双六岳〜三俣蓮華岳〜鷲羽岳〜雲ノ平〜水晶岳 テント泊縦走
- GPS
- 152:00
- 距離
- 58.9km
- 登り
- 4,152m
- 下り
- 4,164m
コースタイム
- 山行
- 1:40
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 1:40
- 山行
- 6:20
- 休憩
- 1:10
- 合計
- 7:30
- 山行
- 5:30
- 休憩
- 2:10
- 合計
- 7:40
- 山行
- 7:30
- 休憩
- 1:10
- 合計
- 8:40
- 山行
- 7:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 7:00
- 山行
- 7:50
- 休憩
- 1:40
- 合計
- 9:30
- 山行
- 1:00
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 1:00
天候 | 1日目曇り 2日目晴れ 3日目曇り時々晴れ 4日目快晴 5日目快晴 6日目曇りのち雨 7日目雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
無料シャトルバスで平湯バスターミナルへ5分 新穂高ロープウェー駅までバス30分(1人片道890円) |
コース状況/ 危険箇所等 |
わさび平までの道で土砂災害対策の工事をしているところあり。 要注意箇所は、 ・黒部源流標を通って雲ノ平に行くところにロープ付きの徒渉あり(足を滑らさないよう注意) ・水晶岳の山頂付近は、切り立った道の連続になります。滑落や転倒に注意。 |
その他周辺情報 | 下山後、平湯温泉「ひらゆの森」にて温泉(日帰り湯500円) |
写真
感想
今年のシルバーウィークは5連休。まだ夏季休暇を2日残していたので、繋げて9連休にすることにした。
最後の土曜日は予定が入っていたため、使えるのは7日間。
7日もあるんなら時間がなきゃ到達出来ない山域にしたい。夏季休暇の山行は白馬三山の予定だったが、急遽、北アルプスの最深部である雲の平を目指しながら近隣の山を縦走する旅になった。
予定は5泊6日。予備日を1日。
こんなに長い山行は初なのでドキドキしながら計画を立てた。自分達の体力を考え、テント泊装備なので1日
平均歩行時間は6時間程度にしておく。時間を使える分、ゆっくり山を楽しみたい。
食料は昼食を小屋食にし、12食分用意。とはいえ、朝食はカロリーバーのような簡易的なものにし夕食を重量を考慮の上、ちゃんととれるように準備した。
■1日目 新穂高〜わさび平
シルバーウィーク初日なので渋滞はどれくらいだろうか。ハマったら、せっかくの計画も台無しになる。
とはいえ、そこも折り込み済みでこの日は新穂高ロープウェーから1時間半程でつくわさび平キャンプ場を目的地にした。
早朝4時過ぎに出発。交通量は普段より多かったが、流石に時間が早かった為、渋滞に捕まらずにアカンダナ駐車場に着いた。新穂高ロープウェー駐車場が登山口に一番近いが、まずとれないと情報があったのでバスで平湯温泉経由で行くことにしたのである。
ここでちょっとしたアクシデント発生。駐車場に着いてザックを確認すると、何やら下の方が濡れている。ハイドレーションを確認すると、ほぼ空になっていた。設置する時に留め具の部分が外れたのか。
いきなり冷たく濡れたザックを背負うことになりテンションダウンだが、この旅のモチベーションに影響することはない。
アカンダナ駐車場から平湯温泉までは徒歩で10分くらいの距離だが無料でバスに乗せてくれると聞いていたので乗り場に行ってみる。バス乗り場の運転手さん達は慣れた感じで上高地行きのバスに乗せてくれた。親切に前の方に誘導してくれてありがたい。出発を待ってると「やっぱり降りてくれ。」と言われる。上の人からNGが出たとかなんだとか。シルバーウィークだからいつもとは勝手が違うんだろう。仕方ないから歩いて行こうとしたら、他の運転手さんが自分のマイカーで送ってくれると言ってくれた。申し訳なさすぎるし、どうせこれから沢山歩くので、と一旦は断ったのだが、是非乗ってくれと言われ好意を無下にするのもと思い乗せていただいた。
お金も払わないのに、何て親切なんだろう。
平湯温泉から新穂高ロープウェーまで(こちらはちゃんと有料で)バスで移動。思ったより混んでない。微妙な時間だからだろうか。まさかこちらの山域は意外と空いてるのだろうか?
