思い出の地・笹ヶ峰から妙高山・火打山
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- GPS
- 32:00
- 距離
- 23.2km
- 登り
- 2,078m
- 下り
- 2,064m
コースタイム
- 山行
- 8:05
- 休憩
- 1:15
- 合計
- 9:20
天候 | 雨後晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・特に危険な個所はない。 ・黒沢池から妙高山の往復は、かなりのアップダウンがあり、体力と気力を要する。 |
写真
感想
18日
火打山の登山口である笹ヶ峰は、かつて家族とキャンプで何度も訪れたことのある思い出の地です。一時期は毎夏のように、数日を過ごしたのに、火打山も妙高山も、未だにその頂に立ったことはありませんでした。何かやり残したような思いが胸の奥にずっとあったような気がします。
新潟県内の日本百名山で登っていないのが、妙高と火打を残すだけとなり、このやり残したことを果たすために、懐かしい笹ヶ峰を登山口に選びました。
山支度に意外と手間取ってしまい、登山口を出発したのは6時半近くでした。生憎の雨でしたが、鬱蒼とした森の中を行くので、梢を打つ雨の音が大きい割には、体を打つ雨粒はさほど強くは感じませんでした。
黒沢までは、木道の緩登が続きます。歩き始めて間もなくして、後ろから靴音が近づいて来ました。北海道からバイクで、やって来たという若者でした。日帰りで、妙高をピストンするとのことです。冬に、妙高山麓でスノーボードを滑っていて、是非、山頂に立ってみたいと思い、登りに来たといいます。
実は、今回、火打と妙高、どちらを先に登るか、迷っていました。妙高を最初に登ると、1日目がかなりきついのですが、2日目がだいぶ楽になります。妙高山経由で、高谷池ヒュッテまでの10時間近い歩きに耐えられるだろうか不安はありました。しかし、若者も妙高を登るというので、それに背中を押される感じで、妙高を先に登ってみようかと思いました。
黒沢に掛かる橋を渡ると、十二曲りという九十九折の急登になります。それを越えたあたりで、朗々とした歌声が聞こえてきました。昔懐かしい山の歌だったと思います。追いついてみると、4、5人の中高年のパーティーで、その先頭を歩くリーダーらしき男性が歌の張本人でした。ああ、こういう楽しい登り方もあるのだな、と感心させられました。自分のような音痴にはとてもまねできませんが。
急な登りが30分ほど続いた後、高谷池と黒沢池の分岐、富士見平に着きました。あの北海道の若者が休んでいて、「お先に行ってます」、と笑顔で黒沢池の方に出発して行きました。
富士見平というくらいだから、晴れていれば、富士山も見えるのかも知れません。しかし、今はガスが掛かって、雨脚はむしろ強くなってきたように感じます。これまで、雨具は上だけ着ていたのですが、ここでズボンの方もはきました。
予報では、9時過ぎからは太陽が出るはずなのが、逆に天気は下り坂になっていくようで、話が違うよな、とぶつぶつ愚痴が出てきます。
林間の巻道を抜けると、急に視界が開け、黒沢池に出ました。すると、茶臼山の峰をおおっていた雲が不意に切れて、一瞬、青空がのぞきました。湿原の草紅葉に陽が射して、燃えるような琥珀色に染まりました。これは、いい兆候だと、その時は思ったものです。
黒沢池ヒュッテから、いよいよ妙高山を目指します。ここから大倉乗越まで高度差約140m余りの急登となります。登り切ると、深い谷を挟んで、妙高山が圧倒的な高度感で聳えているのが目に入りました。ここから、長助池分岐まで100mほど下った後、聳え立つ急斜面を400m登り返す。そして、それを往復するのかと思うと、さすがに気が滅入りました。
山腹のトラバース道を、すべらないように気を付けて進むと、長助池分岐に出ました。このころから、再び雨脚が強くなり、妙高山はすっぽり雲におおわれてしまいました。さらに、気温が急激に下がって来たのです。
長助池分岐で、少し長い休憩を取りたかったのですが、じっとしていると寒さが襲ってきて、手がかじかんでくるので、ともかく動き続けるしかありませんでした。
いよいよ果てしない急登が始まりました。登っても、登っても先が見えない感じが続きます。気を紛らわすために、歩数を数えながら登りました。1000歩ごとに、高度計を見て、あと何メートル登れば頂上か、確認することにしました。
最初に1000歩登ったところで、高度計を見たら、いくらも高度が上がっていないので、がっくりしました。
そのうち、登山道に白いものがばらまかれたように散らばりました。何と、霰でした。吐く息が白いことに気が付き、かなりの寒気が入ってきていると感じました。しかし、余りの急登の連続で、寒さを感じる余裕さえない状態でした。
2000歩登ったあたりで、上から下りてくる人がいました。あの青年でした。富士見平以来人に会っていないので、人の姿を見て、ほっとしました。
青年は、もう10分も登れば頂上ですよ、と励ましてくれました。その言葉が力となり、登る元気をもらいました。彼のいうとおり、10分余りで、山頂にぽっかりと出ました。
