8歳児と挑む春の息吹を感じる大室山【山梨百名山】
- GPS
- 07:20
- 距離
- 10.8km
- 登り
- 1,205m
- 下り
- 1,201m
コースタイム
- 山行
- 6:18
- 休憩
- 1:01
- 合計
- 7:19
天候 | 曇のち晴れ 濃霧が晴れたあとの絶景は最高 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・尾根に至るところで何箇所かの崩落があり、道が狭くなっている。慎重に渡れば大丈夫だがちょっと怖い。 ・尾根に出るところは崩落によってルートが変えられている(数年前から?)。 ・かつて難所といわれたらしい「破風口」は整備されてもはや難所ではない印象 |
写真
感想
久しぶりにでっかい山に登ってみようよ。
妻が出勤の土曜日にあわせて息子をそう誘った。このところのぼりやすい山に行っていたけれど、去年春に駅から登った三ツ峠山のように少しチャレンジしてみようよと。
いいねえ、と息子。誘ってみておいてなんだが、ふたつ返事で気持ちよく答えるとはスゴいなお前。
大きな山とは、大室山。東京の近くにある山梨百名山としてはかなりでっかい。コースタイムを見るに、ゆっくり歩いていては日が暮れる山である。息子がクリアできるか心配だったので残してきたけれど、そろそろいけるかな。
でっかい山だから、朝8時には登り始めたい。そのためには家を6時半に出る、そのためには息子は6時に起きねばならない。かなりつらいだろう。
当日朝、5時半に起きると妻はもう起きていて息子の朝ごはんにサンドイッチを作っていた。ご協力、感謝します。
レンタカーをとってくると、息子はちゃんと起きていた。パパの強引な誘いにしぶしぶ付き合ってくれているのではないか、と思ったけれど、息子は気合い充分。ちゃんと、やまのぼりの達成感を望んでいるらしい。
妻のバックアップを得て順調に準備を整え、無事6時半に家を出発。中央道に乗って西を目指す。
……しかし、無念なことに八王子の先でごっつり事故渋滞、1時間プラスになるらしい。こらあかん、ということで八王子で高速を降り、津久井湖経由で道志村を目指した。
大室山の登山ルートは道志側にもいくつかあるけれど、やはり「道志の湯」のすぐ奥からがいちばんいい。加入道山を通っての稜線歩きができるし、なにより下山したら即温泉に飛び込める。
結局、道志の湯の奥、室久保川登山口駐車場に到着したのは9時。8時に登り始めて17時下山くらいかな、と考えていたのでちょっとずいぶん遅い。まあ、登ってみて遅いようなら加入道山で引き返そう。
あたりに桜のまだ残る駐車場からすぐのところに登山口がある。ハイカーさんがお二方、先行する。心強い。
登山口すぐのところにヒトリシズカが群生していた。息子はこれを見ると「全然静かじゃないよな」という。3年連続である。続いて目ざとくツチグリを見つけ、胞子をとばしまくる。けむいからほどほどでお願いしますね。
最初はほぼ平坦なスギ林。「港南区」「磯子区」などの標柱がところどころにある。息子が「まきみなみく?」と読もうとする。さんずいに、巻く、じゃなくてこれは「チマタ」だな、というと「チマタとは何か」という。世間だよ、なんてそんな会話をしながら進む。
シカよけゲートを2回開けて進む。道は沢にそってゆるやかに上がっていく。あたりは濃い霧、蜘蛛の巣に無数の水玉がついてとてもきれい。息子、パンチすると一瞬で水が落ちて蜘蛛の巣が見えなくなることを面白がっている。蜘蛛の巣こわすなよかわいそうだぞ、というと「くものすはタテ糸はくっつかないんだよ大丈夫」と。
10個くらいの蜘蛛の巣にパンチしたくらいで、あずまやが見えてきた。先行のハイカーさんが休んでいる。ペースを落としたくないわれわれは休憩をとらず先に進む。ちなみにヤマレコではこのあたりが「水場」となっているが、見かけなかった。
あずまやから道は沢をはなれて高度を上げる。山登り本番、か。道端にはスミレがたくさん咲いている。
何度か折り返しながら高度をあげて、直登っぽいところに出た。もとの登山道が水流でえぐれているので、左手にトレースとピンクテープが続いている。
今回はとてもよいペースで歩けている息子さんだが、この直登はなかなか進まない。先程のハイカーさんたちにこのあたりで追い抜いてもらう。
えっちらおっちら歩いていると、どうもくさい。息子がおならをしながら歩いているのだ。僕は息子が後ろに転んだときのために彼の後ろを歩いている、ので直撃である。高度1400mで直登の道、息が切れて思い切り大気を吸い込む。そして、そこにおならがかまされる。人の屁がこれほど苦しいものと、40数年生きてきて初めて思い知った。
直登部分を過ぎて杉林に入ると、いきなり霧が晴れた。どうやら雲の上に出たらしい。むこうの山の下の方に雲がたまっている。息子さん、「雲の上にきたんだねえ、すごいねえ」とうれしそう。
何度か折り返して高度を上げて、礫だらけの涸れ沢を横切る。よく見ると、半透明の石が混じっている。なんだろう、これ? 大好きなキノコの生えない冬のあいだに鉱物趣味を磨いた息子、興味しんしん。
と、道が崩れている。細い踏み跡があるが、トラバースのところゆえ、滑ると奈落。ポールとロープがあるものの、あまり使えない。息子をよく見ながら、声をかけながら進む。歩いてみると、見た目ほどはこわくない。
山の中に不自然にあいた平たいスペースを過ぎて少し登ったところ、ロープで道が変えられていた。なるほど、これが登山口に書いてあった迂回路か。
迂回路はちょっと急なジグザグ、ロープに捕まりながら登る。何度かの折り返しのあと、尾根に出た。
尾根をたどると、きれいな木の階段に。登りきったところが加入道山、まずはおつかれさま!
