蔵王連峰(面白山高原〜白石スキー場)《日本百名山》


- GPS
- 23:06
- 距離
- 52.1km
- 登り
- 4,405m
- 下り
- 4,307m
コースタイム
- 山行
- 6:30
- 休憩
- 0:57
- 合計
- 7:27
- 山行
- 8:24
- 休憩
- 1:11
- 合計
- 9:35
天候 | 1日目(10/10):晴れのち一時雨 2日目(10/11):晴時々曇一時雨 3日目(10/12):晴れ時々曇り |
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過去天気図(気象庁) | 2009年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
下山:蔵王白石スキー場に下山し県道254号線福岡八宮付近 |
写真
感想
1日目(10/10)
近年夜行列車が絶滅危惧種となり、夜行バスで出かけることが多くなった。このアルカディア号は今まで乗ったものの中で最長距離のバスだ。予定より25分も早く山形駅に着き、1時間早い仙山線に乗ることができた。山寺の一つ先の無人駅、面白山高原(標高440m)で下車すると、すぐに面白山スキー場のエリアだ。ゲレンデはコスモベルグと称され、折しもコスモスの赤や白の花が咲き乱れていた。
スキー施設が途切れゲレンデとリフトだけになり、踏み跡を辿って行くとだんだん道が怪しくなり、やがて獣道になってしまった。引き返すのは癪なので藪を漕いで左へとリカバリーを目指すが段々とんでもない藪になってしまった。豪雪地帯のスキー場は草刈りをしなくても雪がすべてを覆い尽くすようだ。余計な労力を使い登山道に復帰したのは標高800m辺りだった。初っ端から余計な労力を使ってしまった。
標高910mの瘤に乗り左に向きを変え急斜面を登りきると南面白山(みなみおもしろやま1,225m)に到った。3等三角点「タイロク山」のある山頂は展望素晴らしく、これから縦走する北蔵王の山並みや仙山線の北側にある面白山(1,264m)、中面白山も大きい。そして何よりも南東方向に見える大東岳(だいとうだけ・1,366m)が圧巻だ。北蔵王の中で単独峰のようにどっしりと構える様は、「何時かはきっと」と思いを掻き立てられるが、さて再び来る機会があるかどうか。
南面白山の南にあるP1216は、名前が付いていないのが不思議なくらい存在感がある山だ。標高差140mを下り、ほぼ同じ高さを登り返しP1216に達した。やはり現地にも山名を示したものはなく残念な事だ。誰かが勝手にプレートを付けておけばそれが市民権を得そうな気もする。小東岳(ことうだけ)がこの西にあり東に大東岳があるので“中東岳(ちゅうとうだけ)”とでもしたら面白いだろう。石油なんかが出そうで・・・
低木帯の稜線を200m下って登り返す。アップダウンが大きい。小東岳(1,130m)は縦走路から西に200mほど飛び出している。ザックをデポし足を伸した。3等三角点「甲」のある山頂からは回りこんで南面白山が対峙する。大東岳はP1216の肩越に見える。南に目を移すと糸岳、仙台神室、山形神室、その後に蔵王核心部が見えるようだがまだ遥か彼方・・・・
すぐ下の小東峠(1,000m)は山寺からの道が二口温泉へと乗越して行く。空には雲が多くなってき。昨日見た天気予報では今日の降水確率は50%だったのによく持っているものだ。縦走路はP1132を越え石橋峠(しゃっきょうとうげ1,030m)へと展望のない道が続き、秋取峰(約1,220m)への登り返しとなった。100m単位の登り返しの連続は厳しく、余り人が入らないのも頷ける。雲は全くなくなり再び青空が戻った。秋取峰は北の展望が良いが、山頂を示す標識は見当たらなかった。というのも糸岳(1,228m)稜線のコブのような山で認知度が少ないのだろう。糸岳は別名を岩平峰と言い、3等三角点「岩平」がある。展望はあまり良くない。300mの長い下りで二口峠(935m)へ下った。ダートの二口林道が越える峠で、登山地図には駐車スペースの表示もあるのできっと登山者の車もあるのではと思っていたが、車が通っている形跡はなく静かなものだ。どうやら2年前の台風9号による土石流で山形側が寸断されているそうだ。通行止めはそれ以前からとも・・・ 縦走路は県境尾根上を行くが林道が800mほど並行するので、車の走らない林道を歩きアップダウンを回避した。仙台神室、山形神室が禿沢越しに真正面に見え素晴らしかった。
