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Yamareco

記録ID: 4842061
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
槍・穂高・乗鞍

トラウマルンゼイ

2022年09月16日(金) [日帰り]
 - 拍手
体力度
4
1泊以上が適当
GPS
06:31
距離
7.2km
登り
1,659m
下り
1,644m
歩くペース
とても速い
0.60.7
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
6:31
休憩
0:00
合計
6:31
距離 7.2km 登り 1,659m 下り 1,660m
10:49
8
10:57
10:57
375
17:12
17:12
8
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2022年09月の天気図
アクセス 山荘泊
コース状況/
危険箇所等
どちらも狭く急斜面の上、浮石が積み重なり非常に不安定で落石に気が抜けない。また標高2500m~2600m付近は極端に岩質が脆く、ルンゼの上部は進退極まる場合があるので特に慎重に判断したい。
■Aルンゼ
水流のないガレ沢。上部は胸ほどの藪で草付きの急斜面。草で滑りやすい上に足元が非常に見づらい。中部からは不安定なガレの急斜面が続く。途中の10m枯滝は懸垂下降したい。下降路として使われている(らしい)。
■Bルンゼ
岩稜に挟まれた非常に急峻なルンゼで下部のみ水流がある。中部の10m涸滝と上部のCSや土壁が核心部。上部は手がつけられないほどボロボロの砂地のような状態で支点は取れず進退極まる場合がある。ルート取りに注意が必要。
その他周辺情報 【コースタイム】
(11:00)笠ヶ岳山頂
(11:50)Aルンゼ下降開始
(12:40-13:05)枯滝懸垂
(13:45)ABルンゼ出合
(14:10)Bルンゼ登攀開始
(16:15)縦走路
(17:10)笠ヶ岳山頂
Aルンゼを下降してBルンゼを登る行程。

穴毛谷にある7つの沢のうち、四ノ沢だけでこの情報量とは恐るべし。
Aルンゼを下降してBルンゼを登る行程。

穴毛谷にある7つの沢のうち、四ノ沢だけでこの情報量とは恐るべし。
Google Earthから見るA.Bルンゼ。
雪で隠れててルンゼの全貌は拝めない。

ここをスキーで滑っていくヤバい奴らがいるらしい。
2022年11月20日 22:15撮影
11/20 22:15
Google Earthから見るA.Bルンゼ。
雪で隠れててルンゼの全貌は拝めない。

