トラウマルンゼイ
- GPS
- 06:31
- 距離
- 7.2km
- 登り
- 1,659m
- 下り
- 1,644m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2022年09月の天気図 |
アクセス | 山荘泊 |
コース状況/ 危険箇所等 |
どちらも狭く急斜面の上、浮石が積み重なり非常に不安定で落石に気が抜けない。また標高2500m~2600m付近は極端に岩質が脆く、ルンゼの上部は進退極まる場合があるので特に慎重に判断したい。 ■Aルンゼ 水流のないガレ沢。上部は胸ほどの藪で草付きの急斜面。草で滑りやすい上に足元が非常に見づらい。中部からは不安定なガレの急斜面が続く。途中の10m枯滝は懸垂下降したい。下降路として使われている(らしい)。 ■Bルンゼ 岩稜に挟まれた非常に急峻なルンゼで下部のみ水流がある。中部の10m涸滝と上部のCSや土壁が核心部。上部は手がつけられないほどボロボロの砂地のような状態で支点は取れず進退極まる場合がある。ルート取りに注意が必要。 |
その他周辺情報 | 【コースタイム】 (11:00)笠ヶ岳山頂 (11:50)Aルンゼ下降開始 (12:40-13:05)枯滝懸垂 (13:45)ABルンゼ出合 (14:10)Bルンゼ登攀開始 (16:15)縦走路 (17:10)笠ヶ岳山頂 |
写真
感想
笠ヶ岳の東側、穴毛谷にある四ノ沢左俣Aルンゼを下降しBルンゼを登り返してきました。
Aルンゼ下降途中にある第一岩稜は圧巻。超巨大な面ツルスラブを拝む事が出来ました。
【コースタイム】
(11:00)笠ヶ岳山頂
(11:50)Aルンゼ下降開始
(12:40-13:05)枯滝懸垂
(13:45)ABルンゼ出合
(14:10)Bルンゼ登攀開始
(16:15)縦走路
(17:10)笠ヶ岳山頂
【コース状況】
どちらも狭く急斜面の上、浮石が積み重なり非常に不安定で落石に気が抜けない。また標高2500m~2600m付近は極端に岩質が脆く、ルンゼの上部は進退極まる場合があるので特に慎重に判断したい。
■Aルンゼ
水流のないガレ沢。上部は胸ほどの藪で草付きの急斜面。草で滑りやすい上に足元が非常に見づらい。中部からは不安定なガレの急斜面が続く。途中の10m枯滝は懸垂下降したい。下降路として使われている(らしい)。
■Bルンゼ
岩稜に挟まれた非常に急峻なルンゼで下部のみ水流がある。中部の10m涸滝と上部のCSや土壁が核心部。上部は手がつけられないほどボロボロの砂地のような状態で支点は取れず進退極まる場合がある。ルート取りに注意が必要。
【振り返り】
登山大系を眺めていると、この山域の事なんてちっとも知らない自分に向き合わされる。ここら一帯にある多数のルートなんて歩いた事がないし、麓や山小屋から見てきた景色、播隆平から眺めれるのはほんの一部分でしかなく、気になる部分には常にモヤがかかっている状態だった。
四ノ沢左俣Aルンゼが下降路として記述してある。しかも下降途中にある第一岩稜については「快適なスラブの好ルートであるがまだあまり知る人がなく、登攀者は少ない。」と記されており非常に興味をそそられた。
次いで横にあるBルンゼは「短いがおもしろい内容を持つ」らしく是非これらを実際に見て歩きたいと思った。
“下降路として使われる”Aルンゼは想像よりも厳しかった。入口(上部)は胸ほどある藪で葉を見ると無数の虫食い跡とチクチクするアザミに勇気を出して進んだが、足元が見辛く不安定でかなりメンタルがやられた。
ツルツルチクチクの草ゾーンを抜けてガレルンゼを進んでいくと涸滝にぶつかる。「懸垂下降をしろ」と直感が訴えてくるので周りを見渡したら随分と昔の残置支点が見つかった。真っ黒に変わり果てた残置スリングだけに全体重はかけられず心細いピナクルを保険にして静かに降りた。かなり怖かった。自前ハーケンなりのバックアップが必要だった。
