絶望しときますか 北鎌尾根最深部で嵐がやってきた
- GPS
- 60:15
- 距離
- 48.5km
- 登り
- 3,223m
- 下り
- 3,212m
コースタイム
- 山行
- 7:38
- 休憩
- 0:51
- 合計
- 8:29
- 山行
- 10:10
- 休憩
- 0:50
- 合計
- 11:00
- 山行
- 10:41
- 休憩
- 1:50
- 合計
- 12:31
そういった類のものに頼るような性根では残雪期はやめておいた方がいいかも知れません。
北鎌尾根7度目のリーダーをして「好天の厳冬期よかよっぽど厳しくヤバかった部類」だったんだそう。
公文の採点アルバイトしてた時に使ってた【🌸大変良くできました🌸】のハンコ、また探しとこ
天候 | 閲覧ありがとうございます。強力なリーダーについてっただけの雑魚プレイヤーではありますが心を込めてレコアップさせて頂きました。それではスタート! ↓↓↓ すっかり有名になった悪魔の5月1日。槍穂界隈に居る登山者全てを阿鼻叫喚の渦に巻き込んだ嵐。4/30、日本海側にひょっこり現れた小さな低気圧が悪さをしたようで 引き返せるものなら引き返したかった。ムリだった、北鎌尾根最深部では・・ |
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過去天気図(気象庁) | 2016年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・大曲〜水俣乗越までの登り=沢の中央部が登りやすそうだが,雪崩が怖いので左岸の尾根を登った。最上部は雪壁。 ・水俣乗越〜北鎌沢出合への下り=急角度で落ちているがここでビビるようなら引き返したほうが賢明。デブリが多く降雪直後は危険だと思う。 ・北鎌沢出合〜北鎌コルへの登り=夏と違って道は明瞭。降雪直後のせいか上に行くにしたがって潜るようになる。ごく小さな雪崩に遭遇。早めにラインを右の尾根沿いに取るべきであった。 ・北鎌コル〜天狗の腰掛=無雪期はハイキングルートなのにエグいスノーリッジと雪壁に変貌していた。 ・天狗の腰掛〜独標=岩混じりの雪稜、視界が効かないとルートミスしやすい。 ・独標登攀=1ピッチ目は5mのトラバースから急峻なルンゼ、最上部の雪壁は垂壁。右に逃げるのがいいと思う。今回は灌木が出ていたが通常は支点が取りにくい。スノーバーが使えるかもしれないが強度は雪質しだい。そこからは簡単なリッジと雪壁。 ・独標から先=トラバースは千・天側とも急峻。場合によればロープを出したほうがいい。基本的に尾根を行くが、正確にルートを判断することと、絶対にミスをしないアイゼンワークが必要。 ・槍の登り=今回はロープを使い4ピッチの雪壁とミックス。ビレイ点は30〜35m位でハーケンがありそれを使う。自信があればワンポイントのロープでもいけそう。 ・槍の下り=最上部は氷の斜面、かなり難しく危険。 |
写真
感想
〜〜『バスッ!バスッ!!』締まった雪面にアックスが程よく効く。大槍登攀は4ピッチ目に差し掛かり残雪期北鎌尾根制覇までまであと少し。山頂に陣取る一般道を登ってきたであろう方々からの激写を受けつつ昨日の事に頭をよぎらせた。
昨日は北鎌平・あわよくば槍ヶ岳山頂を目指し4:30に北鎌沢出合を出発した。午前中は怪しかっただけの天候が尾根に上がった途端豹変、荒れ狂う嵐となった〜〜
今回はジャックナイフ氏との2人パーティー。本来、西穂高ー奥穂高ー明神岳の縦走だったのが突如北鎌に変更となった。ズイブン難易度がUPしたような・・
ジャンダルムはまだしも明神岳下降なんかは異次元の世界、それに西穂までもロープウェイ使わせてくれないのでどっちもどっちだと思い、神の訓示に従った。
【4/30】
初日は上高地から北鎌沢出合まで行きテント張っただけ。水俣乗越までの登りに喘いだ。
