばらしい稜線、前方に槍ヶ岳方面の稜線。右方に劔を見る。 天狗大下り-コル ・大下り始まりが高度感ありと浮き石多数で危険。 ・数十mの鎖場が濡れており危険。 コル-2峰 ・1峰までは特に問題無し。 ・2峰(南峰、北峰)周辺が核心部。要所に鎖が着いており、手足をしっかとと確かめながら登れば問題無し。 2峰-唐松岳 ・特に問題無し。 唐松岳-地蔵の頭 ・人混み多数。すれ違い注意。 |
写真
感想
今回は以前から温めていた「不帰ノ嶮」をやることにした。色々な鎖場、岩場を経験したのでそろそろ挑戦しても良いと思った。ここまで来るのに8年掛かった。準備を整えて前日の21時に出発する。いつもの通り、相模湖ICから中央道に入り、途中仮眠をとり、安曇野ICで降りる。いつの間にか呼び名が豊科ICでは無くなり、迷ってしまった。ここから一般道となるが、ここら辺はスキーで良く出かけていたので道は良く知っている。途中のコンビニで朝食と購入し、予定通り、八方第5駐車場に到着した。停めている車は少なく、5台程度であろうか。そのまま、仮眠を取った。
朝5時に起きる。空はどんよりとし、雨が降っている。たまに激しく降り、停滞するか、悩ましいところである。6:00の猿倉行きのバスに乗るつもりであったが、ずるずると判断が遅れ、結局6:30のバスで出発することした。
猿倉に着く。ここにくるのは3回目だ。初回は2007年の8月。初めて北アルプスに足を踏み入れ、大雪渓から栂池に抜けた。天気が非常に良く、とても記憶に残っている。2回目は、翌年の2009年7月。この時は雨が激しく降っており、猿倉から撤退した。今回も雨が激しく降っている。行けるところまで行くことにし、登山指導員に登山計画書を提出した。指導員からは、「だいぶベテランの様ですが、十分に注意して下さい」と言われた。まだ10年も山をやっていないので、そんなにベテランではないが、「ベテラン」と見られてちょっと嬉しかった。(単純?)
猿倉山荘から林道を歩く。登山道は川になっている。林道から見える川も濁流となっており「たぶん、だめだろう」と半分諦めていた。林道終点から登山道となり、ここも川となっている。
1時間ほどで白馬尻到着する。多くの登山者が停滞しており、私も停滞した。明日以降の行程を考えると、ここで泊まっても良いかなと思い、従業員に予約状況を確認すると「本日は大変大変混み合っています。覚悟してください」と言われたので、諦めて車に戻ることにした。
帰りの登山道は更に増水し、半端ない状態だった。猿倉山荘でビールを飲み、バスに乗って車に戻った。午後からは明るくなり「行けたかな」と思った。暇なので温泉に入り、八方スキー場周辺を散策した。
車に戻り、後かたづけをしていると、隣の車の人がいたので話しをした。何と宮崎から来ているそうだ。宮崎から北海道に渡り、現在白馬にいるとのこと。その隣は函館から来ているそうで、皆さんすごいと思った。
その後、明日はどうするか、考えた。2日しかないので1日目に天狗山荘まで行きたい。最短ルートは鑓温泉からなので、鑓温泉から天狗山荘(泊)とし、2日目は天狗山荘〜唐松岳〜八方とした。状況により鑓温泉泊でピストンでも良いと思った。
夕方となり、近くのコンビニで購入したビールと夕食を食べ、寝た。
次の日、朝4時起きる。昨日ほどではないが、あまり天候は良くない。準備をバス停に向かう。出発前に恒例の写真を撮ろうとカメラに電源を入れると「カードが入っていません」との表示。「しまった、SDカードを入れるの忘れた!」かなりショックだった。「忘れたのがテントのポールとか、致命的な物でなくて良かった」と気を取り直し、バス停に向かう。
定刻から少し遅れ、バスで猿倉に向かう。登山計画書と提出し、出発する。
林道分岐から鑓温泉方面に向かう。特に何もない丹沢の様な樹林帯を歩く。急登もなく歩きやすい。途中で雨が降ってきたので雨具を着る。雪渓が多くなり、登山道先には大きな雪渓と激しく斜面が崩れた土砂が数百mほどの川になっているのが見えた。「なんかやばそうだ」と思った。近くに来ると雪渓は短いのと斜面角度があまりないので、問題無いが、崩れた土砂は雪渓に上に流れているので、最近崩れたことが想像出来た。雪渓と土砂の川を渡ると、また雪渓が現れた。今度は長く、斜度もある。霧のためどこまで続いているのか解らないため、アイゼンを装着して雪渓を進む。昨日の雨で赤旗が流されており、いまいち進むべき方向が解らない。しばらく進みと旗はトラバースから直登方面を指している。次第に霧が晴れ、雪渓を直登している登山者が見えた。雪渓を登っていくと鑓温泉の小屋が見えた。
