烏帽子岳〜船窪岳縦走
- GPS
- 35:58
- 距離
- 33.7km
- 登り
- 4,480m
- 下り
- 4,758m
コースタイム
4/29 撤収5:10〜烏帽子岳6:00〜南沢岳7:40〜不動岳10:15〜船窪岳第二ピーク手前幕営17:05
4/30 撤収4:45〜第二ピーク5:25〜船窪乗越7:45〜船越テント場9:35〜船窪小屋10:50〜天狗の庭12:10〜唐沢のぞき14:55〜七倉山荘16:35
天候 | 4/28 晴れ 最低気温0℃ 最高気温13℃ 4/29 晴れ 最低気温-2℃ 最高気温9℃ 4/30 曇一時雨 最低気温-3℃ 最高気温12℃ |
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過去天気図(気象庁) | 2012年04月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
駐車場までの道は雪・凍結・落石などありません。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
・七倉山荘は改装中でした。7/1リニューアルオープンです。 ・ゲート前に立派なトイレと、黄色の登山ポストがあります。 ・山の神〜不動沢の各トンネルは、照明が明るくて助かりました。漏水はありましたが、凍結していません。 ・不動沢のダム湖流入口は工事中で、仮登山道が作られています。濁沢の吊橋までしっかり案内してくれます。 ・権太落しまで枯れ葉と残雪の道です。アイゼン無しでも不安はありませんでした。 ・その後は傾斜がきつく、雪も深くなります。雪は腐っていて膝くらいまで潜ります。 ・西に折れて小屋への登りは、若干傾斜が緩み、雪も締まってきますが、踏み抜くと腰まで埋まることもありました。 ・烏帽子小屋は冬季小屋が使えます。トイレはありません。 ・烏帽子小屋から不動岳まで広い雪原を歩く感じです。雪が全く無い夏道状態の個所が少しありました。 ・烏帽子岳の登りは、ロープ・チェーンは雪の下です。凄い斜面になってます。 ・不動岳から船窪第二ピークまでの樹林帯には、マーキングが見当たりません。雪は腐っていて、胸まで埋まることもあります。 ・第二ピークから船窪テント場まで、登山道は雪でふさがれた状態です。雪庇の上を歩くか、富山側の樹林帯を巻くか、無理やり登降するしかありません。 ・船窪テント場から天狗の庭まで、これまでに比べれば気持ちよく歩けます。船窪小屋も冬季小屋が使えます。 ・七倉尾根もマーキングが見当たらず、雪の下のハシゴが目印です。急なうえに雪が緩いので滑ります。 ・唐沢のぞきの手前あたりから雪が少なくなり、凍結箇所が増えます。 ・七倉沢への下りは、枯れ葉の九十九道です。東電の黄色いポールが導いてくれます。 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
写真
感想
北アルプス三大急登巡り、ブナ立尾根から船窪岳縦走です。
実はある因縁から、どうしてもGWにこのルートで歩きたいという強い思いがありました。
事前に仕入れた情報では不動沢の崩壊箇所が不安でしたが、無事踏破できたことは、何物に
も代えがたい財産になりました。
今回も旅レコのGPXデータをそのまま載せました。スタート直後暴れていますが、ちゃん
と道を歩ってます(笑)。
1日目
4/27も休日だったため、のんびり気分で出発。たっぷり仮眠して予定より早く歩き出しま
した。トンネルの中が照明で明るいのでびっくり。夜叉神もこうしてくれればいいのに。高
瀬ダムからの眺めがなかなかにきれいでした。不動沢のキャンプ場に仮設トイレがありまし
た。吊橋を渡った先の水場も使えますが、今回水は雪で作ります。これ以上重くしたくない
です。
枯れ葉に残雪が混じる道を登ります。天気がいいと暑くなるのが厄介。風も無いのでよけ
いです。雪は予想通りグズグズに腐ってます。斜面のトラバースで足を滑らせ、冷や汗をか
きました。権太落しの先が雪深そうなので、休憩がてらアイゼンを装着。傾斜がきつくなっ
て、ラッセルになります。踏み抜くと足が上がらなくなることがあり、苦労しました。
雪の重みで倒れた木や枝が道を塞いでいて迂回することもありました。ハシゴが多いと聞
いていましたが雪の下らしく、ほとんど見られません。登山口11で始まった区間Noは、5以降
は見つけられませんでした。坂はどんどん急になっていきます。槍ヶ岳や常念岳が垣間見え
てヤル気を出させてくれます。
標高が上がっても雪質は変わらず、ズボンの膝が濡れてきました。2208点はやはり雪に埋
まっているようでわかりませんでしたが、ここから少し傾斜が緩みます。視界も開けて、不