そう悪くない予報のはずなのにミゾレみたいなのが降りしきっている。電波も無いしラジオすら入らないのでてるてる坊主でも作って祈るしかなかった。
今夜の北鎌沢は都合4パーティ。東北の壮年男性3人組、壮年夫婦?、リス会3人組と我々。明日は2:30起床なのでディナー食って早々に寝た。
【5/1】
相変わらずミゾレはやまず、空は鈍色。
一番手の飛び出しで真っ直ぐ天を衝く北鎌沢右股を登攀開始した。
締まりのない雪質にミゾレがミックスされ、殊の外歩きづらい。まるでマングローブの森を進んでいるようだった。マングローブの森に行ったことないんですけどね
技術も経験もピアノもそれを聴かせる腕前もないワタクシがラッセル頑張るべきだがラッセルの92%をリーダーが担当した。重い雪に苦労し、情けないことについてくのが精一杯。3時間以上かけて北鎌コル到着。昨日ムリしてここを目指していたら到着は18:00を回っていたことだろう。やめといて良かった。
実はワタクシ素晴らしい妄想を抱いていた。「稜線に上がれば雪なんぞは風で吹っ飛び、快適な縦走路に打って変わる」
全くおめでたい、そのらんらんる〜な妄想にトドメを刺したのが天狗の腰掛さえ見えない大迫力の雪稜だった。ゴツイ角度で突き上げていて両サイド切れ落ちている・・。延々こんなの続くんだろうかと思うと正直、怖気づいた。
スタカットとコンテを織り交ぜナイフエッジ、切れ落ちトラバースを進む。というか風が威力を増してきて横殴りになってきた。唸りをあげていて台風のようだ。
もう戻れないのに。視界も無くなってきたし・・オイオイ
喘ぎ喘ぎ天狗を目指していると後ろから今後助け合う事となる、リス会の面々が追いついてきた。舘ひろし似のリーダー、柴田恭兵似のサブリーダー、大塚愛似のレディの3人組。大塚愛がおイタリーの高級ブランドで身を固めていたのでリス会と勝手に名付けさせてもらう。
ラッセルなかったとはいえ、2時間近くビハインドあったはずなのにもう追いついてくるとは屈強すぎるパーティーだ^^;
暴風に吹かれながら凍った岩場を突破してくのはイジョーに心臓に悪い、文字通り一挙手一投足が命懸け。リス会と先頭を変わりつつ独標基部に到着。どエライ傾斜じゃないか・・。2ピッチほど伸ばして頂きを踏んだ。
独標からはさらに嵐はギヤを上げ、風速20m超の風を運んでくる。声は届かないので指示系統は全て身振り手振り。ダイバーか宇宙飛行士みたい❤とかて考えてると思わずクスッときてしまった。
そんなもんだから突風に捕まり真横に80cm〜1mほどぶっ飛ばされてしまう。安全なトコで良かった、剥き出しの稜線でコイツを食らうと終わる。風の通り道となる岩稜と岩稜の間の通過はかなり慎重になった。二足歩行する勇気なかったので風が収まった隙にバッタのように這いつくばってやり過ごし、凍った崖のトラバースは全身全霊魂を込め前爪効かせアックスを打ち込んだ。
視界もなく横殴りの吹雪のせいで目も開けられない。いよいよこれ以上行動するのは危険だとのリーダーの判断で行動停止することにし、手頃な岩陰でテント張った。暴風の中テント張り作業は勉強になった。にしてもテントを殴る振動・轟音が止まらない。
明日もこの調子ならここで閉じ込められるんじゃないか・・映画や小説でよく見るあのシーンみたいだ、まさか自分が主人公になってしまうのか
ここは凍てつく北鎌尾根、2800mの稜線上。
鬼も逃げ出す岩稜帯・・
【5/2】
と、センチになったところで心配事は外れ翌朝起きるとキッチリ晴れていた。とっぱちに80度くらいの傾斜のトラバースがあってヒヨったが順調に小ピークを陥落させてった。
P15に辿りつき遥かなる大槍を見上げたとき、ようやくあの感覚が湧き上がってきた。
『オメェ強そうだな。なんだかオラ、わくわくしてきたぞ』
今までビビっていたクセに天気良くなるとガゼン強気になる。ったく現金なものだ。
