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Yamareco

記録ID: 5292763
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
北陸

【白山周辺】福井側から薙刀山&野伏ヶ岳 (草池谷の大トチと,ゼンクボの平)

2023年03月19日(日) [日帰り]
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GPS
--:--
距離
29.4km
登り
2,016m
下り
2,000m

コースタイム

日帰り
山行
13:20
休憩
0:00
合計
13:20
4:40
60
下打波ゲート
5:40
5:40
130
中村口
7:50
7:50
200
薙刀山西尾根の取り付き
11:10
11:10
20
11:30
11:30
70
草池谷左俣へ下降(大トチ探索)
12:40
12:40
60
ゼンクボの平
13:40
13:40
160
16:20
16:20
60
野伏ヶ岳西尾根から林道に着地
17:20
17:20
40
中村口
18:00
下打波ゲート
天候 晴れ
過去天気図(気象庁) 2023年03月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
福井県道173号線(上小池勝原線)の下打波発電所前にある冬季閉鎖ゲート前に駐車(路肩に止めるしかなく,スペースはあまりない)。同県道は4/28まで冬季閉鎖中。
コース状況/
危険箇所等
【アプローチ(県道上小池勝原線〜美濃又川沿いの林道)】
・ アプローチの県道(上小池勝原線)は冬季閉鎖中だが,先週よりも格段に雪解けが進んでおり,最初の200mほどを我慢すれば,あとは9割の区間で自転車を使える。ただし,ロックシェッドの箇所が雪崩デブリによる片斜面となっており,そこは自転車を担いで越える必要があるので注意。
・ 美濃又川沿いの林道は,県道から分岐してから500mほどの地点で現れる路盤崩壊によりほぼ廃林道となっており夏季は藪がすごいが,この時期は藪もなく快適に歩ける。上記の路盤崩壊箇所(現在,復旧工事中)と,薙刀山西尾根のすぐ手前で現れる大崩壊箇所はやや切れ落ちているので慎重に通過。

【薙刀山西尾根】
・ 取り付きの橋は消失しており渡渉する必要があるが,それほど川幅が広くないので,飛び石で容易に渡れる。尾根末端は岩壁状となっているが,末端やや左手に右上バンドがあり,それを辿って尾根に乗ることができる(古い鎖とトラロープあり)。尾根上は薄い獣道があるものの藪っぽく,雪がつながるまで我慢。この尾根は雪解けが早いようで,今回は標高1100mほどでやっと雪がつながった。稜線手前にやや痩せている区間があるが,それ以外は快適に歩行可能。

【草池谷左俣の源頭〜ゼンクボの平】
・ 草池谷は美濃又川左俣(中の水谷)が標高点699mで二俣に分かれたあとの右俣のことで,草池谷左俣は薙刀山の南面に,同右俣は野伏ヶ岳の西面にそれぞれ突き上げている。今回は草池谷左俣の源頭に立つという大トチノキ(昨年7月の遡行時に発見できず,心残りだった)を再探索するために下降したが,滝も多く険しい谷であり,言うまでもなく雪崩の危険もあるので,今回のように目的があって敢えて下るという場合以外は下降しないほうが無難。
・ ゼンクボの平は,薙刀山と野伏ヶ岳の鞍部の西側に広がる平(薙刀平から稜線を挟んで西側にある平,と言ったほうが分かりやすいかも)。ブナの森がすばらしく,ブナ好き,平好きであればほぼ間違いなく一目で魅了されると思う。この時期であれば稜線のどこからでも行き来可能。

【野伏ヶ岳西尾根】
・ 正確には野伏ヶ岳の南の小ピークから西に派生している尾根。野伏ヶ岳山頂〜当該小ピークの間は雪庇の連続する痩せ尾根となっているが,石徹白側(東側)の傾斜が緩く悪場はそちらから巻けるので,見た目に比して通過は難しくない。
・ 西尾根自体は穏やかで大きな危険個所のない尾根だが,稜線直下に一箇所だけ痩せている区間があり,特に北側が切れ落ちているので注意。南側は若干傾斜が緩いので,そちら側をトラバース気味に通過すると安心。また,尾根末端は崖状になっているところが多く,よく観察して慎重にルートを取らないと林道に降りる際に難渋するので注意。
