《巨摩山地》御庵沢(ごあんざわ)から甘利山


- GPS
- 64:00
- 距離
- 19.7km
- 登り
- 1,250m
- 下り
- 1,534m
コースタイム
天候 | 一日目:曇り 二日目:晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年05月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
34系統6:50→7:23御勅使バス停 |
コース状況/ 危険箇所等 |
堰堤はたくさんあるがおおむね美しい谷。30mの直瀑の前後にも多くの函滝があって飽きさせない。厳冬の苔むした雰囲気とカツラの森も良い。 |
その他周辺情報 | 林道カーブ点からゴム長の釣り人が降りて来ていた |
写真
第一の函滝帯
右岸側の崖登って小さき巻き、お助けヒモ10mたらす。
yoneさん、毎度すみません。岩が脆く、つかむととれてくる。押しつけてホールド。これがうまくいかない(tani)
ここは、びびりました。yoneさんが、登った直後に、10秒ほどにわたって、岩と小石が落ちてくる。「ラク!」の声で岩陰に隠れて、収まったところで、上がりました。 ところが、7分方上がったところで、足場が崩れて動けず。 ここを軽々上がったyoneさん、お助けロープで引き上げてもらいました。(tani)
装備
個人装備 |
メット+登攀具+ハンマバイル 1
ノコギリ+焚き火セット 1
フェルト地下足袋 1
シュラフカバ+非常用防寒具類 1
|
---|---|
共同装備 |
ツエルト 1
食器+水バッグ 1
ザイル8mm×30m 1
|
感想
甘利山山頂でコンパとのことで、歩いて登ろうと思ったが、甘利山の登山道はもうどこにもなかった。山頂南面に上がる御庵沢から山菜目利きのタニガワさんと登る事に。
はじめバス停から歩く計画だったが、タニガワさんの車で林道標高650mの分岐に駐車し750m屈曲から入渓する。バイクがあって、釣りの人もいた。ヤマメ2匹釣ったと。
堰堤クライミング3本越えて、830m付近の屈曲部から、小滝や岩壁のいい感じの沢になる。ぼろぼろのホールドもあるけど、そこはうまいこと登る。タニガワさんになんどかお助けヒモを垂らしたり、6mm×10mも垂らす。
このあと標高1100付近までの間に堰堤クライミング10本ノックをこなす。この間に、林道がぐぐっと沢に近寄るポイントがあるせいかゴム長履いた釣りの人3人がいた。その後沢は岩壁で狭まり、第二の函滝帯に突入。どうせ何も無い沢だろうと思ってきたけど、盛りだくさんのヤマ場でうれしい。堰堤千本ノックを忘れる良い沢だ。狭い函の奥に大きな滝が二段になっているのが見えた。手前のは10mほど。左のザレザレルンゼをラッセル気味に落石落としながら直登して、やはり10mお助けヒモを垂らして対処。次の20mは元滝というらしい。左岸側に見物用のハシゴの残骸がある。トラロープで補修してある。元滝は大きい。見事な滝だが傾斜があり、登れそうに見えない。見物ルートから左岸の上の台地に上がると、地図に無い林道が来ていて、看板もあった。すぐ先で沢に戻ってみると、傾斜が落ちて、牧歌的な渓流になった。山菜もあるけど、量が少ないのでとるほどではなかった。右岸側に湧き水が壁からザーザー滲み出している所があり、そのあたりでタニガワさんにワサビやミズを教わる。少し齧って味わう。おいしい。転石にコケが載ったきれいな川床を進み、また堰堤帯。1280の二股は両サイドと真ん中にトリプル堰堤。誰も見に来ないと思ってヤケのヤンパチで作ったんだろ!その上の橋のたもとには、甘利山登山口と書いてあって腰掛けまである。ほんとうに道があるんだろうか。
道には構わず沢を詰める。
1400二股は、うっかり千頭星直登沢に入りそう。甘利山コルへは支流で、小さな流れだが、ここから傾斜がついて、コケを載せた岩っぽい景観になってまた変化。先の方の傾斜が緩んで何か広い所に出る予感。やっぱり大笹沼。50mくらいの沼だけど、秘境感強し。そのままコルを目指して薄い笹をコギコギして稜線へ。雲も上がって来た。山頂は縄がばんばん張ってあって、人が多いんだろうなあというところ。遊歩道を下るとグリーンロッジに。アンビさんと13さんが、僕らを風呂に運んでくれるため、待っていてくれた。山麓の温泉まで自動車で下って登る。
二日目
甘利山をひとり、足で降りる。道はもう廃れたようだが、地図に一応ある破線を辿って、グリンロッジから北を目指す。ヒザ下の丈の笹斜面をコギコギして電電公社の鉄塔のところでウンチして、1580から1435のあたりで踏み跡は怪しくなり、地図をポッケにしまうヒマはなくなる。1435の三角点を確かめるとそこにはヤマレコを名のる標識が結わえてあった。1435の北東の尾根は絶対間違えそうだと思ったけど、やっぱり間違えた。尾根を下って林道を横切って2本目に出たら標高計が980m。そんな?何故か上り坂の林道を右へ進むと1046屈曲に来て初めてわかった。1435から下る尾根をまるごと一本北側のやつに間違えていた。何度やっても難しいものは難しい。軽いショックと、人智の無力を胸に林道をトボトボ下る。850にある大きな沼は樹林の間にきらりと見えたのみ。この林道も修復放棄して閉ざしている。歩く分には気楽なものだ。堅沢に降り、計画では白山城跡に西から登り返してのっこしてやろうと思っていたが、こどもとの約束で10時頃家に帰ると言ってあったので、今回は諦めてそのまま林道を下る。少し残念。
