《安曇山地》北東尾根【唐沢岳】西尾根


- GPS
- 56:00
- 距離
- 15.5km
- 登り
- 2,475m
- 下り
- 2,468m
コースタイム
- 山行
- 8:10
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 8:10
- 山行
- 9:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 9:30
- 山行
- 3:55
- 休憩
- 3:00
- 合計
- 6:55
- 山行
- 6:35
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 7:15
二人テン場なら随所にあり。今回は3泊ともイグルー。雪はイグルー向けにはあまり良くない。天候に恵まれ連日晴れ。朝晩こそ冷えるものの、唐沢山頂では3時間も長居し、陽を浴びた。下山路は図らずも唐沢幕岩を見学して満足した。
北東尾根にはかすかなトレース、西尾根には新しいトレースあり。唐沢の中は古いデブリあり。積雪も古く、量も少ないので雪崩の心配はなし。b沢出会い以下水流もあるが、概ね左岸を下れる。金時滝の巻道は、下降の向きだと沢登りの経験がないと見つけ難い。
天候 | 連日晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年02月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
日本登山体系では「東尾根」とあるが、どう見ても北東尾根なので・・・。 今年は雪が少ない。気温も高い。ヤブとバリズボ。テクより体力と気力。 |
その他周辺情報 | 下山時葛温泉高瀬館はポンプ故障で入れず。ご主人に聞いて次に安い心笑(ここえ)温泉へ。 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
ファイル |
(更新時刻:2019/03/03 18:27)
|
写真
装備
個人装備 |
スコップ
鋸
アイゼン
アックス
その他冬山宿泊個人装備(寝具一式・ナイフや灯り地図磁石)
わかん
|
---|---|
共同装備 |
ツエルト
ストーブ+燃料
鍋セット
ザイル20m
|
感想
松本から見える北アルプス前面の列、餓鬼岳から有明山までを、ウラの唐沢岳からつないだら、滅多に記録を見ない良いラインだ。唐沢岳北東尾根は松が数十年暖めていた登路。4日で行けるかどうか。休みも取れた。松は失職直後で好天周期もよし。唐沢岳はなかなか立てないマイナーピーク。何の百名山でもなんでもないけど、格好のいい珠玉の未踏山。
1日目
松本→葛温泉は早朝で1時間だった。事前に電話で駐車の旨お願いした高瀬館に停める。七倉ダム左岸の階段を上って堤を渡り対岸の尾根末端の鉄階段を上る。古いトレースあり。シャクナゲの藪はまあまあのクラス。バリズボ(バリッと破れてずぼっともぐる雪)で急な尾根を登る。・1646の下りは、細い尾根ラインは藪が濃いので、右手に寄って下る。全体に両脇は落ちたら止まらない傾斜。数mのバリズボのギャップの通過に筋力は使うが、テクで困るところはほぼ無い。コブをいくつも乗り越え、かろうじて二人分イグルーの場所で作る。この冬はずっと気温が高いのか、50センチ下にもあまり良いしまり雪層が無く、屋根を作るのに苦労するが、イグルーは玄人なので完成。松が親方からもらったという、50センチ近いノコが重宝した。長いほど、長いブロックが取れる。ブロックが長いほど、屋根が楽に塞げる。
晩、カレー雑炊、ブラックニッカ少々。朝早茹でスパ、ルーミック。
2日目
きょうは山頂まで行けるだろうか。いくつかこぶを越え、遠くからも目立つ標高1950mにあるエル・キャピタンみたいな岩峰は核心か。岩峰の左にある、正面から見ると雪壁に見えるルンゼを登って抜ける。とりついてみると藪は適度にあるし、足は10センチ近くは蹴り込めるしで、20mロープを出してはみたが不要だった。この先も8つほど小岩峰、雪のドームなど越えては降りるのを繰り返す。2mほどのギャップ越えるのに木登りなどもあり、全身の筋力と持続力と沢登り的ルート・ファインド力が問われる。一日中相撲をとっているようだ。雪のドームもカリンコリンに堅いわけでは無く、アイゼン前詰め立ちの箇所では、良いハイマツのグリップが掘り出せたりと。ロープはいらないが、落ちたら確実に谷底まで千メートル止まらないというのが延々続く。ハアハアいいながらファイトして、気がついたら午後3時回っている。
イグルー作って火をおこす。風なし。周囲の山は美しく、青い空も変わらず。星も美しい。山も星もすべて、名前を知っている。きょうは山頂まで届かなかった。有明山までの乗っ越しはあきらめる。このルート、修験道行者向けだ。