今回再探索する大トチがあると思われる地点を地図に落としてみた。増永迪男氏「福井の山150」「霧の森」や,福井岳人倶楽部「越の谷」の記述からすると,赤丸の付近に大トチがあるはずと推測。雪の草池谷左俣を下降して,当該地点に向かうことにした。(地図はクリックで拡大できます)
今回再探索する大トチがあると思われる地点を地図に落としてみた。増永迪男氏「福井の山150」「霧の森」や,福井岳人倶楽部「越の谷」の記述からすると,赤丸の付近に大トチがあるはずと推測。雪の草池谷左俣を下降して,当該地点に向かうことにした。(地図はクリックで拡大できます)
県道上小池勝原線は,先週と比べ物凄いスピードで雪解けが進んでおり,9割くらい自転車を使うことが出来た。あと1〜2週間ですっかり雪はなくなってしまうのではないだろうか。
県道上小池勝原線は,先週と比べ物凄いスピードで雪解けが進んでおり,9割くらい自転車を使うことが出来た。あと1〜2週間ですっかり雪はなくなってしまうのではないだろうか。
あっという間に中村口に到着。やはり自転車は偉大だ。オール歩きだった先週とはエライ違い…。
あっという間に中村口に到着。やはり自転車は偉大だ。オール歩きだった先週とはエライ違い…。
中村口から前川橋を渡り,美濃又川沿いの林道に入る。起点から500mほど進んだところにある崩壊箇所(写真)は,昨年夏に見た時よりも格段に工事が進んでいた。林道の復活も近いかもしれない。
中村口から前川橋を渡り,美濃又川沿いの林道に入る。起点から500mほど進んだところにある崩壊箇所(写真)は,昨年夏に見た時よりも格段に工事が進んでいた。林道の復活も近いかもしれない。
残雪の美濃又川を眺めながら廃林道を歩く。夏季は藪っぽい獣道のようになっているが,今の時期は藪は全て枯れて,快適に歩ける。
残雪の美濃又川を眺めながら廃林道を歩く。夏季は藪っぽい獣道のようになっているが,今の時期は藪は全て枯れて,快適に歩ける。
取水施設の手前にあるいつものお地蔵さんに手を合わせ,山行の無事を祈る。
取水施設の手前にあるいつものお地蔵さんに手を合わせ,山行の無事を祈る。
取水施設通過。
取水施設のある二俣からは,左俣の中の水谷の林道に入る。この林道も無雪期はすごい藪だが,今は同じ道に見えないくらいすっきりしている。
取水施設のある二俣からは,左俣の中の水谷の林道に入る。この林道も無雪期はすごい藪だが,今は同じ道に見えないくらいすっきりしている。
この橋も,夏は藪をかき分けてようやく見つかるくらいなんだけど,本当に同じ場所に見えないな…。
この橋も,夏は藪をかき分けてようやく見つかるくらいなんだけど,本当に同じ場所に見えないな…。
フキノトウが頭を出していた。春だねぇ。
フキノトウが頭を出していた。春だねぇ。
もうすぐ登路とする薙刀山西尾根の取り付き,というところで,林道の大崩壊箇所が現れる。谷底まで少し高さがあり,ガレた斜面を慎重に通過。
もうすぐ登路とする薙刀山西尾根の取り付き,というところで,林道の大崩壊箇所が現れる。谷底まで少し高さがあり,ガレた斜面を慎重に通過。
昨夏に遡行した草池谷(写真のやや右寄りで出合っている谷)の出合に到着。左手奥の尾根が,今回取り付く薙刀山西尾根。
昨夏に遡行した草池谷(写真のやや右寄りで出合っている谷)の出合に到着。左手奥の尾根が,今回取り付く薙刀山西尾根。
中の水谷を飛び石伝いに渡り,薙刀山西尾根の取り付きに立つ。尾根末端は岩壁状で,一見,取りつくシマもなさそうに見えるが…
中の水谷を飛び石伝いに渡り,薙刀山西尾根の取り付きに立つ。尾根末端は岩壁状で,一見,取りつくシマもなさそうに見えるが…
尾根末端のやや左手に灌木の生えたバンドがあり,そこによじ登って右上していく。(写真はバンドを登りながら振り返ったところ)
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尾根末端のやや左手に灌木の生えたバンドがあり,そこによじ登って右上していく。(写真はバンドを登りながら振り返ったところ)
このちょっとした岩場を乗り越えれば,やや細いものの安定した尾根に出られる。
このちょっとした岩場を乗り越えれば,やや細いものの安定した尾根に出られる。
尾根に出てほっと一息つき,ふと左手の中の水谷側を見ると…うおっ! 中の水谷の枝谷に,デカイ滝が掛かってる! この2段だけでも,30〜40m位あるのではないだろうか。
尾根に出てほっと一息つき,ふと左手の中の水谷側を見ると…うおっ! 中の水谷の枝谷に,デカイ滝が掛かってる! この2段だけでも,30〜40m位あるのではないだろうか。