しばらくすると左手に“これだ”と分かる第一岩稜が現れる。覆い被さるような巨大スラブの岩壁は果てしなく上に横に続いていた。岩を見たらワクワクするタイプだと思っていたが、感じた事のない威圧感で聳え立つその壁に取り付いたら不幸なことしか思い浮かばなかった。ただその荘厳な岩壁と急峻で長いルンゼの先に見える景色が組み合わさるとなんだか良い感じだ。
そんな感じで下の出合までガラガラと下って行くと崩壊した雪渓たちのオンパレード。もう少し早い時期だったならば先には進めなかったと思う。
そしてBルンゼも厳しかった。入口までは傾斜が凄いので雪渓に寄りかかりながら侵入。ここも見上げたら素晴らしいルンゼで果てしなく長く、真っ青な天まで続いていた。中部にあるチョックストーン滝は左側の階段状から抜けたが側面から水が染み出していて滑りやすく緊張した。怖かった。
上部ははっきりと二股になる。右は開けていて楽しそうだが左はルンゼが狭まって続いていくのが見てとれた。「Bルンゼを最後まで進もう」と何故かこだわり、安全かどうかじゃなくただ安直に選んでしまったことが良くなかった。
真っ直ぐ進むと、チョックストーンのトンネルを「幻想的じゃんか」とぼけーっと進んだら下はザレザレで掴み所がなく生きた心地がしなかった。それを2度越えた。
そしてチョックストーンが立ちはだかる。巨大な真ん丸の石が岩壁に綺麗にスポッと挟まっていた。下から見るとハングしている上にツルツルで砂に塗れて掴みどころなんてないし、後ろを振り返ると最下層までノンストップでハッピーエンドなのでビビってなかなか一歩が踏み出せない。しかも足元は急峻なザレで常に爪先立ち。
だがチョックストーン横の石と砂を必死に掻き出してなんとかセルフビレイが取れて冷静になれた。
一休憩してからクライミングシューズ(持ってきて良かった)に履き替えて念の為ロープの末端で確保して空身でなんとか突破。上で適当に支点作って登り返すつもりだったが、その先の両壁はとても脆くて続く先には垂壁に近い土壁が待ち構えていた。支点は作れず、ザイルの末端は下に固定してあるので懸垂下降で戻ることも出来ず先に進む以外に選択肢は思いつかなかった。
手がつけられないほどボロボロの土壁はクライミングシューズだととても滑り、側面も非常に脆く際限なくポロポロと岩が剥がれる。ただ一途の希望は土壁の上部に頼りない灌木がありその上部には稜線が広がっている事だった。
右足はクライミングシューズを脱ぎ裸足で土壁に親指を食い込ませ、左足は脆い壁を砕き続けてなんとか乗せれたスタンスを信じてジリジリと立ち上がる。3手ほど上がると灌木を掴めた。バランスを取りそっと立ち上がるが、足元が崩壊して下に落ちては頼りない灌木に命を預けて足ブラ状態を繰り返すうちに足元は抉れていき徐々にハングしていった。
両手で灌木を掴んではいたが足は空を切り、このままでは死んでしまうと頭をよぎり、最後のスリングを使って灌木になんとかセルフビレイを取れた。しかし今にもすっぽ抜けそうな灌木に中間支点をかけて早々にセルフを解除し、最後の力を振り絞りなんとか土壁を突破出来た。安全地帯である稜線まであとほんの数m手前の草付きで中間支点にしていたザイルがピンと張ってしまい、斜面を這う蜘蛛のような格好でなんとかザイルを外して稜線に出れた。
藪の中でしばらく動けず吐き気が襲った。久しぶりの太陽と植物たちにこんなにも心癒されたのは初めてだった。もうこんな思いはしたくないと後悔。
水分と食料を随分と前から補給していなかったのでフラフラと小屋を目指して帰った。
後日、残置物は稜線からの懸垂下降で回収しました。
ここは浮石が多く狭いのでパーティでの入山は控えたいし、1人で行くにはリスクが多すぎた。ルンゼフィナーレの土壁は完全に“賭け”の突破になってしまい非常に楽しくなかった。季節が変わると違う視点で見れるのだろうか。
1人では行きたくはないが見てみたい気持ちはある…
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