前森山〜虎毛山 虎毛沢源流域にイグルー泊
- GPS
- 11:51
- 距離
- 13.7km
- 登り
- 1,963m
- 下り
- 1,292m
コースタイム
- 山行
- 7:38
- 休憩
- 0:43
- 合計
- 8:21
- 山行
- 5:30
- 休憩
- 0:23
- 合計
- 5:53
天候 | 両日共快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
雪山バリエーションです。 |
写真
装備
個人装備 |
一日目・・登山靴+ワカン。前森山山頂直下からアイゼン装着。
二日目・・終日アイゼン装着。 |
---|
感想
虎毛山の北に標高1,189mの前森山という山がある。巨大なドーム型の虎毛山とは対照的に山頂部は鋭角的で、目を引く姿をしている。だがその頂に立つのは簡単ではないことは、残雪期に虎毛山頂小屋の裏手からこの山を眺めてみるとよくわかる。前森山は三方を虎毛沢の深い谷に囲まれ、さらにその外側には虎毛山〜高松岳の稜線や吹突岳などの険しい山々が連なる。東側に複雑な尾根が繋がっているが、その末端は虎毛沢と春川の合流点で、その合流点まで車道から歩くのはとても長く、積雪期なら雪崩の危険もあるだろう。ルートをどのように考えても、楽には登れそうもない。
残雪期に目指すなら、やはり虎毛・高松稜線から虎毛沢へ下り、比較的登り易そうな尾根を辿り、山頂直下は強引に行くしかないだろう。私の足で日帰りは無理だから、虎毛・高松稜線上に一泊する。もしも虎毛山に繋がる尾根の上部や虎毛山頂平原まで雪に覆われていて登れそうなら登り、周回ルートにしたい・・そんな計画でチャンスを待っていた。
ポイントはいくつかある。まずは金倉山に登って次のP1,018の雪庇を下りる所とその先の崖マークが続く細い稜線の通過。ここは3年前に歩いた経験が生きた。次に虎毛・高松稜線から虎毛沢に向けて支尾根を下ること。比較的下り易いだろうと選んだ支尾根だったが、細くて急な尾根は雪も不安定で、緊張を強いられた。虎毛沢の渡渉も不安だったが、デブリに埋め尽くされている所があって、それは問題なかった。
下り立った虎毛沢は静かでとても優しい流れ。あちこちの斜面には雪崩の痕跡があるものの、沢の流れには別天地のような安らぎがあった。そしてまた前森山へ急斜面を登り返す。針葉樹の細尾根を登ると、やがて雰囲気のいいブナ林の斜面に変わった。最後の急登ではアイゼンを装着。右手から回り込んで、ようやく念願の前森山の山頂に立った。
前森山からは、虎毛山に繋がる尾根と、その上の壁のように急な斜面がよく見えた。まだ雪が付いていて木も生えている。急だがなんとか登れるだろう。山頂小屋に泊まるつもりで歩みを進めた。
しかし体力はすでに相当消耗していた。虎毛山への500m近い標高差をこれから登りきることができるのか。急斜面でバランスを崩すようなことがあっては危険だ。明日にかけて天気もいいし、適当な所に泊ることにしよう。ここは虎毛沢と春川の分水嶺であり、源流域でもある。山深い雰囲気は素晴らしい。
日暮れまで時間もあるし、ノコギリも持ってきていたから、イグルー作りに挑戦してみることにした。実は2月に一度、自宅裏で挑戦してみたものの、途中で崩れて失敗。今度はより小さく作ろう。
実際に泊ってみて、イグルーは風に強いということを実感した。夜中に外では強い風が吹いていたようだが、まったく不安は無かった。ただ、自分の寝袋ギリギリの大きさだったので、屋根に薄いブロックをかけることは容易だったが、中は狭すぎて、まるで雪の棺桶のようだった。ヘッデンを上に向けて照らすと、イグルー内部全体がとても明るい。
二日目、快晴の朝を迎えた。虎毛山へは3時間とみて、ゆっくり登ろう。登るにつれて、振り返って眺める景色が広がっていく。秋田県の最深部、その山深さに圧倒される。ここを登っている喜びに、深く満たされるようだった。
今回は天候やルート上の雪質など、最高の状態に恵まれた。ただ一つ、一番の不安は自分の体力・体調のことだった。泊り荷物を背負うのはきつくて、終始のろのろペースだったが、なんとか歩き切ることができた。私より以前から前森山に着目していたtooleさんと、今回ご一緒できなかったことが少し残念。また彼の創造性あふれるレコを見てみたい。
コメント
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3日前の先輩方のトレースにしては随分くっきりだなあと思っておりましたがkamadamさんの30分前のものだったんですね😵 トレースに随分と助けられました。ありがとうございます🙇
これからも山行記録を楽しみにしております‼️
こちらこそ、虎毛からの下山ではa5951488さんのトレースがとても心強かったです。
最初、虎毛山に泊って高松岳へ縦走する人のものかな・・と思っていたら、金倉山方面に向かったので少し驚きました。
例の雪庇に作られたステップには助かりました一日目はまだ朝で雪も硬かったので回り込むことができましたが、二日目はグズグズ、ステップを有難く利用させてもらいました。
