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Yamareco

記録ID: 7648719
全員に公開
雪山ハイキング
十勝連峰

十勝岳 で死ぬかと思った長話

2025年01月01日(水) ~ 2025年01月02日(木)
 - 拍手
体力度
3
日帰りが可能
GPS
15:21
距離
10.8km
登り
1,126m
下り
1,126m
歩くペース
ゆっくり
1.92.0
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
0:28
休憩
0:00
合計
0:28
距離 0.6km 登り 23m 下り 0m
23:31
12
スタート地点
23:43
16
23:59
宿泊地
2日目
山行
10:53
休憩
1:34
合計
12:27
距離 10.2km 登り 1,097m 下り 1,128m
2:26
2:43
81
4:04
4:06
148
6:34
7:35
178
10:33
10:34
101
12:15
141
14:36
14:49
4
14:53
ゴール地点
軌跡参考山行禁止ですよ!
天候 晴れ後曇り 地吹雪
過去天気図(気象庁) 2025年01月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
穏やかに暮れていく白銀荘。星が見えていた
2024年12月31日 23:40撮影 by  iPhone 14, Apple
1
12/31 23:40
穏やかに暮れていく白銀荘。星が見えていた
内部が凍りつく避難小屋だがほっと一息
2025年01月01日 02:33撮影 by  iPhone 14, Apple
1/1 2:33
内部が凍りつく避難小屋だがほっと一息
凄まじい風。気温-25度に15mの風が吹けば体感温度は-40度になる。山頂には先行者が一名、泰然としてる超人。格が違う
2025年01月01日 06:51撮影 by  ILCE-7RM5, SONY
4
1/1 6:51
凄まじい風。気温-25度に15mの風が吹けば体感温度は-40度になる。山頂には先行者が一名、泰然としてる超人。格が違う
山頂標識。こんなん掘り返してたら死ぬわ
2025年01月01日 06:52撮影 by  ILCE-7RM5, SONY
5
1/1 6:52
山頂標識。こんなん掘り返してたら死ぬわ
雲が取れる瞬間もありそう。こちらは既に右目が見えんしそれどころじゃないけど
2025年01月01日 08:21撮影 by  ILCE-7RM5, SONY
2
1/1 8:21
雲が取れる瞬間もありそう。こちらは既に右目が見えんしそれどころじゃないけど
おっ、雲がちょっと取れた。それどころじゃないけど
2025年01月01日 08:22撮影 by  ILCE-7RM5, SONY
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1/1 8:22
おっ、雲がちょっと取れた。それどころじゃないけど
麓は見えない。それどころじゃないけど
2025年01月01日 08:22撮影 by  ILCE-7RM5, SONY
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1/1 8:22
麓は見えない。それどころじゃないけど
青空見えた。それどころじゃないけど
2025年01月01日 08:24撮影 by  ILCE-7RM5, SONY
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1/1 8:24
青空見えた。それどころじゃないけど
右目の視界はこんな感じ。こりゃ角膜やっちゃったね…
2025年01月01日 08:24撮影 by  ILCE-7RM5, SONY
3
1/1 8:24
右目の視界はこんな感じ。こりゃ角膜やっちゃったね…
この岩が低くなっている場所から、こう、ね
(画像は別日のもの)
4
この岩が低くなっている場所から、こう、ね
(画像は別日のもの)
つまりこう辿ったわけね。Apple Watchがあればこんな事態にならないけどね、頼りすぎはマズい & めんどくさがらずガーミンGPS出さなきゃよ
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つまりこう辿ったわけね。Apple Watchがあればこんな事態にならないけどね、頼りすぎはマズい & めんどくさがらずガーミンGPS出さなきゃよ
ここから先は雪が深いのが幸いしてラッキー賞だったけどね。ラストワン賞かもしれないから今後ないように対策を取ろう
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ここから先は雪が深いのが幸いしてラッキー賞だったけどね。ラストワン賞かもしれないから今後ないように対策を取ろう
美瑛岳がちょっと見えた。冬の厳しさと美しさは似たようなもんである
2025年01月01日 09:58撮影 by  iPhone 14, Apple
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1/1 9:58
美瑛岳がちょっと見えた。冬の厳しさと美しさは似たようなもんである
行き先が見えるが目は見えない
2025年01月01日 09:58撮影 by  iPhone 14, Apple
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1/1 9:58
行き先が見えるが目は見えない
撮影機器:

