(過去レコ)中央アルプス縦走(摺古木自然園休憩舎〜千畳敷)


- GPS
- 32:00
- 距離
- 30.0km
- 登り
- 3,362m
- 下り
- 2,483m
コースタイム
- 山行
- 10:00
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 10:40
- 山行
- 11:55
- 休憩
- 2:00
- 合計
- 13:55
天候 | 2日とも曇り(稜線はガス) |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2010年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
|
写真
感想
2010年9月20日(月)〜21日(火)、中央アルプスを摺古木自然園休憩舎から千畳敷まで1泊2日で縦走する。
当初は21日〜23日の2泊3日を予定していたが、23日は雨の予報の為、一日繰り上げる。
中央アルプスは安平路山、越百山、三ノ沢岳などは日帰りで個別には登っていた。
空木岳〜越百山間以外は縦走したことがない。
問題は越百〜安平路間の笹やぶをどのように歩くかであった。
3年ほど前だったろうか、ツアー会社から送られた参加者募集コースに、越百小屋を早朝出て安平路避難小屋泊で、摺古木自然園休憩舎まで縦走する少人数限定ツアーがあった。
それを見て、『ツアーでも一日で越百〜安平路間を歩けるなら、朝早く出れば一日で越百〜摺古木間は歩けるだろう』と思った。
電車・バスを利用しないマイカー派には、車をどこに置くかが問題である。
木曽駒の登山口である菅ノ台へ置くと、下山口である摺古木自然園休憩舎からJR飯田駅まではタクシーを使うことになる。
色々考えた結果、摺古木自然園休憩舎まで朝早く車かタクシーで上がり、その日は越百小屋泊、翌日は木曽殿山荘に泊まるか、木曽駒ヶ岳周辺の山小屋泊を予定。
木曽殿山荘は予約必須だが、泊まるかどうかは未定の為、予約せず。
19日は越百小屋が満員で予約が取れず、神坂峠まで車で上がり、恵那山へピストン後、峠のすぐ北にある富士見台へ行き、下山後、飯田市内のBHに泊まる。
BHへ向かう途中、摺古木自然園休憩舎まで行ってみた。
大平宿からの林道はかなりの悪路だが、普通乗用車でも何とか腹をこすらずに行ける。
対向車との摺れ違いなどもあり、四WDのオフロードカーが無難である。
翌20日、JR飯田駅近くのタクシー会社へ車を預け(無料)、タクシーで摺古木自然園休憩舎まで上がる。
時間にして1時間強、1万2〜3千円だったのではないかと思うが、1万に達したところで料金メーターを切り、正確な料金は分からない。
前日にタクシーを予約した際、一人なので1万ポッキリということで話がついていた。
摺古木自然園休憩舎まで送迎の需要はあるだろうから四駆のタクシーだろう、そうすると若干割高ではないのかと思いきや、客の人数に関係なく普通のタクシーを使うと言う。
林道終点の狭い駐車場は満車。
真っ暗い中、Uターンするのも大変な悪路を上がってくれたタクシーに感謝。
3時半に歩き始め、5時05分、摺古木山頂上へ。
10年前の12月、安平路山へ行った際、摺古木山の展望の良さにびっくり!
御嶽、白山、笠ヶ岳、穂高連峰まで見えた。
この好展望のピークを暗い内に通過するのは、初めてなら勿体ないが、今日の最大の目的は安平路〜越百間の笹やぶを如何に歩き通すかであり、それ以外は頭にない。
ライト不要となった5時15分、安平路へ向かう。
今朝は雲の多い夜明けであり、稜線からの日の出もパッとしない。
途中で、避難小屋泊まりの男性2人連れと行き会い、笹やぶの状況を聞く。踏み跡はしっかり付いており、迷う心配はないが、やぶをかき分けるのが難儀だと言う。
避難小屋の先の水場で飲み溜めし、500ミリのPB2本で歩く。
安平路山は木に囲まれて展望なしだが、10年前に来た時は南東方向へ刈り払いされていて、前安平路山の建築資材が積み上げられた所からは南アルプスの展望が良かった。