ここをスキーで滑っていくヤバい奴らがいるらしい。
南西尾根の途中に良さげな岩を見つけた。
今度行ってみよう!
2022年09月16日 11:18撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 11:18
南西尾根の途中に良さげな岩を見つけた。
今度行ってみよう!
Bルンゼを覗き込む。
初めてここを通ったときは「なんだここは!?」と驚いた場所。
ここを歩いて帰ってくる、予定。
2022年09月16日 11:36撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 11:36
Bルンゼを覗き込む。
初めてここを通ったときは「なんだここは!?」と驚いた場所。
ここを歩いて帰ってくる、予定。
Bルンゼ上部はかなり脆そう
2022年09月16日 11:36撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 11:36
Bルンゼ上部はかなり脆そう
「ここから脱出したいな〜」なんて思っていた。
2022年09月16日 11:37撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 11:37
「ここから脱出したいな〜」なんて思っていた。
クリヤ谷登山道(廃道)は四年前から整備してないのでこの有様。
長ズボン必須よね〜
2022年09月16日 11:45撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 11:45
クリヤ谷登山道(廃道)は四年前から整備してないのでこの有様。
長ズボン必須よね〜
笠谷も楽しそう。
播隆上人の石仏探しも気になるところ
2022年09月16日 11:47撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 11:47
笠谷も楽しそう。
播隆上人の石仏探しも気になるところ
背丈のハイマツを漕いで縦走路から入り口へ
2022年09月16日 11:51撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 11:51
背丈のハイマツを漕いで縦走路から入り口へ
Aルンゼが見えた。
上部の藪漕ぎが(虫が嫌いなもんで)キツかった。
カッパを着て挑んだが、急斜面の草付きでかなり渋い。
2022年09月16日 12:14撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 12:14
Aルンゼが見えた。
上部の藪漕ぎが(虫が嫌いなもんで)キツかった。
カッパを着て挑んだが、急斜面の草付きでかなり渋い。
中部にある落差10mの枯れ滝。
懸垂下降したいけど良さげな支点が見つからない。
2022年09月16日 12:42撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 12:42
中部にある落差10mの枯れ滝。
懸垂下降したいけど良さげな支点が見つからない。
それでも目を凝らせば凄いのがあった。
ハーケンはともかくスリングに命はかけれなかったので、心許ないピナクルを保険にした。
(自前のスリングを残置…)
2022年09月16日 12:42撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 12:42
それでも目を凝らせば凄いのがあった。
ハーケンはともかくスリングに命はかけれなかったので、心許ないピナクルを保険にした。
(自前のスリングを残置…)
涸滝を振り返って。
登山大系では10mと書かれているが、右手の階段状を懸垂下降したら30mロープでギリちょんだった。
2022年09月16日 13:05撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:05
涸滝を振り返って。
登山大系では10mと書かれているが、右手の階段状を懸垂下降したら30mロープでギリちょんだった。
右手のところをクライムダウンするようにそっと懸垂下降。
メンタルスクラッチ。
2022年09月16日 13:05撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:05
右手のところをクライムダウンするようにそっと懸垂下降。
メンタルスクラッチ。
ガレガレを降っていく
2022年09月16日 13:06撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:06
ガレガレを降っていく
とんでもなくデカい岩壁が
2022年09月16日 13:10撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:10
とんでもなくデカい岩壁が
パノラマで撮っても実物の凄さを表現しきれない
2022年09月16日 13:11撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:11
パノラマで撮っても実物の凄さを表現しきれない
この壮大なやつは第一岩稜。
岩を見てワクワクするのが常だけど、取り付くのさえ恐怖で登りたいとも思わなかった。
2022年09月16日 13:23撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:23
この壮大なやつは第一岩稜。
岩を見てワクワクするのが常だけど、取り付くのさえ恐怖で登りたいとも思わなかった。
第一岩稜を横目にひたすら下る
2022年09月16日 13:17撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:17
第一岩稜を横目にひたすら下る
基部から取り付いたりすれば長いルートなど無限に楽しめそう
2022年09月16日 13:29撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:29
基部から取り付いたりすれば長いルートなど無限に楽しめそう
穴毛谷の雪渓。
崩壊していて渋そう!
2022年09月16日 13:59撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:59
穴毛谷の雪渓。
崩壊していて渋そう!
振り返るとまたまたカッコ良いのがある
すぐ横には第二岩稜があるのかしら?
2022年09月16日 13:51撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:51
振り返るとまたまたカッコ良いのがある
すぐ横には第二岩稜があるのかしら?
←Aルンゼ ↑第一岩稜 →Bルンゼ
2022年09月16日 13:52撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 13:52
←Aルンゼ ↑第一岩稜 →Bルンゼ
雪渓水をゴキュリ。
雪渓の状態により進むのは無理だったかもしれない。
2022年09月16日 14:01撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:01
雪渓水をゴキュリ。
雪渓の状態により進むのは無理だったかもしれない。
いやー良い場所♡
後ろの沢の音がうるさいのはご愛嬌
2022年09月16日 14:02撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:02
いやー良い場所♡
後ろの沢の音がうるさいのはご愛嬌
Bルンゼ入り口。
出だしの滝は足が濡れて突破
2022年09月16日 14:11撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:11
Bルンゼ入り口。
出だしの滝は足が濡れて突破
一輪のフラワー
氷河で削られた跡が所々にあって良い感じ。
2022年09月16日 14:14撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:14
一輪のフラワー
氷河で削られた跡が所々にあって良い感じ。
ここのCT滝イヤらしかった、気がする
2022年09月16日 14:17撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:17
ここのCT滝イヤらしかった、気がする
果てしなく続く一本道
2022年09月16日 14:26撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:26
果てしなく続く一本道
いわいわ〜
2022年09月16日 14:26撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:26
いわいわ〜
どこでも登れそう!
でも岩落っこちてきそうで嫌な緊張感💓🤢
2022年09月16日 14:26撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:26
どこでも登れそう!
でも岩落っこちてきそうで嫌な緊張感💓🤢
右にも行けそうだが、どこに連れて行かれるのかは知らん。(真っ直ぐ進もう)
2022年09月16日 14:27撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:27
右にも行けそうだが、どこに連れて行かれるのかは知らん。(真っ直ぐ進もう)
四足歩行で登ってきた
2022年09月16日 14:39撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:39
四足歩行で登ってきた
あのトンガっているやつをひたすら目指す(事にした)
2022年09月16日 14:39撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:39
あのトンガっているやつをひたすら目指す(事にした)
10か8mの枯れ滝。
左手の階段状のところを登ったが、ヌルヌルでちょびっと怖かった。
2022年09月16日 14:47撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:47
10か8mの枯れ滝。
左手の階段状のところを登ったが、ヌルヌルでちょびっと怖かった。
振り返って
2022年09月16日 14:53撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:53
振り返って
2500m付近で二股に分かれる。
右は開けていて面白そうな景色が広がっていそうだが、左はルンゼが続いている感じ。
2022年09月16日 14:57撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 14:57
2500m付近で二股に分かれる。
右は開けていて面白そうな景色が広がっていそうだが、左はルンゼが続いている感じ。
2500m付近で二股に分かれる。
右は開けていて面白そう(ルート選べそう)だが、左は狭まった(逃げ場のない)ルンゼが続いている感じ。

