<噴火災害> 御嶽山
- GPS
- 09:45
- 距離
- 15.0km
- 登り
- 1,470m
- 下り
- 1,478m
コースタイム
- 山行
- 7:44
- 休憩
- 2:06
- 合計
- 9:50
9月27日11時52分、御嶽山が噴火しました。
噴火した当時、僕は山頂から約30m程下った場所でお昼ご飯の支度をしている時、まさに突然の出来事でした。
消防隊や自衛隊により、1000人を超える規模で捜索が続けられておりますが、1週間が経過した現在(レポート作成時)も尚、数多くの行方不明者が山頂付近に取り残されております。
天候の回復、捜査活動の再開、捜索活動に携わっておられる全ての方々の安全。
また、亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、事態の終息を願って止みません。
このような状況の中、登山レポートを公開するべきかどうか、大変悩みました。
その時の御嶽山の状況を記録しお伝えする事もまた必要な事だと思い、公開させて頂いております。
今回、ここでお亡くなりになられた方々が、最後に見た美しい御嶽山の紅葉と絶景です。
この災害でお亡くなりになられた方々のご冥福を祈りながら、合わせてご覧頂下さい。
<行動記録>
前日 ー9月26日(金曜日)ー
21:30 マイカーで自宅を出発。R19〜R361を経由。
23:30 御嶽山黒沢口登山道、中ノ湯駐車場に到着。
同じ黒沢口でも、中の湯からアタックする場合、御岳ロープウェイで上がるのに比べて1時間程、樹林帯を歩かなければならないので、普段は利用者が少く、この時間であれば普段なら土日でも3〜5台程度。
紅葉最盛期、駐車車両はすでに15〜16台と言ったところ。
明日は多くの登山客で賑わいそうだ。
25:00 就寝
当日 −9月27日(土曜日)−
4:30 起床。
今日の朝飯は道中のコンビニで買ってきたおにぎりとサンドイッチ、それと紅茶。
5:30 中の湯登山口より、登行開始。
6:30 七合目行場小屋
ロープウェイから上がって来る人達との合流地点。
尚、この時期ロープウェイで上がると始発は7時、ゴンドラ10分+歩き10分。
つまり、7時20分までにここを通過出来れば、登山渋滞に巻き込まれる事無く、常に自分のペースで歩く事が出来ます。
7:20 八合目女人堂
土岐市の方を中心とした、中高年の山好きの集まり「TOKIO」の方々と道中しばらくご一緒させて頂き、山のお話などしながら、楽しく登らせて頂きました。
ここから三ノ池まで、御嶽山の中でも最も紅葉の綺麗な巻き道を進みます。
まさに紅葉最盛期。
次にこの紅葉が見られるのは、何年先になる事でしょうか…
8:57 三ノ池
10分程休憩して三ノ池を周遊して五ノ池へ向かう。
ここから五ノ池までの区間は、客人を招くレッドカーペットのように、足元は真っ赤に紅葉している。
9:30 五ノ池
例年なら夏の間に水が枯れてしまう五ノ池。
今年はまだ、多くの水が残っています。
10:30 二ノ池
ここから一ノ池を左周りに巻いて地獄谷方面に足を進める。
いわゆる、お鉢巡りで剣ヶ峰山頂を目指す。
11:28 地獄谷通過
普段から噴煙と硫黄臭の漂うエリア。
平常通りである。
11:30 御嶽山剣ヶ峰山頂(3067m)
紅葉最盛期と言う事で、山頂はいつもより、たくさんの人達で賑わっている。
お互いに記念写真のシャッターをお願いしたりして、自分のシャッターも快く引き受けて頂きました。
友達同士だったり、幸せそうなカップルや子供連れのご家族、いわゆる中高年の登山者と言われる方たち。
食事の支度をしているお父さんと、じっとバーナーの炎を見つめながらご飯を楽しみに待っている子供。