ここまで、2時間。かなりいいペースだ。ヤマレコの画面に0.7という値が出ていて、息子がこれはどんな速さなのかときく。ふつうなら1時間かかる道を0.7時間で歩くってことだよ、でも0.7時間って何分だ? なんて計算をさせてみる。少し時間をおいて、42分という答え。やるな息子。
思ったより早く登れたので、大室山を目指すことにする。息子にはごほうびの「タラタラしてんじゃねーよカレー味」をプレゼント。一気に食らう息子。
避難小屋にいらした先行ハイカーさんたちが出発、入れ替わるように我々も避難小屋に行ってみる。噂とたがわぬ、ペンションみたいなきれいな小屋。これは泊まってみたい! がしかしトイレがないのでいろいろキツいのかもしれない。
さて、進もう。小屋から尾根に戻り、ゆるやかにくだってゆく。この、加入道山付近の尾根の気持ちよさときたら! 遠くの山を見ながら、ゆるやかにくだる稜線を歩く。これはまた訪れたい。
くだりがやや急になる。実に気持ちがいい。が、目の前に前大室が見える。その上まで木の階段が続くのも見える。これのぼり返すの、やだなあ。
階段をえっちらおっちら登って前大室着。眺望なんかはないけれど、小さな芝生の庭みたいで気持ちのよいピークだ。加入道山までと比べてペースは落ちたけどまあしかたないね。ここでルートは南に向きを変え、また気持ちいい稜線歩きになる。何度も息子と「気持ちいいねえ」と言いながら進んでいく。
そしてやってきた、急降下。遮るものがないので大絶景である。ただ、帰りにここまた登るんだよね? けっこうキツいなと思いながら谷底に着くと、痩せ尾根の少し下を通り抜けて「破風口」に到着。
急降下と急上昇にはさまれたコル、かつては難所だったことだろう。板でしっかり補強された今、ここは単純に「体力的にヤバいポイント」である。息子はさっそうと通過。
さあ、最後にして最大の急登だ。けっこうな斜度を階段でひたすらに上がっていく。これ自体はそうでもないのかもしれないけれど、ここに来るまでに加入道山に登り、前大室に登っている。3本目、なかなかヘビーだ。
まだあまり草が生えていない地面に、バイケイソウの芽がたくさん出ている。息子はこの子たちかわいいね、という。なるほど、草の赤ちゃんだ。ただこの子たちは育つと君より大きくなるんだよ。
急な階段をひたすら登ってゆく。足がくたびれていてあまり進まない。さすがの息子もタイムアウトを要求する。そこで見る景色の素晴らしいこと、空を飛んでいる気分。でも足つらい。
やっとのことで平らなところに出る。木道が二手に分かれていて、なんだか線路みたい。ヨレた足に木道の段差がツラいけれど、天国のようだ。
木道のないところに来ると、踏み跡近くに生えたバイケイソウの芽が踏まれてボロボロになっているのをよく見る。息子は「この子たちはもう伸びられないのか」と聞く。大丈夫、この子たちはそんなにヤワじゃない。
そして最後のチェックポイント、犬越路分岐に到着。しっかりしたベンチがあり、先行のハイカーさんたちがごはんを食べていらした。さあ、あともう少しだ。
ほとんど傾斜のない道をのんびり進むと、標柱が現れた。やったー、大室山に登ったよ!
