農鳥岳 野呂川荒川本谷→大門沢、奈良田


- GPS
- 37:20
- 距離
- 20.9km
- 登り
- 2,280m
- 下り
- 2,853m
コースタイム
10/18 6:00C1〜途中日差し待ちなどで8:30まで→10:30-11:00農鳥小屋→12:00西農鳥岳→12:30-13:30農鳥岳→14:00下降点→16:00大門沢小屋→19:20南アルプス線→奈良田
天候 | 1日目 ハレ 2日目 ハレのち雲海 |
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過去天気図(気象庁) | 2013年10月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
荒川本谷は50年前まで使っていた登山ルートだが今は道無し。 北沢出会い近くまでブル道があるがヒザ徒渉もあり。 南沢二股の対岸に取水口への作業道入り口があるが、特に目印はない。 1512から作業道を降りて細沢吊り橋を渡り細沢の右岸尾根(尾無尾根)の踏み跡をしばらく登り。特に目印もないところを本谷に下降する。ここが難しい。 本谷はヒザまでの徒渉多数。 標高2060m付近の本谷北股と南股の分岐はわかりにくく、水流に沿って行くと南股に入り易い。しばらく登ってから緩い尾根を北股へ乗り越すもよい。 農鳥小屋の水場が小屋の下100mにある。これより南側へ上がると急なガレルンゼへ上がることになる。 |
写真
装備
個人装備 |
ノコギリ 1
沢個人とまり装備 1
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共同装備 |
ツエルト 1
予備ストーブ 1
鍋 1
ロープ20m 1
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感想
農鳥岳は甲府盆地から夜叉神峠の窓越しに見える南アルプス県境リッジで、甲府在住中に登りたい一番候補の最高未踏峰。直登コースの荒川本谷から。荒川本谷研究家のヤトシさんと一緒。農鳥小屋は今の稜線上の場所になる以前、少し荒川側に降りた水の取り易いところにあり、その頃には荒川ルートは一般登山道だったらしい。ヤトシさんに初めて連絡を取ったのも、甲府の図書館にあった荒川本谷記録を読んでのことだった。
出発の朝、台風あけの晴天で雪が積もっていた。初冠雪だ。
鷲ノ住山で車を降りて野呂川へ下降。農鳥、間ノ岳が薄いけど真っ白。吊り橋、発電施設、二股から立派な林道へ。
標高1250に合流する日陰葵沢を見上げると氷瀑できそうな滝が数筋あり。南ア林道自由時代にはここまできて登ったとマオサさんに教わる。北沢出会いを過ぎると林道工事の道が昨日の台風のためかばっさり流されていて、ヒザまでの徒渉。山靴の二人は脱いで、地下足袋に換える。僕は元から地下足袋。荒川本流で数回徒渉あり。今回は水が多いとのこと。左岸の1512へ上がる作業道の入り口はわかりにくいが南沢二股の向かい当たり。標高差150m登ると農鳥も見えた。熊の平というもと飯場を下がると吊り橋で細沢を渡り、細沢右岸の細い尾根(尾無尾根)を登る。踏み跡程度。左の谷への降り口はわかりにくい。ヤトシさんがこれまでに何度か試行錯誤して当てたルートを下る。ここも後半はガレの横の結構コワいところを下る。降りたところは結構なゴルジュで、ヒザ濡れの徒渉して通過。これはもう沢登りだ。アスナロ沢、農鳥沢分岐を超えて行くと、左岸側に高さ10m以上の土砂の絶壁が延々続く。土砂のデブリを、その後猛烈な激流が削り取った側面だ。自動車くらいの大岩が、不安定な土砂の壁からぶら下がっていて、下を通りたくない恐ろしいところ。山の中では大災害は毎年起きている。人がいないから災害になっていないだけだ。
見上げる標高2000m付近が黄色く染まっている。朝の光で撮りたかったのでそこら辺で泊まる。右股、左股の間の緩い尾根上で。行くのは右股だが、二股は不明瞭で、気を付けないと左股に行くことになる。夕方からガス。ヤトシさんが重い重いおでんを持ってきてくれた。満月がガスで霞んでいる。長い時間火を見つめて眠る。
二日目
朝6時に出たが、紅葉の薮に光が当たるのを待ち、1時間半ほど過ごす。黄色の葉はダケカンバと桂のようだ。紅葉はこのあたりだけだ。右股をどんどん上がると、紅葉が切れ樹林限界も超える。ちょうどナナカマドの実が赤くなる。上の方では飛沫が凍っていた。水流に足を濡らしながら右へ右へと上がると小屋の水場に通じる黒いホースが横切っているのでそれに沿って右へ行くと、水場があった。谷の雲海が下から紅葉のあたりまで上がって来た。水場から小屋へは20分の登りだ。小屋のご主人と20分ばかり話す。鹿の害の話、細沢カールが雑誌に書かれて以来泊まる人が増えて稀少植物瀕死の話など、ここは人がほとんどこないせいか、話したいことがたくさんあることだろう。尾無尾根からの下降点はもっと上まで登ってから下るのがよい、と教わった。
西農鳥岳は最高点だけど一応農鳥岳をメインとしてあっさり通る。でも山頂らしい高まりで、中央アルプスと北アルプスの眺めはこっちだ。後ろ立山方面はもう真っ白。
農鳥岳山頂まで来ると、北岳が間ノ岳の右側に姿を見せる。塩見岳中腹の紅葉が光っていて、笊ヶ岳の山並みが雲海の半島みたいだ。ヤトシさんは荒川本谷ルート何度目かで、これまで一番天気がよいという。ジモトクライマー、マオサさんは弘法小屋尾根とか尾無尾根とか、大唐松山の長大な尾根とか全部冬季に登っていて、ほかにもマイナー山脈を見る目を光らせている。ダブルジモトクライマーと登る山だ。無風で陽気もあるが、この時間だと後半は暗くなる。いつまでものんびりもできない。
下降点を降りると雲海が上がって来て、以降は濃いガスの樹林帯となる。登りの沢で乗った石が転がりヒザを強く打ったのが、下りになって痛くなって来た。打撲炎症のようだ。下降時、ヒザを曲げると痛い。大門沢小屋はもう冬じまいしていた。
17時半すぎると暗くなった。暗くてよく見えないけど、結構急で高いところをトラバースする細い道があったりで、あまり気を抜けない下山路だ。ヒザがときどきぶれるので油断がならない。標高1140mで右岸から合流する支流は、橋が見あたらず、暗闇で対岸のマークが見えずルート探しに15分ほど使った。その後もダム湖の右岸であまりしっかりしていないトレイルをトラバースするところなどあり、やはり暗闇下山は緊張するなあと反省する。二人がが道に詳しくてずいぶん心強かった。
地図にはない巨大ダムが出てくるたび三回吊り橋を渡り、早川本流に出たところでお迎えの堀さんが待っていた。予定より時間が押して心配かけた。車はここまでの終点。買って来てもらった牛乳1リットルをみんなで回し飲み。運動直後の牛乳は筋肉になり易いとか。ここで電話も通じ、下山連絡も済んだ。奈良田早川と、暗い道を戻る。先日の台風で途中片側通行箇所もある。ここが8時までだと間に合わないところだったが、きょうから10時までになっていてよかった。
住処の町から見える農鳥岳。登ったあとはまた感慨ひとしお、見上げる気持ちが変わるのである。次に見るときは真っ白かな。
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