Summit to Sea 白馬岳から栂海新道を親不知へ
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- GPS
- 74:49
- 距離
- 55.2km
- 登り
- 3,722m
- 下り
- 5,469m
コースタイム
- 山行
- 6:34
- 休憩
- 0:42
- 合計
- 7:16
- 山行
- 8:05
- 休憩
- 0:02
- 合計
- 8:07
- 山行
- 10:11
- 休憩
- 1:38
- 合計
- 11:49
- 山行
- 5:27
- 休憩
- 1:13
- 合計
- 6:40
9:06栂池パノラマウェイ 自然園駅
10:24天狗原/白馬岳神社
10:31風吹大池方面分岐
11:40乗鞍岳
12:05白馬大池山荘12:22
13:22船越ノ頭13:27
14:26小蓮華山14:34
15:12三国境
16:05白馬岳16:09
16:22白馬山荘
2日目
5:44白馬山荘7:00
7:19白馬岳7:25
7:55三国境
8:23鉱山道分岐
9:13雪倉岳避難小屋
10:00雪倉岳10:12
11:35ツバメ岩
12:15水平道分岐
13:42水谷のコル
13:51朝日小屋
3日目
4:13朝日小屋
4:19水谷のコル
5:13朝日岳5:19
5:42吹上のコル5:46
6:06照葉ノ池
6:51アヤメ平
8:01黒岩平
8:17黒岩山8:21
9:41サワガニ山
10:19北又の水場10:28
11:19犬ヶ岳
11:28栂海山荘11:50
12:39黄蓮山
13:04黄蓮の水場13:25
13:40菊石山
14:16下駒ヶ岳14:26
16:01白鳥山避難小屋
4日目
5:48白鳥山
6:08山姥平
6:42シキワリの水場7:01
7:07金時坂ノ頭
7:40坂田峠7:54
8:36尻高山
9:44二本松峠
11:04親不知 栂海新道登山口
11:53親不知観光ホテル
過去天気図(気象庁) | 2019年09月の天気図 |
---|---|
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
写真
装備
個人装備 |
長袖シャツ
ソフトシェル
タイツ
ズボン
靴下
グローブ
防寒着
雨具
ゲイター
日よけ帽子
着替え
靴
予備靴ひも
ザック
ザックカバー
サブザック
昼ご飯
行動食
非常食
飲料
ガスカートリッジ
コンロ
コッヘル
食器
ライター
地図(地形図)
コンパス
笛
計画書
ヘッドランプ
予備電池
GPS
筆記用具
ファーストエイドキット
常備薬
日焼け止め
ロールペーパー
保険証
携帯
時計
サングラス
タオル
ツェルト
ストック
ナイフ
カメラ
ポール
シェラフ
携帯トイレ
|
---|
感想
1日目
はるか昔、後立山連峰から縦走して日本海に出られると教えてもらった。数日を要し、日本海までの栂海(つがみ)新道は体力的にとても厳しいコースとも聞いていた。結局、学生時代には行くことが出来ず、憧れたままのコース。南アの北岳―仙丈岳を縦走できた今なら行けるかもしれない。逆に時を逃すと体力的に厳しくなって行けないだろう。そんな思いで、今年実行しようと計画を立てていた。
参考になるのは、栂海新道起点近くの朝日小屋のホームページ、数々の山行記録。白馬岳から日本海へ、少しでも体力的に楽なSummit to seaにした。
白馬山荘、朝日小屋に泊り、3泊目は無人小屋にも泊まって日本海へ。4日行程なら1日の平均行動時間は9時間程度、距離は13kmくらい。無理のない行程であるが、数値には表せないハードさがあると聞く。朝日小屋から北に向かう栂海新道は稜線を巻かないアップダウンの連続。最終泊が無人小屋になるので、食料や水を最後まで担ぐ必要がある。また、熊さんも近くに居るらしい。最後は低山ゆえに暑さ、虫なども待ち構えている。暑さに強くない私が行くなら雪が降り出す前の秋しかない。