動岳の向こうに針ノ木岳が顔を覗かせました。稜線がどんどん迫ってきて、ついに雪が踏め
るようになると、烏帽子小屋のアンテナが見えました。もう靴の中まで濡れています。冬季
小屋の中に転がり込んで、今日の行程を消化できた嬉しさに浸りました。
2日目
小屋の中は寒く無く、濡れたものも大体乾きました。今日も晴れ。風無し。朝のうちは気温
が低いので気持ちがいいくらいです。雪はクラストして、さらに歩きやすくなっています。グ
リーンロープで仕切られた登山道は、ところどころ砂礫が露出した夏道状態のところもありま
した。右手には船窪小屋らしい影が見えました。今日はそこまで行けるつもりでいました。
烏帽子岳には、分岐でザックを降ろし、空身で登頂しました。雪の斜面に掴まるものは無く、
山頂直下の枝とスリングがわずかに見えているだけでした。少し右寄りに登ったため横移動が
怖かったですが、なんとか登れました。下りは山頂南側のクサリを掘り出して、登ってきた足
跡を、登りの姿勢で辿って行きました。この日一番の恐怖体験でした。
烏帽子田圃まで雪原を渡り、唐沢岳・餓鬼岳を望みます。南沢岳の登りは下半分が無雪状態。
途中直登コースが崩壊のため立ち入り禁止になっていました。左手には読売新道の稜線が真っ
白に輝いています。山頂は砂礫の平坦な見晴らしのいい場所でした。赤ペンキで『南沢』と書
かれた岩が印象的です。
ここから南沢乗越までの下りは酷くて、腰や胸まで埋まる腐り様。そのかわり不動岳への登
りはしっかりしていました。昨日登ったブナ立尾根の向こうに、槍ヶ岳や前穂高・奥穂高岳が
見えます。広い斜面を登るのですが、稜線への入り口がハイマツに覆われて見分けがつかず、
やむなくハイマツの中に入り込むと、雷鳥のつがいが出迎えてくれました。いや、邪魔をした
と言うべきでしょう。少し雪庇を歩くとハイマツの中の道を見つけ、復帰しました。ここでも
雷鳥を1羽見ることができました。道に沿って逃げるのが可愛らしい。龍王岳・雄山の下に黒
部湖が神秘的に見えています。不動岳の山頂で昼食にしました。
この先の稜線は雪庇が張り出して怖いので、樹林帯に入りました。ところが、そこは泥沼の
ごとき雪地獄。しかもマーキングや標識は無いに等しく、垣間見える船窪第二ピークを目印に、
稜線から外れすぎないよう注意しつつ進みました。木の根元は踏み抜くことが多いので、時々
稜線を歩くと、確かに道らしい跡があるんですが、雪が邪魔で直進できずにまた斜面を巻きま
す。道なき道をかき分けるのは塩見岳以来2年振りです。
やがて事前情報でも度々目にした岩場に出ました。ここは雪が無くて歩きやすく、ワイヤー
やロープが張られた難所も、さっさと通れたので一安心です。まだ道のりは長く、今日中に船
窪小屋へは着けないと感じました。となると、テントを張る場所が必要ですが、樹林帯の斜面
が続くばかりで腰ラッセルにもいい加減うんざりしてきました。わずかに傾斜の緩く見えるス
ペースを整地して、幕営しました。第二ピーク手前の岩場が間近に迫っていたので、明日の行
程にもそう影響はないとふみました。ここでスコップの柄がどこかで抜け落ちていたことに気
付きました。しかし使えないわけではなく、雪相手なら柄は不要かもしれません。
昨日よりも濡れダメージは大きく、乾くとも思えず、着ながら乾かすのは気持ち悪くて眠り
が浅く、といいことなしです。
3日目
昨日の夕方から曇っていた空はそのまま朝を迎え、今日は暑さに参ることもなさそうです。
今日は少しでも濡れ防止に合羽の下も履きました。そして、昨日1日着けていたダブルカラビナ
付きハーネスを外しました。最大の難所は過ぎたと思っていました。
まず稜線に上がって、雪庇の上を岩場の下まで歩いて行けました。岩場は、雪が道を塞いで
いて、巻くこともできないため無理やり登るしかありませんでした。第二ピークの標柱を見る
ことはできず、船窪小屋目指して下ります。
船窪乗越まで大小7つくらいのアップダウンがあります。気温が低いせいか、雪の緩いとこ
ろは少ないようです。木の幹や枝に掴まりながらの登降が続きます。今日一番の恐怖体験は、
2つ目のピークを登るとき、ワイヤーが見えていたので、それを使って登ったまでは良かったん
ですが、その先が雪壁で何も掴むものが無く、腕を肘まで突っ込んで必死に登りました。いつ
落ちてもおかしくなかったと思います。その後もナイフリッジや、崖っぷちのハシゴや、雪と
ともに崩れた道や、雪に塞がれた岩場など、とんでもない道の連続ですが、もう慣れてしまっ
たのかそれなりに歩けてしまいました。
船窪テント場への登りはようやく安心して歩ける道でした。テント場からハシゴを登って雪