林道が県境を越え山形県に入って行くところにゲートがあり「災害閉鎖中」の表示があった。ゲートの先は山形県でそこから舗装道が始まっている。登山道に戻り樹林帯を進んだ。また雲が出てきて今度は厚そうだ。そして清水峠(約1,145m)に達する頃遂に雨が降り出した。ザックカバーと雨具の上だけを着て進むが大したことはなく写真を撮る余裕もあった。しかしP1239を越えもう少しで今日の宿泊予定地である鎌谷源頭の鞍部(1,145m)に着く直前、突然大雨になった。
テン場に着くや大急ぎでテント設営し荷物を放り込み、急いで水場へと向かった。通行止めのロープが張られている鎌谷ルートを50mほど入ったところに縦走路唯一の水場があり十分確保した。戻って来ると雨は小降りになった。前線の通過らしくほんの一時的な雨だった。夕食の準備をしようとすると、ライターがない!ヘッドライトを点けようとすると点かない! 事前の点検不足の為せる結果だが、ストーブは不調だった自動着火で何とか火が点きホッとした。
2日目(10/11)
4時30分起床し真っ暗な中、手探りで朝食準備を始めた。今朝のストーブはまったく着火しない。昨夜朝の分まで作っておいて良かった。パッキングも手探りでは中々捗らず、6時5分ようやく出発できた。昨夜のうちに雨は上がったが雲が厚く、風が出てビュンビュン唸っていた。テントには直接には当たらなかったが歩き出すと容赦がない。防寒を兼ねて雨具上下を着て出発した。
いきなりの山形神室への200mの急登は厳しい。山形神室の稜線北東端に乗りあがると仙台神室への分岐点。コースタイム1時間30分の道草で足を伸ばす。空荷になってダンゴ平へ135m下り、180m登り返すが空荷はなんと楽なことだろう分岐から30分で神室岳(かむろだけ1,356m)に到着した。別名を仙台神室と云う。登っている途中からガスが出て分岐から見えていた山頂は姿を没してしまった。山頂標識だけ写真に収め、滞在2分で引き返した。ダンゴ平に達する頃には弱い雨が降り出してきた。今日の午前中は気圧の谷の影響を受けると天気予報は言っていた。
丁度1時間で往復しデポしておいたザックを背負って山形神室(1,344m)に登った。分岐からは200mほどの距離ですぐに到着した。3等三角点「禿山」があり展望は利きそうだが、ここもガスで三角点にタッチしただけで通過した。120m下降し登り返すとトンガリ山(1,241m)、ここもガスの中で通過した。下り始めたとき一人の男性が登って来た。昨日の登りだし以来始めて人と遭遇した。笹谷峠から神室岳を目指すという。
ハマグリ山(1,150m)を越える頃、雨が止み後は晴れてくるのを待つだけとなった。2組の登山者とすれ違い笹谷峠(ささやとうげ906m)に達した。国道286号線が越える峠で、50台収容の駐車場があり、北蔵王の登山拠点となっているようだ。このガスの中にも拘らずほぼ満車になっていた。近くに有耶無耶関(うやむやのせき)跡があり観光地としても機能しているのだろうか。
今夜のことを考えて、ものは試しと駐車場でタバコを吸っていたライダーにライターの予備を持っていないかと聞くと予備はないけどこれをあげようとやさしいお情け、有難い。これで今夜の食事が作れる。国道を越えて登山道はと探すが標識がなくウロウロしていると車から顔を出し「ガンドサンならこの道真っ直ぐだべ」と尋ねる前に教えてくれた。山形の人は人情深い。実は今から登ろうとしている山は「カリトヤマ」だと思っていたのに“雁戸山”の読みはそうではなかった。