一方、荷物は出来るだけ軽量化しないと激しいアップダウンの連続に耐えられないだろうが、水は十分に確保したいし、無人小屋の宿泊で満杯だったことを考えてツエルト一式も持参することにした。水を入れずに、ウエストポーチを含め12kg超。それに水が加わる。持参品をエクセルでリストアップし、それぞれの重量を合計して、あれこれ入れ替えて軽量化してみるが、どうしても重量を下げられなかった。下手くそだなあ。自宅で娘に説明しながらザックに詰めていく。娘が「お父さん、気を付けて」。何度も言う。ザックを持ってみる。飛び跳ねるくらいのことは問題なくできるが、長時間の山のアップダウンに足腰が耐えられるだろうか。マイカーでのアプローチではないため、一旦、家を出たなら、最後まで持ち帰らなくてはいけない。夏の南アの仙塩尾根縦走が少し自信になり、勇気をもって実行することにした。
有給を使って18日夜行バスで出発。気になる天気予報は、前半2日は前夜の雨から回復して晴れ〜曇り、後半2日は曇り〜雨。特に台風の接近も気になるところ。
夜行バスは、ザックの登山者が多いが、もう少し小さなザックが多い。できればそうしたかったなあ。今回のザックがグレゴリーパラゴン58。テン泊並みだ。
バス終点の栂池高原は学生時代に何度もスキー合宿で訪れたところ。7:30に到着しゴンドラ&ロープウエイ乗り場に向かう。先頭から15番目くらい。あとから人が増えてきて発券の際は30名くらい。今日はゴンドラ&ロープウエイの始発の遅さが律速になる。これくらい並んだら早めに乗せてくれるかと期待したが、定刻通り8:00に乗車開始であった。ゴンドラに同乗した大きなザックの若者は登山を始めて間もないそうで、今日は白馬大池でテン泊の予定。丁度、お手頃なルートだと思ったが、今朝は天候が悪く、山の上はまた、雨模様。これから止んで良い天気になるはずなのだが。
8:27にゴンドラ降り場に到着したが、ロープウエイ乗り場まで、少し距離がある。始発は8:30で、20分間隔での発車なので、重いザックでも小走りで急ぎ、少し待ってくれた始発に乗れた。
ロープウエイ終点はガスの中。準備して外に出ると雨も降っているが、僅かなのでザックカバーだけ着けて、そのまま歩く。栂池自然園は1900m。この辺りを散策する方々も多いようだ。どうりでザックが小さい。
ここから天狗原2200mへ。亡き家内と結婚前に白馬大池まで登り、蓮華温泉に回って一泊した。当時にはゴンドラはあったが、ロープウエイはなく、夜行バスで栂池自然園の辺りまで来られたのだが、ロープウエイの運行とともにバスが入らなくなったのだろうか。雨は止んだが、蒸し暑い樹林帯で標高を上げるとゴロゴロと大きな石の上を登るが、歩きにくい。うーん、かなり前のためか、全く覚えがない。こんなところをかつて登ったのかなあ、と思いながら進む。
天狗原の湿原まで来ると、天候は回復し、きれいな湿原の木道を歩くと、雲上の天国。いかにもアルプスに来たのだと実感する。ここまで、やや遅めのペース。今日は白馬山荘まで。天気は良いし、白馬岳を越えるし、距離もあるので、呼吸を整えて登る。現時点ではポリタン(1500mLと900mL)に水を入れず、500mLボトルを4本だけ持参。これで持つだろう。それでもザックは十分に重い。
風吹大池との分岐点を過ぎると白馬乗鞍岳への登り。大きな岩の堆積した斜面を登る。まだまだ序の口、エネルギーをロスしたくないので、ペンキのマークを外さないように登る。ケルンのある白馬乗鞍岳頂上付近から小蓮華山、その先の白馬岳が見える。先に見えるきれいな白馬大池まで下りて、小屋の前でコンビニのおにぎりで昼食。テントが張られている。雨上がりの良いお天気だし、ここでのんびり過ごすものいいなあ。ゴンドラで一緒だった若者もいい山旅が出来そうだ。
