三本杭☆美しい滑床の渓谷とツツジの花咲く稜線に
![情報量の目安: S](https://yamareco.org/themes/bootstrap3/img/detail_level_S2.png)
- GPS
- 05:01
- 距離
- 12.2km
- 登り
- 1,061m
- 下り
- 1,060m
コースタイム
天候 | 晴れのち曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2023年05月の天気図 |
アクセス |
写真
感想
三本杭とは非常に変わった山名であるが、この山が伊予吉田藩、土佐藩、宇和島藩の領地の境界にあたり、かつて山頂近くにそれぞれの領地を示す三本の杭が立てられていたことに由来するという。現在は山頂は高知の県境から愛媛県に入ったところにあるのだが、四万十川の支流の目黒川の上流にあり、本流からはそう遠くないところにあるので、今回の旅のついでに訪れることにした。
この山の大きな魅力となっているのが、目黒川の上流いにある滑床渓谷のようだ。三本杭が源流かと思いきやこの渓谷を取り巻く山の一つに過ぎず、源流はさらに西にある鬼が城山に端を発する。前日は昼まで雨が降っていたので沢の増水が心配ではあったが、谷沿いにはしっかりとした道がついているようであり、多くの登山者と同様に滑床渓谷を通る周回ルートを考える。
この日は前日に泊まった松葉川温泉を出発し、まず四万十川の沈下橋を訪れることから始まる。当然ながら下流に下るにつれ四万十川の川幅は次第に大きくなり、沈下橋も長くなってゆく。沈下橋は今でこそコンクリート製で少々の増水では流されないのであろうが、昔は木を渡しただけの橋であり、わずかな増水でも簡単に橋が流されることになったらしい。
コンクリート製の橋を架けるのにも川の流れが早いところでは工事も難航し、8年もの歳月をかけて橋をかけた?橋のような橋もある。橋が架けられているのは幹線道路からは離れた辺鄙な場所が多く、こんなところに!と驚くような場所も少なくないのだが、四万十川と共に生活してきた人々の熱き思いが刻み込まれているようにも思う。いずれの橋の上からも眺める四万十川の景色が美しく沈下橋巡りは飽きることがない。しかし、橋の近くに車を停めて橋を往復するのは意外と時間がかかる。?橋を訪れたところで、沈下橋巡りは諦めて三本杭の登山口のある滑床渓谷に向かうことにする。
登山口に到着したのは11時であった。川の右岸の遊歩道を歩き始めると、早速にも広々とした広々としたナメが現れる。斜度の緩やかな滑滝は天然のウォータースライダーとなっており、沢登りスタイルのパーティーが滝の滑り降りを楽しんでおられた。
淵になると沢は美しいエメラルド・グリーンの水を湛えている。淵の中に目を凝らしてみると魚影が見える。中には相当に大きな魚もいるようだ。頻繁にナメが現れる。登山道を外れてナメの石の上を歩ける限り歩いてみる。
登山道には苔むした石組の炭焼き窯の跡も随所に見られる。炭焼き窯には地方によって流儀が異なるのが興味深い。関西の山で見かけるものに比べ格段に大きく、また整然とした方形に石が組まれているものが多い。
千畳敷に至ると沢沿いの河岸は層状に石を積み重ねたような段々となっている。秋芳洞の鍾乳洞で見られる千畳敷を思い出す。沢が平流になると水面に反射する新緑が、緑の宝石が輝いているかのように見える。
千畳敷を過ぎると支谷を横切るので、その度に小さな渡渉をすることになる。いずれの渡渉においてもトラロープが渡されており、それほど難度の高いものはない。
奥千畳敷と呼ばれる広々としたナメを過ぎると登山道は谷の本流を離れ、小さな支谷に沿って登ってゆく。昨日の四万十川の源流の谷においても新緑と谷を埋め尽くす苔むした岩が一面の緑の世界を形成していたが、この谷においても同様に苔むした岩による緑の世界が頻繁に現れる。
苔むした岩を掴んで立ち上がっているのは多くが欅の樹のようだ。登山道沿いでは随所で欅の大樹が凛々しい樹影を見せている。源頭を登り、熊ノコルと呼ばれる鞍部に乗ると、尾根にはブナの大樹による清々しい疎林となり、景色は一変する。この三本杭はブナの樹が生育する南限らしく、ブナの大樹は期待してはいなかったのだが、予想を裏切る立派な大樹が次々と現れる。ブナの樹間には随所に鮮やかな朱色のツツジが咲いている。オンツツジと呼ばれる山躑躅の一種だろう。樹が大きく成長したものが多い。