到着時刻、12:55。休憩を含めても4時間を切ることができた。正直なところ、息子の足なので8時に登り始めて13時に着くかなと思っていたくらいだから、見事な登りっぷりだ。父はもう足がふるえてるぞ。
さあごはんにしよう! 12時きっかりにお腹をすかせる息子は破風口のあたりから「おなかすいたな、、」とつぶやいていた。今日はスープジャーで持ってきたスープとおにぎり、そしてカップ麺。とんこつの麺は「これまで食べたなかでいちばんおいしい」とのこと。でも、ひとつ大きな山を制覇したからおいしいんじゃないのかな。
この時期にありがちなのか、えらい数のトビムシがジャンプしてあらゆるところに飛んでくる。悪さはしないミニマムな子たちだけれど、我々はあなたたちの命も奪いたくなければ食べたくもない。こまめに移動したり立ち上がりながら湯をわかしカップ麺を作った。
13時半を回った。さあ、そろそろ行こうか。これなら道志の湯に入れる!
犬越路分岐を通過し、木道へ。疲れた足にはこの段差がかなりツラいのだが、息子は快速で進んでいく。段差や障害物のある道に関してはもはやプロフェッショナルな息子さん。ちょっと待ってくれねえか?
破風口への降下、やはりかなり角度がキツくておっかなびっくり。ヨレた足がちゃんとグリップせず、落ちそう。しかしここは本当に見晴らしがよいのだ、富士山方面も道志方面もクリアに見える。この日は富士山がどこかに遊びに行ってしまっていたが。
破風口を通過して前大室へ……ってここ! この急登! 往路で懸念したとおり、こんな疲れた足でこれ登るのやだ!!!
必死になって登って、そうするとまたここが素晴らしいビューポイント。道志、上野原を越えたむこう、東京のほうまで見える。アップダウンのハードさに見合った景色。サクラはまだこれからのようだ、咲いたらまた美しいだろうね。
急登を終えると前大室までは金網に沿ったゆるい登り。息子が耐えきれずのみものタイムを要求する。
前大室を過ぎて木の階段で降下、そしてのぼり返す。景色のよいここではアブラチャンが黄色い花を見事に咲かせていた。
加入道のベンチでひといきついて、さあ降りていこう。尾根からおりるところのう回路はロープを使って慎重に。
このあたりにある平らなところ、これはおそらく鉱山跡のようなものだろう。よく見ると、穴のようなものが掘られている。周囲を探してみるとやや半透明な白い石がたくさんあった。あとで調べたところ、これは道志村の昔の特産品だった大理石(晶質石灰岩)らしい。なかなか見かけない鉱物に息子は大喜び。
さてこのあとのトラバースのところが、この山でいちばんヤバい箇所だ。さっきも怖かったが、帰りは足がヨレているのでもっと怖い。むしろ息子に「ここはパパほんとにきをつけて」と言われる始末である。じっくりゆっくり通過する。
折り返す道が、礫がやたら多い沢跡を何度も横切る。さっきはそう思わなかったけれど、これはもしかしたらズリ(採掘時に出た石)が流れたものかもしれない。まあ別の機会に息子と調べに来たい。
さあ、息子よ得意のくだりだ。石だらけのところも気にせずぶっとばしておりていく。父はヒザと足首が痛い。なんかこれ疲れとかと違う、つらい。
そしてあずまやにおりてきた。ここまで来たら登山口はあと少しだ。息子と話して、もう急ぐのをやめてゆっくり春の新芽を探しながら行くことにした。
マムシグサがもう花を咲かせている。ペロッと一枚出ているのはランの仲間かな。同じ一枚ペロッとした芽でも、斑点があるやつはたぶんカタクリだよ。ふかふかしたやつは君の大好きなオヤマボクチだ。
息子がカラマツの芽を見つけて、種皮を帽子みたいにのっけているのを「かわいー❤️」といって愛でている。いやそんなお前こそがかわいい。
ケガしそうなボロボロの鹿よけゲートを2度通過。のぼりのときは気づかなかったが、道が雨による水流で掘れすぎたからか、道がやや付け替えられていたことがわかった。しかし息子はUの字に掘れた旧道を「こうしてスピードをコントロールするんだ」といって両壁に乗り上げながら走っていた。
道の向こうに桜が見えて、登山口到着。最後に少し植物観察をして時間をとったけれど、それで16時半の下山はお見事でした。さあ、道志の湯へ!
たっぷり1時間湯に浸かって、東京へ。土曜日なのでさほど混むこともなく東京に帰ってこれた。道中、道志村では梅や桜が咲き乱れていて素敵だった。
息子は難所がないならどこの山でも登れるかもしれない。むしろ彼の父がどれだけ彼についていけるんだろう。息子にとっても大満足となった山行だった。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する