さらに尾根を登りながら眺めると,さきほどの滝の上にさらに滝が何段か続いているのが観察できた。これは大物だ。正直,この付近の枝谷に滝があるという記録を見た記憶がないので,少なからず驚いた。夏に登りに来よう。
さらに尾根を登りながら眺めると,さきほどの滝の上にさらに滝が何段か続いているのが観察できた。これは大物だ。正直,この付近の枝谷に滝があるという記録を見た記憶がないので,少なからず驚いた。夏に登りに来よう。
滝の話は置いといて,目の前の尾根ですが…。この尾根は細いためか雪解けが早いようで,普通に藪尾根が続く。ベルグラ山の会の「福井の雪山供廚任蓮い海糧根の下部に山道があることになっているのだが,実際は獣道程度に過ぎない。早く雪が出てこないかな…。
滝の話は置いといて,目の前の尾根ですが…。この尾根は細いためか雪解けが早いようで,普通に藪尾根が続く。ベルグラ山の会の「福井の雪山供廚任蓮い海糧根の下部に山道があることになっているのだが,実際は獣道程度に過ぎない。早く雪が出てこないかな…。
藪の中にもマルバマンサクの花がところどころ薄黄色に咲いて,春の訪れを告げている。
藪の中にもマルバマンサクの花がところどころ薄黄色に咲いて,春の訪れを告げている。
やっと雪がつながり始めた…。この尾根は,北側の知土谷側は立派なブナなど自然度が高いのに,南側の草池谷側は一度伐採が入ったような雰囲気で細い木が多い。あの険しい草池谷に伐採が入るとはにわかに信じられないのだが…不思議だ。
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やっと雪がつながり始めた…。この尾根は,北側の知土谷側は立派なブナなど自然度が高いのに,南側の草池谷側は一度伐採が入ったような雰囲気で細い木が多い。あの険しい草池谷に伐採が入るとはにわかに信じられないのだが…不思議だ。
1150m付近の緩傾斜帯に乗ったところで,やっと雪が完全につながった。太いブナの木が増え,雰囲気も良くなる。
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1150m付近の緩傾斜帯に乗ったところで,やっと雪が完全につながった。太いブナの木が増え,雰囲気も良くなる。
左手には美しい白山の眺め。
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左手には美しい白山の眺め。
右手の眼下には,草池谷左俣の深い谷間に,20m滝から始まる連瀑帯が見える。昨年の夏,あの滝場を右岸から苦労して大高巻きした記憶がよみがえる。雪に埋もれた今の谷間を見ても,どこを巻いたのか全く見当がつかないのだが…。
右手の眼下には,草池谷左俣の深い谷間に,20m滝から始まる連瀑帯が見える。昨年の夏,あの滝場を右岸から苦労して大高巻きした記憶がよみがえる。雪に埋もれた今の谷間を見ても,どこを巻いたのか全く見当がつかないのだが…。
雰囲気の良いブナの尾根が続く。
雰囲気の良いブナの尾根が続く。
そして,行く手にようやく薙刀山の姿が。何段もの岩壁をゴツゴツと露出させた姿は,石徹白側の穏やかなこの山の容姿からは全く想像がつかないものだ。
そして,行く手にようやく薙刀山の姿が。何段もの岩壁をゴツゴツと露出させた姿は,石徹白側の穏やかなこの山の容姿からは全く想像がつかないものだ。
更に左手には,先週登った日岸山も。やっぱりこの山も堂々とした山容で,なかなか存在感がある。
更に左手には,先週登った日岸山も。やっぱりこの山も堂々とした山容で,なかなか存在感がある。
西尾根を振り返る。向こうに見える雪山は経ヶ岳。
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西尾根を振り返る。向こうに見える雪山は経ヶ岳。
草池谷左俣の枝谷にも,雪を割って滝が落ちているのが見える。昨夏はひどい藪で枝谷を覗きに行く気力もなかったのだが,やはり枝谷にも滝があるんだな。
草池谷左俣の枝谷にも,雪を割って滝が落ちているのが見える。昨夏はひどい藪で枝谷を覗きに行く気力もなかったのだが,やはり枝谷にも滝があるんだな。
次第に稜線が近づき,ジャンクションピークまですっきり見通せるようになった。
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次第に稜線が近づき,ジャンクションピークまですっきり見通せるようになった。
稜線へと続く白銀ロード。