林道を下ると緑がきれいなトンネルだ。滝やせせらぎとともに里に下ると、青空とニセアカシアの大木が、お迎えしてくれた。一房掴んでもりもり食べると甘い。人里は田植えの準備で忙しそうだ。水路で地下足袋の泥を洗っていると、電動車椅子の老婆が通りかかり、甘利山から降りて来た話をすると、道、どうなってる?と。
車がないね、と言われて、駅まで歩きます。と答えると、「そうだね、そうでなくちゃ」と励まされた。これもゆっくり見学したかった武田八幡宮も素通りして韮崎観音目指しててくてく歩き下る。林道に比べ、アスファルトの人里は、太陽が容赦ない。両脇の田に水が満ちて行くのを眺めながら観音様の下の韮崎駅へ。韮崎駅は高架の上。茅ヶ岳を遠くに見ながら高校生たちと甲府行き列車を待つ。
「甘利山は初めて登る山だから、山頂に麓から登って敬意を表したい」というyoneyamaさんの計画に便乗させてもらいました。沢から上がると、南アらしい植物・花にも出合えると思って。それと沢の源頭に池があるというのも、どんな場所だろうと、興味を魅かれました。
ただ、地図で見ると、御庵沢は下流からやや上流部まで、砂防ダム・堰堤が連なっています。楽しめる沢になるのか、そこは心配して、当日を迎えました。
芦安村・夜叉人峠へすすむ車道のバス停で、yoneyamaさんと合流。御勅使川の支流、御庵沢へと車道を進み、須沢の集落から林道に入りました。途中、車を駐車し、標高740mの林道の折り返し点から、左手下の御庵沢に入渓しました。
沢は幅4mほどの平沢。釣りの青年が1人。すぐに谷が狭まり、いったん開けると910mから最初の堰堤帯。その上で沢が狭まり、小滝が現れました。yoneyamaさん、左脇の岩の壁に取り付き、小さく巻きます。私も続きましたが、足場がもろく、手のホールドは押さえつけないと剥離する。ここでyoneyamaさんから最初のお助けひもをいただきました。
その上は、函滝帯に。両岸がゴルジュ状に狭まったところや、小さく巻いて落ち口に出る小滝などが入れ替わりで出てきて、楽しめました。
標高1040m付近にも小さい函滝あり、どいどうと水を落としています。直登はできず、右から巻くのかな?という場所。
yoneyamaさん、左手のザレ状の急斜面に、ザーと小石を流し落としながら、上がって行きます。高度差で8mから10mくらいですが、手もザレのなかに突っ込んで四つん這いの登り。上部の大岩(脆そう)の手前で、右手の小さなテラス(灌木が立つ)に登りあがりました。
私も続こうとしたところで、上から「ラク!」の声。
ザレ場を頭ぐらいの石やコブシ大の石などが、バウンドしながらばらばら、ごろごろと落ちてきました。岩陰に逃げて10秒ほど、収まるのを待って、私も四つん這いになって上がって行きました。
7mも上がったところで、崩れる足元に足を出せず、動けなくなる。上がるのが困難に。ここでもyoneyamaさんからお助けヒモを、いっぱいいっぱいの長さで落としてもらい、2mほど這い上がってこれをつかみ、片手でハーネスにセットする余裕もなく、ひっぱり上げてもらいました。
途中、シロバナエンレイソウが1株、函の入り口に咲いていました。北海道のオオバナノエンレイソウに見慣れた目では、「小さいなあ」とyoneさん。ヤマエンゴサクの群生もあり、沢床で遅い開花の時期を迎えていました。
この上、1150m付近で東から崩壊が激しい沢を合わせると、本流へ崖状の張りだす地形があり、コゴミの群落があったあとに、その下から地下水がしみだし、流れ落ちる場所がありました。こういうところは、植物との出合いがある。2人で寄ってみると、ワサビが自生しており、沢のそばには今回の遡行でたった1度だけ見つけたシドケ(モミジガサ)もありました。ミズも生き生き。タネツケバナ、コバイケイソウなども、少し上に見られました。湿った沢床で自然に繁殖を広げるには、崩壊と増水が激しいこの沢では、なかなか困難なのでしょう。
標高1170m付近。御庵沢ではもっとも大きな落差18m、20mの二段の滝が現れました。1本めを右から大きく巻くと、その途中、2段の全容がとらえられました。こんな見事な滝が、この沢にあったとは。(上段は元滝)
高まきして上がった台地には閉鎖されている林道がつながっていました。
その高台から、また沢へ下降し、2段目の滝の上に下りました。
1310mの手前で、大きな堰堤が本流に3段連続する場所に出て、また高まき。林道がここで本流を横切っていました。