今回、南東方向は全く刈り払いされてなく、深い笹やぶに埋もれていた。
7時05分、安平路山から越百山方面への一歩を踏み入れた途端、猛烈な笹やぶ漕ぎが始まる。
しばらくの間は下りだからまだ良かったが、上り坂では両手でかき分けた笹に掴まり、身体を引き上げる。
幸い、背丈が没するほどの笹ではなく、肩から上は終始やぶから出ており、上りの笹の中以外では前方が広く見渡せる。
広い笹原の微かに低くなった部分にルートがあり、その部分と数少ない赤テープの目印を追って延々と笹を漕ぐ。
今日の天気は曇りのち晴れの予報だが、朝の内は所によって雨とのこと。
その“所によって”が、今歩いている笹やぶだった。
上空は鉛色の雲が立ち込めているが、前方の空は明るく、降っているのは広い範囲ではない。大降りする気配でもないので、多少濡れるのは我慢しながら、雨具は着ないでとにかく前へ進む。
かってはよく歩かれていたと思われ、坂道には丸太の木段が敷かれていた形跡あり。それも今では腐り果てている。樹木には小さな道標が打ち付けられているが、歳月の流れに風化し、その文字は読めないものが多い。
奥念丈岳までで、現在地を確認できるものは全くなかった。
小雨は1時間少々でやみ、その後も濡れた笹でズボンや上着が乾くことはなかったが、濡れてもびしょ濡れではなく、着干しさせながら、寒さを感じることもない。
和名倉山への川又ルートや仁田小屋尾根ルート、男鹿岳(栃木県)への資材運搬路の跡地ルートなどで、猛烈なやぶ山には多少は慣れていたが、こんな長時間の藪こぎは初めて。
膝から下は傷だらけとなり、上着も所々破れる。
最初は笹の中に倒木が隠れてないかどうか、よくかき分けて見ていたが、やがてそれも面倒になり、倒木につまづいても痛いのは我慢し、転ばないことだけを念頭に置く。
和名倉山のように2mを越す笹でもなく、男鹿岳のように絡み合った笹ではなかった。
明瞭な踏み跡の道の中には笹が生えてないので、両手でかき分ければすんなりと歩ける。だが、道跡が分からなくなり、ルートから外れると藪との格闘となり、両手でかき分けられるような生易しいものではなく、体当たりでかき分ける感じである。
笹を踏み倒し、乗り越え、それでもダメなら背を丸めてかいくぐり、更に上り坂では笹に掴まって身体を引き上げることになり、予想外に体力を消耗する。
笹の倒れ具合からも、今までに縦走した人の悪戦苦闘ぶりが見てとれる。
北北東に進んでいたルートがほぼ直角に近い感覚で北東に折れた先で、単独行の青年と行き会う。
お互いにこれから先の藪の状況を情報交換し合ったが、その時刻は既に11時前であり、彼がコースタイムで6時間半も掛かる安平路避難小屋まで、明るい内に着けるかどうか少々気がかりであった。昨日は摺鉢窪避難小屋泊とのこと。
間もなく着いた奥念丈岳は展望が良い。
天気は予報通りに回復したが、午前中のどんより感を引きずったままで、すっきりした晴天ではない。
東側に大きく張り出した烏帽子ヶ岳から念丈岳への尾根が登高欲をくすぐる。
北には南越百山がすっきりした形で鎮座しているが、まだまだ遠い。
標高が上がり、笹は幾分少なくなった感じだが、今度は少ない笹にシャクナゲやハイマツが混ざるようになる。
高山の灌木は厳しい自然環境に耐え得るものだけが生き残り、灌木の藪こぎは笹やぶ以上に厄介だ。
南越百山まで長い上り坂となり、この日で最も難儀だった藪こぎを強いられる。
その頂上直下でやぶ漕ぎからようやく解放され、大きく溜め息をつく。
やっと終わったのだ。もう、やぶ漕ぎはしなくていいのだ。やぶと戦い、戯れ、それでも諦めずに歩き続け、安平路から6時間に及ぶやぶとの格闘にピリオドを打ったのだ。
振り返れば遠くに霞む安平路が、歩き通した私を祝福しているように見え、感慨無量でありながらも、胸の奥から込み上げるいわれのない寂寥感に浸る。
尚、山地図の南越百山は現地標示は南奥念丈岳となっている。
奥念丈岳の北にありながら、南奥念丈岳とは?