後はリーダーの鮮やかな手ほどきで引っ張ってもらい、無事オンサイト。
心地良い風に吹かれ山頂の空気を吸った
4/30 槍沢ロッジ手前から雪が出てきた。大曲の分岐を少し行き過ぎたので尾根を戻るようにして水俣乗越の登りにかかる。ラッセルというほどではないが機関車が一台なので負担が大きい。
上部に入るにしたがって沢が狭まり、沢芯は雪崩の恐れがあるので右の尾根らしきところを進み、最上部をトラバース気味にコルに出る。コル直下は2mほどの垂直に近い雪壁になっているので今回のラインがいいと思う。コルからは天井沢が一望できた。気合を入れ直して下る。先ほどまでの晴天がいつの間にやら曇りに変わり、北鎌も独標から上がガスに覆われていた。
順調に沢を下り、天井沢に出た。雪が少なくところどころ河原歩きを強いられた。コルから1時間30分ほどで北鎌沢の出会いに着いた。今回はできれば北穂高まで行きたかったので、もうひと踏ん張りして北鎌沢を登ろうかと思ったが先ほどから霙が吹き付けるようになり、やがて雨が降ってきた。風も強くこの状況でコルまで行っても悲惨なビバークになりそうだったのでここにテン場を取ることにした。
水は沢の流水があったのでそれを汲んだ。やがて後続パーティがやってきた。今回は我々を含め4Pが北鎌沢経由の槍ということだ。
夕食の鍋を食べ、明日は早朝出勤をして槍まで行こうということで18時には寝た。予報では明日は晴天だし風が強いとはいえ所詮5月だろうと甘く考えていた。
5/1寝過ごして2:30起床、4:20出発。期待していた天気は依然悪い。時折雪さえ降ってくる中、急登を喘ぎながら登る。昨日の雨は上部では当然雪で次第にラッセルがきつくなる。相方はラッセルをする私に間をあけてついてくるのがやっとだが、それは仕方ない。奴は奴で精いっぱい頑張っている。途中で小規模な雪崩に出会うが事なきを得た。
予定を大幅に上回り3時間弱でようやく北鎌のコルに着いた。ガスの中、強風が吹きつける。トレースもなく、どうやら北鎌を舐めていた罰が当たったらしい。気合を入れ直して目の前の雪壁にアイゼンを蹴り込んだ。
天狗の頭までは楽勝と思っていたのだが、とんでもない話でラッセルがあるかと思えばアイゼンの前爪しか立たないような硬雪の壁もある。後続のためにステップを蹴り込んでいると消耗しそうなのでロープを出して確保することにした。
コルを出て1時間30分ほどで天狗のコルに着いた。休憩していると後続の3人パーティが登ってきた。これで少し楽になれると考えた。
今日はどこまでと聞かれ、現実的に北鎌平と答えた。そこからはこのパーティと前になり後になり進んだ。晴れの予報はどこにやら、視界のきかないガスの中、強風にさらされ、ときおり突風に耐風姿勢で耐えながらじりじりと進む。途中私のルートミスで訳の分からない岩場を1ピッチ登ってしまい1時間のロス。
やがて独標が見えてきた。ロープを出して気持ちの悪いトラバースからルンゼを登る。雪が微妙に柔らかくいまいち信用できない。中間支点を3カ所灌木でとる、抜け口の垂直の壁にトレースが有ったので?マークで安易に行くと踏み出したステップが崩れてあっさりフォール。安易にトレースを追ったのが間違いだった。
冷静に見ると弱点は右の灌木のリッジにあった。今度は慎重に乗り越えリッジ上の灌木でピッチを切った。
そこからは優しいリッジと雪壁3ピッチで独標に着いた。時間はもう12時。この状態では北鎌平までも届かない。どこか、少しでも風の通らないところでビバークすることにした。ピークを2〜3越えたあたりに岩の間にスペースがあった。時間も15時を回っているしここで行動をやめにした。同行パーティはまだ先に進むということだ。
テントを張り終え、中に入るとほっとした。お茶を飲み、夕食を食べ、明日の水を作ってからシュラフに入った。強風がテントを揺さぶる。夕食の後、トイレに出ると天気は回復していて青空が見えた。明日も厳しいには変わりないが今日ほどの事はないだろうと思う。