少し進むと山形工業高校の小屋があり鎖錠されているかと思ったら鍵もなく一般に開放しているようだ。標高906mまでずいぶん下ってしまった。雁戸山(1,486m)は峠から580mも高いところにある。覚悟を決めて登りだした。樹林帯で展望はなく只管登る。空を見上げると青空が覗きだした。関沢からの登山道が合流し、さらに登って稜線に乗りあがったところで展望が開けた。縦走路を外れ、北に進むとカスケガ峰(約1,340m)に到った。最近まで東北電力のマイクロ波反射板があったようで2.5万図には記号が残っていた。山頂にはその記念碑の銅版があった。そして傍らには廃屋となった小屋があり、展望は良く遠ざかりつつある神室岳が素晴らしかった。
2組の登山者に追い着き、カスケガ峰山頂で一息いていると風が強くて寒い。腹拵えもそこそこに雁戸山への登りに戻った。前山は東側を巻いて進むが斜めに生えた木が煩く足元が悪い。数組の登山者を追い越し雁戸山との鞍部に達した。山形市新山からの登山道が合流し急登で稜線に乗り上がると蟻の戸渡りと言われる難所に差し掛かった。再び急登を這い上がると雁戸山(1,485m)に達した。2等三角点「草倉山」があり360°の展望がある。天気は回復したが、蔵王主峰の熊野岳は未だ頭に雲の帽子を被っている。下の方では蟻の戸渡りをする人たちが俯瞰できた。笹谷峠からの登山者は大体がここで引き返す。この先南雁戸山を目指した人は一人だけしかいなかったようだ。厳しいアップダウンで南雁戸山(1,486m)に着くと山頂には山の神の石碑がった。振り返ると雁戸山が存在感を持って聳えていた。紅葉も真っ盛りで熊野岳の雲も完全に取れた。
相変わらず風は冷たくゆっくり休憩をすることができない。南尾根を下り八方平へと下った。また200mもの下りだ。もう人に会うことはないだろうと思っていたが刈田岳から笹谷峠に行くという若い男性に出会った。八方平には避難小屋があり、外はビュンビュン唸る中、風を避けて漸くゆっくり休憩することができた。
八方平の鞍部から登り返すと3等三角点「群玉」(1,237m)があり、その先で最低鞍部(約1,190m)となった。さてこの後はいよいよ蔵王核心部への登り返しだ。熊野岳はまだ5卆茲波猜に見える。比較的なだらかに進み名号峰(1,491m)に到った。3等三角点「金峰」があり展望は遮るものなし。熊野岳、五色岳、刈田岳が近づいてきた。
追分まではほぼ平坦で近くと残り2.4劼箸覆蝓▲レ場の中に目印の棒が立ち山頂へと導いてくれた。東の稜線端に乗り上がり右に折れる。左はロバの耳コースだが落石のため閉鎖されて久しい。山頂域の風は益々強く15m/sはありそうだ。一木一草もない稜線は遮る物がなく、天候回復した後もずっと着たままの雨具をフードまで被って進んだ。熊野岳避難小屋を過ぎると、なだらかな登りで熊野神社が建つ山頂に到った。標高は1,841m、山頂にも避難小屋があり、その後に2等三角点「熊野岳」があるがこちらは1,840mで山岳標高とはなっていない。
余りの寒さに一通り写真を撮るとそそくさと退散し馬の背へと下って行った。東側にはあの有名な蔵王のお釜がエメラルドグリーンの水を湛え神秘的だ。刈田岳の直下まで蔵王エコーラインが通り駐車場周辺は観光客がわんさといる。しかし彼らは刈田岳やお釜の回りだけで、熊野岳まで来る人は殆どいない。俗化された地域にだんだんと近づき中心のレストハウス横を足早に通り過ぎた。
刈田岳(1,758m)へは広く整備された階段があり横風を受けながら登った。山頂には刈田嶺神社と3等三角点「刈田岳」があり展望がよく振り返って熊野岳を望んだ。今日の歩行はここまでとし、少し先にある刈田岳避難小屋に泊まろう。小さな小屋には先客が一人陣取っていたが無人の避難小屋だというのにストーブがあり有難い。先客は地元山形の人で、大朝日小屋の大場さんや佐藤さんのことも知っており、大場さんは今年骨折のため小屋に入っていないとの情報も得た。そして何より昨年大朝日で知り合った長井市の“葉っぱ塾”八木さんのことを知っていたのは嬉しかった。
3日目(10/12)
