唐松岳滑落時の感想、反省、検討
- GPS
- 05:47
- 距離
- 5.9km
- 登り
- 1,127m
- 下り
- 380m
コースタイム
過去天気図(気象庁) | 2024年04月の天気図 |
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アクセス |
写真
感想
※だらだら長文です。自分のための備忘録なだけなので※
帰ってきてから、約2週間が経ち、ようやく抜糸が終わりました。帰って気が抜けたのか、毒気がすっかりぬけて、身体がふわんふわんしてました。追加で少し残業もしてたので、酷い風邪を引きました。休めないし、夜勤もあり、体調が中々戻らず、やれやれですが、それでも運の揺り戻しと思えば幸せな事ですよね。
当時思った事は、帰りのバスでつらつら書いたので、それはそのまま掲載し、その後怪我後の写真は他の人のレコの写真をかりて(切り取りさせて貰ってますが、本来は許諾が必要だとは思います、、、)を見ながら検討しようかと思います。
レコは「山と高原地図」アプリ、「ヤマレコ」2つ取っていたのですが、何故かヤマレコは事故時の復帰の所で止まってしまってたので、ここではヤマレコの記録を残します。
では、事故後の感想。(やや重複あり)
降り場を間違ったのかもしれない。今思えば、行きは直登で岩の間を行ってたような。でも、登山案内の記録(ここではヤマレコの記録と、冬山登山の本)には左巻きで登って、とあった。じゃ、ここかな、と風でトレースがわからないところで足を出した瞬間、落ちた。
ヤバい!と思ったが、止まらない。少し一回緩やかな何処で、止まれ!って思って、ピッケルの先を刺したけど、腕が伸びてて刺したから全然効かない。アイゼンも少し効かせてみた。骨折する可能性があったり、ふっとばされたりするから、本当はいけないけど、止まらないよりはマシだと思って。でも、ダメだった。15秒以上はあったのでは?
なんで止まったかはわからない。新雪が少し吹き溜まってたので、摩擦がより効いたのか。
生きてる。
不思議に思った。
幸いザックに笛をつけていた。
笛を吹いて叫んでみた。この時間だ。もう人は来ないだろう。それとも風で聞こえないか。
携帯はどこかにふっとんでいた。
明日は予備日だったので、救助要請がかかるまで、最低でも明後日。今後、強風と天候の悪くなる事を知っていた。しかもビバーク出来るようなとこでもなく、動いたらまた落ち始めるかも。雪洞は斜面が急で考えなかったし、考えられなかった。スコップも無かった。
羽織るツェルトとガスコンロはあった。が、自分の体力実力から、ここに止まったらまた滑落か低体温で死ぬ。と思った。
遅くなると状況が悪くなるかもしれない。
幸い怪我はなさそうだ。動くしかない。
2度目は無いんだ。
今度落ちたら死ぬ。
でも登らなければこのまま死ぬだけだ。
そう思って、動いた。
何度もそう思った。
ピッケルを下(スパイク)の方からシャフトまでぐーっと差し込んで。その次に先端(ピック)を指して。時間がかかったが、一歩一歩。自分が転がり落ちた跡を辿ってのぼったつもりだったが、跡はすぐ消えてわからなくなってしまった。出来るだけ真っ直ぐに進んだ。滑ってるから意外と跡がつかないんだな、と思った。
暫くして黒飴が1個、雪に落ちてるのが見えた。私が落としたに違いない。道は間違ってない。嬉しかった。
今のやり方では時間がかかりすぎる。
行ける所は、早めにしないと日没になる。途中から、先端(ピック)だけ指して、アイゼン前爪をひっかけて、登った。
1.2.3.4.5.