新穂高ロープウェー駅に着いたが登山客はまばらだった。新穂高センターに寄ってからようやく登山スタート。家を出発してから7時間が経っていた。
登山スタートしてすぐ、奥飛騨ヒュッテという山小屋風建物にあたった。山と高原の地図には記されてない。そばを売っていたが美味しそうな雰囲気だ。その建物を眺めながら道を進むと河川の工事現場に当たる。
ルートらしいものを探すが行き止まりだった。ブルドーザーが置いてあるだけだ。
あれ〜?こんなすぐ間違えようが無いんだけど、と思い引き返してみる。そしたら奥飛騨ヒュッテの前に続いてるルートがちゃんとあった。そばと小屋に注意がいってたあまり間違えたらしい。
天気は曇りでどんより薄暗い道を進む。わさび平まではほぼ平坦な砂利道だった。途中左手に見える抜戸岳が切れ立っていて格好良かった。
ザックがそろそろ重たくなってきたと感じるころ、わさび平小屋に到着。トマトやきゅうりが水に浸けられて売っている。美味しそうだし、これから山に入るから野菜を食べておきたいと買ってみた。(トマトは200円、きゅうり100円)
塩をふって丸かじり。これが本当に美味い。下山で寄った時も必ず食べる、と心に誓った。
山小屋バッヂ(野菜、果物を水につけた図案のグッドデザイン)を購入し、テント場へ。
自分達が張った時はガラガラだったがそこはシルバーウィーク、後からどんどん増えてきてテント場は夕方には満員になった。
夕食は焼き肉丼。生ものを持ち込めるのは初日だけなので豪華にいきたい。
■2日目 わさび平〜双六小屋
この日はガッツリ登山予定日。
標高1400mのわさび平から2550mの双六小屋までテント泊ザックを担ぎ上げなければならない。
にも関わらず、テント内の私は腰痛に苦しんでいた。前日から妙な違和感はあったのだが、胡座をかくことも激痛の為出来ず靴下を履くのも難儀する有様だった。
奥様が「そんなんで登って降りれなくなっても困るよ。ここでキャンプして帰ろうよ。」と言っている。正論である。
しかし7時間もかけてここまで来て、綿密な準備をしてきて、これからという時にそんな呆気ない終わり方良いはずがない。この時点で歩ける自信は全く無かったが「ザック背負って歩ってみたら意外に大丈夫かもしれない。もし本当にダメそうなら絶対早めに言うから。」とごねて渋々承知してもらった。
無理をすればたたるというのが常道だが意外や意外、小池新道を登り始めると案外歩ける。むしろ時間の経過と共に腰周りの筋肉が活性化して楽に感じられた。良かった、この山行を続行出来る。ホッとしたし嬉しかった。
長い小池新道は、よく整備された登山道で歩きやすかった。
とはいえ、まだザックの重さに慣れておらず鏡平に着く頃にはかなり息も荒くなっていた。大ノマ岳・抜戸岳の紅葉が色づき始めていて美しい。後ろを振り返ると焼岳、そして左手に伸びていく穂高のギザギザ稜線。途中手前の山でぶつ切れに見えなくなっていたが槍ヶ岳のトンガリも見えてきた。
鏡池に到着。雲一つない青い空に雄大な穂高連峰。思わず歓声をあげる。この日は予報では曇り時々晴れと見ていたので、とても嬉しい誤算。
鏡平小屋では名物のカキ氷。いちご練乳でいただいたが暑い日なのも手伝ってすごく美味しかった。
小屋のバッヂ、わさび平小屋のと同じテイストのデザインですごく良い。あとで知ったが双六小屋も合わせて同じ会社の経営と言う事だった。
昼食に牛丼をいただき再出発。ここから弓折分岐までの坂が結構きつい。ザックを下ろしての休憩をとる。振り返ると鏡池が上から見え、槍穂連峰とともに絵になる光景だった。
弓折乗越から双六小屋への稜線はガスガスだった。(帰りに絶景ポイントだと知る)いくつかの小さい登り下りを経ると目の前に双六小屋とテント群が飛びこんでくる。後ろに見える鷲羽岳が格好良くてテンションあがる。