雪渓を抜け、鑓温泉直下にくると若い男が温泉に入っていた。噂通りの「丸見え温泉」だ。鑓温泉で雨具を脱ぎ、片付けをしている温泉に入っていた若い男が来たので話しをした。男は温泉に入るためだけに登ってきたそうだ。私もここで終わりとし、温泉に入り、ビールでも飲んでのんびりしたかったが、せっかく車で300kmも走り、1日停滞もしていることから、今回は温泉を見送ることにし、先に進むことにした。男に「今度は温泉に入りに来ます」と言うと「ぜひ!」と大きな声で気持ちの良い返答だった。
鑓温泉を過ぎると急登が多くなる。登山道周辺は沢水が多い。鎖場では足を滑らし、右手一本で墜落を免れた。鎖場でスリップし、墜落しそうになったのは初めてだった。「こんな事で不帰キレットは大丈夫だろうか?」ちょっと心配になった。
鎖場を抜け、ガレ場を登っていくと霧が深くなり、風も強くなった。稜線も見えないので、どこまで登れば解らないため、非常に辛くなった。休み休み登っていくと、いきなり分岐となり、稜線に辿り着いたことが解った。後は稜線を20分ほど進めば山荘に到着することが解ったので足取りも軽くなった。ただ、周りは何も見えず、風も強く、非常に不快だった。
猿倉山荘を出て約7時間で天狗山荘に着いた。予定より1時間早く着いた。テン場の受付を行い、テン場に向かう。テン場は結構広く、整地されており、快適そうだった。まだ2張りしかないので、場所は選び放題だった。良さそうな場所を見つけ、設営に入る。風が非常に強かったが、あまり苦労せずに設営出来た。あの風の中を苦労せずに設営出来る様になったので、だいぶ旨くなったのではないかと思う。私の下では若い単独女子が設営に苦労していたので、自分が設営終わったら手伝おうと思っていたが、何とか設営出来た模様。「大変だったね」と話しかけると「早いですね」と褒められた。天狗になりそうだった。(洒落?)
テン場はペグも使えるし、固定用の大きな石がある割には、小石が無く、快適なテン場である。しかも自炊場所が提供されているので、天候が悪くても火も使える。あの風に中では、煮炊きが出来ないので非常に助かった。自炊場所で他登山者と談笑した後、テントに戻りシェラフに潜り込んだ。風は相変わらず強かった。明日は天候が回復するのだろうかと思いながら寝た。途中、寒かったので何度も目が覚めた。
覚めると4時だった。いつのまにか風が収まっており、テントの外に出た。「快晴だ」東の空が赤くなっており、日の出も近い。テントから飛び出し、準備を開始する。自炊場所で食事をしている間に夜が明け、岩場が赤く染まっている。テントに戻ると単独女子はテントを解体し、パッキングを終えている。しばらくして唐松方面に出発していった。単独で、しかもテント装備で不帰ノ嶮をやるとは、なかなかやるなと思った。
私も準備を整え、5:40に出発する。天狗池を回り込み、稜線に出る。雲海となっており、すばらしい稜線である。しばらくあるくと右手に雲海の中にピラミダルな山が現れる。「劔」である。こんなに近かったか、と思う位に綺麗に見えた。前方には槍が見え、手前にはキレットが見えた。キレットには雲が流れ、すばらしい景観である。
出発してしばらくすると前方から単独者が現れた。格好からするとトレイルランナーの様であるが、この時間で白馬方面に向かうとするならば、唐松山荘泊まりのはずである。真っ暗な中、キレットを越えてきたのだろう。
すばらしい稜線を歩いていき、天狗の頭を越える。しばらくして大下りの始まりである。出だしはかなりの高度感があり、結構びびる。浮き石も多くあり、慎重に下る。長い鎖では岩が濡れており、神経を使った。しかし、急なのは最初だけで、あとはガレ場の下りとなる。前方には天狗山荘で一緒になった単独女子が慎重に歩いている。あまりのも足取りが不安定なので「頭の下に足があるイメージで歩いた方が安定するよ」とアドバイスした。しばらく単独女子の後ろを歩いていたが、ペースが合わないので道を譲って貰い、先を急ぐ。大下りを降りきり、コルに着く。単独者が1名休憩していた。歩く挨拶し、先に進む。振り返ると大下り全容が見え、かなりの急降下であることが解った。
今度は登る。岩場も増えて、足場を確かめながら慎重に進む。1峰を過ぎ、下降し始めると2峰が見える。このころからキレットを越えてきた人とすれ違いが始まる。基本、単独か、2名程度のパーティーである。情報では15人程度のパーティーが5〜6人程度に別れ、進んでいるとのことですれ違い注意とのことであった。
