積雪期富士山(御殿場口、夜間登山)
- GPS
- 14:43
- 距離
- 24.3km
- 登り
- 3,488m
- 下り
- 3,488m
コースタイム
11/21 御殿場口新五合目0200→七合五勺0737→山頂1053→剣が峰1145→大砂走分岐1330→御殿場口新五合目1546
天候 | 11/20 晴 11/21 晴 |
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過去天気図(気象庁) | 2010年11月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
※まず、シーズン外なので、登山届を各警察署へ提出のこと。 河口湖口:富士吉田警察署 須走口、御殿場口:御殿場警察署 富士宮口:富士宮警察署 ----- 宝永山近くまでほとんど雪がなく、通常の一般登山道を歩いた。 全体的にベタ雪で雪量は少なく、 また、登山中に夜が明けて陽光がモロに雪面を照らしたために雪が溶けかけ、 足元のコンディションは非常に悪かったため、アイゼンは全く使えず、 ことのほか時間がかかってしまった。 結局、登頂後にお鉢巡りをするときだけアイピンを使い、 あとはツボ足とストックのみでの山行だった。 もう少し雪面が硬ければ、アイゼンが効いてだいぶ楽だったものと思われる。 気温は最低が氷点下8.9度。この時期にしては少し高めだった。 |
予約できる山小屋 |
|
ファイル |
motch
(更新時刻:2011/11/23 00:46) |
写真
感想
4ヶ月ぶりに立つ登山口は、深い霧に覆われていた。
11月20日夕方、ぼくはこの年三度、富士御殿場口の新五合目登山口にやってきた。
オーヴァーヤッケ、アイゼン、ピッケル、ウールの手袋にオーヴァーミトン。
そしてプラスティックブーツにスパッツ。完全に冬山装備の出立ちだ。
春に滑落したとき、そして夏に登頂したとき、
その斜面の形状は目にしっかりと焼き付けていた。
往復で12時間から15時間。食料は5食分。ビバーク用の装備。
あとはレイヤード(重ね着)調整で、気温の上下に対応する。
登山口の鳥居には、「通行止」の看板が設置されているが、
登山口にやってくる前、御殿場警察署に入山届を兼ねた登山計画書を提出している。
もちろん、警察官には「気をつけて登るように」と釘を刺されたが、
(滑落したとはいえ)積雪期の富士入山歴があることを明記しておいたこともあり、
特にくどくどと話を聞かれることはなかった。
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山行時間を考慮すると、夜が明ける前に出発することが理想だ。
本当は、山頂でご来光を見ることができればよいのだけれど、
夏と違い、歩く時間が長くなるであろうことを考慮すれば、
夜間登山をするにしても、登山開始前の数時間は、
高度馴化と休息を兼ねて、車内で仮眠を取ったほうがよいということを、
これまでの幾度かの失敗から学んでいた。
そこで、17時前に登山口に着いてから消化の良い、エナジィに転化しやすいものを食べ、
19時から翌日1時まで仮眠を取った。
2時、出発。
さあ、行こうか。
ぼくは真っ暗闇の中、入山口の鳥居をくぐり、「通行止」の看板の脇をすり抜け、
富士の懐へとその歩を進め始めた。
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気温は、それほど低くない。
滑落した4月には、砂地が凍り付いていて、割合足元が安定していたが、
今回は凍っておらず、登頂した7月のときにかなり近い。
すなわち、足元は砂地に食い込み、べったりとする。
疲労感は、凍っているときよりも大きい。
その上、夏に比べると装備が重いため、序盤はかなり辛かった。
御殿場口は、殊に新五合目から六合目までの距離が非常に長い。
標高差1200m弱、延々と砂礫の斜面を登り続けるため、
精神的にもあまり盛り上がるところがなく、退屈であるとよく言われるが、
左手に双子山(二ツ塚)、右手には大きく広がる裾野が見え、
まるで山腹に抱かれているかのような錯覚に陥る。
盛夏の時期でさえ、その長い距離を敬遠されて、登山者が少ないと言うのに、
積雪期にもなれば、その数はほぼゼロに近い。
実際、ぼくがこの山行中、ルート上で出会ったのは、
大学の山岳部と思しき1パーティと、富士宮口から宝永山を経由して山頂へ向かっていた、
スキーを担いだ男性1人だけだった。
5時40分ごろ、夜が明け始める。
4月と大体同じ時間だけれども、あのときは気温が非常に低くて風が強く、
雪はひと冬越えた後だったこともあって、2000m付近まで被り、
アイスバーンになって凍っていた。
それに比べれば気温はかなり高く、ほぼ無風のずいぶんと穏やかな夜明けで、
ぼくはこのスケールの大きなルートを登ることができる幸せを噛み締めていた。
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4月に滑落した宝永山付近まで来て、初めてルート上を雪が覆っていたが、
雪は量が少なく、質はあくまで柔らかくて重かったので、ツボ足だけで十分対処でき、
アイゼンを装着する必要は全くなかった。
その分、体力の消耗は夏とは比べ物にならなかった。
朝7時37分、七合五勺。ここまでおよそ5時間半。夏からほぼ1時間遅れである。
夏はここから2時間あまりで登頂したが、恐らくは3時間弱はかかるだろうと見積もった。
雪はかなり増えていて、ところどころ地表が出ているものの、
概ね白に塗られ、我々がよく知る富士山の立ち姿の白い部分、その中に立っている。
しかし、八合目が過ぎ、岩場中心になってくると、
プラスティックブーツの重さが覿面に響き出し、ペースはがっくりと落ちた。
おまけに、多少緩かったので、序盤から両踵とも靴擦れができてしまい、
痛みに気をとられ続けてきた分、ますます消耗度合いは増してきた。
富士宮口からの合流付近で、スキーを担いだ男性がやってきた。
ぼくとは違い、元気いっぱいの足取りで、瞬く間に先へ行ってしまった。
これでも十分にトレーニングを積んできたつもりだったが、
まだまだ修練が足りないと痛感する。
もうそこまで、というのは分かっているのに、
いつまで経っても頂上の鳥居が見えてこないのが、誠にもどかしい。
とっくに日本第二位の山の標高(南アルプス、北岳の3193m)よりも高くなり、
酸素の供給力はだいぶ厳しい。ちょっと歩いては立ち止まることを繰り返す。
しかし、メンタルは4月とは比べるべくもなく、とても安定していた。
冷静に、何、歩けば必ず着く、と己を言い聞かせ、 、
このルートをゆっくりと噛み締めていた。
やがて、遥か先に鳥居の姿が見えてくる。
ゆっくりと、着実にその歩を進めるにつれ、鳥居は次第に大きくなってゆく。
10時53分、七合五勺での自分の予測よりもだいぶ遅れてしまったが、
ようやく積雪期の富士の頂に立つことができた。
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