だから、沢は絶対に下るなとあれほど、、、 大森
- GPS
- 05:58
- 距離
- 7.4km
- 登り
- 551m
- 下り
- 554m
コースタイム
天候 | 晴れ 気温: スタート2℃ -> 山頂7℃ -> 下山15℃ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
その他周辺情報 | 電波状況:docomo 99% / au 100% / softbank 95% https://chizroid.info/denpa/ex/map?tid=frx0uXkZ1r 思ったより良好な数字。 |
写真
感想
もちろん知らない知識ではなかった。かつて後輩たちに沢を下る危険性について自慢げに語ったこともあった。なのに今、自分の目の前で起きているこの状況は、危険性として語られるまさに「そのまんま」、、、
大森。宮城県北西部、栗駒山の前衛峰としてそびえるこの山は、かつて近くの国立花山青少年自然の家によって道が拓かれ主に中学生を中心に登られていたようだが、その後荒廃が進み、今ではすっかりヤブ山と化している。宮城県の分県登山ガイドでも2004年版で一度紹介されただけでその後の改訂版ですぐに選外となった。(その辺りの詳しいいきさつは以前日記に書きましたのでよかったらどうぞ。https://www.yamareco.com/modules/diary/184667-detail-286445)
先人たちのレコもわずか数件という状況だったけど、基本的には皆さん「沢③ルート」で登られる場合が多いようだった。けど先日入手した2004年版の分県ガイドではそれとは違う東側のルートのピストンが紹介されていたので、自分はそちらから登り、ピストンもしくは場合によっては沢③ルートへの周回下山と考えていた。ちなみに中学生たちは沢③ルートから登り、東ルートを下山するという周回を取られていたらしい。
まずは登山口より元作業道を進む。多少ヤブ化しているけどまだ歩きやすい。道が稜線から離れていきそうだったのでそこで進路を変え、稜線へと少し急な登りをヤブ漕ぎする。ツタが絡まり非常に歩き辛い。人類が切り拓いた土地がヤブ化した区間が一番厄介だ。徐々に枝尾根に乗ると樹林帯となり、ようやく歩きやすくなった。
386のピークからはしばらく登山道に近いくらいの快適な稜線だったけど、標高500mを越えたあたりから一面の笹薮となり、それが山頂まで続いた。基本は腰下程度なのでそこまで歩き辛くは無いが、微妙な負荷で足へのダメージは徐々に蓄積されていく。
最後の急登を登れば、無事山頂。正直ここまではそれほど難しいとも思わなかったし、体力的にも余裕はあったので下山は周回方向に進路を取ることにした。皆さん登られてた「沢③ルート」も見てみたかったというのもある。雪解け直後のためか道も引き続き歩きやすく、順調に下山を進めた。
ただこのルート、最後に難所が待っている。最後の最後にかなりの斜度の急坂があり、過去レコでも皆さんそこでかなり苦労をされていた。地形図でもかなり等高線が密集していたので、回避できるものなら回避したい。というわけで「もう少し安全に降りれるルートは無いかな」と少し手前で地形図とにらめっこし、等高線が緩そうなところを探すと、あった、この沢に降りて沢沿いを歩いて行けばすんなり降りられそうだぞ、しかも車を停めた地点近くにそのまま降りられる、地図で見る限り危険箇所はなさそうだ、大丈夫、道に迷ったときに沢を降りてはダメとは言うが、今は別に迷ってるわけではない、しっかり安全を確認した上で進むので大丈夫なはずだ、大丈夫、、、。
と、ここで運命の進路変更、沢へ降りていく決断をしました。沢までも地形図で見ると一見緩そうに見えたけど実際には想像をはるかに超えた急斜面で、えーここ降りるの、というくらいだったが、途中でチェーンスパイクを装備して何とか下り切る。沢に着いたら緩斜面で「良かった、これであとは安全に帰れるぞ」と安心して歩を進めていたところ、突然、沢の先が見えなくなった。いや、そんなことはない、地形図で確認したはず、そんなことは、、、
見事に断崖絶壁の上に出た。沢はその先で滝となっていたのだ。高さは5mくらい。小さい滝なので地形図には現れないんだろうけど、それでも人間が安全に降りられる高さではない。後で思えば引き返しも考慮すべきだったが、その時は全く思いつかなかった。
地形を眺め、何とかギリギリ降りられそうなところを探す。足元はチェーンスパイクなので多少の踏ん張りは効くが、もしズルッと行けばアウトなことは間違いない。必死に岩や草にしがみつきながら、10分くらいかけて死に物狂いで崖を降りた。ヘルメットを装着してたのがせめてもの救いだったかもしれない。
しかし安心したのも束の間、その先もまた3mほどの滝。そこも多少苦労しながら降りると大きい沢に合流して谷底へと降り立った。