の斜面を歩いていると、ハイマツ帯に入る道があり、七倉岳への分岐を経て船窪小屋に到着です。
しかし、その手前から降り始めた小雨が、本降りになって雷まで鳴りだしたのには参りました。
冬季小屋が使えたので、雨宿りがてらに昼食とザックカバーの準備をしましたが、出発すると
きには止んでいました。
天狗の庭までは雪の上を歩きます。道が見えているところもありますが、岩混じりのため歩
きにくいです。高瀬ダム湖の向こうに槍ヶ岳がいつまでも見えていました。七倉尾根は鼻突八
丁と言うだけあって急坂ですが、ハシゴは雪の下のため夏道より傾斜は緩くなっているかもし
れません。こちらもマーキングは無いに等しく、枝や葉が散っているので一見道が無いように
も見えます。勘に頼って歩いているので、ルートを外れたり戻ったりの繰り返しでした。
八合目の道標からやや傾斜が緩くなり、雪の無いところも出てきますが、凍っているのでア
イゼンは脱ぎません。広めの尾根道を追って歩いていましたが、行き止まりになったので左下
を巻いて復帰すると、そこからは細い登山道になって迷うことも無くなりました。ハシゴを使
う急下りと小さな登りの繰り返しで唐沢のぞきに到着。ここでアイゼンを脱ぎます。
ここで尾根を外れるかと思っていましたがしばらく直進で、東電の黄色い標柱が見えたとこ
ろに赤テープがあって、そこから怒涛の下りになります。残雪や凍結もあって転びそうになり
ますが、だんだん大きくなる沢の水音を聞きながら慎重に下りて行きます。やがて枯れ葉の九
十九折れになって砂利道の登山道入り口に下りました。右へ少し行くと山の神トンネルの横に
出ます。無事下りることができました。
駐車場にはほかに5台の車がいましたが、登山に来ているのかはわかりません。客待ちのタク
シーもいました。用意していた炭酸500㎖をがぶ飲みし、薬師の湯へ行きました。ぬるい源泉が
気持ちよかったので1時間くらいも入っていました。このまま帰っても夜中になるので、ゆっく
り夕食を食べて初狩PAで仮眠し5/1早朝に帰宅しました。
PAでの仮眠中、登山道の恐怖が甦ってきましたが、これからも同じ思いをするでしょうし、い
つかどこかでそれは現実になるかもしれませんが、それが山に行かない理由になることはありま
せん。今回の山行はちょっと自慢できるものになりました。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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またもや、凄いルートを行かれたんですね。
私など、夏でもこのルート歩いてません。
たった一人、自分だけの力で行くしかないルートをなぜにBBCさんは選ぶのでしょうか?
畏敬の念を感じてしまいます。
こんばんは。コメントありがとうございます。
なかなか歩き応えのあるルートでしたよ。でも雪はいらないですね。
会社の先輩にも注意されましたが、どこで落ちてもおかしくありませんでした。
行かれる時は十分ご注意ください。
どうしてもGWに歩きたくて行ってしまいましたが、そういう意味では自己満足に過ぎません。
それに、誰かが一緒だと本性を見られてしまうので、ちょっと・・。
こんにちは。お久し振りにお邪魔致します。
全く同じルートを昨年の秋に歩いているのですが、残雪期とは
特に後半 不動岳〜船窪まで 雪が無くても崩壊中の稜線は中々スリリングでした。
鎖が埋まった状態での烏帽子岳 中々大変だったのでは (楽勝だったら申し訳ありません )
不動岳や南沢岳からの眺めはやはり素敵ですね
裏銀座を見渡せるところでお天気良くって!!
「雪はいらない」という上記のコメント、すごく共感してしまいました
お疲れ様でした^−^
コメントありがとうございます。ittiさんのレコも拝見させていただきました。
崩壊地では、雪が無いほうが怖いところもあるんですね 隠してくれていた雪に感謝!
あっ、踏み抜きは別です。
ただ、他にもいろいろ隠れてしまっているのは、やはり惜しいです。『ガンバレ』は見たかったなあ
烏帽子岳は、登ってる途中から「下りどうしよう」と思ってました。何とかなって良かったです
この時期の烏帽子ー船窪縦走すごいですね。
ご苦労様でした。
船窪小屋の冬期小屋の扉開くみたいですね。しめしめ。
近近行く予定なのですがとっても参考になりました。
船窪小屋の入り口は、何かが引っ掛かって開けにくかったですが、凍ってはいませんでした。
七倉尾根を何度も登っておられるんですね。日帰りもされるなんて、凄いです
osanpoさんにはいつもの道でしょうけど、お気をつけて行って来てください。
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