晩カレー雑炊、朝早茹スパ納豆汁和え。
3日目
きょうも輝く朝日。1500mから下は雲海。朝晩は凄く寒い。松は足が冷たくて眠れないという。僕も今朝はそうだった。イグルーが小さすぎた。
アサイチで堅い雪壁(傾斜はあっても50度ほどまで)を前爪とピオレ・ポワニャールで登っていると、左の急な方に残置ロープの朽ちかけたのが見えた。日本登山体系(旧版)に書いてあった、東京薪水岳友会のものだろうか。数十年ものの骨董だ。下の樹林帯でも何度か同じフィックスを見た。
標高2450mで北西尾根に乗ったあたりで傾斜が少し落ち、山頂までの見通しが立った。ここではじめてワカンをつける。効いているのかいないのか。少し進んでやはり外す。山頂直下にて南側、始めて槍ヶ岳が見えた。北鎌尾根が真正面で、ジグザグと畳まれた岩稜。逆光の中、岩壁と雪壁が輝いている。この角度の槍は、ここだけ。
山頂は小高く展望よし。無風快晴、陽光浴びて、3時間も過ごす。2月なのに。
餓鬼岳往復も考えたがやめた。昨夏乳川からの好ルートで登っているし、時間に追われて走るより、ここを最高点としてお茶飲んで展望を満喫したい。見える山々、渓谷の一つ一つの記憶を辿る。
西尾根にはトレースがあった。こちらは新しい。数日以内のものかもしれない。唐沢岳にこの時期登る人が他にもいるなんて。槍ヶ岳が樹林に隠れて見えなくなる手前の標高2400mでイグルーを立て、火をおこす。夕焼けに染まる高瀬川左岸山脈、燕、北鎌尾根に、剱岳を欲しいままに眺める。今夜のイグルーは広い。松が湯たんぽ作ってくれた。
今日は豊かな時間の使い方をした。
晩、朝マルタイラーメン。ブラックニッカ少々。マサラティーうまい。
4日目
樹林を降りコルへ。唐沢へのルンゼは急だがカキカキではなく、前向いて下れる。古いデブリの跡はあるが、最近半月くらい、まともな降雪は無いのではないか。話に聞く幕岩、洞穴など眺めて通過。b沢出合辺りで水が開いている。概ね左岸を降る。両側立ってきて、金時の滝。少し戻って右岸側20mほど斜面登ると、巻きルートの峠。そこから硬く急な氷のルンゼを100mばかりバックステップで下る。手持ちのロープ、20mなので。ここの氷が一番硬かった。そのあと堰堤に掛かる垂直ハシゴを降りて、高瀬ダムへ。「騎士団長殺し」を思わせる、寒くて暗いトンネルを延々歩いて葛温泉へ。なんとポンプの故障で今日は閉店とのことで残念。ご主人の上条さんに駐車のお礼をする。上高地や野口五郎小屋の上条一族だとか。教わった近所の心笑温泉へ。広くて空いていて盆栽沢山の温泉。
午後3時になってしまったので、大町、安曇のおすすめ食堂が全て閉まってしまった。こういう時の盤石食堂は、テンホウです。半額餃子ラーメンでごっつぁん。
松本に戻って、ウチでハートランド飲んであったかいお布団で足を伸ばして眠る。乾いた暖かいお布団、最高。
表銀座の果ての山、2632唐沢岳。誰も見向きもしない山。
しかし私にとりやはり大きな山だった。小さな山の、大きな懐山。
最上級の山だった。
◆アルパインクライミングを志向するような現代的クライマーには技術的には容易と言えるルートかもしれないが、登山者にはそれ相応の緊張感の持続が求められまた、初心者に準ずる人間がパーティーに居る場合には一たび落ちたら止まる地形にはないためにロープは必携となる(実際過去には滑落死亡事例もある)。なお、今回我々はいつもの通りに最小限度の携行品で済ますべく、ロープは20、ハーネスはシュリンゲで代用しヘルメット、ハーケン、ハンマーは持ってゆかなかったが、自らの力量を慎重に計って計画願いたい。冬季のアクセスも良く、また展望も良好、行けばそれなりに得るものの多い中級者の目標たり得る好ルートといえる。
「満足するのでも、絶望するのでもなく、人間とは何か、人間の幸せとは何かを探求し続けるところに人生の妙味があるのではないでしょうか」―---エリック・ホッファー
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梅雨も明けそろそろまともな山に行きたいなと、唐沢岳の七倉の発電所入り口と高瀬ダム方面へ下れるのでではないかと調べていたら、やはりやっている人がいた。誰かと思えば「THEお二人」。あまりの好天で春かと思いきや厳冬期。夏は無理ですね。
今年もそうでしたが、地球温暖化の進行する日本の二月はもう厳冬期とは言えません。
北東尾根藪下降となると、first descentかと思われます。
何にしましても唐沢岳は登る価値ある山ですので是非。
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