ここから、いよいよ雷鳥坂から小蓮華山への登り。NHK坂の上の雲のオープニングに使われた稜線を登る。森麻季のStand aloneが浮かぶ。凛とした彼女の歌い方がドラマにピッタリだったなあ。まずは手前の船越ノ頭まで高度を上げる。その先もいくつかのピークを越えていく。若い女性2名が、なかなかのスピードで追い抜いて行く。荷物量が違うので、抜かれるままであった。てっきり、白馬山荘まで行くのかと思ってたが、小蓮華山から引き返されてきた。
小蓮華山への素晴らしい稜線を登り、左にでっかい白馬三山、その南方の唐松、五竜、双耳峰の鹿島槍、かつて縦走した山々が一望できる。右にはこれから進む雪倉岳、朝日岳など大きく見える。あの山々に登り、その先の北を目指すのかと思うと、ワクワクもするしどのくらい大変なのかなあと、多少不安にもなる。でも、眺望に恵まれ、天候の不安もなく、ザックの重さにも十分に耐えて、ゆっくりだけど確実にマイペースで登れているので気分が滅入ることはなかった。
刀剣のある小蓮華山からは大きく下り、最低鞍部からしばらく登り返すと三国境。ここから200m登れば白馬山頂だ。既に太陽の力は落ち、西風が強いこともあり、結構冷えてきた。私は夏と同じ格好でいるが、ヤッケ類を着こんでいる方が大半だ。そのまま、寒さを我慢して登りきる。途中、馬の背が出てくるが、他の山の馬の背と異なり狭い岩尾根ではなく、落ちる心配はない。白馬岳手前の偽ピークから少し時間を要して白馬山頂。お久しぶりです。今日はずっと360度の展望を満喫しての登山だった。風が強くて寒いので、目の前にある白馬山荘まで下りて終了。夕食は17時から。豚汁とご飯はお代わり自由で珍しく2杯いただいた。生姜が効いた豚汁がおいしかった。
全体で70名くらいの宿泊だった。部屋は4人で一室。布団を敷いて荷物を横に置いて十分なスペースがあった。掛け布団は薄く、毛布は無かったのでフリースを着こんで寝た。昨夜は夜行バスで睡眠不足だったので、ここでしっかり休めてよかった。
2日目
今日は白馬岳の南西、山荘の目の前に圧倒的な存在感を示している旭岳に登ってから、朝日小屋に向かうことにした。朝食を頼まず、持参した食料を少しでも消費してザックの重量を下げたかったのだが、水道がまさかの凍結。昨夜のうちにポリタンに水を確保すべきだった。うかつだった。食堂のお湯を頂いて、パンなど食べたが、ザック重量をあまり減らせなかった。
山荘から下って、清水岳方面の進路をとり、旭岳を目指したが、「登山道はありません。立入には許可がいる」との立札が・・・。さらにもう少し先の古い黄色ペンキの旭岳の目印の場所から登れそうか確認したが、急なガレで小石など浮いており、下りが結構危険と感じて退散することにした。百高山なのだが、立ち入るのが不法行為になるのでは仕方ない。トライだけはしたので納得して山荘に戻った。途中、霜柱があったので昨夜は相当冷え込んだみたい。
山荘に戻ると、既に登山者は出発されていて、玄関は誰も居らずガランとしている。さあ、ここから本番。白馬岳から雪倉岳を経由して朝日小屋へ。今日の行動時間は短いので、明日のハードな行程に備えて体力温存してゆったり歩き、小屋で充分休養しよう。
白馬岳山頂は相変わらず西風が強い。ジャケットを着こんで昨日通った三国境へ。ここから雪倉岳に向かう。ルートはよく見えているのだが、誰も見えない。もっと、人気のあるルートだと思っていたのだがなんで誰も居ないの? 自分の出発時刻が遅いためなのか。ザレ場を下降し、手前にそびえる鉢ヶ岳を巻いて、雪倉岳へ。向こうから、精悍な若者がやってくる。親不知からやってきたそうだ。アヤメ平らから先はぬかるんでいるので注意とのアドバイスをしてくれた。ありがとう。
雪倉岳避難小屋(緊急時以外は使用不可)手前には緑泥岩だろうか、鮮やかな緑色の堆積岩が特徴的に見られる。他の場所にはこんなところはなく、もう少し登ってから見返しても、そこだけ灰緑色の地面になっている。不思議だ。