テント場は7割がた埋まっている状況だった。到着が1時頃だったのでまだ良い場所がとれた。夕方にはシルバーウィークらしく、満員になっていた。
コーヒーを入れ、小屋の桃のタルトをいただく。こういう時間の為に苦労して登ってると思えるような至福の時。双六小屋からは鷲羽岳が素晴らしく良く見える。
夕食はコンビーフを入れたラーメン。いかにも山食という感じ。
明日登る期待に胸膨らませて2日目終了。
■3日目 双六小屋〜双六岳〜三俣蓮華岳〜鷲羽岳〜三俣キャンプ場
テントでは周りの人たちの声や生活音が丸聞こえだったりする。
エネルギーのありあまった声の大きいおじさんや、ずっとスーパーの袋みたいなガサゴソ音を鳴らすおばさんの所と隣同士で熟睡出来なかった。耳栓して寝るのは昔から苦手。
予定より少し早めにテント撤収し、5時50分に登り始めた。朝焼けが雲を照らして炎のように輝いている。
今日まず登るのは目の前の双六岳。いきなり斜度のある急坂を15分登る。三俣蓮華岳に向かう分岐に出る。双六のピークを踏まずに三俣方面に行く巻道ルートや中道ルートもあるが、ここは迷わず双六山頂方面へ。結構な斜度で岩岩した道を登り切るとだだっ広い空間に出た。
振り返った瞬間、雲が風で流れて雄大な槍穂連峰のシルエットが浮かびあがった。忘れられないシーンだった。歓喜の声をあげながら写真を撮りまくる。
また別の方角にはこんな近くで見たことのない笠ヶ岳のピークが雲の中から突き出ていた。
自然と涙が出てきてどうしようも無かった。
そこから双六の実際の山頂に着く頃にはガスに覆われて何も見えなくなった。でもあの光景を見せてくれただけで本当に満足だ。
双六から三俣蓮華岳への道はほぼガスだった。他の人のブログにあったが、途中の丸山の登りが案外きつい。三俣蓮華岳のピークに近づいた時ガスが晴れ美しい稜線が現れた。運が良い。少し紅葉がかった黄緑色のカールが綺麗だ。
三俣蓮華岳のピークを踏み、40分ほど下ると目の前を鷲羽岳がどーんと現れ、キャンプ場についた。今日の宿、三俣キャンプ場だ。
シルバーウィークも中日で混雑もピークに達したのか、テントはほぼ埋まっていた。小屋から相当遠くて傾斜のきつい場所にも張られている。
これはまずいかな..と思い、見渡せる場所から目を皿のようにして空きがないか探す。小屋近くの平坦な一等地にもしや、という空間を見つけた。行ってみると、我が家の大きめテントでも前室を諦めれば張れそうなスペースがある。他に選択肢はないのですぐ張った。これは良い判断だったと思う。
三俣山荘は人でごったがえし、二階の食堂で昼食にしたが、ここも超満員でかなり待たされた。ようやくありつけたカレーを平らげ、今度は軽装で鷲羽岳へ。
奥様は雲ノ平が目的で体力温存したいとの事なので一人で向かった。
3日目でだいぶテン泊ザックの重さに慣れてきてたので、あまりの軽さにテンションあがった。悟空の「まるで重さを感じねぇ」状態である。
鷲羽岳は結構な急登だったが、無敵の悟空状態なのでかなりさっさか登れた。こんなに足が軽い登山は初めてだったかもしれない。曇天だったのが残念だが、かなり眺望も良かった。後ろを振り返った時の三俣蓮華岳とキャンプ場も素晴らしいし、ピークからの水晶岳への稜線も良かった。下りもスムーズで気分は高揚していた。
夕食はスパムをジュ〜ジュ〜焼いてスパム丼。美味しかった。
明日はいよいよこの旅の最終目的地、雲ノ平へ。
■4日目 三俣キャンプ場〜雲ノ平キャンプ場
周りの準備の音で4時前に目を覚ます。トイレの為、三俣山荘に着くとものすごい行列。朝食待ちの列かと思って聞いてみたらトイレだった。
そこから40分くらい待ってようやく入れた。異常事態。
後から聞いた話だが、この日の利用者は396人でビールを含むほぼ全ての飲料が売り切れ、布団は2枚で5人が寝る、トイレットペーパーも切れるという状況だったらしい。
