月の山ルウェンゾリ(5109m) Japanese Yohei has climbed Mt.Rwenzori in Uganda
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- GPS
- 152:00
- 距離
- 50.4km
- 登り
- 3,990m
- 下り
- 3,987m
コースタイム
12/30 mon ニャビタバ小屋8:30-11:40ランチポイント11:55-13:10ジョン・マッテ小屋 (4時間40分)
12/31 tue ジョン・マッテ小屋8:40-11:35ランチポイント11:55-12:50ブジュク小屋 (4時間10分)
1/1 wed ブジュク小屋8:55-11:30エレナ小屋 (2時間35分)
1/2 thu エレナ小屋4:10-8:00マルガリータ峰山頂8:15-12:20エレナ小屋13:20-15:25キタンダラ小屋 (11時間15分)
1/3 fri キタンダラ小屋8:30-11:55ランチポイント12:15-13:25ガイ・ヨーマン小屋 (4時間55分)
1/4 sat ガイ・ヨーマン小屋7:40-9:10レストポイント9:25-11:05ニャビタバ小屋12:00-14:25ニャカレンギジャ事務所 (6時間45分)
天候 | 1日目 12/29 晴れのち時々雨 2日目 12/30 曇り時々雨 3日目 12/31 曇りのち雨 4日目 01/01 曇り 5日目 01/02 晴れ一時雪 6日目 01/03 晴れのち曇り 7日目 01/04 晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年12月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
まず技術以前に相当な体力が必要な山という印象。日本の標準的な登山道ではなく、廃道や沢筋を歩くような感じです。快適に足だけで歩けるところは全体の3割くらい。 1日目と登頂日以外は長靴行動となります。長靴は靴の中で足が安定せず大変滑りやすいので十分注意が必要です。私はラジアル底のを持っていきましたがこれは泥には弱かった。試していないが、おそらく釣り用のフェルト底がよいと思う(どなたか試験+ご報告お願いします)。渓流タビでもよいかもしれないが、とにかくドロドロになるので気持ち悪いと思う。 登頂日について。氷河の取り付きは物凄く急で荒れており、クレバスも多数で危険。また、氷が硬くクランポンもピッケルもあまり効かない場所で急な箇所が結構ある。クランポンでの歩行は十分慣れておく必要がある。固定ロープが3箇所ほどあるが、アッセンダーは無くても大丈夫と思う。温暖化の影響で氷河が後退し、以前あった恐怖の長梯子が無くなったので、懸垂下降は不要になった。しかし念のためATCかエイト環は必携だろう。ロープは30mあれば十分。 グリーンリーフさんでは8泊9日を提案しているが、私は6泊7日でちょうどよかった。それでも登頂日と最終日以外は半日しか行動しないので物凄くゆったりとした日程になる。欧米人もほとんどの人は6泊で歩いている。行動中は非常に体力を使うし大変な長丁場なので、無理せずこのくらいがよいと思う。 |
写真
安全なところまで下ると滝が現れた。
感想
以下の感想は一部加筆を除き、現地でその日一日を振り返って書いた日記です。少しでも臨場感が伝わればと思います。
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12/29 sun 晴れのち曇り時々雨
ニャカレンギジャ事務所10:10-12:10休憩所12:30-13:50ニャビタバ小屋
この日の行程は簡単で全く問題なし。むし暑いなかしばらく歩かされるが、尾根に出ると急に涼しくなった。ニャビタバ小屋はポータル山塊が目の前で景色もいいし大きくてとても快適。植生は日本の山みたいでとても落ち着く雰囲気だ。ロシア人5人パーティと私だけで小屋を占拠。
12/30 mon 曇り時々雨
ニャビタバ小屋8:30-11:40ランチポイント11:55-13:10ジョン・マッテ小屋
朝晴れていたがすぐに暗くなり時々雨が降ってきた。日中なのにライトをつけたくなるほど暗い。はじめは登山靴でも良かったかなと思ったがジョン・マッテ小屋が近づくと壊滅的な泥の海になる。やはり長靴が無難。
この日は水が豊富な行程でガイドは至るところで水を飲みまくっていた(とてもきれいで正直我々でも飲めそう)。やがて雲霧林になるがこの鬱蒼さは日本にはない。ニュージーランドを思い出した。
