六甲山魚屋道/劔へ向けて〜「元」がん患者雲を行く〜
- GPS
- --:--
- 距離
- 13.3km
- 登り
- 1,067m
- 下り
- 728m
コースタイム
天候 | 晴れ後曇り一時雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
|
コース状況/ 危険箇所等 |
特に無いが、最高峰からの下り魚屋道(住吉道)で私を抜こうと走っていた女性が見事に浮き石にのり派手に転んだ。かすり傷で済んだようだが、平坦な山道でも石は浮いており、足下注意。 |
写真
感想
「元」がん患者雲を行くその4-トレーニング編-
「六甲山に行こう」 そのような名の雑誌を作るお手伝いをした事がある。いつの頃だろう。
その頃、金剛山や六甲山に集中的に登った。すべて仕事である。今日、久々に遊びで登った。が、実は遊びとは言えず、トレーニングなのだ。翌々日には越中の険しい峰に登るべく旅立つため、最終調整としてここを選んだ。
できるだけ経費を抑えて長駆できるようルートを探したが、全山縦走等して足を痛めたら本末転倒。そこそこ歩きやすく、しかし標高差を稼げるように決めたのが芦屋から有馬の道である。
ここなら海抜0m近くから最高峰の931mまで。下りは有馬へと足を伸ばせば、歩行距離も時間も一日行程となり、劔への足がかりとしては適しているだろう。
本来は前日登る予定が、朝起きてみたら激しい雨に六甲が濡れているのを自宅から目の当たりにし、順延していた。
明けて9月2日。快晴ではないが、まずまずである。六甲山系はすべて姿を現している。高まる期待と、長丁場の登りにいくばくかの大儀さを抱えながら芦屋川の駅に降り立った。
当初は劔の岩場の足慣らしとして、ロックガーデンでトラバースの訓練などしようかと思っていた。しかし、高座の滝に着いてあまりの人出に躊躇した。それと、ロックガーデンの岩場は若かりし頃幾度かクライミングの練習に訪れた事があるのだが、高座の滝より西に向かうルートは未踏である。そちらへ向かう人は皆無に近い。
それらはすべて言い訳かもしれない。実のところは、暑いのである。九月に入ったとて、一向に衰える事をしらない情熱の太陽。駅からの30分で、一日分の汗が出た感がある。
よし、どう見ても日陰の無いロックガーデンルートより、取り付きは急だが樹林帯の中を行き、快適と聞いている魚屋(ととや)道に行ってみよう。即断した。
地形図通り、急登から始まった。いきなりの胸突八丁である。時々現れる小さな岩場に、劔を想って身体をこじ上げる。昔からそうだったが、階段状の登り等はつらいものであるけれど、岩場となると緊張感も手伝って不思議としんどさを感じさせない。しかし、本番では左右が切れ落ち、知らぬ間に足が麻痺して上がらなくなっていようものなら、帰ってくる事はできない。
程なくして魚屋道に合流した。なるほど、街道と見違えんばかりの堂々とした山道だ。いにしえの商人達が、ここを歩き魚崎浜に上がった魚を有馬の歓楽街まで運んだと言うのも頷ける。これではあまり危険地帯の訓練にはならないが、確実に標高は稼いで行ける。
突然現れる門扉に違和感を覚えつつ先人に従って通り抜けると、アスファルトに出くわした。見ると、無音でカートが滑り出した。ここはゴルフ場の一画なのだ。私はゴルフをまったく知らないのでなにがどうなのかさっぱり不明だが、小さな電動車に数名の大人が乗り合わせていた。あれはスポーツなのか?との思いが頭をかすめたが、大きなお世話なので轢かれないようにさっさとその場を去った。他人の趣味にケチを付けている余裕は無い。暑いから。
やがて、雨ヶ峠に行き着いた。多くの善人で賑わっている。風吹岩から急に増えた人たちの流れが、ここに集結してるようだ。しかし小休止後、東おたふく山へと歩を進めると、後に続く人は皆無であった。昔の記憶では、ここからの数百mが今回の白眉だと思ったのだが。
丁度曇ってくれたので風の心地よさだけを味わったが、朝の日差しに皆、躊躇していたのかもしれない。まるで森林限界を抜けたかのように遮るもののない草原は、神戸市にいることを忘れさせてくれた。
東おたふく山の頂上は、驚く程感慨が少ない。どこが最高点かもわからないほどフラットな地形に、西へ下る道標に表記が無ければ気付かずに通過するだろう。
ここから、せっかく登った標高をまた下げなくてはならない。このことも、不人気の一因なのかもしれない。しかし、なんにせよ静かな山を味わえた。
下りきったところが土樋割峠である。ここは、奥池住宅地方面から伸びるアスファルトの車道になっている。ここで小休止し、行く山を定める。すでに魚屋道を外れて横道にそれているのだから、次もメーンではなく鳥居茶屋方面に決めた。またしても、誰も付いてこない。
静寂。鳥のさえずり、樹々のざわめき。しかし、それもつかの間であった。蛇谷北山なるマイナーなピークに積んであるケルンにその意味をいぶかしがりながら下って行くと、爆音が轟いて来た。そう、縦走路が近い事を知らせる嬉しい爆音だ。いや、やはり嬉しくない。大型バイクやスポーツカーが多数を占めるのか、マフラーがちぎれんばかりの大音響でコーナーをすり抜けているのだろう。
