真教寺尾根から赤岳を経て県界尾根へ
- GPS
- 26:19
- 距離
- 10.4km
- 登り
- 1,084m
- 下り
- 1,330m
コースタイム
- 山行
- 11:24
- 休憩
- 0:10
- 合計
- 11:34
- 山行
- 4:28
- 休憩
- 0:22
- 合計
- 4:50
8:42 真教寺尾根登山口
8:44 賽の河原
8:44 大門沢方面分岐
10:12 牛首山
10:36 扇山
14:22 真教寺尾根分岐
14:25 竜頭峰
14:58 赤岳
15:08 赤岳頂上山荘
7:33 大天狗
9:09 「東方薬師如来」石碑
9:13 小天狗
10:24 真教寺尾根方面分岐
10:40 赤岳県界尾根ルート登山口
10:56 サンメドウズ清里スキー場
天候 | 雲一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2019年08月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・真教寺尾根・県界尾根とも赤岳直下は険しい岩壁を鎖と梯子で登ります。雨天時は非常に滑りやすく、雷を避ける場所もありません。 ・コースを通じてよく踏まれており、要所に指導標もあって迷うところはありませんでした。 |
写真
感想
小淵沢に別荘を構えるTさんの呼びかけに応じて、八ヶ岳の赤岳・権現岳間にある大キレットを目指す山行計画が立ち上がった。一日目は車で清里ハイランドパークに行き、始発のリフトで賽の河原手前まで行く。そこから真教寺尾根を登り、赤岳南峰へ取り付く。大キレットを降り、キレット小屋に一泊。翌朝赤岳南峰へ戻り、県界尾根を下る。計画に乗ったのはYさんとEさんと私。昨年8月に雨乞岳を登った仲間だ。事前に計画を取り纏めているうち、何故か最年少の私がリーダー役を押し付けられた。
Tさんの別荘でBBQをして前泊し、8時始発のリフトを目指してTさんの運転で清里ハイランドパークに着いた。8時開店の券売所に列をつくり、往復のみ・当日のみ有効で1600円という殿様商売な乗車券を人数分買って乗り場に並ぶと、もぎり役の女性が我々の登山装備を見咎めた。山上で一泊する予定を伝えると、「駐車場に車を翌日まで置くならフロントで許可申請して下さい」。慌ててTさんが戻ったが、20分を浪費した。
リフト上の広場には清里を眺めるソファーが並べられ、既に殆ど埋まっていた。リフト客の殆どは軽装で、登山客は我々位だった。「下り分も払ったし戻ろうか」とのTさんの冗句に皆笑う。
メンバーのうちEさんは左膝を手術していてゴアテックスとチタンを埋め込んだという。障害者手帳も持っている。私を含めこのコースを経験した者はいない。難関ではあるがメジャーな登山ルートでもあるので、上りで道迷いの心配は無いだろう。リーダーの権限でEさんを先頭に指名、私は殿を務めた。
「時間はあるからゆっくり登ろう」と声を掛け合って牛首山への急坂を登る。5ch等で虻が多いと聞いていたが、既にトンボがわんさか飛んでいて虻は見かけなかった。度々茸博士のTさんが足を止めて道端の茸の鑑定を始めたおかげで、のんびり休憩を挟むことができた。後続に道を譲っては休み、牛首山へ到着。なだらかな扇山を超えて真教寺尾根の核心部らしき斜面を迎えた。昭文社の山と高原地図にもヤマレコにも鎖場と梯子の連続だとあるが、それがどの辺りから始まるのかが分からない。今はシラビソと栂、石楠花と松が混じった40度程度の斜面を登っている。
休んでは登っているうち、雲が斜面を追いかけてきた。その雲の合間、進行方向右手にYさんが赤岳頂上山荘の影を見つけた。やる気を出して登るうち、突然廻りの木々は低くなり、這松が目立ってきた。雷鳴を聞き逃したくないので、メンバーの熊鈴を仕舞ってもらった。また今日の目標を変更、大キレットは止めて頂上山荘を目指す事にした。
眼の前に現れた鎖場を前に休憩し、取り付く。いつの間にか先頭が先走りがちなTさんに代わっている。目上の方々に気は引けたが、先頭を交替してと声を上げた。それに対してEさんが二番目の方が助かると言うので、Tさんに後ろを確認しながら登るように伝えた。雨が降り出した。合羽を着るか判断してくれと聞かれたが、盛夏で午後の通り雨だ。「身体が冷えて我慢出来なければ着て下さい」と当たり前でしかない返事をした。