14時10分、越百小屋へ着く。
今日行き会ったのは、男性2人連れと単独行の青年のみ。
管理人に、安平路〜南越百山間のやぶについて聞いたところ、全国のやぶ山愛好家の為に残されている縦走路であり、将来も刈られることはないとのこと。
確かに、危険な岩場や非常に迷い易い所もなく、アップダウンもそれほど大きくはないので、好事家向きのルートではある。
外のベンチでビールを飲んでいたら寒くなり、小屋の中でストーブにあたる。
収容人数30人の小さな小屋で、その日の宿泊者は11人。小屋とは離れの避難小屋があり、靴とザックはそちらへ置く。
21日未明、屋根を打つ雨音で目を覚ます。
トイレから戻った人が、外は雨だという。
まだ早い時刻なので寝ていてもいいのだが、隣の人のいびきで眠れそうになく、出ることにする。
外へ出て、天気が悪い為の雨ではなく、濃いガスが雨となっているものと分かる。
霧雨状の雨だが、樹林帯では本降りみたいに木の枝から雫が落ち続けているので、雨具を着て出る。
越百山〜南駒ヶ岳間は歩いたことがあるが、南駒ヶ岳〜極楽平間は、空木岳頂上以外は踏んでいない。
稜線の携帯が通じる所で天気予報を聞くと、今日も昨日と同じく曇りのち晴れで、降水確率は30%。
明日は晴れのち曇りで、遅くなって雨の予報。
稜線も濃いガスで展望は全くないうえに、風が非常に強い。
メガネのレンズに水滴が着き、絶えず拭いていないと前が見えない。
南駒ヶ岳には単独の男性がいたが、空木岳には誰もいない。
明日は晴れのち曇りなので、午前中は天気が良いかも知れない。
予約はしていないが早い時間に着けば木曽殿山荘に泊まれるだろう。
明日の午前中の展望に賭けて、今日は木曽殿山荘に泊まることにして、空木岳から山荘への急降下の道をゆっくり下る。
標高差は300m足らずだが、第一ピークと表示されている地点から上では、場所によっては凄い急降下で、後ろ向きで下らないとザックが地面に当たって危険だ。
山荘から空木岳への登りは登山者が多ければ、渋滞が予想されるだろう。
ガスの中に山荘が見え、10時40分に着く。
宿泊を申し込んだところ、帰って来た答えは意外だった。『天気は今夜から下り坂ですから、今日中に下山された方がいいです』と。
稜線の途中で天気予報を聞き、明日は晴れのち曇りとのことを言っても、聞き入れてもらえなかった。
本当に下り坂なんだろうか? 明日の夜から下り坂とは承知しているが…
予約をしてないので、天気を口実にして拒否されたのだろうか?
それとも本当に下り坂で、今日中に下山した方が安全なのだろうか?
山の関係者の『勘』は当たることが多いが、勘だけで言っている感じでもなく、はっきりと下り坂だと言う。
千畳敷から下りの最終ロープウェーを聞くと17時とのこと。
あと6時間、標準コースタイムでも6時間半なので、間に合いそう。
明日の午前中に賭けていた期待は、そのような形で崩れた。
まぁ、予報通りに晴れてもガスが湧けば展望なしだから、無理に泊まろうとも思わなかった。
今日の天気は予報通り、徐々に回復し、東川岳では日差しも出てきて暑くなり、雨具と防寒着を脱ぎ、少し寒い状態で速めに歩く。
風は相変わらず強く、上空の真っ白い雲が猛スピードで飛ばされている。
稜線から西に外れた三ノ沢岳の巨峰には、頂上部分にずっと雲が掛かり続けている。
一瞬の雲の切れ間に写真を撮ったが、それ以降は雲に隠れたまま。
熊沢岳までは歩き易かったが、それ以降、巨岩がゴロゴロした歩きにくい道で、ルートはほとんど稜線の西側であり、強風をまともに受ける。
一ヶ所だけ東側の無風状態の中へ入り、蒸し風呂のような暑さを感じる。
熊沢岳を越えてから行き交う人も増えたが、同じ方向へ歩く人とは全く会わない。
濁沢大峰の近くで、摺古木自然園休憩舎まで縦走するという単独行の青年と会う。
今日はすぐ近くに見えている檜尾避難小屋に泊まり、明日はまだはっきり決めていないようだったので、中小川ルートの稜線下にある越百小屋跡での幕営を勧める。
越百〜安平路間のやぶの状況についても話す。
北関東弁の訛りがあるが、人懐っこい好青年であった。
島田娘のピーク近くにはニホンザルの集団がいた。
食べ物もほとんどないと思われる標高2860m付近で、何ゆえに棲み付いたのであろうか?
極楽平から宝剣岳を超えて木曽駒までは過去に3回ほど歩いたことがあり、今回は千畳敷へ下る。
明日の晴れが間違いなければ木曽駒周辺の山小屋に泊まり、ご来光と早朝の絶景を堪能してから下山したかったのだが、恵那山を含め、3日間とも天候には見放された山旅であった。
16時20分のロープウェーでしらび平へ下り、乗り継いだバスで駒ヶ根駅へ。
市街地など平野の上空は予報通りによく晴れている。
駒ヶ根駅から飯田駅までのJR線は曲がりくねっていることもあり、1時間13分も掛かった。
飯田駅から車を預けてあるタクシー会社へ戻り、深夜の高速道で帰宅する。
※ 翌日の午前中、稜線上の山小屋へ確認すると、濃いガスで風が非常に強く、千畳敷から木曽殿へ向かうのは止められているとのこと。
矢張り、木曽殿山荘のアドバイス通りであった。
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