ここからの登りはゆったりとしていて楽しい。マイペースで登ると、先行する1名が見えてきた。時間帯から考えて朝日小屋行きだなあ。これで一安心。下から見えたピークからしばらく先に雪倉岳山頂があった。ご夫婦かな、朝日岳方面から登ってこられて、風下で休憩に入られた。ここからはカールを見ながら長い下降。延々と続く下降で足が疲労してきた。長いなあ。左前方の山の上に朝日小屋が見える。そこよりかなり下まで下降する。ああ、そんなに下がらないでくれ。途中で休まれている先行者に追いつき、「この下りは堪えますねえ」と話をする。お先に行かせていただいて、どこかで休憩することにした。
樹林帯に入り、最低鞍部から手前の山を左に巻きながら道が続く。途中、池塘のある湿原やツバメ岩のガレ場は楽しい。その先で朝日小屋への水平道と朝日岳へのルートに分岐する。朝日岳は明日に登るので水平道を選択。といっても水平は名前だけ。激しく上下を繰り返す。途中の湿原へのルートも変更されていて、以前より見える場所が少ないのかもしれない。それでも木道で通る湿原には癒される。水場は沢になっており、一つ目は枯れていたが、二つ目は十分な水量があり、クールダウンできた。その先の沢で休まれている先行者もう一名にも追いついて、小屋にはほぼ同時刻に着いた。
朝日小屋管理人の清水さんに、何時に出られたか聞かれた。
「7時でした」。
「私が予約の時に行っていた出発時刻と違いますね」
「はい申し訳ありません・・・旭岳に行っていたので出発が遅くなりました」
「明日は?」
「栂海山荘の予定でしたが、できれば白鳥小屋まで行きたいです」。
「そう言われる方が多いし、次の日が楽になるのでよくわかるんですけど、私の知る限り、10人中1,2人くらいしか行けてないですよ。無理して突っ込んでヘロヘロになって翌日の出発が遅くなるなら同じことですしねえ。」
・・・そんなに大変なのか・・・。ハードル高いなあ・・・。
「白馬山荘7時発でこの時刻に到着なら、遅くはないけど特別早くもないので、白鳥小屋まで行く条件として、栂海山荘に午前中に着いて休憩して、お昼も食べて元気になって、それで12時までに出発できるなら行ってもいいですよ。明日は少し雨が降るかもしれないけど、大したことない。それよりアップダウンがきついので。」
「わかりました。雨より別の問題が大きいのですね。栂海山荘でどうするか判断することにします」。
栂海山荘に明日、向かわれる方は私以外にソロの女性、男女4人パーティだけということであった。また、明日の宿泊は、台風接近でキャンセルが相次ぎ、予約表のほとんどがキャンセルを示す赤線が引かれていた。
談話室に行くと、ソロ3名の方がお話しされていて、仲間に入れてくれた。一人は親不知から登ってこられた男性、一人は私と同じ、栂海新道・親不知をめざす女性Yさん、結婚指輪が輝いていた。もう一人は私も泊まっていた白馬山荘から来られて、蓮華温泉に下られる女性。みんな楽しくて盛り上がって楽しく話をしていたら、皆さん揃ったので夕食の時刻を16:45から16:30に早めるとの連絡があった。
手作りの夕食はとてもおいしく、なるほど評価の高い山小屋であることを再認識した。
明日は4時出発予定で、早めに就寝した。ただ、食堂でスタッフが食事をされ、盛り上がっていた。傍受したところ、キャンセルが多く、明日の宿泊予定は4名とのこと。明日は荒れるかなあ。
3日目
就寝していた夜半には結構雨が降っていた。3時過ぎに起床して、片付けと準備をして1階に降りるとYさんも降りてきた。談話室で昨夕に購入した弁当代わりのます寿司を頂く。うまい!そうこうしているうちに、スタッフも起きてこられ、玄関周りに明かりがついた。管理人の清水さんと、談話室で話した愛知県の男性に小屋前で見送られて4時過ぎに出発。少し雨が残っているので雨具を着てヘッデンを点けて木道を行く。しばらくして、遅れて出発したYさんがすごいスピードで登ってくる。岐阜の山岳会に入っておられるだけあって、あっという間に追い越された。その後、小屋まで会うことはなかった。