稜線へと続く白銀ロード。
右手には,ゼンクボの平の向こうにそびえる野伏ヶ岳。
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右手には,ゼンクボの平の向こうにそびえる野伏ヶ岳。
ゼンクボの平アップ。本当にすごい密度でブナが生えている。あとで散歩に行こう。
ゼンクボの平アップ。本当にすごい密度でブナが生えている。あとで散歩に行こう。
歩いてきた尾根を振り返る。
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歩いてきた尾根を振り返る。
稜線直下は,すっきりとした雪稜に。やや痩せているが,通過はそれほど難しくない。
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稜線直下は,すっきりとした雪稜に。やや痩せているが,通過はそれほど難しくない。
左手の知土谷に落ちる薙刀山の岩壁がすごい。
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左手の知土谷に落ちる薙刀山の岩壁がすごい。
痩せ尾根通過。
右手には草池谷の雪の源頭が広がる。この下のどこかに,大トチノキが立っているはず。
右手には草池谷の雪の源頭が広がる。この下のどこかに,大トチノキが立っているはず。
薙刀山西尾根を登り詰め,稜線に立った。野伏ヶ岳方面を眺める。さすが人気の山を結ぶ山稜,何人かの登山者が登ってきている。
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薙刀山西尾根を登り詰め,稜線に立った。野伏ヶ岳方面を眺める。さすが人気の山を結ぶ山稜,何人かの登山者が登ってきている。
そして,薙刀山はすぐそこ。
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そして,薙刀山はすぐそこ。
薙刀平を眺めながら。うーん,めっちゃスキーしたい。
薙刀平を眺めながら。うーん,めっちゃスキーしたい。
薙刀山到着。昨夏,三角点も見つからないほどの激藪に苦労したあの山頂とは同じ場所と思えないほどだ。
薙刀山到着。昨夏,三角点も見つからないほどの激藪に苦労したあの山頂とは同じ場所と思えないほどだ。
先週登った日岸山。今日は誰も登ってないようだ。
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先週登った日岸山。今日は誰も登ってないようだ。
いつ見ても憧れを掻き立てられる,白山の眺め。
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いつ見ても憧れを掻き立てられる,白山の眺め。
薙刀平と,和田山牧場跡の雪原を見下ろす。ここに来ると,どうしてもスキーで滑りやすそうなラインを目で追ってしまう。
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薙刀平と,和田山牧場跡の雪原を見下ろす。ここに来ると,どうしてもスキーで滑りやすそうなラインを目で追ってしまう。
しかし,今日の目的地はここではないのよ。草池谷に下降すべく,すぐに西尾根との合流点へ引き返す。
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しかし,今日の目的地はここではないのよ。草池谷に下降すべく,すぐに西尾根との合流点へ引き返す。
西尾根との合流点まで引き返し,眼下の草池谷左俣の源頭へと一気に下降していく。雪はよく締まって安定しており,雪崩の危険はなさそうだった。
西尾根との合流点まで引き返し,眼下の草池谷左俣の源頭へと一気に下降していく。雪はよく締まって安定しており,雪崩の危険はなさそうだった。
シリセードで一気に100mくらい落とす。
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シリセードで一気に100mくらい落とす。
立派なダケカンバ。
立派なダケカンバ。
ちょっとした広間に到着。立派な木々が静かに取り囲む秘密の空間。
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ちょっとした広間に到着。立派な木々が静かに取り囲む秘密の空間。
周囲をキョロキョロして大トチを探しながら下っていく。