ちなみに、「ここから出たいな〜」と思っていた場所は二股を右に行かないと無理です。
2022年09月16日 15:04撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:04
2500m付近で二股に分かれる。
右は開けていて面白そう(ルート選べそう)だが、左は狭まった(逃げ場のない)ルンゼが続いている感じ。

ちなみに、「ここから出たいな〜」と思っていた場所は二股を右に行かないと無理です。
「Bルンゼを辿るなら真っ直ぐ進もう」と思い左を選択。
こっちはこっちで良い感じ。
トラウマ開始。
2022年09月16日 15:09撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:09
「Bルンゼを辿るなら真っ直ぐ進もう」と思い左を選択。
こっちはこっちで良い感じ。
トラウマ開始。
潜れるチョックストーンは初めて。
ワクワク。
2022年09月16日 15:11撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:11
潜れるチョックストーンは初めて。
ワクワク。
岩の下はザレザレで怖い思いをした。
ドキドキ。
2022年09月16日 15:14撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:14
岩の下はザレザレで怖い思いをした。
ドキドキ。
幅が狭くなってきた(逃げ場がなくなるとは知らずに)
2022年09月16日 15:14撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:14
幅が狭くなってきた(逃げ場がなくなるとは知らずに)
二つ目の潜るチョックストーン。
ここも急なザレで渋かった。

奥のチョックストーンでピンチくる。
2022年09月16日 15:19撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:19
二つ目の潜るチョックストーン。
ここも急なザレで渋かった。