金倉山からの下り、私は写真7番の景色が見える地点まで尾根を忠実に辿りましたが、a5951488さんは少しショートカットされたのですね。この山域を熟知している方のように感じました。
a5951488さんがレコにかかれているように、虎毛に登るにはいいルートだと思います。例の雪庇とその後の細尾根はありますが・・
常に崩落が付きまとう現在の登山道より、こちらに新しく登山道を作ったらいいのにな・・なんて思ったりしました。言うのは簡単ですが・・
こちらこそ、a5951488さんのレコをこれからも楽しみにしております
朝駐車場で虎毛に登ると聞いて、こっちからも尾根繋がってるのかと興味深かったのですが、なんと一度虎毛沢に降りて前森山経由でしたか。
さすが、独創性のあるルートで感服しております。
虎毛山への登り返しのラインなどはkamadamさんしか挑戦しないと思います😁
2日間晴天でイグルー泊もありとても充実の山行だったと思います。
またお会いした際はよろしくお願い致します。今度こそはゆっくりお話し出来る事を願っております😊
虎毛周辺は沢登りを愛好する方々には外せないところの一つのようですね。
今回虎毛沢まで下りて、ここが好まれる理由、さらには沢登りをする人の楽しみの一端がわかるような気がしました。
今回の虎毛への登りのラインを下りで利用できるのは、エキスパートに限られると感じました。
mooreeさんにお勧めいたします
兎に角 ”凄い”の一言ですね。
昨夜寝る前ザッと拝見しましたら、興奮からその後中々寝付けませんでした。(笑)
いつもながら、残雪尾根の高度な技術と人並外れた体力等々に圧倒されました。
特に序盤の金倉までの急登(標高差500m余)と中盤の虎毛沢急下降・登り返し(累積830m)の厳しさ・難しさは相当のものだったと思います。そして待望の前森山ピークからの絶景はさぞかし感動的だったことでしょう。イグルーテクも駆使すればまさにカモシカの様にどんな雪山も怖いもの無しですね。
ビッグスケールの秋田雪山バリエーション、今春も驚きのレコを十分に堪能させて戴きました。
(tooleさんのコメを勝手に期待していましたが、お先に失礼しました。)
(追:余談ですが・・・・)
一口に「雪山」と言っても、ご承知のように残雪期の尾根雪庇歩きや沢渡りは雪渓の崩落や雪崩れ、陥没等々他のジャンルには無い特有のリスクがあり高い技術力と強い体力が求められますが、近年このジャンル(新ジャンル?)の登山者も増えている気がします。本編レコを拝見しながら思い浮かんだのですが、この分野で数多い経験と技術力をお持ちのkamaさんですから、「雪山バリエーション」をテーマとした書籍(実践的技術書)の出版をお考えになって見るのは如何でしょうか?(既に関連本もあるのかも知れませんが、あまり目にしません。)きっと人気を博すと思います。
私が「お気に入り」で勝手にコレクションしているあの方には、「実践的技術書」を書いてほしいと思いますが、私は知識は無いし、今回も本当にヨレヨレでした。その分、満足感も大きかったですが。
tonkaraさんには拙いレコを詳細にお読みいただき感謝しております。
ご指摘の通り虎下沢への急下降が、技術的には難しかったかもしれません。写真もあまり撮れませんでした。ですが今回のルート全般に岩場は無く、難易度は特別高くありません。ただやはり体力は必要ですね。自分の衰えを考えると、もっと早く挑戦すべきだったと思いました。
週末の用事が立て込んでいて、もしかすると今期はこれで終了かもしれませんが、十分に雪山を堪能した思いです。でも行きたい山はまだあるので、体力をできるだけ維持したいと思っています。
ありがとうございました。
今回も達人しか踏み入ることのできない未踏のルートを歩かれたんですね。圧倒されました。
ほぼ全ての写真に亀裂やデブリがあるというデンジャーな領域を進むこと…、一般人には到底できないことです。その視点、勇気、技術、判断力にいつものことながら驚かされます。山登りの中でもオリジナルな世界をすでに確立されています。青森に住む私には今回のエリアの詳細はわからないのですが、kamadamさんの足跡に少しでも近づきたいと思っています。先日の志度内畚の後、「来年は二ノ沢畚に立ちたい」と思うようになってきました。来年の目標です。
“kamadamワールド”と呼ばせてください。これからもご教示お願いします。
いやいや、本当に買いかぶり過ぎです。亀裂やデブリの写真は、目を引くから撮るだけであって、歩くのは安全なところですよ
tonkaraさんからも過分の評価をいただいたので、自分の山歩きを改めて考えてみたのですが、自分の場合は難しいルートを踏破する・征服するのではなく、あくまでも「自分でも歩けるルート」を地図や実際に山を見て、取り出す、その中でも自分が面白いと感じるルートを見出すというものです。ですから技術的・体力的に自分には無理と思われるルートは、最初から選択しません。たとえば冬の鳥海山に登らない(登れない)のは、視界がきかなくなった時にルートを判別する自信がないからです。晴れた日しか登らないのは、展望を楽しむことが大きな目的ということの他、ソロなのでリスクを低くしたいということもあります。自分をよく把握して、山の機嫌のいい時に遊ばせてもらうという感じでしょうか。