5/2 3時30起床、5:20出発。今日は晴れている。風は強いが昨日のような突風は無い。ピークを一つ越えたところで昨日のパーティに出会う。その先のピークを超えると槍がずいぶん近く見えた。一か所非常にシビアなトラバースがあった。ロープを出すべきだった。
景色が見えると気分も違う。昨日同様踏み出す足は重いが心は軽い。一歩踏み出すたびに槍は近づき、P15、北鎌平は絶好の展望台で快適に休憩できた。
最後の槍の登りは心配していたほど氷化していなくて、むしろ快適に登れた。9:50槍ヶ岳山頂。時間が早いせいかほとんど人がいなかった。ゆっくりと休憩してから下山にかかった。その下りは梯子を降りた後の20m位のくだりがガチガチに凍っていてきわめて悪かった。これは一般縦走路のレベルを遥かに超えている。
みんなロープ無で上がってきているけど大丈夫かな?と思うが自分が滑落しては何にもならないし、人にどうこう言うほどの者でもないのでこれからここを登る人々の無事を祈るだけにしておいた。
槍ヶ岳山荘まで降りたら後はほぼ安全地帯。ひたすら長く、だるい下りが待っていた。この2日半の酷使で痛めつけられたSHINの足は靴を履くのを嫌がるくらい豆や靴擦れにやられていたが根性で歩き通し、なんとか最終のバスに間に合った。えらい。
初めまして。こんばんは。
厳しい山行記録であり、非常に参考になりましたが、『百姓一揆』、『ロマンスの神様』と『100均カッパ』には笑わずにはいられませんでした。
今後も為になる(笑)記録を楽しみにしております。
コメントありがとうござます、74moonさん。
実は
コースの状況/危険箇所等
のところもワタクシのオリジナルを入れていたのですが、リーダーの厳しい指摘でリーダー自ら修正なされました。
「感想とかはどっちでもいいがここは重要だろ!?参考にする人がいるかどうかは分からないがキミのは見るに堪えない、上書きしておく!」
でした。すみません、見苦しくて
大変で厳しい山行なのに時々クスッと笑ってしまいました((≧艸≦*))
他のレコも拝見しましたが、面白かったです。笑
リーダーさんも、クールでかっちょいいですね(*´ω`*)
これからも楽しいレコ期待してます!
5/1は天気予報がよかったのに結局天気回復せず、真っ白でしたよね(´・ω・`)
悪魔の5/1ってとってもわかります。。。
本当にお疲れ様でした!
ruonickさん、はじめまして^ ^
価値観良く似てます。ワタクシも週末はご来光、夕焼け、も一発ご来光を全部食べたいタイプでして。せっかく遠い登山口まで行きますもの、もったいない
夜空の写真スゴイですね〜、憧れです。
リーダーはベジータそのもの、クールでチト怖いっす😊
よう生きて帰ってきたなあ。
遭難が多発してたから心配で心配で (´+(エ)+`)ウゥ
キミは高みを目指す。
ボクは自然と戯れる。
キミとの距離がドンドン広がっていく。
お花畑で腕組んでスキップしたいのに 。・°エーン!!°・(*>(エ)<*)・°エーン!!°・。
お花もハイキングも好きよー^ ^
まずはお花の名前覚えからしなくては。イロイロ教えて下され
最近何しよるかなと思って覗いたら、すんごい事してたんやね〜(^o^)いいね〜(^.^)
こっちは雪爆谷で落石食らってケガしてもーた(≧∇≦)
ついてっただけですよトシさん(^_^;)
もっと強くなり経験積まないと一生トップは張れないと思いましたわ
お願い、私を北鎌連れてって(ぴちぴちの爺さんだけど・・)
ピチピチの爺さんて(^_^;)
チョビさんくらい脚力あれば問題無いように思われますが。ハイシーズンなら道が分からないこともないし誰か入ってるやろし。
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