感想

自分の失敗を語れる人は信頼できる人だ。取り返しのつく失敗なら糧にしたら良いじゃない。ちょっと死ぬかと思ったから詳しく書いてます。皆さんの反面教師になれたら幸いです。

クソ長いので先に要約を書いときます。Apple Watchはウルトラ買え。ゴーグルは電熱買え。正月に死んだら来年以降も皆迷惑。ではお付き合いして頂ける方のみ続きをお読みください。

***********キリトリ************

風のない樹林帯は本当に無音だ。じっとしていれば、聞こえるのは自分の心臓の音だけ。キーンと冴える冷たい空気が心地よい。

降ったばかりの雪がふわふわに積もり、スタートから脛のラッセルだ。トレースはわかるものの全部ラッセル。富良野側渡渉のまだ心許ないブリッジを越えてからは50mごとに底なしの踏み抜き連続地帯。やはりスキーの浮力は圧倒的で、スノーシューだと踏み抜き引っかかり地獄。遅々として進まない。

樹林帯を抜けると風が吹いてきた。避難小屋で風を避けながら一休み。凍りついた小屋の中だが、外から入ると暖かい。

さて、進むか。ってトレースがある!望岳台から登った人がいるのか!!いやぁ楽ですな、と一瞬思ったが、そのトレースは大沢の方へ続いていた。この雪で大沢を登ろうとすると絶対蟻地獄にハマるので、折角のお誘いですが今日は夏尾根に乗りたいと思います。

夏尾根はまあまあ雪が少なく、歩きやすかった。しかし、標高を上げるごとに風が強くなり、さっきまで見えていた星も消え始め、やっぱり…な展開へ。

と、ここでトラブル発生。いつもナビにしているApple Watchの電源が落ちた。腕につけていたのだが、それでも低温で落ちたのだろう。今まで問題起こしたことなかったのに。ってかお前、最近電池交換してもらったばかりじゃねぇか!

仕方がない。ポケットの中にはiPhoneもあるし、ザックの中には予備のガーミンGPSもある。何度も登っている十勝岳だから慣れもあるし(*1)。

ガスも出て視界もなく、風の強い中グラウンド火口の縁をなぞって最後の壁へ。ここから先はとりあえず高い方へ行けば山頂だ。

しかし視界が悪いな。メガネのレンズが凍りついている。風に乗って氷の粒が刺すように飛んでくる。視界が…視界が悪いな…

ゴーグルが必要だった。熱線入りの高いやつ。

先日壊しちゃったんだよね。スキーの練習していてフレームが割れてしまった。それで新しいの注文したんだけど、これが「眼鏡対応」って表示されているくせに全然ダメで、どんな小さい眼鏡なら入るんやー!という代物。使えなかったから本日ノーゴーグルです(*2)。

激しい視界不良と強風の中、なんとか山頂に到着。
山頂では先行者が一人。トレースあったか?と思ったが、ルートがあってないようなものだからそんなもんだろう。この寒氷陣のなか落ち着いた様子で朝陽を待っていた。どんな猛者じゃろ。

景色も日の出も期待できなさそうなので、早めに下山開始だ。ここで長居したらしんでしまう。

ということで山頂からほんの少し下りたあたりで…強風にすっ飛ばされた。
完全に向かい風。も、、も ど れ な い !

ここは稜線だから何とかして少し下りれば風は弱まる。とにかく隙を見て山頂の陰に入ればイケるか?を数回繰り返してやっと突破だ。山頂から想定ルートよりも東側に下りてしまった。ここはゴツゴツした大岩地帯だから、視界もないしまずは少し西に折れてルートを戻そ!