そんなことですので、今回の山行の中で、僭越ながらもしお褒めをいただくとすれば、「前森山登頂後、自分の体力や天候を考慮して、虎毛への急登を翌日に回したこと」かなと勝手に思っています。ルート自体は、何か特別な技術が必要なわけではありませんので、段階を踏んでいけばどなたでも歩けるものと思います。
私はむしろ、mametan3さんの底知れないスタミナに驚かされてばかりです。そして何より、行きたい山にずっと情熱を燃やし続けていることに、尊敬の念を禁じえません。
二ノ沢畚、ぜひ登ってみてください。よく登られる沢尻岳側より、羽後朝日岳の美しさが際立ちますよ
写真を拝見すると、4月上旬という次期・天候共に恵まれてこれ以上ないベストな山行になりましたね。
レコを昨日から何度も何度も見返してコメントを書いていますが、kamadamさんから喜びを分けてもらって、勝手に心地よい気分に浸っています
前回kamadamさんと虎毛山へご一緒したのは何時だったかなと思い、見てみたら2018年の4月末だったんですね
歳をとると、時が過ぎるのは早いです。
それにしても前森山からの360°の展望が言葉に言い表せないほど、素晴らしいですね。特に虎毛山北側の荒々しい姿を間近でとらえられるのはこの前森山しかありません。
レコにkamadamさんも書かれていますが、このコースのポイントはやはり金倉山以降の崖マークが続く稜線、ここを如何にさらっと通過できるか、なんでしょうね。
虎毛沢へ下降するのに使った支尾根はkamadamさんらしく、ちょっと難しそうなルートを選ばれたなと思いました私は楽そうなP1176.9から直接降りるルートをと考えていました。(こちらはこちらで広尾根でライン取りが難しそうですけど)
前森山の尾根に取り付いてしまえさえすれば、懸念する危険さは遠のいて、景色を堪能しながら歩ける感じでしょうか。
イグルー泊も熟達されて、これからはkamadam師匠と呼ばせてください!
そしてフィナーレは前森山から虎毛山に至る惚れ惚れする稜線。ここは前半のテクニカルなルートを踏破してきた者のみに与えられるご褒美なんでしょうね。私もいつか虎毛山のこの北稜歩いてみたいなぁと、山歩きのわくわく感がよみがえってきました
山歩きから遠ざかっている者の戯言です
最後に私の名前を出していただき、恐縮しつつも
私の想い描いていた通りの素敵な山行を魅せていただきまして、ありがとうございました
二日間共に青空が広がって風もほとんどなく、雪面もよく締まって、ベストなタイミングだったと思います。虎毛山への急斜面も雪に覆われていて、アイゼンがよく効く急斜面を一歩一歩高度を稼ぐのは、きついながらも爽快でした。昨年の吹突岳で魅了された秋田県最深部の山深い眺め、今回は前森山や虎毛への登り途上で味わうことができました。
改めて細かく見ていくと、まず金倉山からの崖マークの続く細い稜線ですが、北東側は崖になっているものの、南西側は急斜面ながら樹林帯なので、雪の状態にもよりますが、意外にすんなり歩くことはできると思います。二ノ沢畚〜羽後朝日岳の肩間は灌木の上に雪が乗っている状態ですが、こちらはヒバやブナなど大きな木が続いていますので、安心感もあります。ただ、P1,018の雪庇の通過が問題ですね。今回はa5951488さんの先輩の方々が数日前にステップを作ってくださっていたようで、帰りはとても助かりました。
虎毛沢への下降ですが、P1,177からの顕著な尾根は私も考えました。ただ、等高線が狭まった所は逃げ場がないように見えますし、虎毛沢の対岸に崖マークもあるのでどうかなと。沢岸は穏やかそうですけどね。写真でもわかるように、前森山の虎毛沢に面した斜面は雪崩や崖だらけです。尾根の末端にピッチリ取りつかないと、なかなか登るのは難しいように見えました。支尾根をなんとか下りてきて、沢沿いを少しトラバース気味に辿り、尾根末端に向かいましたが、足場はそれほど悪くはなかったです。もちろん雪崩には要注意ですが。
前森山へ取り付いて、最初は細尾根の急斜面ですが、そこを登りきると中腹はすばらしいブナ林です。ここに泊ってもいいなと思いましたよ。
後はご自分で味わってみてください
私のことを師匠なんてとんでもない。沢登りもできるtooleさんなら、変幻自在の山歩きを見せてくれるものと期待していますよ
ところで今回、一旦沢へ下りてまた登り返すという山行をしたわけですが、これを苦も無くこなす体力があれば、いろんな山登りができますね。いくつかプランはあるのですが、自分の体力の衰えを考えると、いくつ可能だろう・・と考えています。tooleさんの若さが羨ましい
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