沢山の木道を通り、1時間で朝日岳山頂。この付近で、朝日小屋付近でテン泊されていた女性ソロの方に追いつかれた。なんか、今朝は凄い女性とばかり会うなあ。今日は蓮華温泉に降りるが来月には栂海新道に行くらしい。栂海新道に行くことを話すと、「何もかも笑えますよ」と意味深なアドバイスをくれた。朝日岳東面にはまだ、雪渓が残っていた。下に見える平原まで下りる。もっと明るくて晴れていれば、きれいなんだろうなあ。雨は止んで雨具上着だけ脱ぐ。吹上げのコルからいよいよ栂海新道に入る。ここから親不知まで27km。事前調査は何度も目にした金属板を掘り貫いた標識から進む。いきなりの岩場を乗り超える。濡れた岩が滑り、バランスを崩しそうになり、今後のルートの大変さを思いやる。でも、その後は、照葉ノ池や周辺の池塘に癒される。
昨日、朝日小屋で話した男性によると、この辺りから熊さんが出没するらしい。ミズバショウの花も食べるそうで、ぬかるみにある熊さんの足跡の写真を見せてもらった。日本海手前の低山まで熊が出るそうで、煙硝入りの鉄砲を何発も鳴らして登ってきたそうだ。特に登山道を外して水場に行く道には居そうだと別の登山者が話していたそうだ。煙硝入り鉄砲も入手はしたが、かえって熊さんが興奮すると困るので今回は持ってこなかった。その代り、いつもは持たない携帯ラジオを点けて、熊よけの鈴を鳴らして進む。でも、熊鈴って気休めだとも言われる。いったい、何が本当に効果的なのだろうか。昨日、朝日小屋の清水さんに聞いてみたが、返事を頂けなかった。ますます??
木道を進むと、高低差はあるものの、眼下に見えるアヤメ平らが広がっている。ほんと、素晴らしい。その先には黒岩山が見える。そこを左の山並みに進むと聳えるサワガニ山、その先に台形状の犬ヶ岳が、さらに高く見える。まずはあそこまでか。まだまだ時間がかかりそうだなあ。池塘の木道が遠くまでよく見えるが姿が見えないYさんは今頃、どこまで進んでいるのかなあ。
木道は横に滑らないように工夫をされており、ぬかるみで泥の付いた登山靴でも滑らないが、木の繊維方向が進行方向に一致しているために前後にはよく滑る。ズルっと行きかけた。さらに一段下の黒岩平まで案外距離があった。ここには休憩できる板場が設けられており、のんびりするには良さそうだ。ここだけなら、何度も訪れたいところだ。
黒岩平の水場は池塘の周りの水流で、何度も通った。ここを抜けると黒岩山の登り。この辺りで立派なヤマカガシが二匹。思わず声が出た。中俣新道との分岐を左に折れて間もなく黒岩山山頂。この辺りから稜線を巻くことなく、ストレートにアップダウンする。これが栂海新道の名物だな。もっとも、ここの尾根は細く、トラバース道を設けるのは困難そうだし、長く使用できるルートは稜線上にならざるを得ない気がする。この辺りでもヘビに何匹化か遭遇。多くは道から草むらに逃げていく。サワガニ山からも何度もアップダウンを繰り返し、左右に切れ落ちたナイフリッジの岩場の通過もある。左右に山は無く、ロープはあるが強風の際にはかなり危険な個所である。
この手前でトレランの男女3名と出会った。小屋からの出発ではなく、なんと親不知から登ってきたそうだ。まだ、時刻は10時。ザックはすごく小さいが3人ともすごい笑顔で挨拶して軽快に登って行く。すごい人たちだと、本当に感心してしまう。
犬ヶ岳までは稜線伝いに大きくアップダウンするルートが見えている。こんなに下るのかと笑えてしまう。テン泊の女性が言っていた「笑える」とは、このことかもしれないな。
それでも、1つ1つ登って確実に栂海山荘に近づいている。台形状の犬ヶ岳山頂直前の稜線まで上がると多数の羽虫のお出迎えを受けた。ささっと、通り過ぎたかったが、そこにさわがに山岳会の小野健氏の鮮やかな写真の碑があった。電気化学工業の技師であった小野氏は仕事の傍ら、職場の仲間を誘って、登山道の無かった犬ヶ岳に道を作った。さらに朝日岳まで道を延ばして栂海新道を開通させた。「小野さん、ありがとう。これから続く日本海まで、どうかお守りください」。一礼して先を進んだ。
