十勝岳 で死ぬかと思った長話
- GPS
- 15:21
- 距離
- 10.8km
- 登り
- 1,126m
- 下り
- 1,126m
コースタイム
- 山行
- 10:53
- 休憩
- 1:34
- 合計
- 12:27
天候 | 晴れ後曇り 地吹雪 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2025年01月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
自分の失敗を語れる人は信頼できる人だ。取り返しのつく失敗なら糧にしたら良いじゃない。ちょっと死ぬかと思ったから詳しく書いてます。皆さんの反面教師になれたら幸いです。
クソ長いので先に要約を書いときます。Apple Watchはウルトラ買え。ゴーグルは電熱買え。正月に死んだら来年以降も皆迷惑。ではお付き合いして頂ける方のみ続きをお読みください。
***********キリトリ************
風のない樹林帯は本当に無音だ。じっとしていれば、聞こえるのは自分の心臓の音だけ。キーンと冴える冷たい空気が心地よい。
降ったばかりの雪がふわふわに積もり、スタートから脛のラッセルだ。トレースはわかるものの全部ラッセル。富良野側渡渉のまだ心許ないブリッジを越えてからは50mごとに底なしの踏み抜き連続地帯。やはりスキーの浮力は圧倒的で、スノーシューだと踏み抜き引っかかり地獄。遅々として進まない。
樹林帯を抜けると風が吹いてきた。避難小屋で風を避けながら一休み。凍りついた小屋の中だが、外から入ると暖かい。
さて、進むか。ってトレースがある!望岳台から登った人がいるのか!!いやぁ楽ですな、と一瞬思ったが、そのトレースは大沢の方へ続いていた。この雪で大沢を登ろうとすると絶対蟻地獄にハマるので、折角のお誘いですが今日は夏尾根に乗りたいと思います。
夏尾根はまあまあ雪が少なく、歩きやすかった。しかし、標高を上げるごとに風が強くなり、さっきまで見えていた星も消え始め、やっぱり…な展開へ。
と、ここでトラブル発生。いつもナビにしているApple Watchの電源が落ちた。腕につけていたのだが、それでも低温で落ちたのだろう。今まで問題起こしたことなかったのに。ってかお前、最近電池交換してもらったばかりじゃねぇか!
仕方がない。ポケットの中にはiPhoneもあるし、ザックの中には予備のガーミンGPSもある。何度も登っている十勝岳だから慣れもあるし(*1)。
ガスも出て視界もなく、風の強い中グラウンド火口の縁をなぞって最後の壁へ。ここから先はとりあえず高い方へ行けば山頂だ。
しかし視界が悪いな。メガネのレンズが凍りついている。風に乗って氷の粒が刺すように飛んでくる。視界が…視界が悪いな…
ゴーグルが必要だった。熱線入りの高いやつ。
先日壊しちゃったんだよね。スキーの練習していてフレームが割れてしまった。それで新しいの注文したんだけど、これが「眼鏡対応」って表示されているくせに全然ダメで、どんな小さい眼鏡なら入るんやー!という代物。使えなかったから本日ノーゴーグルです(*2)。
激しい視界不良と強風の中、なんとか山頂に到着。
山頂では先行者が一人。トレースあったか?と思ったが、ルートがあってないようなものだからそんなもんだろう。この寒氷陣のなか落ち着いた様子で朝陽を待っていた。どんな猛者じゃろ。
景色も日の出も期待できなさそうなので、早めに下山開始だ。ここで長居したらしんでしまう。
ということで山頂からほんの少し下りたあたりで…強風にすっ飛ばされた。
完全に向かい風。も、、も ど れ な い !
ここは稜線だから何とかして少し下りれば風は弱まる。とにかく隙を見て山頂の陰に入ればイケるか?を数回繰り返してやっと突破だ。山頂から想定ルートよりも東側に下りてしまった。ここはゴツゴツした大岩地帯だから、視界もないしまずは少し西に折れてルートを戻そ!