今日は雨は降るは寒いわで最悪のコンディションだった。寝袋に入ってようやく体は暖まった。夜8時過ぎにドイツ人二人が登山口から到着したのだが寝ていて気づかなかった。
12/31 tue 曇りのち雨
ジョン・マッテ小屋8:40-11:35ランチポイント11:55-12:50ブジュク小屋
今日は天気はまずまずだった。朝は晴れて目指すマルガリータ峰が小屋から望めた。そしてこれぞルウェンゾリという景色を堪能できた。ローワービゴボグとアッパービゴボグの二つの湿原、そしてブジュク湖は幻想的だった。セレシオやロベリアなど背の高い高山植物が林立する。水が豊富で縦横無尽にお水路が走る。ジュラシックパークのような太古の風景のなかにブジュク小屋はあった。ここは原始のままの風景を古来からずっと保っている稀な場所なのだと強く思った。常に雲におおわれて晴れないのもまた逆に人を寄せ付けないレアな性質なのだ。
ただし泥は半端でないことを付け加えておく。二つのビゴボグは木道が敷かれていて快適だが、そうでない場所は足の置き場を間違うと膝まで埋まる。わずか四時間の行程だが悪戦苦闘を強いられた。
この日ブジュク小屋はスペイン人四人も合流して賑やかだった。ロシア人がサンタの格好をして「Happy New Year」とシャンパンをくれた。山でコスプレとはまったく恐れ入る。しかし毎日お酒を恵んでもらってるのにお礼に返すものがないのが残念だ。
1/1 wed 曇り ブジュク小屋8:55-11:30エレナ小屋
今日は短距離なのでゆっくり出発。ブジュク小屋の西岸を巻きながら登って行くが相変わらずso muddyだ。セレシオの密林(!)を登るがはしごも出てくるほど急斜面。4250mほどでついに植物限界になり、ほどなくエレナ小屋についた。
エレナ小屋は簡単な避難小屋で屋根と床しかない。定員は10人ほどだが今日は12人でぎゅうぎゅうだ。ロシア人パーティとトラブルもあった。居場所がなくて外でウダウダするが夕方になると寒くてかなわない。高山病の症状が出たら地獄の夜になる厳しい場所だと思う。超ヒマなのでスペイン人やドイツ人たちと話をしながら過ごす。スペイン人は日本に来たことがあるとんこと。上高地がよかったそうだ。ビジネスホテルの東横インを絶賛していたのも面白かった。
さて、明日は晴れてくれるだろうか。今日は初めて雨がほとんど降らなかった。天気には元々期待していないが、せめて降らないでほしい...
1/2 thu 晴れ一時雪 エレナ小屋4:10-8:00マルガリータ峰山頂8:15-12:20エレナ小屋13:20-15:25キタンダラ小屋
ルウェンゾリ山塊最高峰のマルガリータへのアタック日である。昨夜は緊張のあまりよく寝られなかった。高山病の症状も出たのでまずいかと思ったが朝起きたら治っていた。ダイアモックス様様だ。
4:10に出発。幸い天気はよい。南の方向に十字が見えるので指摘したらやはりサザンクロスだった。急遽ドイツ人のアレックスとパーティを組むことになった。元々彼は二人できていたが一人が高山病で登れなくなったそう。真っ暗な中、急な岩場を登ってゆく。固定ロープを張ったガリーがありここは滑りやすく視界もないので怖かった。標高も4600mを越えるので息もすぐ上がってしまう。そこを耐えると目の前に突如雪の壁が現れた。東スタンレー氷河だ。
ガイド二人とアレックスと私の四人で一本のロープでタイアップして進む。氷河は全てこの方式で対応した。15分も歩くと氷河は終わってしまいアレクサンドラ峰から伸びる東陵に取りつきこれを越える。以前は超長くてグラグラの恐怖のはしごを降りてマルガリータ氷河に降り立っていたが2年ほどまえにその位置の氷河が無くなってしまったそうで、道が付け替えられていた。物凄く長いフィクスロープでジグザグに下降するルートで遠回りだが比較的安全である。そこからしばらく氷河で荒れた岩場を歩くとようやくマルガリータ氷河の取りつきである。ここで6時半を回りようやくライトなしで様子が見えるようになってきた。天気はよい。これはラッキーとしか言いようがない。
氷河の取りつきは完全な壁で、ナナメにステップをきって登る。地球温暖化の影響をもろに受けているところだ。その後しばらくの間も急でまったく気が抜けない。クランポンはよく効くがピッケルは固い氷に歯が立たない。クレバスもすごい。こんな荒れた氷河はグルジアのカズベク以来だ。標高は5000mに近づく。急斜面のバカ登りなので息が苦しくてたまらない。アレクサンドラとマルガリータのコルに着くとようやく傾斜が落ちる。ここはもうコンゴとの国境だ。傾斜は落ちるがマルガリータの岩峰から流れ落ちるツララの真下を通るのでドキドキものである。山頂岩峰もガリーにフィクスロープがあるがここはクランポンを着けたままで登らねばならないので結構難しい。初めて使ったユマールが活躍した。そこを過ぎると10分も岩場をのぼれば頂上だった。