水流が細くなったなかをすすみ、1440mの分岐に出ると、ここで千頭星山への枝沢(こっちが本流)を左に分け、傾斜がまた強まった流れをたどって、いよいよ甘利山へ向かう進路を進みます。
標高1480m。東側の1540mの子山に抱え込まれるように、指し渡し80mほどの池がそこにありました。御庵沢は、この池に、周囲からの湧水をたたえ、流下していました。
池の流れは幅3mほどの浅瀬になって池尻の落ち口の斜面に流れ、そこから傾斜20度ほどの涼やかな流れが森の中を下っていきます。毎秒に風呂桶に半分は流下しているかな。
この沼は、今回、yoneyamaさんと楽しみにしてきた目的地です。初めはこの沼は、千頭星山との分岐にあるのかと想像してきたのですが、それよりさらに50mほど高い場所に池はありました。
誰もいない、静かな、小さな沼。こんな源頭は、素敵です。ほとりには、サクラソウがロゼット状に葉を柔らかく広げ、花茎をやや伸ばし加減にして、株の幾つかにはもう開花前の濃い桃色の蕾も育っていました。
池から甘利山の鞍部(1710m)への登りは、標高差230m。笹藪の直登りで、鹿道も使っての斜め登りも加えました。
14時30分、山頂着。御坂山塊から、奥秩父方面が視野に入ります。
yoneyamaさんには、何度もサポートしていただき、また時間も予定を1時間余り、オーバーする結果になって、申し訳ない。命を救われたような思いをした場所もありました。感謝の気持ちでいっぱいです。
ロッジへは茅ヶ岳の登山後に、オフ会に参加するヤマレコメンバーが、向かっているはずです。
今回は素敵なルートから甘利山に上がることができ、美しい滝や静かな池にも出合うことができ、良い体験をすることができました。
コメント
この記録に関連する登山ルート
この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。
ルートを登録する
おはようございます。
この計画を知ったときにyoneyamaさんに「御庵沢」って「ゴア沢」のこと?なんてぼけたことを書いてしまいました。
地図を拝見すれば「御庵沢」は甘利山の南麓側で御勅使川に流れ込む沢なのですね。
私は甘利山の北側で御座石鉱泉の方に流れている「ゴア沢」と混同していたのでした。
それにしても御庵沢もいい沢なのですね。沢登りなどできないのが残念ですが、新緑が美しい。
自分のそばなのにまだまだ知らないところがあるものだと痛感しました。
ぱそこさん
そうそう、地図見たら北面の沢はゴア沢と書いてありました。でもやっぱり語源は同じなのか、関連があるのでしょうね。ちゃんと書いておかないと、わからなくなる事って多いですね。
pasocomさんのおかげで、御庵沢の歴史のなぞについて、いろいろ想いをめぐらせながら、登り上がることができました。
元は「ゴア沢」で一緒の呼び名だったものが、地図表記などで差異をあえてつけられて、片方が「御庵沢」と表記されたという推理も、おもしろいなあと、yoneyamaさんとのやり取りを読ませてもらってきました。
私は、御勅使(みだい)川と、御庵沢とを並べて、御勅使がお休みになった場所に、庵を設けたから、この名があるのかなどと、根拠はもちろんなく推理したりしていました。
御勅使は京都から来るはず。だとしたら、甲斐の山里で何があったのか、戦国時代以前に、甲斐に流されてきた、都人ないたのか? などと、どんどん推測は広がります。
再度コメントさせていただきます。
「御勅使川」というのは、なにやら大層な名前だなあ、と思っていました。
他県人のカミさんなどはそもそもこの字が読めなかったです。
tanigawaさんのレスが気になって、例によって甲斐国志を見ると、こう書いてありました。
「昔、大雨で洪水が発生したあと、時の朝廷が勅使を下して堤防を直させること3回にしてようやく成果があった。
そこで民はその徳を不朽のものとするために「御勅使川」と称した。」
と。
御勅使川は急流であることに加えて夜叉神方面の地質が軟弱なので大変な土砂が流れます。それで水が普通よりもずっと重い、破壊力があります。
その流れが、そのまま甲府盆地に流れ込んで水害を起こしていたのを武田信玄が流れを変えるなど治水を行って今のような状態になったというのはご存じなことだと思います。
甲斐国史にありましたか。信玄以前から、国営の工事があったとは知りませんでした!
pasocomさん、朝廷が政治権力を、ある程度握っていた時期だから、戦国以前と思ったのですが、資料では、同じ戦国でも信玄の時期まで繰り下がるということですね。「甲斐国史」は職場にあると思うので、調べてみます。洪水を防ぐというのは、当時は集落、地域全体の生き死ににかかわることだったのですね。
いいねした人
コメントを書く
ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。ヤマレコにユーザ登録する