すぐ横の犬ヶ岳山頂から、東にある鮮やかな緑色の壁面の栂海山荘まで下る。11:30だ。朝日小屋の清水さんの目安をクリア。まだ、ヘロヘロでないし、白鳥小屋まで行くことを決めた。誰も居なくて物音もしない栂海山荘前のベンチで、ます寿司とミカンのシロップ漬けを食べる。元気になって11:50に出発。
予習した通り、ここからは劇下り。続いて登り、これの繰り返し。今日の核心部は予想通り、栂海山荘〜白鳥小屋であった。白鳥小屋まで4つの峰を登るが、実際はもっと細かな起伏があり、体力、筋力、気力を痛めつける。しかし、余力があり、時間的にもコースタイム通りであるので、焦らずマイペースを守ることに専念して登る。
途中の黄蓮の水場で空になったPETボトル2本に水を補給した。これで安心して白鳥小屋で過ごせる。ここで再び強い雨になり、木陰で少し待ったが、収まらないので雨具を着こんだ。しかし、ここからのルート、特に下駒ヶ岳への登りはロープの連続する急登の連続、なかなか厳しかった。私は途中、Yさんらしい足跡を見つけては、勇気をもらって登る。ここから一旦下って白鳥山まで200mの登り。地図をよく見ると4段の登りになっている。1つ1つクリアして、傾斜が緩くなると木々の間から白鳥小屋が見えてきた。ああ、ここまで来られた。明日は残り5時間で日本海だ! 非力なのに、よくがんばったなあ。自分を褒める。
小屋に近づくと、賑やかな人の声がする。先行していたYさんしかいないかと思ったが、親不知から登ってこられた東京都山岳会の方6名とYさんが2階で談笑されていた。Yさんが2階から降りてきて、2階に招いてくれた。13時半に到着したらしい。素晴らしいスピードだ。山岳会の方は親不知から登ってきて上を目指されたが、台風の接近もあり、ここで泊まって明日、下山するそうだ。しばらくすると、朝日小屋からの4名も到着した。朝日小屋から栂海新道を進んだ方はみんな、白鳥小屋まで頑張って到達したことになる。朝食(5時)を食べて6時出発だったそうだ。これまた早い。そのあと、親不知から1名が到着された。みんな、着替えたいが小屋内にはスペースがないので、男女かかわらず、着替える際は小屋の外のテラスに出た。その間、外には出ないようにした。内外が逆転した実にワイルドな着替えだ。
山岳会の方たち6名が2階で、朝日小屋からの6名と親不知からの方1名が1階で寝ることになった。これで小屋はほぼ満杯だ。ここは電話が不安定ながら通じるので、明日の帰宅に向けて親不知観光ホテルに電話して入浴と親不知駅までの送迎のセットを申し込んだ。
夕食のカップ麵を食べて、就寝。沢山、泊まっているからだろうか、#3のシュラフに入って、フリースも着ないで寝ても充分暖かった。
4日目
最終日、今日は日本海の親不知へ。早朝、先を急ぐYさんを見送り、お湯を沸かして暖かいコーヒーで体を目覚めさせた。外では山岳会の6名が出発の準備をされていた。トイレは小屋の南側、ここで亡くなられた村山氏の碑があり、その向こうに道がある。途中で黄色のプラチェーンがあり、使用する際はこれを道に渡して掛ける。その先のトイレは一人用の建物で傾いている。傾きを考慮してうまく使用しないと大変なことになる(想像にお任せ)。これもワイルド。
みんなで交代して小屋の屋上に上がって景色を堪能した。今日は風が強いが、薄日が差しており雨は無さそうだ。4人組の男性がドローンを飛ばそうとしたが、まだ、十分に明るくないためか、うまく発進できなかったようだ。
山岳会の6名から15分遅れで白鳥小屋を去った。先行者がいるので安心して、ラジオを点けないで降りる。やっぱり、静かな方が全ての自然な音に浸れていいなあ。多少のぬかるみや滑る石のルートもあるが比較的ゆったりした下りで昨日と比べれば快適だ。台風の影響で風になびく樹木の音が大きいが、樹林帯の中も道まではあまり風が入ってこなくてむし暑い。