全ての人が、本当に生き生きとしています。
特別な威厳があり、それでいてとても雄大で、多くの年齢層を優しく受け入れてくれる。
そんな強く優しい御嶽山でした。
11:40 頂上山荘付近で昼食
もうすぐお昼時どき。
落ち着いてご飯を食べたいので、普段なら風の影響が少なく地面も平らな二ノ池辺りで食事をとる事が多い。
今回は一人なのでスペースもあまり要らないし、時には雲海を眺めながらの食事も気持ちがいいので、剣ヶ峰頂上山荘から10mくらい二の池方面に下りた登山道脇で食事をとる事にした。
ザックを置いて、岩をテーブル代わりに昼食を並べ、足元でJetboilを使いお湯を沸かす。
早朝からGPSのログをとり続けているスマートフォンの電池が50%まで低下していたので、モバイルバッテリーに接続し充電を行う。
お湯が沸き、カップラーメンに注ぎ、しばらくの待ち時間。
雲海に浮かぶ駒ヶ岳を写真に収めようと、カメラを手にしてファインダーを覗きこんだ、その直後・・
11:52 御嶽山噴火
背後から、ドドド…という音が聞こえたので振り返ると、頭上には真っ白な噴煙が天高く立ち上がっていました。
その噴煙の撮影を始めようと、カメラのモードを動画に切り替えたが、身の危険を感じて荷物はそのままに二ノ池方面へ駈け出した。
11:55 大きな爆発音が聞こえたので振り返ると、大量の石が天高く舞いあげられていた。
そこで、咄嗟に身を隠す場所を探し、直径1~1.3mくらいの、かろうじて頭と両肩を守れる程度の岩の飛びついた。
身を守るにはとても頼りない大きさであったが、そこしか無かった。
すぐさま大量の石が、もの凄い勢いで降り注いだ。
爆発音から噴石が到達するまで、おそらく2~3秒も無かったと思う。
今まで山に登っていて、何度か落石の危険に遭遇した事はあるが、スピードが桁違いであった。
30cm~50cm程の大量の石が、目にも止まらない速さで降り注ぎ、地面に叩き付けられて弾け飛ぶ。
昔、戦争映画で見たアパッチからの機銃攻撃そのものであった。
その岩に頭をこすり付けるように小さくなり、「ワーーーー」と叫んだのを覚えている。
恐怖のあまり、正確な時間は分からないが30秒~1分して、噴石が降り注ぐ音が止んだので恐る恐る頭を上げると、石同士が当たって砕けた際に起きた白い土煙と火薬のような臭いがしていた。
11:56 ゆっくり立ち上がり、自分の足元を見渡した。
そこに自分自身の遺体が横たわっていないので、どうやら自分はまだ生きているのだと確信した。
そうしている間にも、またいつ次の爆発が起こるか分からない。
次にもし同等の爆発が起これば、もう助かる事は無いだろうと思い、また二ノ池方面へ走り出した。
最後の記録になるかも知れないと思いカメラの撮影ボタンを押し、逃げながら録画を開始した。
逃げながらも、何度かドドーンという音を聞くたびに背後を振り返り、確認するが、噴煙は勢いはとどまる事を知らない。
噴石の攻撃も完全に収まった訳でなく、時折、「ブン!」と音を立てて、見た事もないスピードで飛んでくる。
また、ヒューとロケット花火のような音を立てて頭上から30〜50cm、中には1m近くありそうな大きさの噴石が落ちては、地面に叩きつけられてははじけ飛ぶ。
11:59 噴火から7分後、ついに噴煙に呑み込まれ何も見えなくなる。
その後、登山道に張られたロープを伝い下りる。
12:05 しかし、そのロープも途中で途絶え、何も見えず身動きが取れないので待機する以外に方法が無い。
この暗さ、真夜中の暗さとも全く違う。
「暗い」と言うよりも「黒い」、「漆黒の闇」とか「暗黒の世界」とでも表現したら良いのでしょうか?