周囲をキョロキョロして大トチを探しながら下っていく。
立派なブナの行列。
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立派なブナの行列。
と,谷が狭まり,水音が高まって来たかと思うと…あちゃー,滝が出ちゃってる。恐らく,この谷最後の12m・5mの2連瀑だ。まだ滝が埋まっていることを期待して来たのだが,甘かったようだ。
と,谷が狭まり,水音が高まって来たかと思うと…あちゃー,滝が出ちゃってる。恐らく,この谷最後の12m・5mの2連瀑だ。まだ滝が埋まっていることを期待して来たのだが,甘かったようだ。
で,滝上から下を眺めると,大きなトチノキっぽいシルエットが…。ちょうどこのあたりに大トチがあるのでは,と目算を付けていた付近だったので,まさかアレか!? とテンション急上昇。 
で,滝上から下を眺めると,大きなトチノキっぽいシルエットが…。ちょうどこのあたりに大トチがあるのでは,と目算を付けていた付近だったので,まさかアレか!? とテンション急上昇。 
滝を巻き下りるべく,右岸側の急斜面をトラバース。
滝を巻き下りるべく,右岸側の急斜面をトラバース。
トラバース後,滝を越えたと思われる地点で緩い斜面を見つけ,谷底へと急降下。よっしゃ,これはいける。
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トラバース後,滝を越えたと思われる地点で緩い斜面を見つけ,谷底へと急降下。よっしゃ,これはいける。
滝の巻き下り成功。再び谷底に降り立った。
滝の巻き下り成功。再び谷底に降り立った。
巻き下りてきた12m滝(低く見えるけど,下部が雪で埋まっているためです)。この滝ははっきりと見覚えがあり,昨夏の遡行時に,直登しようとしたが途中でホールドが途切れてしまいクライムダウンして,結局は左手の草付きを登った滝だ。雪に埋もれたこの滝に再会するとは,何だか不思議な感じ。
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巻き下りてきた12m滝(低く見えるけど,下部が雪で埋まっているためです)。この滝ははっきりと見覚えがあり,昨夏の遡行時に,直登しようとしたが途中でホールドが途切れてしまいクライムダウンして,結局は左手の草付きを登った滝だ。雪に埋もれたこの滝に再会するとは,何だか不思議な感じ。
巨大な岩壁が,不気味に谷底に影を落としている。
巨大な岩壁が,不気味に谷底に影を落としている。
そして,これが滝上から見えた大きなトチノキ。
そして,これが滝上から見えた大きなトチノキ。
確かに大きいのだが,度肝を抜かれる大きさ,というほどではない。これまで見た中では奥美濃・銚子洞の源頭の大トチが一番大きかったが,あれよりは一回り小さい気がする。これが増永氏が見た大トチなのか,イマイチ確信持てず…。
確かに大きいのだが,度肝を抜かれる大きさ,というほどではない。これまで見た中では奥美濃・銚子洞の源頭の大トチが一番大きかったが,あれよりは一回り小さい気がする。これが増永氏が見た大トチなのか,イマイチ確信持てず…。
しかし,増永氏の著作や,福井岳人倶楽部の「越の谷」の記述からすると,この付近に大トチがあることはほぼ間違いないはず。しばらく周囲を歩き回り,他にも大きなトチノキがないかどうか,探し回る。
しかし,増永氏の著作や,福井岳人倶楽部の「越の谷」の記述からすると,この付近に大トチがあることはほぼ間違いないはず。しばらく周囲を歩き回り,他にも大きなトチノキがないかどうか,探し回る。
というか,この辺りの斜面は,トチノキだらけと言っていいくらいトチノキが多い。そしてその一本一本がなかなかの大きさ。
というか,この辺りの斜面は,トチノキだらけと言っていいくらいトチノキが多い。そしてその一本一本がなかなかの大きさ。
このトチなんかも,なかなかの巨木ぶり。
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このトチなんかも,なかなかの巨木ぶり。
でもこれも,増永氏の「霧の森」に載ってる写真とちょっとシルエットが違う気がするんだよなぁ…。結局,大きなトチノキはたくさんあるのだが,これだ! という大トチは発見できないまま。
でもこれも,増永氏の「霧の森」に載ってる写真とちょっとシルエットが違う気がするんだよなぁ…。結局,大きなトチノキはたくさんあるのだが,これだ! という大トチは発見できないまま。
