横尾本谷右俣(過去レコ)
- GPS
- 56:00
- 距離
- 17.6km
- 登り
- 1,954m
- 下り
- 304m
過去天気図(気象庁) | 2008年07月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
感想
横尾本谷右股のレコを検索したところ、夏季の記録が見当たらないので、かなり前のものですが参考に掲載するものです。(2015年12月記載。現状と異なる部分がある前提でお読みください。)
槍ヶ岳には、高校生の時に家族で表銀座から大槍ヒュッテまで行ったが、そこで雷雨に見舞われ、頂上には行かずに終わってしまっていた。永年の宿題を片付けるべく、さらに槍沢往復では退屈なのでバリエーションということで、このルートに目を付けた。蝶ガ岳からの穂高連峰の写真に典型的なカールの形状を見せているこの本谷右股のカールもまた、永年の憧れであった。私の持っている山と渓谷社の「アルペンガイド」97年版には、次田経雄氏によるガイドが掲載されており、これを参考にした。
「海の日」の3連休である。本谷橋で涸沢への登山道と別れ、本谷左岸(下から見て右側)の踏み跡に入る。沢沿いのブッシュの中に意外と明瞭な踏み跡があったり、ペンキ印を目標に川原の石を伝ったりする。一部にフィックスロープも残っていた。斜面の崩壊した後をトラバースする箇所もあり、中々苦労する。1時間強で、涸沢との分岐に達する。対岸には、涸沢への道からガレ沢が落ちており、そこから降りて本谷を渡ったほうが楽かもしれない。(ただし、靴を脱がないと渡れない。)前穂北尾根が高く望める。
さらに川原を進み、顕著な二又に着く。見上げると、左俣は両岸が切り立ち、雪渓を抱いて威圧感がある。右股は穏やかに開けている。もはや踏み跡はなく、完全に沢登りだ。岩の積み重なった岸辺を、歩きやすそうな側を求めて左右に渡っていくが、さすがアルプスだけあって、簡単に跨ぎ越せる水量ではなく、少々靴の中を濡らしてしまう。右側に、岩がかぶっていて残置ロープの垂れている箇所があり、身をのけぞらせて登らなければならなかったが、苦労するほどではない。それ以外には壁は全くなかった。後方の屏風岩の特異な形を珍しく眺めながら高度を上げていくと、急にあたりが静かになり、思いがけず大きな雪渓が現れた。幅30メートル、距離200メートルくらいか。上に上がるしかないが、安定しており、傾斜も緩いので不安なく登れた。
上端からまた沢に降りると、すぐに傾斜が緩くなり、段を越したような感じがして、目の前にカール底が広がった。さわやかな流れの脇にシナノキンバイが鮮やかな花を咲かせ、左右は緑の空間だ。あいにくの曇り空から雨がポツポツ落ちてきてしまったのが残念。晴れていればパラダイスだろうが、それでも一人この場所にいる喜びを噛みしめながら進む。やがて目の前にブッシュに覆われたモレーンが迫ってくるが、残雪の上を歩いていくと自然に左側から巻き登ることができた。
風景は一変し、残雪べったりの、本当のカールボーデン(底)だ。周囲のカールバント(壁)、特に左側の南岳の高い岩壁に囲まれたスケールの大きさは期待以上だった。雪原の真ん中の大きな岩によじ登り、しばし感慨にふける。南岳からはのべつ石が落ちており、一応の注意は必要だ。先は長いので腰を上げる。念のため軽アイゼンを付け、天狗のコルに向かって雪の上を真っすぐに進む。次第に急になる沢筋を詰め上げ、ザレ斜面に乗り移る。
ザレの上には、踏み跡かな?と思える程度のものが見えるが、地形から自ずとルートは限定される。前日と思われる一人の足跡があり、何となくほっとする。少し日が差すようにもなり、周囲に咲くハクサンイチゲやシナノキンバイを愛でる余裕もでてきた。右は横尾尾根の緑の稜線が次第に近づいてくる。左の南岳側は、岩壁と残雪がまだ雲の中まで突き上げている。眼下にはカールの全貌が大きく広がっている。スキーで滑ったらと想像するのも楽しい。急に上から人声が聞こえ、天狗のコルに飛び出した。安堵と、気の抜けた寂しさとが同時にこみ上げてきた。
(以後、天狗池、槍沢を経て槍ヶ岳に至ったが、一般ルートなので割愛する。)
(総括)
・この時期だと雪上の歩きが多く、容易な分、面白みに欠けると言えるかもしれない。ガイドにある滝らしきものも、雪に埋もれていたのか見当たらなかった。カールの下の段はブッシュ帯、上の段は雪が消えてもおそらくガレで、期待していた大お花畑はなかった。他の方のレコを見ても、ベストシーズンは秋だろう。
・雪渓は安定していたが、盛夏になり割れてくると苦労するかも知れない。
・横尾尾根に上がれるのは天狗のコルに突き上げる1ヵ所だけで、左右にずれると岩壁にぶつかってしまう。したがって視界の利かない時は難しい。
・人気の穂高連峰にあって、一人にも出会わない静かな山旅を楽しめた。探検の楽しさもあり良いコースだ。
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