区切りながら行った。足に疲労感が出て、パンプアップしてる時みたいに、力がすぐ入らなくなる。腕も。何度も休憩した。
強風が下から上がってくる時もあって、うつむきながら耐えた。
少しあがると、今度は携帯が落ちてるのが見えた。
これにはびっくりした。嬉しかった。電源は20%。山と高原地図とヤマレコの記録を同時にしていた。これで現在地が大まかにわかった。そして、この地点から落ちたとこまで登り上げるのは難しそうだった。傾斜がより急なのと、私がそこまで体力があるかわからなかったからだ。
携帯を手にした瞬間、救助要請が頭によぎった。が、20%なら風が吹いた瞬間に電源がおちるだろう。携帯はMagSafeバッテリーを繋ぎながら使ってた。落ちた時に、バッテリーはふっとんでいて、ない。どっちが良いのだろうと思いながら、このまま自力で頑張ることにした。右手の岩に行き、その後、そのまま横スライドで登山道まで行こうとした。
岩場は携帯が見つかる前から安定して休める場所として目的にしていた所だった。
岩場の周りは雪でなく氷だった。ガラッと落ちそうで怖かったがよじ登って、一回休んだ。ザックの脇に、パワージェルを入れてたので、それを取り出して舐めた。少し元気が出たような気がした。今度は、東に横スライドだ。
先の方で黒く、人が動いた気がした。助けて下さいと声をかけてみて、笛を吹いた。近くまで来たら、それは短い木だった。自分自身が心細いんだな、とちょっと笑ってしまった。その木のところがちょうど、登山道との合流点だった。
ここで1450。携帯の電源が切れた。
有難い。ここまでくれば後はなんとかなる筈。
暴風だけど、少し晴れ間が見えて、後ろにアルプスの景色が見えた。こんな時でも、綺麗だな。と思ってしまう。
暴風のせいで、フリース素材の帽子が取れて飛んでった。バラクラバとキャップはあるからなんとかなるさ。ヨタヨタあるく。どうもフラフラする。靴が脱げそうだ。止まってみたら、靴紐が殆ど解けてる。結び直した。左踵は擦れて捲れて痛かったが、これは登りで傾斜気味に歩いたせい。仕方ない。登山靴紐は色んな理由で緩くなったのだろう。今までアイゼンと共に脱げなかったのは有難い。ケルンが所々あるのが、今いる所が間違ってないって思える目安となって、心が落ち着いた。
そう思いながら、よろよろ下山して、17時、八方池山荘に着いた。
恥ずかしかったので、滑落したのは言わないで泊めでもらえてないか、とだけお願いしようか、と一瞬思ったけれど、この後急変して倒れたら、訳がわからず迷惑かけるに違いない、と思い、正直に話して泊まらせて貰えないかと聞いた。
幸い、空きがあって、泊まれた。
心配されたけど、右の肋骨部分がじんわり痛い以外は大丈夫、と答えた。
シャワーがある、というので、浴びようとした時、初めて怪我に気づいた。
ハードシェルの右太ももあたりがぱっくり裂けてる。なんだ、と思って下のズボンを見たら赤いものが見えている。自分の血がべったりしてて、組織の一部も混じっていた。右太腿を10僂阿蕕だ擇辰討靴泙辰討い燭茲Δ澄5い鼎なかった。寒かったせいか、血はドクドクは出ておらず、じんわり出ているようだった。
スタッフさんに相談し、消毒ではなくシャワーで洗った後に圧迫止血をし、ガーゼを詰めて、パッドで覆った。その上から追加ガーゼ&包帯で巻いた。圧迫止血をしたつもりが、それでもジワジワ出ている。夜中交換用の替えも戴いてしまった。明日リフトが動いたら、病院に行こう。
夕飯を食べて眠りについた。寝れてるような寝れてないような。外は暴風だった。このまま外にいたら、やっぱり死んでたんだろうな。生きてるのがありがたい。実感なくそう思った。幸い1人部屋だっので、ガーゼ交換も出来た。布団を汚したらいけないと、タオルを巻いてたけど、幸いタオルに染みる程ではなかった。
翌日、朝の景色を見たら、昨日の事が嘘のように凄く綺麗だった。
朝ごはんを食べ、リフトを降り、タクシーでクリニックに行った。傷を縫ってもらい、少し安心した。
帰れるくらいのお金が残ったのにも安心した。
…………………………
道選定の誤りについて
山小屋の方に聞いたが、八方尾根主脈上直下のこの道は、冬場、雪がない時は岩場を直登し、雪がある時は左に巻く(登る時)との事。2つの案内(ヤマレコの山紹介.ガイド本)では、左巻き・直登と違う書き方をしてたのはそのせいだったらしい。ただ、私に道を見極めて選択できる力量が無かったという事だ。
…………………………..