5時40分頃、三俣キャンプ場からスタート。雲ノ平方面へ。
一旦大きく坂を下り、黒部源流標のところに出る。この付近は紅葉がピークにさしかかっている感じでとても綺麗だった。
日本庭園に向かう急登を登る手前で、川を渡るポイントがある。ロープがついていてなんか危なそう。
あ、フォロワーさんが要注意って載せてた所だと思い、慎重に行く。
足元の岩が途中から水で露出してない状態だったので滑りやすそう。
一瞬ヌルって足をとられ肝を冷やすがすぐ次の着地点へジャンプしてやり過ごした。次は奥様の番。固唾を飲んで見守る。なんかやりそうな雰囲気である。
瞬間、濡れた岩に足をとられた。
あ!と声の出る間もなく、ロープを必死につかみ川の中に落下する奥様。太ももくらいまで浸かっていた。
「大丈夫!?」と声をかけると、幸いどこも怪我なく難を逃れた。岩に頭などをぶつけたりしなくて良かった。しかしここは一歩間違えれば大惨事なので危険な所だった。
奥様は登山靴がびしょびしょになってしまったのがショックの様だった。
ここからガレ場の急坂を1時間ほど登る。登ってる最中、後ろを振り返ると鷲羽岳の稜線からひょっこり槍穂が姿を現した。あれ?こんな近くで見えていたの!?となる。昨日、鷲羽岳を登った時にはガスで見えてなかったからだ。
急坂を登りきると穏やかな道になり、一面岩がゴロゴロして所々ハイマツが生えている場所に出た。ここを庭園に見たてて日本庭園なのか。
鷲羽岳、槍穂連峰、三俣蓮華岳、笠ヶ岳、黒部五郎岳と日本の名山が借景になっている。なんと豪華な庭園だろうか。天気も快晴で爽快な1日だ。
日本庭園を通過して少し経つと、雄大な薬師岳とその手前に広い高原が見えてきた。
ついに到達地点の雲ノ平に来たのだ。その眺めはここまでの道のりの長さもあってグッとくるものがあった。険しい山々の中に隠された秘密の高原。日本最後の秘境といわれた所以が分かる気がした。
雲ノ平キャンプ場への直線ルートは植生保護の為、立入禁止になっており迂回路を通るよう誘導される。これが結構長くCTより30分くらい余分にかかった。途中切れたった巻道を通る箇所もあり、下から吹き上げてくる風などに注意しながら進む。
長いハイマツ帯の木道を越えるとようやく雲ノ平に辿りついた。最初にここを見てから1時間くらい歩いたので長かった。
キャンプ場や山荘に行く前にスイス庭園への分岐があったので、そちらに寄ってみる。
スイス庭園にはベンチがあり、目の前に薬師岳、立山、赤牛岳、水晶岳の眺望が広がっていた。美しい。
山荘はそこから進むこと20分程の距離にある。結構歩く。
雲ノ平山荘については事前にwebサイトを見て誕生秘話を読んで感動したりしていたので、着いた時は嬉しかった。
今建っているのは2010年に新築された2代目の小屋なので、とても新しく綺麗だった。お昼ご飯に台湾風チキンライス(大)を頼んだ。お腹が減っていてちょっと足りなかったので、カップラーメンも買う。
今日はもう雲ノ平をのんびりトレッキングと決めていたので、昼食後は祖母岳(アルプス庭園)に向かった。分岐から片道15分ほどの小山だが、なかなかどうして山頂の眺望は素晴らしい。雲ノ平周辺の山が360度のパノラマビューで見えるのだ。
ベンチもあるので、こんな所で弁当でも食べたら最高の場所である。
その後、本日の最終目的地であるアラスカ庭園に向かう。祖母岳から40分歩いて辿り着いたのだが「アラスカ庭園」という標識があるのみで、全く何の名所だか分からず首をかしげる場所だった。まあ、それを実際来てみて分かっただけでも良しとしよう。
日光が強く照りつけてくる高原を歩き回ったので戻る時には頭が痛くなってきた。一旦また山荘に立ち寄り休憩し、テントに戻って寝て回復することにした。
夕食は牛卵とじを入れたラーメン。
そんな感じで4日目終了。