奥のチョックストーンでピンチくる。
10分ほど格闘したが、落ちたら止まらない恐怖で一歩が踏み出せず。
ここから極端に脆い岩質に変わった。
2022年09月16日 15:39撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:39
10分ほど格闘したが、落ちたら止まらない恐怖で一歩が踏み出せず。
ここから極端に脆い岩質に変わった。
チョックストーン横の土や砂を掘り起こしてなんとか支点が取れた。不安定な足場で脹脛が悲鳴を上げてたので、一旦落ち着けた。
2022年09月16日 15:39撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:39
チョックストーン横の土や砂を掘り起こしてなんとか支点が取れた。不安定な足場で脹脛が悲鳴を上げてたので、一旦落ち着けた。
チョックストーンの下から。「稜線まであとちょっとなのになー」と馳せる。
ザイル付けてクライミングシューズ履いて空身になって突破。ここを抜けてから適当に支点作って懸垂で降りて登り返そうと考えていた。
2022年09月16日 15:39撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 15:39
チョックストーンの下から。「稜線まであとちょっとなのになー」と馳せる。
ザイル付けてクライミングシューズ履いて空身になって突破。ここを抜けてから適当に支点作って懸垂で降りて登り返そうと考えていた。
焦ってたので写真無し。
垂直な土壁が立ちはだかっており逃げ場がない中、頼りないブッシュに救われた。
本当にギリギリ越えれた。
焦ってたので写真無し。
垂直な土壁が立ちはだかっており逃げ場がない中、頼りないブッシュに救われた。
本当にギリギリ越えれた。
空腹と喉の渇きでフラフラと山荘へ帰った。
2022年09月16日 16:55撮影 by  iPhone XR, Apple
9/16 16:55
空腹と喉の渇きでフラフラと山荘へ帰った。
後日荷物の回収へ、土壁の上部から。
2022年09月21日 14:18撮影 by  iPhone XR, Apple
9/21 14:18
後日荷物の回収へ、土壁の上部から。
無事回収。出来て良かった。
2022年09月21日 16:52撮影 by  iPhone XR, Apple
9/21 16:52
無事回収。出来て良かった。
撮影機器:

感想

笠ヶ岳の東側、穴毛谷にある四ノ沢左俣Aルンゼを下降しBルンゼを登り返してきました。

Aルンゼ下降途中にある第一岩稜は圧巻。超巨大な面ツルスラブを拝む事が出来ました。


【コースタイム】
(11:00)笠ヶ岳山頂
(11:50)Aルンゼ下降開始
(12:40-13:05)枯滝懸垂
(13:45)ABルンゼ出合
(14:10)Bルンゼ登攀開始
(16:15)縦走路
(17:10)笠ヶ岳山頂


【コース状況】
どちらも狭く急斜面の上、浮石が積み重なり非常に不安定で落石に気が抜けない。また標高2500m~2600m付近は極端に岩質が脆く、ルンゼの上部は進退極まる場合があるので特に慎重に判断したい。
■Aルンゼ
水流のないガレ沢。上部は胸ほどの藪で草付きの急斜面。草で滑りやすい上に足元が非常に見づらい。中部からは不安定なガレの急斜面が続く。途中の10m枯滝は懸垂下降したい。下降路として使われている(らしい)。
■Bルンゼ
岩稜に挟まれた非常に急峻なルンゼで下部のみ水流がある。中部の10m涸滝と上部のCSや土壁が核心部。上部は手がつけられないほどボロボロの砂地のような状態で支点は取れず進退極まる場合がある。ルート取りに注意が必要。


【振り返り】
登山大系を眺めていると、この山域の事なんてちっとも知らない自分に向き合わされる。ここら一帯にある多数のルートなんて歩いた事がないし、麓や山小屋から見てきた景色、播隆平から眺めれるのはほんの一部分でしかなく、気になる部分には常にモヤがかかっている状態だった。

四ノ沢左俣Aルンゼが下降路として記述してある。しかも下降途中にある第一岩稜については「快適なスラブの好ルートであるがまだあまり知る人がなく、登攀者は少ない。」と記されており非常に興味をそそられた。
次いで横にあるBルンゼは「短いがおもしろい内容を持つ」らしく是非これらを実際に見て歩きたいと思った。

“下降路として使われる”Aルンゼは想像よりも厳しかった。入口(上部)は胸ほどある藪で葉を見ると無数の虫食い跡とチクチクするアザミに勇気を出して進んだが、足元が見辛く不安定でかなりメンタルがやられた。
ツルツルチクチクの草ゾーンを抜けてガレルンゼを進んでいくと涸滝にぶつかる。「懸垂下降をしろ」と直感が訴えてくるので周りを見渡したら随分と昔の残置支点が見つかった。真っ黒に変わり果てた残置スリングだけに全体重はかけられず心細いピナクルを保険にして静かに降りた。かなり怖かった。自前ハーケンなりのバックアップが必要だった。
しばらくすると左手に“これだ”と分かる第一岩稜が現れる。覆い被さるような巨大スラブの岩壁は果てしなく上に横に続いていた。岩を見たらワクワクするタイプだと思っていたが、感じた事のない威圧感で聳え立つその壁に取り付いたら不幸なことしか思い浮かばなかった。ただその荘厳な岩壁と急峻で長いルンゼの先に見える景色が組み合わさるとなんだか良い感じだ。
そんな感じで下の出合までガラガラと下って行くと崩壊した雪渓たちのオンパレード。もう少し早い時期だったならば先には進めなかったと思う。