◆反省と検討◆
よかった点
・笛があった
・エムズシェルターという、かぶるだけのシェルターを持っていた
・お湯あり、ガス缶あり、食料少々あり
・唐松岳頂上までの時間のデットラインは(12:30〜13:00)決めていたので、そんなに遅くなる事が無かった。
・雪山講習で登り方・アイゼンのつけ方等を改めて習っていたため?か、アイゼンが外れてしまう事は無かった
・少し前にも雪山を経験した
・バラクラバがあったので、風が顔にあたっても耐えられた所がある。
ラッキーだった点
・登り上げの際にたまたま再度滑落しなかった(傾斜角度は急ではあった)(別にクライマーでも無いので、今回は素人の火事場の馬鹿力が働いただけだと思う)
・あからさまな骨折や目立つ外傷がなく、身体が動いた
・外傷部位が頭や腹などではなかった事
・登った所に携帯があった点。そして電池残量が残っていた事。そのお陰で現在地を確認し、目的地にあたりをつける事が出来た
・天候が少し味方をした:耐えられるくらいの強風で済んだ。視界はむしろ帰り(15時以降)の方が良かった。
・右大腿のけがに気付かなかった点(気づいていれば、圧迫止血をし、その効果を確認し、とタイムロスを起こしていた+下手に動かない方がいいという判断をする可能性が高くなった。)
・気温がー20度といった極端な低温ではなかった事
悪かった点
・ヘルメットを持っていかなかった(頭が傷つかなかったのはただの幸運。岩っぽい所は1か所しか通らなかったので)
・ピッケルも最初いらないのでは、と思っていた(程甘い考えをしていた)
・スコップを持って行ってない。そもそも計画的ビバークをした事が無い
・予備日を持っていたにも関わらず、明らかな視界不良と強風が予期される中につっこんでいった点
・登れる事よりも、下れるか、に注意を払わなければならない(特に冬場では)事を失念していた
・お昼を食べる場所もなく、一息考えて、どうしようか、という時間を、自分に与えていなかった。(必死ではあったが)。出発前に、ここで一旦撤退の可否を考える、というポイントを決めていなかった。
・単独行であった(ただし、これは悪くても今後も単独でしか歩けないだろうけど・・→単独行なりに、他の人以上に予備やバックアップを考えるべき)
・今回の計画がそもそも、3.4日前に勤務が決まった時に思い付いたものであり、準備期間が少なかった。
・情報収集の足りなさという点では、注意を払う点を明確にしていなかった。今回なら、◎唐松岳山頂直下、◎唐松岳頂上荘が見えるピーク手前、この2つ、というように。地図を見たり、動画やレコを見た際にそこまで意識を持てるように読めてないという事だ。。
・また、情報収集という点では、特に、風をリスクとして考える意識が薄かった。
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なぜこうなったかの反省と改善について
・元々、「青い空と冬山の峰々」の綺麗な景色を目当てに、晴れの予報だから、4/1に予定を組んで来た。実際は、当日、下界から小雨がぱらつく天気。上に着いても風は強く、雲は重く、雪が吹雪いていた。視界不良・強風は継続するだろうと考えられる天候だったし、歩いて丸山についた時までそうだった(歩き始めて2時間後)。この状況では、キレイな景色が見れないのは薄々わかっていた。なのになぜ突っ込んでいったのか。
多分、私は途中で目標を「ステップアップのための登山」に切り替えたのだろうと思う。いつまでも初心者でいられない。多少の風や雪でもルートを見つけて進めるくらいになるんだ、という自負を持ちたくて、難易度が上がった登山をしようと思った、と今は思う。ただ、これは安全性が保障されていないし、計画的ステップアップでもない。経験値も圧倒的に少なく、セーフティーネットを敷けてない中でやる事ではない。そういう冷静さを私は欠いていた。
ココヘリがあるから死体は発見して貰えるさ、という風に思ったのもあるだろう。痛いのは嫌だけど、あの中で、命は、風に自然に一吹きされただけで吹き飛ぶものだと凄く思った。
もしかしたら、真面目に予定を組むと、9時山荘前出発15:20ゴンドラ到着はどうしても気持ちの余裕が持てない。それが嫌なら山荘に一泊して次の日に出るしかない。でも、2日目の方が強風・悪天候になる予報だった。(20m/s以上)だから、1日にした。今回は難しい。でも次のチャンスはこの状況だと来年だ。と思って、来年に持ち越すのが嫌だったのかもしれない。
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どうしたら、登山を途中でやめただろうか。
一つ。木曽駒の時のような場合では撤退はありえただろう。