■5日目 雲ノ平キャンプ場〜祖父岳〜水晶岳〜三俣キャンプ場
この日から下山開始になるが、最後に水晶岳に登ってから三俣に下りていく計画だ。なかなか来れる山域でないので登れそうな山は行っておきたい。
5時過ぎにテントを撤収して出発。
名残惜しいが天空の楽園ともお別れ。まずは祖父岳に登る。
30分程の急登。ザレ場の上に細かいガレ石があるような足場で落石に注意な道だ。鷲羽に似ている気がする。祖父岳の山頂も良い見晴らし。
今日も快晴。素晴らしすぎる天気。
少し風は強い。
祖父岳から岩苔乗越までは一箇所ハシゴがあった。
奥様は水晶岳には登らないとの話だったので、岩苔乗越からは一人で行く事に。後で合流する約束をした。
水晶岳の稜線上に出ると槍穂高連峰方面の眺めがすごい。紺碧の連峰と手前の紅葉と流れる渓谷。
絵画にそのまま収まるような王道な構図だった。
水晶小屋に到着。楽しみにしていたバッヂはなんと売り切れていた。だが三俣山荘に行って言えば水晶岳のを売ってくれるとの事。同じ系列の経営なのかな。
明治の板チョコを買って食べる。美味しい。去年槍ヶ岳に登る前にもそういえば板チョコを食べたっけな、と思い出した。
必要なカロリーを補給していよいよ山頂方面へ。ハシゴ場もあるような険しめな山頂だそうなので気を引き締める。
15分程なだらかな道を進んでいくと突如として鋭角な岩峰が近づいて来た。明らかにエリアが違う。マリオで言ったらクッパの面に入ったような、そんな感じ。
快晴の為、崖下の風景がどうしても飛びこんでくる。
切れたった巻道がどうも自分は苦手だ。明らかに幅が狭いような所は少ないし、クライミング的な要素もそうあるわけではないのだが巻道のカーブとか、その道の途中に大きな障害物の岩があったりとかミスを誘発しそうな要素があるのだ。「こっから落ちたらまあ助からないよなぁ」と思うと鼓動が早くなり、息も弾む感じになった。岩に滑りそうな要素はないかとか足裏の感覚を確かめる感じで慎重に進む。ハシゴは1箇所あったが特に問題ない。
ルートだと思って登ったら(踏み跡もしっかりある)大きな岩のところで行き止まりになった。左を見ると、くだっていて正しいルートに合流するようになっていた。
ここの行き止まりで結構心拍数が上がったので下る時に慌てて滑ったりしないよう注意したい。
緊張しながらも慎重に集中を切らさないようにして山頂へ。
ピークの向こうには立山劔、黒部ダムを挟んで後立山連峰が綺麗に見えていた。絶景、爽快だった。
険しいだけに美しい山頂、本当に水晶のようだなとも思えた。
下りも集中を切らさないように慎重に降りる。恐怖心はかなり慣れたのか大分薄らいでいた。
知っている道と未知の道の差も大きい。
結構な高揚感を味わって戻る。
奥様と合流し、黒部源流の脇の道を下っていった。このエリアの紅葉が今が旬という感じで素晴らしかった。祖父岳が綺麗に色づいている。
しかし道が源流の脇というのもあってか中々ワイルドで、岩が大きく濡れているので転倒に気を使いながら足を運ぶことを余儀なくされる。
CTでは1時間弱の道なのに二人ともくったくたになってしまった。
最後の三俣キャンプ場への登りはかなりぐったりしながら何とか登りようやく辿り着いた。
三俣キャンプ場は一昨日の混雑が嘘のように空いていた。
が、山荘の飲み物や食べ物はまだ補給されておらず売り切れが多かった。(トイレットペーパーは補給されてました)
昼食はカレーを三俣山荘の食堂でいただく。かなり疲労していたので、
テントで寝るともうすぐに夕食の時間になった。全くシンプルな生活だ。夕食は3日目も食べたスパムご飯。
夜、アキレス腱のあたりがズキズキ痛みだし炎症を起こしている感じがした。明日の下山、大丈夫だろうかと不安になりながら就寝。
■6日目 三俣キャンプ場〜双六小屋〜鏡平〜わさび平