そしてBルンゼも厳しかった。入口までは傾斜が凄いので雪渓に寄りかかりながら侵入。ここも見上げたら素晴らしいルンゼで果てしなく長く、真っ青な天まで続いていた。中部にあるチョックストーン滝は左側の階段状から抜けたが側面から水が染み出していて滑りやすく緊張した。怖かった。
上部ははっきりと二股になる。右は開けていて楽しそうだが左はルンゼが狭まって続いていくのが見てとれた。「Bルンゼを最後まで進もう」と何故かこだわり、安全かどうかじゃなくただ安直に選んでしまったことが良くなかった。
真っ直ぐ進むと、チョックストーンのトンネルを「幻想的じゃんか」とぼけーっと進んだら下はザレザレで掴み所がなく生きた心地がしなかった。それを2度越えた。
そしてチョックストーンが立ちはだかる。巨大な真ん丸の石が岩壁に綺麗にスポッと挟まっていた。下から見るとハングしている上にツルツルで砂に塗れて掴みどころなんてないし、後ろを振り返ると最下層までノンストップでハッピーエンドなのでビビってなかなか一歩が踏み出せない。しかも足元は急峻なザレで常に爪先立ち。
だがチョックストーン横の石と砂を必死に掻き出してなんとかセルフビレイが取れて冷静になれた。
一休憩してからクライミングシューズ(持ってきて良かった)に履き替えて念の為ロープの末端で確保して空身でなんとか突破。上で適当に支点作って登り返すつもりだったが、その先の両壁はとても脆くて続く先には垂壁に近い土壁が待ち構えていた。支点は作れず、ザイルの末端は下に固定してあるので懸垂下降で戻ることも出来ず先に進む以外に選択肢は思いつかなかった。
手がつけられないほどボロボロの土壁はクライミングシューズだととても滑り、側面も非常に脆く際限なくポロポロと岩が剥がれる。ただ一途の希望は土壁の上部に頼りない灌木がありその上部には稜線が広がっている事だった。
右足はクライミングシューズを脱ぎ裸足で土壁に親指を食い込ませ、左足は脆い壁を砕き続けてなんとか乗せれたスタンスを信じてジリジリと立ち上がる。3手ほど上がると灌木を掴めた。バランスを取りそっと立ち上がるが、足元が崩壊して下に落ちては頼りない灌木に命を預けて足ブラ状態を繰り返すうちに足元は抉れていき徐々にハングしていった。
両手で灌木を掴んではいたが足は空を切り、このままでは死んでしまうと頭をよぎり、最後のスリングを使って灌木になんとかセルフビレイを取れた。しかし今にもすっぽ抜けそうな灌木に中間支点をかけて早々にセルフを解除し、最後の力を振り絞りなんとか土壁を突破出来た。安全地帯である稜線まであとほんの数m手前の草付きで中間支点にしていたザイルがピンと張ってしまい、斜面を這う蜘蛛のような格好でなんとかザイルを外して稜線に出れた。
藪の中でしばらく動けず吐き気が襲った。久しぶりの太陽と植物たちにこんなにも心癒されたのは初めてだった。もうこんな思いはしたくないと後悔。

水分と食料を随分と前から補給していなかったのでフラフラと小屋を目指して帰った。

後日、残置物は稜線からの懸垂下降で回収しました。


ここは浮石が多く狭いのでパーティでの入山は控えたいし、1人で行くにはリスクが多すぎた。ルンゼフィナーレの土壁は完全に“賭け”の突破になってしまい非常に楽しくなかった。季節が変わると違う視点で見れるのだろうか。
1人では行きたくはないが見てみたい気持ちはある…

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