手元のカメラの液晶モニタすら見えない、光を全く通さない世界です。
いつ終わるのか全く推測がつかない中、ただ、ひたすら恐怖に耐える。
12:07 状況は更に悪化。
喉が痛くなる程強烈な硫黄匂を含んだ高温の火山性ガス。
サウナのような熱い空気に包まれ、ボーーーという不気味な風の音。
まるで、工業用のジェットヒーターの前に居るかのようである。
とても息苦しい…この状態が何十分も続けば確実に死ぬであろう。
このまま窒息死するのか…ガスの温度が上昇し焼け死ぬのか…今尚降り注ぎ落ちてくる噴石に当たって死ぬのか…ただ、死を待つばかりでした。
生きる伸びる手段が見つかりませんでした。
12:10 事態は急変します。
今までの熱い空気とはうって変り、今度は冷たい風が吹き付け、呼吸も楽になってきました。
そしてまた、ドドーンと音がし始めましたが、山頂方向ではなく、頭上から聞こえてきました。雷です。
噴火によって急激に温められた空気が上昇気流を引き起こし、巻き上げられた火山灰が、泥の雨となって降り注ぎます。
放射能こそは含まないものの、原子爆弾投下の後に降り注いだ黒い雨と同じ原理だそうです。
当然、恐怖は続いていますが、熱風が収まり、この冷たい雨が空気中を漂い視界を遮っている火山灰を洗い流してくれるかも???
もしかしたら、助かるかも知れない。
数分前の、ひたすら死を待つ恐怖とは異なり、生きる為に待ちました。
山で雷に遭遇して、雷が怖いと思わなかった事は初めてです。
しかし漆黒の闇の中、無我夢中でロープを伝い降りて来たものの、ここが何処なのか? 小屋まではまだ遠いのか近いのか?全く分からない。
不安と恐怖の中、視界が開けるのを待ちます。
12:20 目の中には火山灰が大量に入り、うっすらと目を凝らすのが精一杯。
しかし、よく目を凝らすと、ほんの少し周りは明るくなり初め、稜線の先に四ツ又分岐の道標が僅かに見えた。
何度も登った御嶽山、稜線の形と現在地と避難小屋の方向が分かったので、最短距離で分岐に向かって走りだします。
12:30 以前視界の悪い中ですが、最短距離で九合名の避難小屋である覚明堂に飛び込みました。
この時期、この覚明堂は現在営業期間外ですが避難小屋として機能していて、およそ60名程の人が避難していました。
そして、ようやく呼吸も落ち着いた頃、自分の近くにいた男性がザックを背負い身支度を整えていました。
ほんの少し見えるようになったとは言え、まだまだ視界の悪い中、外は非常に危険な状態が続いていたので、その男性の方に
「え?もう下りられるんですか?」と尋ねた所、
「一緒に居た、友人が下りてこない…この場所が分からなくて迷っていると思うから。今から探しに行ってきます」と言い出しました。
命からがら逃げ込んだばかりの自分、今から上に上がるなんて死にに行くようなものだと思いました。
「どちらから逃げて来られましたか?」と尋ねると、
「上からです」と答えました。
「上って、剣ヶ峰ですか?僕は今、山頂から下りて来ましたが、途中で道に迷ってるような人は見かけませんでしたよ。今は登る時では無いです。もし、あなたが今上に上がって、万一戻ってこられない様な事にでもなれば、一体どれだけ多くの人が命の危険を冒してあなたを探しに行かなければならないか、考えてください。今は下りる時です。その方もきっと二ノ池方面に下りてると思いますよ。」と告げると
「そうだな…」と俯き、涙を浮かべながらザックを降ろし、山頂方向に向かって
「無事でいろよー」と呟いていました。
その、はぐれた方が無事だったのかどうかは分かりません。
実際、ここに来るまで、自分はそのような人は見ていません。
しかしそれは、真っ暗で何も見えない中、ロープを伝って下り、その後もほとんど視界の利かない中、勘と経験だけで小屋に辿り着いた状況の中での話です。
もしかしたら、すぐ近くで怪我でもされて身動きが取れない中、友人の助けを待っていたかも知れません。