夜何度かアキレス腱の痛みで目を覚ます。5時に起きてテントから出る時もよろける有様。足首が可動しない。無理して動かそうとすると激痛が走るのだ。これはまずい。
しかし何とかして下山しなければ。
ペンギンの様な足取りで歩いていく。どれくらい時間がかかってしまうだろうか。それよりもこの痛みに最後まで耐えれるのだろうか。
朝焼けで綺麗な紫色の空になっている。気を紛らわす為にも写真を撮ったが自分の気持ちはそれどころではなかった。
三俣蓮華岳直下の分岐まで登りに苦しみながら何とかやってきた。
その後は巻き道を迷わず選んだが、ここが思ったより急登があったり時間もかかったりして心が折れそうになった。
双六小屋に辿りつき、休憩におでんを食べた。身体に沁み渡る。
ここからはもう登りは殆どないはずだ。そう言い聞かせて気力を振り絞る。弓折分岐までの稜線は行きはガスで見えなかったが、槍穂連峰が眼前に広がる大眺望だった。
天気は曇っていたが山肌がくっきり見えるほど綺麗に見えて、かなり励みになった。足も痛みに慣れるというか麻痺してきていて、スピードも徐々にあげられるようになってきた。
弓折分岐から鏡平小屋までの急坂はまた負荷がかかったが、踏ん張りどころと思い耐え、やっと小屋についた。
鏡平小屋ではうどんを注文した。これが本当に美味しかった。
体力気力を回復する。本当に小屋の有り難さが身にしみる。
もう今日はわさび平までにする事に決めていたので、あと3時間ちょっとだと覚悟を決めて出発する。タイミング悪くこのあたりから雨が強くなりだした。岩が滑り始める。
突発的な反応が痛みで出来ないので、慎重に慎重に滑らない角度に足を置くようにいつも以上に気をつけた。
そんな根気が効を奏して、転倒もする事なくやっとやっと何とかわさび平に辿り着いた。
雨もかなり強くなってきて、雨具も意味ないほどびっちょり濡れていた。わさび平小屋では着いてすぐまたうどんを食べた。鏡平小屋と系列が一緒なのでほとんど同じ味だったが美味しいので全く構わなかった。
小屋の人がテントを屋根のある所で張ってから運んでいいですよ、と親切に言ってくれたのでその方法で張った。雨はずっと降り続けたが、もうここまでくれば大丈夫だ、と本当にホッとした。過去最高に山で疲れた日になった。
■7日目 わさび平〜新穂高ロープウェー
雨は夜中からずっと強く降り続けた。使いこまれて防水機能の落ちた我が家のテントは徐々に水の侵入を許し、明け方にはマット以外の部分が染み染みになってしまった。
速乾タオルで拭いたり濡れちゃいけないものを選定して防水パッキングしたりしていたが埒があかないので意を決してテントを撤収して帰ることに。
出発してみたが、昨日あれだけ酷使したので想像以上に足が痛くなっている。右が特にひどくほとんど動かせないのでポールを杖がわりにして進んだ。
それにしても改めて痛みがひどい。
残り1時間半の行程が途方もない苦しみに感じる。
恥も外聞もなくその場に倒れこんでしまいたかったし、自力下山にならなくても小屋にヘルプを出した方がマシだったんじゃないか?と思ったりもした。かなり心が追い込まれて弱っていた。
刹那、少し自暴自棄気味にというか逆ギレ気味になって無理矢理走ってみた。するとどういう事か痛みはあるものの、歩くよりも効率的に前に進める事に気づく。どうせ痛みに耐えるなら走ってしまえ、と新穂高ロープウェーまで小走りで帰ったら意外に痛みも麻痺したまま行けたのでほぼノンストップで辿り着いた。
そんなゴールだった。
全体的に天気にも恵まれ、眺望運も最高だったが、山域の深いところで体調を崩すとどうなるか、縦走の難しさと山の厳しさも勉強になった山行だった。
でもそれにしてもこんな長旅はそうそう出来るものでは無いし、とにかく完遂できて良かった。
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