1峰と2峰の間のコルに到着し、行動食を取る。目の前には急な岩場である2峰が聳えている。途中、鎖が見え、ルート全容が見えた。ルートをイメージして登り始める。トラバース気味に岩場を通過すると、上からヘルメット姿のパーティーが見えた。ガイドが降り始めているので、待っていてくれとのことだった。「何人ですか?」と聞くと6人とのことであった。しばらく降りてくるのを眺めていた。ヘルメットにハーネス、カラビナは2枚付けて、絶えず鎖に確保していた。鎖を固定するアンカー部はカラビナが通過出来ないので1枚のカラビナを付け替えて通過していた。ただ、一人の中年女がカラビナを両方外して鎖に付け替えていたので「それでは意味がありません」と話すと「そうですね」と言っていた。ガイドが賢明にパーティーの安全確保しているのに、適当なことをやっているのが、ちょっと気になった。
第1班のすれ違いを行い、更に登る。慎重に岩の手がかりを探し、足下を確認しながらゆっくりと登る。下を見ると相当の高度感である。但し、高度感があるだけで岩場としてはホールドが沢山あり、登りやすい。梯子を抜けると第2班が待っていた。挨拶をしてすれ違う。岩場をトラバースして第3班とすれ違う。そして回り込む様に今度は後ろから登る様になる。今度は単独男とすれ違う。すれ違いに「後ろに4名女子パーティーがいて、やばいところですれ違うので注意」とアドバイスを貰った。
しばらくすると上から女子の声が聞こえた。「何人ですか?」と聞くと4人と答えた。降りてきているので待っていると、先頭の1人はおっかなびっくり降りてきた。2人目も何とか降りてきたが、問題は3人目である。見ていておっかないので右足はそこの岩、次は左足と言わないと降りられない様である。更に、下ろす足の足下も見ておらず、そのまま足をのばすのでホールドがなかったら、どうなるのだろう。4人目はリーダーらしき人で同じく3人目にアドバイスしていた。
そして何とか降りて、すれ違いが出来た。「この先はもっと危険だから注意して」と話して置いた。この程度の岩場を降りられないのに、この先の岩場を降りることが出来るのであろうか?少し気になった。
2峰の北峰、南峰を過ぎると、急な岩場は無くなった。基本、巻き道である。その先にはピークが見え、沢山の人が見えた。きっと唐松岳だと思った。
唐松岳には4時間掛からなかった。この時間では、余裕で五竜まで行けるが、帰りの行程もあることから、八方尾根で降りることにする。唐松山荘から異常に人が増え、すれ違いが非常に困難である。丸山ケルンを越えると更に人が増え、八方池からは登山でなくなった。途中渋滞が始まり、大変だった。ある意味ここが核心部だったかもしれない。
数時間前までは、キレットで緊張した登山をしていたのに、場違いな格好して観光客に囲まれている自分が不思議だった。
リフト、ゴンドラを乗り継ぎ、駐車場に戻った。駐車場は多くの車が駐車していた。帰りの五竜付近の温泉に浸かり、中央道から帰宅した。高速は比較的順調に流れ、8時には家に着いた。
【あとがき】
やっと不帰ノ嶮を走破することが出来た。個人的な感想としては、思ったより難しくは無かった。岩場自体は八ヶ岳の「横岳〜地蔵ノ頭」とさほど変わらない。あえて言うならば高度感があるだけである。但し、一歩間違えて墜落したら、とんでもないことになるのは確実であるので、相当な慎重さと集中力の継続が要求される。
気になったのは、途中で出会った「単独女子」と「女子4人パーティー」である。前者の単独女子は、思っていたよりルートが難しかったみたいで、「こんなだと思わなかった」と言っていた。それは、自分が思っていた物差しが違っていただけで、ある程度の危険を承知で来ているのである。
後者の4人パーティーの3人目女子は、どの位危険を承知でここに来たのだろう。確かに高度感はあるが、そんなに難しい岩場を降下しているのでは無いのに、全く岩場の経験無い様な降り方しか出来ていない。あの先の岩場は何倍も難しく、更に下りなので、更に苦労しただろう。苦労で済むならどうでも良いが、墜落や救助要請なんてことになったら洒落にならない。彼女は、本当にここに来たくて来たのだろうか?
まぁ人のことは良い。次は北穂〜奥穂だ〜!
こんにちは〜
「不帰ノ嶮」は、是非私も行きたい。と思っているルートです。
停滞したものの、最終日に晴れてよかったですね!
素晴らしい稜線です。是非、歩いてください。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する