もしかしたら、「あの時あんなヤツの言う事聞かずに探しに行ってれば…」と僕を恨んでるかも知れません。
しかし、その時点でそこにいる全ての人は下りる時でした。
その方が無事に下山され、再会された事を信じています。
15分近く待機していると、視界も徐々に開けてくる。
更に視界も良くなったので、石室山荘まで走って移動する事にした。
「今なら動ける!」そう思った。
下山指示は待とうとは思わなかった。
下界の判断よりも、噴火の恐怖を目の当たりにした自分の判断を強く信じた。
12:44 石室山荘
たどり着くと、丁度小屋のご主人が警察や消防と連絡を取り合いながら指揮をとって下さっているところでした。
そして、僕の顔を見るなり「あんた、先ず顔洗っておいで。そのまま畳の上も土足でいいからね」と…
身体全体は火山灰で真っ白、顔などは相当ひどかったのだと思います。
うがいをし、顔を洗い、血の気の通った自分の顔を鏡で写した。
そこで初めて生きながらえたのだと実感出来、ここで下山指示を待つ事にした。
13:20 下山指示
石室山荘に逃げ込んでから25分。
小屋の主人から「只今、消防より避難指示が出ましたので、準備の出来た方から順番に避難を開始して下さい。」と、避難指示が告げられました。
みんな一列になって、黒沢口(御岳ロープウェイ)へ、踏み固められて粘度のようになった登山道をゆっくり一歩ずつ下ります。
火山灰は踏み固められると粘度のようになり、足元は滑りやすく、時には尻餅をついてしまっている方の姿もありました。
13:50 八合目女人堂
ここでは、小屋のお兄さんが
「みなさん、全員ロープウエイへ避難して下さい。歩ける方はそのまま先に進んで下さい。疲れた方はどうぞこちらで休んで行って下さい。」
と避難誘導してくれていました。
14:30 行場小屋
14:40 御岳ロープウェイ飯森駅
このような状況なので、ロープウェイはもちろん運休中です。
旧スキー場跡の作業道を歩いて下ります。
15:20 中ノ湯駐車場
車のカギ(スペアキー)は山頂に置き去り。
メインキーは車の中に隠してあったので、三角窓を割ってロックを解除し下山致しました。
天候 | 快晴(一時、噴火による雷雨) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
11時26分、御嶽山が噴火しました。 噴火から1週間たった現在も、御嶽山全域が危険区域として規制がかけられております。 また、周辺区域の河川でも火山灰による土石流の警戒が必要です。 http://www.data.jma.go.jp/svd/vois/data/tokyo/STOCK/level/Ontakesan.pdf#search='%E5%BE%A1%E5%B6%BD%E5%B1%B1+%E5%85%A5%E5%B1%B1%E8%A6%8F%E5%88%B6' |
写真
感想
UPした動画にはありませんが、回し続けたカメラに向かって、沢山の人にメッセージを吹き込みました。
「親孝行、何一つしてやれなくてごめんね」とか、「大切にしてやれなくてごめんね」とか…最後は全て「ごめんね」で終わっています。
やはり、誰でも死ぬ時は「ありがとう」と言って死にたいものです。
その意味を少し考えてみましたが、年を取り寿命を迎え、温かい布団に包まれて家族に看取られながら死んでゆく、いわゆる大往生したのなら「ありがとう」安らかに言えるだろう。
しかし、山で死ぬなんて…そして親よりも先に死ぬなんて…、両親や、山を愛する友人、スキー・スノーボードを通じて共に自然と向き合いながら過ごしてきた仲間、今まで僕に関わってくれた人、全てに、本当に申し訳無い気持ちばかりが大きくて、最後は「ごめんね」という言葉しか出て来ませんでした。
八合目の御社でお礼参りをしましたが、もう少し生きていろんな人に恩返しと償いをしろ!