「日本百名山 妙高山北峰 2446m」と書かれた立派な標柱が立っていました。しかし、残念ながら、山頂はガスに覆われ、何も見えません。さらに、空から白いものがちらちらと落ちて来るのに気が付きました。それは、まぎれもなく雪でした。9月のこの季節に、雪を見るのは、雪国に育った人間としても、初めての経験でした。降る雪を見て、霧の奥にあるであろう、最高峰の南峰まで行くのは断念しました。
山頂には10分ほどいましたが、先を考えて、そそくさと下山することにしました。下り始めて10分くらいすると、急に周りが明るくなり、上空に青空が広がり始めました。そして、雲におおわれていた山頂部分が、みるみるその姿をあらわしたのです。もう、10分か15分山頂にとどまっていれば、と悔しい思いがしましたが、後の祭りでした。
下りは足の疲れが出てきたためか、登りと同じくらいの時間を費やしました。さらに、大倉乗越の辛い登り返しを経て、黒沢池ヒュッテにようやくたどり着き、今日の最大の難所を越えることができ、安堵が胸のうちにひろがりました。
疲れた足を運びながら、今夜の宿泊地の高谷池ヒュッテに着いたのが、15時40分でした。高谷池の草紅葉の湿原の向こうには、斜陽に照らされた火打山が迎えてくれました。
高谷池ヒュッテの宿泊者は東京、千葉、名古屋からそれぞれやって来た人達で、私を含めてたった4人でした。皆さんとても感じのいい人達で、楽しく話をさせてもらいました。管理人の人も、親切で丁寧な応対をしてくれる人でした。設備も非常に整っていて、また訪れたいと思わせるいい小屋でした。
19日
朝の光の中に、火打山の秀麗な姿が、浮かび上がってきました。昨日とは打って変わって、またとない素晴らしい快晴の朝となりました。
ただ、食事を済ませて、出発しようとすると、火打の山腹を急に霧が登ってきて、あれよあれよという間に、雲におおわれてしまいました。
食事など後にして、さっさと登ればよかったと思いましたが、後の祭りです。昨日の妙高山頂の苦い経験が頭をよぎりました。しかし、ともかく、登るしかないと、歩き始めました。
昨日の冷え込みで、湿原の草原や木々の色づきが、こころなしか濃くなったように感じました。天狗の庭まで来ると、朝の光に照らされて、黄金色に燃え立つ草原が広がっていました。
そして、幸いなことに、登るにつれて、どんどん霧が晴れて、全貌を現した火打山が、夢のように聳え立っていました。
さらに、火打の肩越しには、うっすらと雪を被った山並みが、遠く連なっているのが見えてきました。北アルプスの山々です。高度を上げるにつれて展開する素晴らしい景色に、つい立ち止りカメラを構えずにはいられません。
山頂に立つと、360度の絶景が待っていました。西には、うっすらと冠雪した白馬、五竜、鹿島槍と連なる後立山連峰、さらに、槍、穂高までの北アルプスの全貌がくっきりと眺めることができます。
そして、すぐ間近には、山腹から一筋の噴煙を出している焼山が、秀麗な姿を見せてくれます。目を南東に転じると、昨日登った妙高が、堂々と大きく聳えています。さらに、意外な近さに高妻山が独特な山容を見せてくれています。7月に登った時は、ほとんど雲に閉ざされていた高妻山も、今日は晴れ晴れとしていて、くっきりと見えます。
その高妻山と妙高山のちょうど中間あたりの、遠い彼方に、富士山がうっすらと浮かんで見えました。すると、その右手の連山は八ヶ岳、さらに、その右手奥は南アルプスではないか。北岳、間ノ岳、農鳥岳の白峰三山がはっきり確認できます。
これだけの展望を目にしたのは、初めてのことかもしれません。久しぶりに、胸が高鳴り、いつまでもここで、この景色を独占したい気分になりました。
この絶景を前に、時間はあっという間に過ぎて行きます。去りがたい思いを断ち切って、下山に掛かりました。白く連なる北アルプス、眼下に広がる天狗の庭の草紅葉など、何度も何度も足を止めながら下りました。
天狗の庭まで下って来て、振り返ると、火打が何とも綺麗な立ち姿を、池塘に映して佇んでいました。妙高山も立派な姿はしているけれど、山の姿、美しさでは、火打が上だと思いました。
高谷池ヒュッテから笹ヶ峰までは、一気に下りました。金曜日である上に、晴天とあって、登ってくる人達に、大勢すれ違いました。上の景色は素晴らしいですよ、とついつい、話しかけてしまいました。
笹ヶ峰まで下って、車に乗る前に、かつて何度もテントを張った、キャンプ場に立ち寄ってみました。季節はずれの、しかも平日のせいでしょうか、人影もなく、閑散としていました。
ここには家族とともに、この4月に亡くなった愛犬もよく連れてきたものです。嬉々としてテントの周りを飛び回っていた、まだ若く元気なその姿が、不意に幻のように蘇ってきました。
「想い出の山」写真&レポートコンテスト 「山行記録部門」 by モリパーク アウトドアヴィレッジ(MOV)
高谷池ヒュッテで同宿の東京の者です。早朝の火打山頂は晴れで槍までの眺望がありました。妙高経由で下山するので早出したのが幸いでした。でも、紅葉も始まっいて、綺麗でしたね。もしや、時計を拾っていただいたのは、あなた様でしょうか。ありがとうございました
あの朝の火打山頂の眺望と、紅葉は本当にすばらしく、いまだに目に焼き付いています。時計は木道の真ん中に、目につく感じで落ちていました。山頂にいた2人に聞いてみましたが、違うというので、途中ですれ違ったあなた様のものと推測して、山小屋に届けた次第です。あれから妙高にも登られたのですか。すごいですね。
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