もしかしてもっと下の方にあるのか? と思ったが,これ以上谷を下ると昨夏に苦労した険しい連瀑帯に入ってしまうので,これ以上の下降は思いとどまった。
もしかしてもっと下の方にあるのか? と思ったが,これ以上谷を下ると昨夏に苦労した険しい連瀑帯に入ってしまうので,これ以上の下降は思いとどまった。
モヤモヤした結論で申し訳ないが,今日出会ったトチノキが目的の大トチなのか,それとももっと別の場所にあるのか,最後まで確信が持てなかった。しかし,素晴らしいトチノキ地帯であることは確か。
モヤモヤした結論で申し訳ないが,今日出会ったトチノキが目的の大トチなのか,それとももっと別の場所にあるのか,最後まで確信が持てなかった。しかし,素晴らしいトチノキ地帯であることは確か。
ちょっと心残りだが,時間も押しているので,草池谷の谷底を離れ,途中で見つけた左岸ルンゼから,直接ゼンクボの平へと登っていく。
ちょっと心残りだが,時間も押しているので,草池谷の谷底を離れ,途中で見つけた左岸ルンゼから,直接ゼンクボの平へと登っていく。
雪で埋もれたルンゼを登り切ると,一気に視界が開け,開放的な平が広がった。ゼンクボの平だ。
雪で埋もれたルンゼを登り切ると,一気に視界が開け,開放的な平が広がった。ゼンクボの平だ。
抜けるような青空,どこまでも広がる雪原,そして所狭しと立ち並ぶブナ。この空間に,一目で魅了されてしまった。
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抜けるような青空,どこまでも広がる雪原,そして所狭しと立ち並ぶブナ。この空間に,一目で魅了されてしまった。
果てしなく広がるブナの森の向こうに,野伏ヶ岳の真っ白な山頂が浮かんでいる。
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果てしなく広がるブナの森の向こうに,野伏ヶ岳の真っ白な山頂が浮かんでいる。
いやー,ここは本当にいいところ。
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いやー,ここは本当にいいところ。
私のようなブナ好き,平好きにはたまらない。
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私のようなブナ好き,平好きにはたまらない。
夢のような散策が続く。
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夢のような散策が続く。
いつまでもこの散歩が続けばいいのに。
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いつまでもこの散歩が続けばいいのに。
しかし,そろそろ野伏を越えて帰路につかなくては。稜線に向けて斜面を登る。この斜面のトチノキも,また立派な木ばかり。
しかし,そろそろ野伏を越えて帰路につかなくては。稜線に向けて斜面を登る。この斜面のトチノキも,また立派な木ばかり。
斜面を登りながら,ゼンクボの平を振り返る。素晴らしい散策だった。また来よう。
斜面を登りながら,ゼンクボの平を振り返る。素晴らしい散策だった。また来よう。
野伏ヶ岳はすぐそこ。
野伏ヶ岳はすぐそこ。
野伏ヶ岳に到着。もうこの時間なので登山者はいなかったが,さすが人気の山,石徹白側からはたくさんの足跡が残されていた。
野伏ヶ岳に到着。もうこの時間なので登山者はいなかったが,さすが人気の山,石徹白側からはたくさんの足跡が残されていた。
薙刀山と,その向こうの白山を眺める。
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薙刀山と,その向こうの白山を眺める。
一般ルートの東尾根(ダイレクト尾根)と,その向こうに広がる和田山牧場跡。牧場跡には,下山していく登山者が点々と見えた。
一般ルートの東尾根(ダイレクト尾根)と,その向こうに広がる和田山牧場跡。牧場跡には,下山していく登山者が点々と見えた。
小白山方面の山稜。意外なことに,ノートレースだった。こんなに天気がいいので,誰か歩いている人はいそうだなと思っていたのだが。
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小白山方面の山稜。意外なことに,ノートレースだった。こんなに天気がいいので,誰か歩いている人はいそうだなと思っていたのだが。
