道なき名山 飯豊烏帽子山
- GPS
- 25:35
- 距離
- 37.4km
- 登り
- 3,012m
- 下り
- 2,998m
コースタイム
- 山行
- 10:11
- 休憩
- 0:45
- 合計
- 10:56
- 山行
- 5:58
- 休憩
- 0:30
- 合計
- 6:28
天候 | 3日間とも快晴 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2024年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
自転車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
◇飯豊連峰烏帽子山… マイナー12名山「四季を問わず創造的登山をしなくては登頂できない名山」 ◇蒜場山より先に登山道はありません、雪溶けが進めば藪漕ぎとなります。また飯豊にはGWでも降雪の可能性があります。慎重な計画と準備をお願いします。 ◇加治川ダム〜蒜場山…登山口からところにより残雪と夏道を出たり入ったり、兎戻しより少し先から雪は繋がり急傾斜となるためアイゼン装着 ◇蒜場山〜高立山…蟹沢を下り、高立山に近づくまではところにより危ういもののほぼ快適な雪堤歩き、高立山前後は雪は途切れ途切れとなり、藪の中の踏み跡を辿る ◇稲葉ノ平…ブナの原生林が広がる雪原、すぐ近くに水場あり ◇稲葉ノ平〜烏帽子山…烏帽子山鞍部まではごく一部を除きほぼ快適な雪堤もしくは広い雪稜歩き、三角点のある山頂へは藪漕ぎとなる ◇蒜場山登山道と稲葉ノ平で何度も熊の唸り声が聞こえた ◇今回は危険箇所は特になかったが、雪の状態、氷化、雪庇の張り出し、崩壊、藪区間の長さにより変化すると思われる。暗い時間帯に藪を歩くのはとてもわかりづらいので要注意。 |
写真
装備
個人装備 |
アイゼン
ピッケル
ストック
スコップ
雪山テント泊装備
|
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感想
ずっとずっと憧れていた頂だった。
飯豊の空は甘くない、厳冬の頃はもちろん、花の便りが届くようになってもその天候は不安定でありGWと言えど吹雪になることもある。雪は溶け薮は立ち上がる。烏帽子山を目指し、なおかつ大日岳まで足跡を繋げられたら、などという妄想を膨らませるも、幾度となく計画を見送るしかなかった。今回、限られた日数ではあるが自らの休日と晴れ予報がバッチリ重なった。決行すると決めてからは、期待と不安でそわそわと落ち着かなかった。
3日分の衣食住を担いで上るのは、蒜場まででも十分にしんどい。今日中に稲葉ノ平まで行けるだろうかと不安でいっぱいで歩く。それでも汗だくでたどり着いた蒜場山頂、壮大な眺めに疲れを忘れ意気は高まった。
雪と藪を繋いで辿り着いた稲葉ノ平は、ブナの原生林に囲まれた静寂の広場。美味しい水を汲み、しばしのマイホームを建てたら、野菜もお肉もたっぷりのすき焼きで前祝い、早々にシュラフに潜り込む。寝入りばな、熊さんの唸り声が聞こえたが気にする間もなく深い眠りに落ちた。深夜に目覚め、テントから顔を出すと満天の星、飯豊の一等地に建つ我が家と星空をカメラに収めた。
2日目は軽荷で歩けるから、不安は少なめ、ほとんど楽しみしかない。いよいよ憧れの頂へと向かえるのだ。野鳥達が盛んにさえずり始めたブルーモーメントのブナ林、樹間からは朝陽色の蒜場山や二王子、赤津山が見える。丸子ノカルに近づくにつれ高鳴る胸。真正面から射し込む朝陽が逆光となって、見えてきた烏帽子はますます黒々と威容を放っている。吸い込まれるように藪を越えた瞬間、ここだ!と声を上げた。所々ひび割れた雪堤が続くその先に、烏帽子山が圧倒的な迫力でそこに存在している。何年も前、ここから撮ったと思われる写真を見た時からずっとずっと憧れていた。
あとはもう夢中だった。急登と藪を這い上がり、笹原を抜けると一気に視界が広がった。ふかふかのガンコウランの絨毯の中に、顔をうずめ眠っているような三角点。そこから見渡す飯豊の山々にしばし見惚れる。語彙力を失う、筆舌に尽くしがたいとはこのことだ。名残惜しくそこから引き返した時のことは実はあまり覚えていない、何度も何度も烏帽子山をふり返り見つめたこと以外は。
テントに戻ったのはお昼前、1泊の行程なら下山となるが、今回はもう1泊、ここでのんびりすると決めていた。雪を掘りテーブルと椅子を作って、雪中で冷やした缶チューハイで乾杯をした。上着が要らないくらいの陽気、あっという間に酔いが回り、今日も貸切のこの一等地でウトウトお昼寝という贅沢。この日も夕方から熊さんに何度も唸られた。もしかしたら熊さんの寝床が近かったのかもしれない。お邪魔しちゃってごめんなさい。
3日目、下界は夏日予報だから早出とする。高立山を通過する頃にはまだ薄暗く、藪の中で少し迷走してしまったが、おかげで偶然にも雪から出てきたばかりの三角点を見つけた。怪我の功名だ。
陽が上がり標高を下げるにしたがってくしゃみと鼻水が止まらず閉口する。爽やかな風が吹いていたのが救いだ。なんとかギリギリ午前中にダムに降り立って安堵する。あとは自転車に跨り重力に任せて戻るだけで良い。途中、行きには五分咲きだった桜の大木が今が盛りと満開になっていた。愛車のもとに無事帰還、暑さを警戒して多めに担いだ水を使って手足を洗った。
今までここを歩いた多くの先人達、山の諸先輩方にあらためて敬意を表します。私にとって飯豊烏帽子山は今も変わらず憧れの道なき名山です。
私の駄文を読んでくださりありがとうございます。私にとっては大事な覚え書き。
コメント
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ちょうどcheeさん達が烏帽子山に居たころ、私は飯豊稜線の烏帽子岳に居ましたよ!