と言われた気がしました。
<その後>
噴火から5日後、御嶽山山頂付近から僕の荷物と思われるものが数点見つかったとの連絡があり、木曽町の上田小学校まで取りに行って来ました。
いろいろ事情聴取された後、マスクと手袋を手渡され、部屋に案内されます。
部屋の中は、強烈な死臭が漂い、部屋に入った瞬間に涙が溢れ出しました。
8〜10個程度の長机の上には置かれているものは真っ白な灰を被り、またそのほとんどが、ほぼ例外なく噴石によってズタズタな状態です。
すぐに走って逃げだしたとは言え、このような状況下、怪我一つなく生きて下山出来た事は未だに奇跡としか考えられません。
本当に生きているのが不思議でたまりません。
アルミの空き缶のようにペシャンコになったステンレスのマグカップだったり、携帯電話、カメラ、帽子、靴、など…
悲惨な光景が頭に浮かび、言葉になりませんでした。
現在、天候の影響で捜索は中止となっておりますが、数日前に自衛隊員、消防隊員の方々が個人を捜索する手掛かりになるものをピックアップして、命がけで運び出してきたものです。
それらの中から、自分のスマートホンとデジカメを見つける事ができましたが、もちろん壊れて使えません。
でも、中のSDカードはどちらも読み取りが出来ました。
今日で噴火から1週間となりますが、未だに山の上に残されている方々、事故以来現場付近で泊まり込んで帰りを待たれているご家族の心中を察すると、とても胸が締め付けられます。
天候の回復、捜査活動の再開、捜索活動に携わっておられる全ての方々の安全。
また、亡くなられた方々のご冥福をお祈りすると共に、事態の収束を願って止みません。
<僕が生きる為にとった行動…>
全速力で逃げて下さい!
どこに逃げるのか?
どこでもいいです。
とにかく、一番危険の回避が出来そうなところを探して下さい。
自分の選択した優先順位です。
,箸砲く遠く、全速力で…
避難小屋を目指す
1れる
屬箸砲く遠く、全速力で…」
自分の取った行動、先ずはとにかく逃げました。
とにかく火口から遠くへ走りました。
一番近くの避難小屋は登り返して10m。
本来はそちらのほうが正しいのかどうかは分かりませんが、噴火が起こっている中、例え1mでも登り返すという事は、何故だか選択肢に入って来ませんでした。
◆岷れる」
噴石が舞うような、絶対絶命の危機の遭遇した時には、「どこでもいい」出来るだけ大きな障害物、たとえそれが30cmほどの岩でも構わない(…いや、しょうがない)です。
とにかく、頭を守って、身体を小さくして噴石に当たる危険性を少しでも軽減して下さい。
「避難小屋を目指す」
避難小屋には多くのものがあります。
ヘルメットや水、救急救命の機材など。
そして何より、人がいます。
多くの人の中に居る事で、何となく安心出来ます。
何となく安心?これ、とても重要です。
一人ぼっちだと、パニックに陥って冷静な判断が出来なくなる危険性が高いです。
そして、人が多いほど情報が多く入ってきます。
冷静な判断をする為に、情報はとても重要だと思いました。
登山計画を立てるうえで 避難小屋の場所は必ず把握し、登って来るときには
、避難小屋からの距離(位置関係)を常に把握した状態で登りましょう。
<「正常性バイアス」について>
とても興味深い記事を見つけました。
http://matome.naver.jp/odai/2141294966760088901?&page=1
「正常性バイアス」
聞きなれない言葉で、聞いても明日には忘れてしまいそうな言葉ですが、その心理と心構えを知っておいて頂きたいと想います。
御嶽山噴火から5週になりますが、 噴火当時から下山に至るまで、その時の恐怖と情景は今尚、鮮明に記憶に残っています。
2014年9月27日11時52分、細かな地震のような揺れと共に真っ白に立ち上る噴煙。
その天高く立ち上る噴煙を見た瞬間!
「噴火だ」とは判りました。
たまたまその時、手にしていたカメラを動画モードに切り替え撮影を始める。
目の前で噴火が起こっているのに、これが危険だと認識出来ていませんでした。
この数秒間はまだ、「正常性バイアス」が働いていたと思います。
が、その天高く高く立ち上る噴煙と舞い上げられる噴石を見た瞬間、「ヤバイ!」と思いとっさに走り出しました。
死ぬかも知れない…
本気でそう思いました。
山で死ぬことに対して、本当に悔しい想いでいっぱいでした。
カメラを動画のまま回し続けたのも、そんな悔しい想いを伝えたくて、その時の状況を撮影し続けました。
ただ、生きる事だけは絶対に諦めてはいなかったです。
「絶対に生きて帰ってやる!」
と強く願い、とにかく走りました。
その後、たくさんのテレビ局や新聞記者からの取材に、何度も応じてきました。
そして、その中の数名の記者の方から
「どうして、とっさに逃げようと思ったのですか?」
と聞かれました。
ただ単純に「危ない!」と思ったから逃げたんです。
「何でそんな事聞くのかな?」
その質問自体、とても不思議な質問だと思いました。
ただ、その後よく考えてみると、自分が走って逃げてる間、確かにあの危険な状況下で立ち止まって、噴石や噴煙をただ茫然と噴煙を眺めてる人もいました。
広げてある荷物を片付けている方もいました。
その方達はその後、無事下山されたのだろうか…
何故あの人達はただ立ち止まって見ていたのだろう?