縦走路に出るまでの一本は、心臓が飛び出さんばかりのつらさがあった。まるで富士山の九合五勺よりの胸突八丁を彷彿させる。そうか、ここは劔ではなく、富士山のトレーニングに適しているのか。
まあ良い。あえぎながら登りきると、観音様が出迎えてくれた。白山姫観音。なんと美しい字面だろう。昨日、自宅前に架かった虹を撮影して、「虹を渡って姫に逢いに行きましょうか」と日記に綴ったばかりである。このような形で実現するとは。やはり、虹は幸福をとどける架け橋なのだろう。これは、劔が終わった身体を休めた後、白山に向かえとのお告げであろう。
しばらく車道をかすめた後、最高峰に登頂した。あまりにも車道から近いため、登頂の雰囲気は皆無に近いが、苦しかった登りを終えた喜びに浸る。しかし、雲に乾杯を済ませたあたりからその雲行きが怪しくなってきた。
下りの予定は、昔沢登りのトレーニングに通った百聞滝や七曲滝を見物しに行く算段であったが、どうもそれも叶いそうもない。見る間に風雲急を告げ、遠く雷鳴も聞こえている。善は急げ。君子危うきに近寄らず。素早くザックを仕舞い、脱兎のごとく有馬魚屋道に飛び出した。
その頃より、サングラスでは道の様子が判らない程暗くなった。眼鏡をかけ替え、慎重に下る。5分程したとき、大粒の雨が降り出し、雷鳴一発。しかし、その雨はすぐに止んだ。
実に下りやすい、ほとんど段差もない道を足早に有馬へと駆け下り、車道に出た途端に今度は本降りになった。ちょうど鎮守の森の下だったので、雨宿りし、傘を出す。山頂付近では相変わらず雷様の機嫌が悪いようだ。
旅情をそそる坂道を下ったところに、神戸市立の金の湯があった。今日の汗をしっかりと流し、外に出た時には青空が顔を覗かせていた。
山では濡れず、風呂上がりにも濡れず。しかし車道では夕立の洗礼を浴びた。これは、幸運なのだろうか、不運なのだろうか。微妙。
今日のトレーニングは主に心肺能力の順応であって、岩場となればまた別物である。昔取った杵柄、などと思わずに謙虚に劔岳に対峙し、自らの限界を感じたらすぐさま下山する所存である。
あと二回寝たら、雷鳥平の極楽が待っている。第二の古里、劔立山よ。その大らかな、そして厳しい中にも優しさを垣間見せていたあの頃のように、オレを包んでくれ。
いざいかん、劔岳へ。
今回はこれにて。
この日の12時頃、北山山頂で昼飯を食べていた夫婦者です。
どこかですれ違っていたかもしれませんね〜
劔岳に行かれるのですね?
行ってらっしゃい
farineさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
ひょっとして、私が北山に登ったとき出発の片付けをしていらっしゃった方ですか?急がせてすみませんでした。
あの後、最高峰にてビールを飲んでいたら雷の危惧が生じたので、慌てておりました。
ヤマレコの方とニアミスしたのは初めてです(^^)。判っていたら、もう少し情報交換したのですが、またお会いしたらよろしくお願いします。
明日から行ってきます。無理せず頑張ってきます。
こんばんは
今年の2大目標の一つである「海抜0mからの六甲越え
」のルートは超メジャーなルートと決めていますが、マイナールートでの六甲越えもオツなものですね
蛇谷北山なんてマイナーなのにケルンがあったりして、そういった発見も楽しそうです。
norisukeさん、こんばんは。コメントありがとうございます。
超メジャーとなれば、魚崎浜で釣りをしてクーラーバッグに納め、魚屋道を上り下りして有馬の高級旅館に持って行き行商する、では?
あ、それはメジャーじゃなくてマニアックか(^^;)。
東おたふく山への草原を昔歩いた時は、人気のコースだった記憶があるのですが昨日はさっぱりひとけがありませんでした。ご夫婦っぽい二人連れとすれ違ったのみ・・・。
やはり暑い時期の低山草原は避けられるのですかね。
すすきの保存も神戸市によりされていますので、秋が深まれば風流なハイキングができそうですよ。国立公園内ですので勝手な行為は御法度ですが、あそこでテントを張って夜景を見下ろし、杯に映った月を眺めながら酒を呑むと長生きできそうです。
日記を読ませていただきましたが、大先輩のアルピニストであらせられますね〜
もう少しお話して、いろいろ教えていただきたかったです。
私どもは日帰りの山歩きしかしたことがありませんので、
六甲山専属のトレッカーという次第です。
また出会えることを祈っております。
大先輩だなんて。単に長く登ってるだけです。
いま、立山雷鳥平のテン場です。少し冷えてきました。
本日、絶好の登山日和の下、剱岳に登頂できました。皆様のおかげさまです。
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