一晩中小屋の周りをビュンビュンと風が唸っていたがストーブのお陰で中は快適だった。日の出は5時36分、薄いガスが掛り太平洋の水平線からぼわ〜と昇るご来光は、もう一つ感動を伴わない。不忘山までピストンするという山形の男性を残し、先に発ち南蔵王の領域へと踏み出した。ジグザグに登る蔵王ハイラインを6回横断して刈田峠へと下った。登山道は丸太階段が整備され歩き易い。歩き始めるとすぐにガスが晴れたが高い山の上は雲の帽子を被ったままだった。しかし今日も天気は期待できそうだ。低い木立の中に白骨樹が混じり蔵王らしい雄大な山麓が広がっている。気温は氷点下、5〜6センチに成長した霜柱が泥濘んだ道を歩き易くしてくれ幸いだ。水溜りは完全に氷が張っていた。
鞍部は1,530mの刈田峠、ここにも避難小屋があった。登り返しになって振り返ると刈田岳が朝日を浴びて美しい。それにしてもジグザグに斜面を走る道路は残念だ。前山(1,684m)山頂は西側の展望があり遠く朝日連峰が見えているがあまりはっきりしない。先に進み杉ヶ峰(1,745m)に近づくと雲の中に入ってしまった。3等三角点「杉峰」があり開けていた。南東の尾根を下ると木道が連続しだし、芝草平(標高1,652m)の湿原帯に達するとロープが張られ植生保護が進められていた。ここからは朝日連峰が一望で、以東岳から大朝日岳、祝瓶山まで確認できた。屏風岳に登る途中で後烏帽子岳、前烏帽子岳への道が分岐する。存在感を持った山で行ってみたいところだ。
屏風岳(1,825m)に着く頃には山頂の雲も取れた。最高所は登山道の途中で何もなく150mほど南の1等三角点「屏風岳」(1,817m)の位置に山頂標識があり展望も良い。先程の分岐の先にある後烏帽子岳、前烏帽子岳、水引入道、馬の神岳など東に飛び出した山が秋山沢の両側にどっしりと構え、縦走路の先には南屏風岳、不忘山が待ち構えていた。
屏風岳の南で水引入道への尾根を分け、南屏風岳を源頭とする権現沢を抱き込むように切れ落ち、半円形を描き縦走路が続いていた。大きな山帯の南屏風岳へはなだらかに登り山頂に着く頃にはまたガスに覆われてしまった。南側は結構急斜面で、P1732に到り、不忘山を撮りたいのでガスの晴れるのを暫く待つがいつまでもすっきりしない。風が冷たく寒くなってきたので諦めて下り始めると一瞬姿を現したのでバッチリカメラに収めることができた。ガレ場と泥濘みが混じり靴底には泥がべったり、滑って危ない。慎重に歩を進め不忘山(1,705m)山頂に辿り着いた。
やはりガスは晴れず、最後の山の展望は得られず若干心残りで、下山することになった。南の尾根を下り南蔵王ユースホステルに下る予定だったが、時間も早いし交通の便がよく、温泉のある蔵王白石スキー場へ下りることにした。思った通りこちらがメジャーな登山道で、下りだすと何組もの登山者が登って来た。殆どが不忘山、屏風岳、水引入道を周回しスキー場に戻るコースのようだ。
この下山路の悪さはどうしようもなく危険はないが、泥濘みと粘土質の地肌でツルツル滑り転倒すれば大変なことになる。何組の人と出会ったのだろう、山頂を少し下ると風はなくなり、ガスは晴れ絶好の登山日和となった。標高1,300m位のところに弘法清水という表示があり、水場が近くにありそうだった。振り返ると不忘山が姿を現し天気は安定したようだ。
標高975mで広場に達し道が左に90°曲がると白石女子高小屋跡でこの後はスキー場内の広いダート道となった。1卍の歩行でスキー場に達した。公共交通は何もなく鎌先温泉まで10劼瞭擦里蠅鯤發ことにした。登山地図に沿って旧道を忠実に歩いたが何時しか元の県道に戻ってしまい狐に摘まれたような感じで、気を取り直して県道を下って行くと1台の乗用車が止まり、「乗っていきますか?」と優しいお言葉、下山時にすれ違った仙台の女性だった。
1時間覚悟していた道も車なら10分足らず、鎌先温泉すずき屋旅館で下してもらい温泉で3日間の汗を流した(入浴料\500)。白石駅まではバスがあるが次のバスは15時過ぎ、待ってられないのでタクシーを呼んでもらった。駅に着くと2分後に仙台行きの快速がありこちらはラッキー。仙山線に乗り換え山形に戻り、夜行バスまでの3時間40分、縦走路から見えていた山形城址(霞城公園)に遊び、駅前の郷土料理店で、山形男山を片手に、庄内産の真鯛造りと特大鯖の開き、芋子汁で山形を味わい旅の締めくくりとした。
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