「烏帽子岳から烏帽子山を眺めるとは粋なもんだぜ」とか思いながらにやけてましたが、まさかcheeさん達が訪れていたとは
それにしても烏帽子山、懐かしい山ですね〜
昔、蒜場山〜大日岳へ縦走しましたが、稲葉ノ平でのテント泊、丸子カルでの藪漕ぎ、そして烏帽子山の急下降などの出来事が思い出され、写真の数々を見て懐かしい気持ちになりました。
その中でも烏帽子山の急下降が強烈に思い出されますので、次回は是非その先へ。
烏帽子山の急下降を終え、その後に藪漕ぎの難所がありましたが、そこさえ抜ければ大日岳へのウィニングロード。
キンカ峰から先の薬師岳へ向かう道は飯豊屈指の美しい雪稜だと思いますので、ぜひ、御自身の目でご覧ください!
ハイ!私もちょうどその頃、丸子カル辺りから烏帽子山と烏帽子岳を眺めて、ダブル烏帽子だな〜とにやけていました、見つめ合っていたんですね(笑)
私の体力ではもう烏帽子山へ向かうことはできないんじゃないかと思ったのですが、無事下山した今、やはりまた行きたくなっています。もちろんその先へも。
でも無理は禁物、余裕を持った日程と絶対の晴れ予報、そして体力と雪と藪の好条件が合わさるその時まで、楽しみに妄想登山を楽しみたいと思います。そんな時間も楽しいですよね(^^)
稲葉ノ平はいいですよね。
embrace the wildだったんですね。
ようやく、ようやく!行ってまいりました。今回の山行にあたりstilllifeさんの記録も何度も参考にさせていただき、ここを愛し毎年のように訪れている情熱に感服いたしました。合わせてそのお気持ちが未熟者の私ではありますが少し理解できたような気がします。
稲葉ノ平をベースに、あえて2泊でembrace the wildでした。この冬はなかなか泊まり山行ができずにいたのですが、やはり重くとも泊まりでのんびりする山の楽しさと醍醐味をあらためて堪能することができました。山に抱かれて眠る幸せ、今もまだ余韻の中にいます(^^)
マイナー12名山も結構登られてるし飯豊はホームコートのように思っていたので烏帽子が未登頂だったは意外でした。何時になく?感想のボリュームがあるので達成感の半端なさが伝わってきます。雪量、天気、お休みがピタッと合ったようですね!、やっぱりこれは天文現象のように数年に1度のことなのでその感動も喜びもひとしおでしょう。
2日目登頂後の連泊もイイですね〜、翌日も天気良いなら泊まってまったり、私も断然そっち派です。
ちなみに私も妄想では烏帽子に何度も登頂しています、そのルートだと烏帽子から大日岳経由して梅花皮から石転び沢降ります。どう戻るかは考えてません、妄想ですから(笑)
4〜5年、いや2〜3年でいいから飯豊連峰と白山連峰の場所入れ替えて欲しい!、そして飯豊を登り尽くせるのにな〜
憧れの山登頂おめでとうございました(^.^)
私の無駄に長い感想を読んでくださったのですね、ありがとうございます。下山してからもしばらく興奮がおさまらなくて、高揚した気持ちを吐き出すように書いてしまいました。強い方なら雪や藪がどうであれ突き進めるのでしょうけれど、私ではその絶妙なタイミングを見計らうより他なく、そして休日とお天気という条件の巡り合わせも必要になります。何年も前から何度も見送った計画でしたので感慨もひとしおでした。
きやさんの妄想プランを私も同じように妄想しましたョ!もっと贅沢な妄想も何度も繰り広げました(笑)しかし連続した晴れと休日数、時期の選定で、ひとまず今回の決行となりました。またいつか、憧れの地のその先へと向かいたいと思います。
飯豊がホームコートなんてことは私には大変恐れ多いことです。山を守ってくださる多くの先人の方々、諸先輩方のおかげで安全に歩かせていただいています。本当にありがたく感謝でいっぱいです(^^)
きやさんとどこか静かな山でお会いできるのを楽しみにしています。またトレースを追うばかりになるかもしれませんが(笑)
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