目当てがそもそも友人との宿泊、だったので、この時悪天候や気候条件が悪ければ無理はしなかったと思う。また、あの時はわかんを持っていった。それはわかんが必要かも、という点もあったが、上までいけなくてもわかんの訓練を下でやる、という目標が一つあったからだ。
→なので、行く前から登山以外の目標、天候が悪かった場合の楽しみ方(温泉・お土産・レジャー等)を持っていくべきではあった。それか、またわかん装着の訓練、雪洞ビバークの訓練とか、そういう目標でもよかったと思う。今回の山行は必死だったけどその場では楽しむ余力はなかった。頂上山荘手前のヘリポートから先の道がわからず、泣きそうだったし、唐松岳の頂上も、登っても全然見えなくて何度も帰りたいと思ってた。。
天候予報の変化について
→最初の予報は晴れ、次は曇り 風はより強く
6時〜12時:−8度 西14ml/S予報
12時〜18時:-5度 西19ml/s予報 天気図では等高線は混んでないので、これはこの山や山域の気候の特徴によるのだろう。西(日本海)からの風向だから天気も荒れやすいのか・・・。ここらへんは考える頭が無いので、天気と山域について学んで自分で考えられないと判断できないのだろう・・。地道にやるしかない
単独行について
→折角ヤマレコプレミアムに入ったので、イマココで友人に現在地を共有できるようすべきだな、と思った。YAMAPのすれ違いの方が本当はいいのかもしれないけど・・。あと、バッテリーは最低でも2個と、電源が落ちない工夫(断熱材とか、コジー使うとか)の工夫が必要。紙とコンパスはあったら電気に頼らないからいいのだけれど、風吹きすさぶ中で、それで現在地にあたりをつけられるくらいに私がなれるだろうか・・。
救急セットと初期対応
そもそも物を持ってないので、セットを作るべき。応急処置をその限られた中でできるか、対処法も知らないと。
ちゃんとやるならロープ技術も必要なんだろうな・・。
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今回はたまたま自分の状況と行動が天候とマッチして、本当に運よく上手くいったにすぎません。私が冷静だったのかもよくわかりません。少なくともその前までの行動は無理に駆られてなので、全然冷静でないとも思います。
他の方ならどう判断し、行動するのでしょうか。
山は牙をむくのではなく、ただそのまま自然なだけで。思うようにいかない自分の気持ちや身体も自然というものの一部で。ささやかに生活させて貰ってるにすぎないのですが、一つ一つ、その中でも積み上げたりしていかなきゃな、とも思うのです。。うーん。まとまらない。。
(2024.4.19)
雪があると思ってたとこは実はなかった
とくに雪山は毎年、日にちによっても地形変わるから視界悪いときは要注意ですね
私もいつもの調子で歩いててハマったことは何度でもあります
お互い気をつけて登山楽しみましょう
コメントありがとうございます。私も、足を下ろした先に地面の感覚が一才なかったので、足を下ろす場所を間違えたのだと思います。今回は幸い自力で戻って来られて、怪我も大した事はなかったのですが、やはり、山での各場面での選択を間違えないように、より注意深く歩くべきだな、と思いました。ときちゃんさんは、このような状況では最初から歩かない選択肢をしますか??
単独がベースなので、今後も登山を続けるならより慎重にしなきゃ、いけませんね。。
初めてのとこで天気悪くて他に誰も全く歩いていないようなときは心細いので行きません(笑)
でも、見る限り他にも人いるし視界もまだある方なので私なら行きます
ただ、このまま先に行って大丈夫?って常に意識してるので帰りが心配な場合は行きません
そして、迷いそうな場所、間違えると危ない場所を通るときで覚えれない場合は写真撮って時系列で自分が通ったとこを把握出来るようにしてます
私も1年前のGWに落ちました。
思い返せば、そこに至るまでにサインが出ていました。
私の場合は、前日になんだかアイゼンが裾に引っかかるなというのが3,4回ありました。
で、翌日トラバースでたぶんまた引っかけて落ちました。
とても痛い授業料でしたけど、いつもと違うというサインを見逃さないということを学びました。
今はもう、山には戻られたのでしょうか?
お互い、安全登山していきましょう。
はじめまして、今晩は。
ガツガツは怖くて今は大分控え目になってます。。山は変わらず好きなんですけど、やはり基本単独なので。。
地味ですけど、一歩一歩の足運びや、その時々の判断力が結構その後を左右しますよね。。怖がってばかりいないで、少しずつ復帰したいな、とは思ってます。ほんと、お互い安全登山で楽しく行きたいですね。ご無事で良かったです。
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