樹林から垣間見る尾根の右手のピーぅp1184を眺めるとその山頂部一帯がツツジの朱色に染まっているのが見える。尾根を直進するとタワミと呼ばれる三本杭山頂直下のコルに至るのだが、「串が森→」と記された道標の先に右手のピークに向かって斜面をトラバースする道が現れる。まずはこのピークを訪れる。
トラバース道を辿ると向こうから「女性三人組」がやってくる。先頭を歩く女性が「山芍薬がいっぱいある」との声が聞こえてる。私の存在に気がつかないせいか「この山は本当に静かねぇー」と仰るが、確かに滑床渓谷にかかる橋で右岸に渡ってからはここまで誰一人ともすれ違わなかった。
女性達にご挨拶するとp1158は小屋の森という山名であり、串が森はそこからさらに50分ほどかかることを教えて下さる。パーティーの後尾の女性が「串が森がヤマツツジが咲いていなくて残念だった」と仰るので、三人は既に串が森を往復して来られたようだ。女性達が通り過ぎたあと、斜面を見上げると既に花が散ってしまった山芍薬が数多く見られた。
小屋の森の手前の鞍部に至るとピークにかけて確かに数多くのオンツツジの花が咲いている。西側に大きく展望が広がり、三本杭から西に伸びる稜線の先に八面山、大久保山、鬼ヶ城山とピークが連なっているのが目に入る。ここで唐突に大樹の樹林は終わり、小屋の森にかけて馬酔木とツツジの低木の樹林に変わる。
小屋の森の山頂からも西に展望が広がっていた。昨日の道の駅で手に入れたイチゴを口に運び、一息つく。再び低木の樹林を歩いて横の森に登り返す。わずかに降ってタワミと呼ばれる鞍部に至ると背丈の低い笹原が広がっている。その周囲は防鹿ネットで囲われているので、柵の扉を開けて通過する。近年、鹿が増加したため、鹿の食害から守るためにネットを張っていることが滑床渓谷の案内板に書かれていた。
三本杭の山頂まではわずかな登りで到着する。一等三角点のある山頂にはミヤコザサの笹原が広がり、360度の好展望が広がっている。ここでも布施ヶ坂の道の駅で入手した紫芋の芋餅で一服する。写真に撮ることを失念していたが、普段は全く味わう機会のない味で、なかなか美味であった。
タワミまで戻ると東に伸びる尾根にはオンツツジが多く咲いているが、登山道はツツジの低木の中を行くので花は頭上に見上げるばかりだ。唐突に低木の藪が終わり、再び広々とした林床が広場るブナの疎林となる。緩やかに高度を下げるにつれて尾根上にはブナは少なくなりケヤキやコウヤマキと思われる針葉樹が目立つようになる。次第に林床にはシャクナゲが続くようになる。残念ながら前日の不入山とは異なり、石楠花の花はすっかり終わっていた。花盛りのタイミングにここを訪れたらさぞかし素晴らしい花園となることだろう。
御祝山はその目出度い山名とは裏腹に桧の植林の中の地味な山頂であった。御祝山の山頂の手前でトレラン・スタイルのパーティーとすれ違ったかと思うと、その後も次々とトレランの人達とすれ違う。時間は既に15時を過ぎているが、今の時間から三本杭の山頂を目指す目論見なのだろう。後の方で歩いて登って来られた女性二人組にご挨拶すると、どうやらトレランの練習会なるものらしい。
御祝山からは植林の中を九十九折りに降って登山口に戻る。帰路は目黒川に沿って車を走らせる。この川沿いにもいくつかの沈下橋があるが、橋が道路から見えないところが多く、初日に通った道の駅でもらった四万十川流域のガイドのみが頼りだ。川幅が狭いせいもあるが、橋が水面にかなり近いところにあるものが多く、川面の上の立つような感覚を味わうことが出来る。現在でも人が往来するために使われている橋がある一方、対岸は石段の上に廃屋があるだけのものもあり、郷愁を感じさせる。
四万十川沿いの国道に出ると、今日の宿泊先の宿毛を目指して、夕陽の差し込む谷を南下するのだった。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する