ここでApple Watchのダウンが効いてくる。
iPhoneじゃダメなんだよ。ロック解除しなきゃならないから。碌に効かないタッチ付きグローブはイマイチで、もちろんフェイスIDは効かない。凍傷リスクを考えたら頻繁にはチェックできない。予備のガーミン出せば良かったのだが、強風でめんどくさい(*3)。
気がついたら右目が見えなくなっていた。
しばらくは眼鏡に氷がついているだけかと思っていたが、眼鏡を外しても近くにあるものが霞んで見えない。ああこれ角膜損傷やっちゃったな。本格的にまずい…
ということで、ここからは足元を必死に確認しながら進んでいく。霞んで光線状態が悪く、そもそもフラットな光で立体感がない雪道を霞んだ片目で見るものだから、本当にわからない。踏み外して初めて気付くレベルでわからない。迷走してルートより西の尾根に入り込んだ挙句…
落ちたの。
すとんて
おいは恥ずかしか!
生きておられんごっ!
ふわふわパウダーだから怪我もなく、緩い滑落と感じた。上にストック一本落としたんだけど蟻地獄で戻れない。それにしてもどうやってルートに戻りましょ。
とりえあえずルートの方までトラバースしてみる。急斜面のトラバースはそれなりに危険で、アイゼンが良かったな、と思ったが今更この斜面で換装はできない。行けそうな気がした斜面は近づくと結構なもので、登攀できる人なら登れるかと思ったが、自分のアイゼンとピッケルは単に滑り止めなので途方に暮れる。思ったより深刻な事態だな。。。
何度も通う中で、この場所は下りられないから近づかないと認識していた場所だ。地形図と写真を見比べて記憶があるから余計に絶望的な気分になる。うーん、救助呼ぶ?警察じゃなくてココヘリが先なんだっけ?救助が来るまでここでじっとして待つの?つらぁ〜。念の為場所だけ家族に伝えとくかなあ。遺体発見されなきゃ悲惨なことになるし。ネットで冷笑されるやつだなーコレ。
でも地形図を見て悩んでいたら気付いた。メインの崖からはもう無事落ちたんだわ。大ラッキー賞で無傷で落ちたんだわ。じゃあこのままグラウンド火口に下りてしまおう。なかなかの斜面だけど雪がふわふわなのも大ラッキー賞で、吹き溜まって厚く積もっている場所を探してフルブレーキかけながらゆっくり滑り降りることに。
意外にも特に危険箇所なく、無事にグラウンド火口に到達。
しかし危機はまだ去っていないのである。
右目が見えない問題は、もう体力0の体に余計な負担をかけてくる。痛いし。ここから先はただ雪が降り積もったエリア。危険は少ないが足元は重く、地形が見えないのは精神と体力を削られる。
よろよろと歩いたり滑ったりして進む。深いパウダースノーは尻滑りを拒み、なかなか進まない。遠くからスキーヤーに「Are you OK !?」って心配された。大丈夫じゃないんだけど、今更救助もいらんし自力で戻るしかないからOKなんだわ。ヒャッハー!2025年も登山は自己責任地獄だぜ!
白銀荘に戻って温泉で生き返った。でも目は生き返りませんでした。角膜に傷がついていました。今度から目薬を常備薬に加えておこうかな。その前にゴーグル買うか…(追記:買いました)顔も凍傷でいてぇ
年明けから仕事の時にはマスクとサングラス必要かも。「風邪か?貝沼くんー」状態だなあ。凍傷ですー
今年の占いには「死」って出ているかもしれないけど、大ラッキー賞が2つも出たから多分乗り越えられると思う。ラストワン賞じゃないことを祈る。2025年もよろしくお願いします。ハッピーニューイヤー
注*1,2,3 主な死因です
追記 角膜は見事に傷ついていたけど1/3現在ほぼ治ってます。視力ちょっと戻りきってない感じ。それより明日から仕事なんだけど顔がやばい。
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