野伏ヶ岳西尾根から福井県側に下山すべく,稜線を南へと辿る。美しい雪庇の尾根を越えていく。
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野伏ヶ岳西尾根から福井県側に下山すべく,稜線を南へと辿る。美しい雪庇の尾根を越えていく。
福井県側が切れ落ちており,やや慎重を要するが,悪いところは岐阜県側を巻けるので,それほど難しくない。
福井県側が切れ落ちており,やや慎重を要するが,悪いところは岐阜県側を巻けるので,それほど難しくない。
野伏ヶ岳の南の小ピークに到着。ここから眼下に見える西尾根を下降していく。この尾根は,以前,一度登りに使ったことがあり,その時の記憶では悪いところはなかったはず。
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野伏ヶ岳の南の小ピークに到着。ここから眼下に見える西尾根を下降していく。この尾根は,以前,一度登りに使ったことがあり,その時の記憶では悪いところはなかったはず。
西尾根を下っていく。やっぱり記憶通り穏やかな尾根,とルンルン下っていくと…
西尾根を下っていく。やっぱり記憶通り穏やかな尾根,とルンルン下っていくと…
あれ? あそこ,何か尾根が痩せてないか? あんな痩せ尾根,あったっけ…。
あれ? あそこ,何か尾根が痩せてないか? あんな痩せ尾根,あったっけ…。
記憶にない痩せ尾根区間が出現し,ちょっと戸惑ったが,若干緩い南側をややトラバース気味に通過。昔の山行の記憶は案外頼りにならないものだ(確か雪が少ない年だった覚えがあるので,ここまでナイフリッジが形成されていなかっただけかもしれない)。
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記憶にない痩せ尾根区間が出現し,ちょっと戸惑ったが,若干緩い南側をややトラバース気味に通過。昔の山行の記憶は案外頼りにならないものだ(確か雪が少ない年だった覚えがあるので,ここまでナイフリッジが形成されていなかっただけかもしれない)。
その後はすぐに穏やかになり,真っ白な稜線を振り返りつつ快調に下降を続ける。
その後はすぐに穏やかになり,真っ白な稜線を振り返りつつ快調に下降を続ける。
左手には,小白山南峰と,枇杷倉山の姿。
左手には,小白山南峰と,枇杷倉山の姿。
小白山も,福井県側から見ると,ゴツゴツしたイカつい山だ。稜線から見たたおやかな姿からは想像もできない。
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小白山も,福井県側から見ると,ゴツゴツしたイカつい山だ。稜線から見たたおやかな姿からは想像もできない。
野伏ヶ岳西尾根は,薙刀山西尾根ほどの美林はないが,その代わり眺望はなかなか良い。
野伏ヶ岳西尾根は,薙刀山西尾根ほどの美林はないが,その代わり眺望はなかなか良い。
野伏ヶ岳さん,さようなら〜。
野伏ヶ岳さん,さようなら〜。
ところで,小白山の付近に,気になるオーラを漂わせた尾根を見つけてしまった。多分,三ノ又谷から小白山北峰に直接突き上げている尾根。あのナイフリッジと稜線直前の雪壁,面白そうに見えるけど…。
ところで,小白山の付近に,気になるオーラを漂わせた尾根を見つけてしまった。多分,三ノ又谷から小白山北峰に直接突き上げている尾根。あのナイフリッジと稜線直前の雪壁,面白そうに見えるけど…。
枇杷倉山も黒々とした岩場を露出させて,きりっとした横顔。(あの岩場は福井県側からの登下降時に苦労する箇所)
枇杷倉山も黒々とした岩場を露出させて,きりっとした横顔。(あの岩場は福井県側からの登下降時に苦労する箇所)
P1295mからは,南側はブナ,北側は植林という妙な植生が続く。
P1295mからは,南側はブナ,北側は植林という妙な植生が続く。
やがて雪が切れるが,植林帯の林床は藪が少なく,藪漕ぎはほとんどなし。
やがて雪が切れるが,植林帯の林床は藪が少なく,藪漕ぎはほとんどなし。
林道が見えた。しかし,この最後の尾根末端が曲者で,崖が多いので,慎重にルートを見定めないといけない。
林道が見えた。しかし,この最後の尾根末端が曲者で,崖が多いので,慎重にルートを見定めないといけない。
急斜面を慎重に下り,廃林道に着地。
急斜面を慎重に下り,廃林道に着地。
中村集落跡の自転車デポ地に帰着。あとは春風の中を自転車でダウンヒル…