ここでApple Watchのダウンが効いてくる。
iPhoneじゃダメなんだよ。ロック解除しなきゃならないから。碌に効かないタッチ付きグローブはイマイチで、もちろんフェイスIDは効かない。凍傷リスクを考えたら頻繁にはチェックできない。予備のガーミン出せば良かったのだが、強風でめんどくさい(*3)。

気がついたら右目が見えなくなっていた。
しばらくは眼鏡に氷がついているだけかと思っていたが、眼鏡を外しても近くにあるものが霞んで見えない。ああこれ角膜損傷やっちゃったな。本格的にまずい…

ということで、ここからは足元を必死に確認しながら進んでいく。霞んで光線状態が悪く、そもそもフラットな光で立体感がない雪道を霞んだ片目で見るものだから、本当にわからない。踏み外して初めて気付くレベルでわからない。迷走してルートより西の尾根に入り込んだ挙句…

落ちたの。

すとんて

おいは恥ずかしか!
生きておられんごっ!

ふわふわパウダーだから怪我もなく、緩い滑落と感じた。上にストック一本落としたんだけど蟻地獄で戻れない。それにしてもどうやってルートに戻りましょ。

とりえあえずルートの方までトラバースしてみる。急斜面のトラバースはそれなりに危険で、アイゼンが良かったな、と思ったが今更この斜面で換装はできない。行けそうな気がした斜面は近づくと結構なもので、登攀できる人なら登れるかと思ったが、自分のアイゼンとピッケルは単に滑り止めなので途方に暮れる。思ったより深刻な事態だな。。。

何度も通う中で、この場所は下りられないから近づかないと認識していた場所だ。地形図と写真を見比べて記憶があるから余計に絶望的な気分になる。うーん、救助呼ぶ?警察じゃなくてココヘリが先なんだっけ?救助が来るまでここでじっとして待つの?つらぁ〜。念の為場所だけ家族に伝えとくかなあ。遺体発見されなきゃ悲惨なことになるし。ネットで冷笑されるやつだなーコレ。

でも地形図を見て悩んでいたら気付いた。メインの崖からはもう無事落ちたんだわ。大ラッキー賞で無傷で落ちたんだわ。じゃあこのままグラウンド火口に下りてしまおう。なかなかの斜面だけど雪がふわふわなのも大ラッキー賞で、吹き溜まって厚く積もっている場所を探してフルブレーキかけながらゆっくり滑り降りることに。

意外にも特に危険箇所なく、無事にグラウンド火口に到達。

しかし危機はまだ去っていないのである。
右目が見えない問題は、もう体力0の体に余計な負担をかけてくる。痛いし。ここから先はただ雪が降り積もったエリア。危険は少ないが足元は重く、地形が見えないのは精神と体力を削られる。

よろよろと歩いたり滑ったりして進む。深いパウダースノーは尻滑りを拒み、なかなか進まない。遠くからスキーヤーに「Are you OK !?」って心配された。大丈夫じゃないんだけど、今更救助もいらんし自力で戻るしかないからOKなんだわ。ヒャッハー!2025年も登山は自己責任地獄だぜ!

白銀荘に戻って温泉で生き返った。でも目は生き返りませんでした。角膜に傷がついていました。今度から目薬を常備薬に加えておこうかな。その前にゴーグル買うか…(追記:買いました)顔も凍傷でいてぇ

年明けから仕事の時にはマスクとサングラス必要かも。「風邪か?貝沼くんー」状態だなあ。凍傷ですー

今年の占いには「死」って出ているかもしれないけど、大ラッキー賞が2つも出たから多分乗り越えられると思う。ラストワン賞じゃないことを祈る。2025年もよろしくお願いします。ハッピーニューイヤー


注*1,2,3 主な死因です
追記 角膜は見事に傷ついていたけど1/3現在ほぼ治ってます。視力ちょっと戻りきってない感じ。それより明日から仕事なんだけど顔がやばい。

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