シキ割の水場で6名に追いついた。ここでは十分な水が出ており、おいしかった。なお、昨日、採取した黄蓮の水場の水にアミノバイタルを入れておいたが、すでに味が変わっており、処分した。昨夜は比較的、暖かったことも影響したかな。一人の登山を楽しみたいので、例の6人から10分遅れで出発。シキ割の水場の先から金時坂。坂田峠までは330m、相当な下りの連続。これは堪えた。坂田峠でも休憩している先行の6名に再び追いついて休憩。今日は12時までに親不知観光ホテルに着けばよいので、しっかり休みをとる。坂田峠を過ぎれば、劇登り、劇下りはないらしい。
ここから尻高山に登るが、この辺りから海岸の港が見える。バイクのエンジン音も聞こえ、現実世界に呼び戻された感じ。少し寂しい。次に目指す二本松峠との間、急なハシゴを降りると舗装道路。ここでも例の6人が休んでいた。明るく風が吹いて気持ちよかったので、少し早いけど私も休憩。アスファルトの上で休んでいるとしたから自動車がやってきた。みんな、急いでよける。ますます現実世界に戻された。そのうち、白鳥小屋に最後までいて片づけをしてくれた4人組に追いつかれた。彼らはそのまま、先行した。若いって素晴らしい。その後6人が出発し、間をあけて、最後に私が出発した。
次の二本松峠は、日本海が荒れた際に使用された古道で廃れていたのだが、栂海新道ができたことで、再び日の目を見ることになったそうだ。でも、風通しの悪いくらい峠なのでそのままスルー。先に休んでおいてよかった。この後も入道山など、いくつもピークは越えるが大したことはない。が、山道の中央に立派な熊さんの糞。しかも、新しそうだ。Yさんは遭遇しなかっただろうか。そのあとの産物かも知れない。熊さんは近くに居るかもしれないので再びラジオを点けて、休まずに急ぐ。先行の6人もスピードアップしたのか、追いつけない。登山口が近いことを示す鉄塔に着いても気を抜けず、急ぐ。再び舗装道路に出て、その先の山道に入るが、木立の先に青い海が見える。けたたましいトラックのエンジン音が大きくなってきた。国道8号線とホテルが見えてきた。もう安心だと思うとおもに、感極まってこみ上げてきた。単なる憧れでしかなかった栂海新道を白馬岳から踏破できた。よく頑張れたなあ。登山口に11時過ぎに登山口に到達。振り返って深々と一礼した。
ここから8号線を渡り、海岸まで長い石段を降りる。距離400m、高度差80mらしい。コンクリートの硬い階段。これがきつかった。でも、せっかく山から下りてきたのだからザックを背負ったまま降りる。また、登り返さないといけないけどね。もう、気持ちが緩んでヘロヘロだ。海岸には先行した4人組が海に入って楽しんでいるし、山岳会6名は道具を川の水で洗ったりしている。台風が接近しているので荒れて白波だが、少しだけ海水に足を入れてフィニッシュ。
海を十分に楽しんで、ポールを頼りに、ヨチヨチと80m登り返した。丁度、親不知観光ホテル駐車場から4人組が自動車で帰るところだった。手を振ってあいさつした。東京へ帰るんだね。お疲れ様。気を付けて!
ホテルのお風呂も例の6人が先行。ひげも剃ってすっきり。雨が降り始めた親不知駅まで送ってもらって、予定より早い新幹線で帰ることが出来ました。
手術跡の足指は腫れ上がっているし、今回は両小指が靴に当って爪が黒ずんでしまっている。ずいぶん頑張ったのが、これらの症状でよくわかる。ハードであったが、思い出深い山行になった。行く前は、もうコリゴリって気分になるかと思っていたが、すでに懐かしくなって、「もう1回くらい行ってもいいかなあ」って感じだ。行って本当によかった。
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