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中村集落跡の自転車デポ地に帰着。あとは春風の中を自転車でダウンヒル…

装備

備考 ・ワカンは携帯したが,概ね雪は締まっており使用せず。
・ピッケル・アイゼン携行。薙刀山西尾根取り付きの壁のトラバース時と,野伏ヶ岳〜野伏ヶ岳西尾根上部の痩せ尾根区間で使用。

感想

 今回の山行は,昨夏の山行で果たせなかった宿題を片付けるために計画したものだった。昨年7月,薙刀山に突き上げる草池谷左俣を遡行したのだが,その際に,この谷の源頭付近にあるという大トチノキを見落としてしまったのである。このトチノキは,増永迪男氏(前回に引き続き,この方の著作関連のネタですみません…)の「霧の森」「福井の山150」において,氏が草池谷左俣を遡行した際に出会った木として紹介されており,「それから今日まで,あれほどの栃を見ることはなかった」「薙刀山と聞けば,森の精のようだった大栃が浮かんでくる」と表現されるほどの巨木であるらしい。おそらく,氏の著作の中に登場する数多くの巨木の中でも,最も到達困難な場所にある木だろう。
 最初は,また秋にでも草池谷左俣を再び遡行しようと思っていたのだが,この谷は滝場の多い険谷で,しかも登り上げた稜線も薙刀山の深い藪に包まれており,下山も容易ではない。ちょっくら登って来よう,という気にはなかなかなれない谷なのである。そこで,谷が深い雪に埋もれる残雪期に,稜線から下降してこの大トチノキに会いに行くことにした。福井県側の谷にある木に会いに行くのだから,やはり福井県側から登るのが礼儀だろう(?)ということで,登路は以前から気になっていた薙刀山の西尾根とした。
 今回の再探索に臨んで,大トチノキの所在地もある程度目星をつけていた。福井岳人倶楽部の「越の谷」に,草池谷左俣の遡行記録が載っているのだが,その遡行図に「大きなトチノキ」の記載があるのを見つけていた。おそらく,増永氏が見た大トチノキと同じものだろう。位置は,この谷の最後の滝である12m・4mの2連瀑の少し下流の小さな二俣の右岸。これは,増永氏の著作における記述とも矛盾しない。
 そして山行当日。昨年7月には背丈を越える激烈な笹薮に悩まされた草池谷の源頭は,当然のことながら深い残雪に覆われて,全く同じ場所とは思えないほどだった。この雪の下にあの夏の草いきれに包まれた藪が広がっていると思うと,なんだか風景が二重に見えてきて不思議な感じがする。
 予想以上に雪割れが進んでいて12m・4m滝が露出しているのには少し慌てたが,右岸の急斜面を慎重に巻き下って,大トチがあると思われるエリアへ。そこは確かに,大きなトチノキが斜面に林立する,心惹かれる空間だった。昨夏の遡行時も,ここで周囲を見渡して,大トチを探した記憶がうっすらとある。その時は,深い藪に邪魔されて,これらのトチノキの姿はちらちらとしか見えなかったのだけれど。
 しかし残念ながら,大きなトチノキは数多くあるものの,これだ,と確信できるような圧倒的な大トチには今回も出会うことができなかった。2本ほど,これかも,と思うひときわ大きなトチは見つけたのだが,増永氏の「霧の森」に掲載されている写真の大トチとはシルエットが微妙に異なるように感じた。場所の見当は間違っていないはずなのだが,もっと谷の下部に存在しているのだろうか。あるいは,寿命や台風などで倒れてしまったとか…いやいや,その想定は残酷すぎる。「森の精」のような大トチのこと,残雪を利して上からずかずかと降りてくるような輩の前には姿を現してくれないのかもしれない。やっぱり,もう一度沢登りで来い!ということですかね。
 そして,ゼンクボの平(薙刀山と野伏ヶ岳の間の鞍部の西側に広がる平)。ここも前々から一度訪れてみたいと思っていた場所だった。増永氏の著作にも紹介されているのだが,もし氏の著作を読んでいないとしても,地形図を見ただけで惹かれる人は惹かれるのではないだろうか(私もそうでした)。ここは本当によいところでございました。少なくとも,ブナ好き,平(ダイラ)好きであれば,きっと心に残る小散歩ができるはず。石徹白側の薙刀平や野伏平も素敵だけれど,福井側にも素晴らしい平があった。

※ なお,この記録の中で触れた昨年7月の草池谷左俣遡行〜薙刀山夏季登頂時の記録はこちら
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-4538886.html

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