それと同時に足が限界を超えた。いつもの足攣りだ。こうなると急激な登下降は絶対に無理。塩と芍薬甘草湯を服用してもしばらくは収まらず、30分くらい激痛に悶えながら体を休めると徐々に痙攣も収まってきた。ただ、塩の適量がいつも分からない。どのくらいが適量なんだろう。今回も少し摂り過ぎて若干アナフィラキシー的な症状が出た気もする。
さらに携帯を見ると電波は入っていた。これで最悪の事態は回避できることは保証された。安心感ハンパない。しっかりと休養を取ることにした。天候、気温が良かったのも不幸中の幸い。同じことが積雪期や雨の中で起こったらこうはいかなかっただろう。
さらに30分後、だいぶ足も回復したようで少し負荷をかけるくらいではピキッと行かなくなったので、ついに対岸の崖登りを開始する。崖登りの途中で再び足攣ったらシャレにならない。途中で振り返ると沢の先はさらに大きい滝になっていた。「沢を下ろう」と思ってしまった自分の愚かさが情けない。
崖の上まで登って、朝歩いた作業道に合流すると、何とかそこから無事下山となった。
反省点:ピッケルを持とう、、、違うか。
コメント
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家に帰って改めて考えるととても信じられないような考えを山では普通に起こすんですね。何でだろ。こんなこと言うのもアレですが、知識とか経験とか啓蒙活動だけではどーにもならない領域もあるような気がしてしまいます。明らかに怪しいことを正しいと信じ込んで実行してしまうその心理は、もしかしたら詐欺に合ってるときに近いのかもしれません。「登山心理学」のようなものが必要なのかも。まずは自分も心理学の本を図書館で借りて読もうと思います。
しかも場所や状況は違えど、下山の終盤でお互いに苦労していたとは、なんとも感慨深いです。
(もちろん「下山尾根を間違える」という私たちのような初歩的なミスはへろぞーさんならしないとは思います。)
それでも、私たちが当たり前に普段から「山行時の鉄則」として叩き込まれていることが、自然を前にすると脆くも崩れてしまうことの怖さは、自分の山行でも、へろぞーさんの記録をみても感じました。25000分の1の地図の1本の等高線の間に、様々なトラップが隠されているのだと改めて地図読みの難しさも実感しました。それと、自分にとって都合のよい情報のみを取捨選択して、「大丈夫であろう」と判断してしまう「正常化バイアス」も、危険が近づくほどしてしまうものですね。これは経験で克服できるのか、それとも性格に由来するのか、何とも難しい問題だと改めて思いました。
ちなみに、私も沢3の先人さんルートを把握しており、あの序盤(または最終盤)の急登は、忌避したいと考えていたので、仮に、へろぞーさんと同じルートを辿って下山した場合は、地図のみでルート選定していたことから、同じ行動をして、進退窮まった可能性が高いです。先人の皆さんが沢3から急登を強引に登っているのは、周囲の尾根からのアプローチが難しいことの証なのかもしれません。その辺りの見極めも、経験の乏しい私には難しいと思いました。
そうなんですよね、なぜ「鉄則」が守れないのか。当たり前のことが出来なくなってしまうのか。これはもう「気を付ける」などの精神論では済まされず、もう少し科学的なアプローチが必要な気がしてきてます。以前テレビで「人は疲れるとYesと言いやすくなるので、、結婚を申し込むならフルマラソン完走直後が良い」などと冗談交じりに言ってましたが、疲れると冷静な思考が出来なくなるのは同じですね、きっと。
もしこの「正常化バイアス」に対する効果的な解決策を見出すことが出来れば、世の中の振り込め詐欺被害防止にも役立つ気がするので、何とか見出したい気もしますね。はー、また勉強か。終わりがない。
そうですね。自分のルートを3Dなどの立体画像でイメージして山行にのぞむと、今回のような登山道のない山の場合は、自分の行くルートがイメージできて有用ですね。
ちなみに、私の場合は、今回計画を立てるにあたって、「スーパー地形」というアプリを使用し、立体図面と25000分の1の地図を重ね合わせた図面を予め印刷し、それも25000分の地図と一緒と一緒に持参しました。それでも、さすがに尾根への取り付き部分のCG画像は曖昧ですね。
ただ、立体的なイメージをもって進むことは、進む尾根の選択等にもだいぶ威力を発揮するのではないかと思います。登山道のない稜線歩きをする場合はかなりオススメな方法だと思います。
「スーパー地形」は名前は聞いたことがありますね。面白そうなので今度一度触ってみようと思います。また有用な情報があればいつでもお願いしますね!
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