鎖場は続き、岩壁は霧と雨に濡れる。雷鳴が徐々に近づいている。まだ午後を過ぎたところだ。日中に引き返す余裕はあるはずだ。何度も山旅ロガーで現在地を確認する。Eさんの運足を見守る。正直に言って危なっかしい。この尾根の岩壁は険しいものの、ホールドは充分に多い。そのホールドを何度も踏み外している。「Eさん、今来たところを戻れますか!」「戻れるかどうか、自分で考えて下さい」。返事はない。耳に入ってはいないだろう。返事次第で引き返す決断をするところだったが、流れと雷鳴に押される形で続行した。色々気を揉んでいるうちに殿の自分が遅れた。前のYさんが浮石をホールドにしているのを見て、慎重に選びながら身体を目一杯広げてしがみつくうち、両足の付け根の間の腹筋が延びた。「こんなところに筋肉があったのか」と感動したのが間違いだと後で思い知った。
鎖場が始まって1時間、大キレットからの主脈縦走路との分岐点に到着した。雷は気になるがもう引き返す選択肢はほぼ無い。充分に休憩して竜頭峰を巻き、最後の南峰へ。登山道の下に広がるはずの絶景が霧のおかげで見えず、高度感が軽減すると言い合う。既に山頂も頂上山荘も常に見えており、余裕が生まれてきたようだ。「怖い」と聞いていた頂上直下の梯子を難なくやり過ごし、赤岳山頂に到着した。登山開始後6時間半を経過していた。雷鳴は遠くなっていた。
先行の男性と談笑、明日のコースを相談し合うメンバー。「そんな事は宿についてビール飲みながら話しましょうよ」と私。
頂上山荘に到着、ビールとワインで健闘を称え合った。明日は大キレットに行かず、6時から時間をかけて県界尾根を降りることにした。
17時からの夕食は豚肉炒めの他ナポリタンや生野菜サラダ、煮物が見事に盛り付けられていた。洋風のスープも美味い。メンバーの希望で赤ワインを持ってきたが、あまり進まないようで一人でガブガブ飲んだ。
食後は外へワインを持ち出して夕陽を鑑賞。横岳から天狗岳へ連なる八ヶ岳主脈を積乱雲が覆う。それを夕陽が照らし出す。吹上が強く寒い中、半時間は見とれていた。
メンバーは20時の消灯を待たずに就寝、私は登攀中に意識した足の付け根の間の腹筋が強く痛みだした。活躍してくれたつもりが無理をさせたらしい。
翌朝は5時15分に朝食。リーダーの重責をガンタ飯のお替りで誤魔化した。6時に山荘脇から始まる県界尾根に取り付いた。先頭はYさん。アンモニアが芳しいトイレ脇を過ぎると、這松が縁取る赤土の壁を鎖が伝っている。早朝でまだ固い身体に結構なアルバイトだ。前を歩くTさんの足取りを見、現在地を確認していると間が空く。先頭のYさんは遥か下で全く見えない。なりふり構わず鎖を両手で掴んで大股で追いかけた。
文句のない好天で展望山荘や横岳が左手に良く見える。八ヶ岳ブルー等という今時の言葉遣いは好まないが、この濃い碧天を表したものだろうと思う。鎖場と梯子がひたすら続く中、合間に誰かが声をかけて休む。今日は日没までに駐車場に戻れば良いので、一切の無理はせずにのんびり行こう。
梯子の末端を鎖が引き継ぐという嫌らしいルートを終えると、岩場も終わったようだ。シラビソの中の九十九折を降りる。真教寺尾根と違い、こちらは2,000m近辺から虻が目立ってきた。
きつい日照と虫に悩まされながらも赤岳を振り返っては休み、茸の少なさに嘆いては休んだ。約4時間で清里のスキー場に辿り着いた。山上の爽やかな空気は全く無い。観光客の「涼しいーっ」という声に「何処がやねん」と呟いた。
初めてのコースで初めてのリーダー役を務めた二日間。中年になってから見様見真似で山登りを始め、単独行が当たり前の為、石橋を叩いて渡らないようになっていた。対して他のメンバーは皆部活で集団での登山を経験している。不自由な足を抱えたメンバーが居ながら無事往復出来たのは、「まだ行ける」という経験に基づいた自信が他のメンバーにあったからだ。まだ痛む腹筋をさすりつつ、頼りないリーダーの統率に従って頂いた先輩方に感謝申し上げます。
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