回りは雲だらけだが幸い天気はよい。5日目にしてようやく山頂にたった。なんと奥深い山なのか。暑苦しい熱帯の森から歩き始め、最後は氷河を登って山頂に到着。こんな山はルウェンゾリ以外世界中どこにもないだろう。四人で登頂を喜びあいすぐに下山開始した。
下りはマルガリータ氷河の急斜面を細心の注意で下る必要がある。時々ミシッと音がするのが怖い。気温が上がって氷河が崩壊しかけているのだろうか。核心部はガイドがアイススクリューで所々支点を作ってくれ、安全に下った。このシステムは初めて体験したが、時間はかかるものの確実だ。
結局登りとほとんど変わらない時間でエレナ小屋まで下山。最後のほうはアレックスに高山病の症状が出てしまいフラフラになってしまった。ダイアモックスは飲んでないのかと聞いたが、バイアグラと同じだから飲まないと意味不明の答えが帰ってきた(全然違う...)。
小屋で昼食をとりパッキングをしてそのままキタンダラ小屋に下った。天気は一時的に悪化して雪になったがまたすぐに回復した。キタンダラ小屋は池のほとりにあり今までの小屋のなかで最高のロケーション。小屋はボロボロだが隣に新設中で2〜3ヶ月で完成するとのこと。夕陽で池が輝くなかスペイン人夫婦がなかなかいい雰囲気になっていた。
しかし登頂日に晴れたのはなんと幸運なのだろう。なんと40回以上も登頂経験ありのガイドは時々晴れることもあると言っていたが、その時々をものにでき、事故なく登頂できたのは本当に幸せなことだ。高山病の症状も軽くて助かった。しかし今日は疲れた〜
1/3 fri 晴れのち雲
キタンダラ小屋8:30-11:55ランチポイント12:15-13:25ガイ・ヨーマン小屋
重責を終えて、ボロボロの小屋にも関わらずぐっすり九時間半も寝てしまった。
今朝は今までで最高の天気だ。雲一つない。小屋のうらからとてつもない急な登りが始まる。一時間ほど耐えるとfresh_field_passという4215mの峠を越える。ここの眺めは素晴らしくセレシオの林立する爽やかな高原になっている。
しばらく高原を歩くとグランドキャニオンのような崖を下り始める。ここは急な上に泥が凄いので充分注意。滑ったら大怪我になりかねない所だ。必死の思いでムブク川に降り立つとあとは危険はない。雲霧林も見られるようになり高山帯から亜高山帯に移行したことを知る。ビゴボグのようなきれいな湿原をヌチャヌチャ歩けばガイ・ヨーマン小屋に到着であった。ドイツパーティといっしょになったが彼らはニャビタバ小屋までいくとのことでここでお別れとなった。アレックスとはメールアドレスを交換した。
今日は天気もよかったし変化の多いトレイルだったのでとても楽しめた。ただわずか五時間の行程なのにアタック翌日にあまりにハードで疲れはててしまった。泥はもう見たくもない。
1/4 sat 晴れ
ガイ・ヨーマン小屋7:40-9:10レストポイント9:25-11:05ニャビタバ小屋12:00-14:25ニャカレンギジャ事務所
最終日。早く下山してシャワーだ!と気ははやるが、今日の行程も前半は危ないので安全第一だ。小屋まえのムブク川は穏やかだが、やがて日本の沢のような急流になる。その横を慎重にくだってゆくが、泥混じりの岩場なのでスリップしやすくとても危険だ。時々ガイドの手も借りながらだましだまし下る。
ようやく安全なところまでくだり、しかしやはりヌチャヌチャ地獄からは抜け出せず更にしばらく歩き、ようやく初日に泊まったニャビタバ小屋に到着した。これにてルウェンゾリのセントラルサーキットを完遂し、マルガリータ登頂のおまけもつき、大満足の山旅になった。ガイドやポーターにチップをあげて、不要な長靴や食料もあげて無事下山した。
下山後、カセセのホテルに帰って食事をしているとなんとスペイン人パーティとばったり遭遇。偶然同じホテルだったのだ。彼らとはすごく仲良くなった。向こうは「こんにちは」と言ってきてこちらは「Hola!」と返す。お陰で山のなかでも退屈することはなかった。
ルウェンゾリ、なんて貴重で素敵な山域なのだろうか。そして今回は欧州人たちと混成の旅がとても楽しかった。この素晴らしい山々を広くお勧めしたいところだが、やはりまだ一般的とは言いがたい。しかし、この山がキリマンジャロのように大衆化してしまうとそれはそれで魅力半減。この貴重な自然をいつまでもと声を大にして言いたい。
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