どうして、一目散に走り出さなかったのだろう?
そんな事を考えてました。
これが「正常性バイアス」の恐ろしさなのでしょう。
「何故とっさに逃げようと思ったのですか?」
と質問してきた記者の方は、きっとこの事について聞きたかったのだと思います。
この逃げ遅れの心理は誰にでもあるもので、落ち着いて行動できる人は10〜15%らしいです。
何故自分が早い時期に正常性バイアスから抜け出す事が出来たのかは判りません。
しかし、非日常的な出来事が目の前で起こった時、人にはこのような心理が働くことを知って頂きたいと思います。
今回自分が生還出来たのはそれだけは無く、もちろん運も大きな要因の一つです。
一ノ池方面から生き延びた山岳ガイド方はこう言っています。
「それぞれが与えられた運を最大限に生かすことが出来た。噴石から逃げ切れた者が生き残り、残念ながら逃げ切れなかった方が亡くなる。そんなシンプルな状況だった。」
非常に共感致しました。
山に限らず、万が一災害に遭遇した時、皆様が与えられた運を最大限生かせるよう、是非読んでおいて頂きたい記事です。
コメント
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はじめましてtoppo3067さん。私も当日、御嶽山の八丁ダルミで噴火に遭遇したものです。toppo3067さんの体調はいかがでしょうか?私はようやく咳が小康状態になり日常生活をするのに今のところ支障はありません。
新聞、テレビ等で亡くなられ、また今もなお行方不明の方のニュースに接するにつけとても苦しいです。
toppo3067さんの回復をお祈りするとともに、全ての方が早く下山できますことを心から願ってます。お体お大事にして下さい。
denemonさま、はじめまして。
八丁ダルミの方は特に噴石の被害の多かった場所のようですが、ご無事で何よりです。
私の方は、おかげさまで怪我や呼吸障害もございません。
ご心配頂き誠にありがとうございます。
denemon様も、どうかお身体にお気を付け下さい。
観測史上最大とも思われる大型台風が接近しており、御嶽山下流では土石流の発生も高まっているようです。
今尚山頂付近に残された方々、捜索に携わっておられる全ての方々、近隣住民の方々、心配事が尽きません。
toppo3067さん、大変な瞬間に現場におられたことにびっくりしています。
先ほどtoppo3067さんを特集した「報道ステーションSUNDAY」も拝見しました。
確かに無事に下山されたことが奇跡のようです。
ただ、噴火の瞬間にザックも顧みずに走りだした一瞬の判断や岩かげに隠れ頭を守ったことなどその瞬間での的確な判断が身を守ったものだと痛感しました。
また全速力で走りだしたtoppo3067さんの強靭な体力も自分を救ったのだと思いました。
是非広く皆さんに今回の教訓をお伝え頂きたいと思います。
ご無事で何よりでした。
hakkutuさん
ありがとうございます。
ただ、この時全ての人は、その時考えられる最良の手段を選択しています。
その時居合わせた場所であったり、たまたま逃げた方向であったり、風の向きであったり…
中には、ザックで身を守る事で生きられた方もみえます。
自分はたまたま、食事中と言う事でザックを置いていたので、身軽だった為に全速力で走りました。
全ては、絶体絶命の中で起こった奇跡です。
噴火に遭遇する事などは滅多に無い事ですが、山では突然の雷雨や濃霧などで避難を余儀なくされる事は十分にありますよね。
その為にも、山に登る際には山の地図やガイドブック、更にヤマレコ等で最新の情報を入手するなどして、ルート状況、避難小屋の位置などを地図に書き込み、また頭にもしっかりと叩き込んでおく事の重要性を再確認しました。
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