鳥海山 鉾立から矢島口
- GPS
- 32:00
- 距離
- 11.5km
- 登り
- 1,346m
- 下り
- 1,406m
コースタイム
9月2日 5:10御浜小屋―8:10大物忌神社―9:03新山―10:10七高山―12:00七つ釜滝―13:27矢島口
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2012年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
飛行機
|
コース状況/ 危険箇所等 |
鉾立から御浜小屋まで危険箇所はありません。七高山頂あたりは岩がゴロゴロしています。矢島口までの下りはゆっくり下れば問題はありません。 |
写真
感想
2012年9月1日、2時25分、鉾立の登山口に入り、階段を登る。10分程登って展望台に寄る。U字谷の奈曾渓谷の切り立った壁、その向こう、先程くっきりと見えていた鳥海山山頂には雲がかかり、山頂の天気は刻々と変化しているが判る。少し登ると、「白糸の滝」の柱があるが、この所の日照り続きで、滝は干上がってしまっている。登山道の脇にはアザミが沢山咲いているが、これはチョウカイアザミではなくウゴ(羽後)アザミ。賽の河原でひと休み。笹原がうねって広がり、遠く、丘の上に御浜小屋が見える。石畳みの緩やかな登山道を登って御浜小屋に到着。小屋の前には鳥居が立ち、小屋の中には神社が祀ってある。鳥海山の山頂には出羽國一之宮鳥海山大物忌神社の本社があるが、そこに参拝する人達のための参籠所で、宿泊所となっている。小屋番に指定された場所で身体と顔を拭き、下着を替え、さっぱりとする。1本700円の缶ビールを持って外に出る。広大な緑の裾を広げる鳥海山、溶岩流の跡が筋状に残り、トラ刈り模様。カルデラ湖の「鳥ノ海」、こんもりとした火口丘の「鍋森」と、あちこちに噴火の跡がちらばっている。鳥ノ海は、日照り続きなのにちゃんと水を湛えている。おそらくは鳥海山の伏流水が流れ込んでいるのであろう。鳥海山頂には今、雲が掛っているかと思えば、次に見た時には雲は流れ、外輪山に囲まれた岩々の新山が、荒々しい姿を見せている。遠く月山は雲の中。ウゴアザミよりひときわ大きいアザミ、ボッテリとした頭を垂れ、ひと目でチョウカイアザミと判る。夕食は寝場所と同じ部屋、使い捨て食器に盛られたご飯、味噌汁、漬けもの等、精進料理といったところ。外に出て、日本海に夕陽が沈むのを眺める。海に浮かぶ飛島のシルエット、水平線に沈んでいく真っ赤な太陽、こんな光景を見るのは始めての事。小屋番に聞くと、ここの標高は1、600mとの事。余りに広すぎて、そんなに高い場所にいる感覚は無い。海岸線に街の明かりがきらめき始め、男鹿半島が暗闇に沈むころ、早々と床に入る。風が吹き捲っている音を聞きながら、ウトウトと夜を明かす。
翌朝4時半に起床。外に出るとどうやら晴れ模様、空気が冷たい。帽子を冠ったようにすっぽりと雲に覆われた鳥海山頂、見ているうちに変化する。雲の中から新山が頭を出し、やがて外輪山も姿を現す。小屋を発ち、緩やかな斜面を登る。扇子森で振り返ると、日本海の水平線は雲に隠れている。そして、その雲に、鳥海山の半分だけではあるが、大きな影が写し出される。ヤッター、影鳥海だ。影は徐々にコントラストを強め、5時31分、鳥海山の日本海側の斜面から太陽が顔を出す。扇子森から一旦下って、「御田ヶ原」。石畳の「八丁坂」を登ると、そこは「七五三掛(しめかけ)」、ひと休み。快晴であるが、頂上だけまたまたすっぽり雲を冠っている。外輪山を少し登ると、外輪と千蛇谷の分岐。梯子に掴まり、雪渓の残る千蛇谷に下る。雪渓を渡り、新山の裾、外輪を仰ぎ見ながら千蛇谷を登る。ウゴアザミが群れ咲いている。御浜小屋から見上げた時、外輪の中に雲が沈んでいたが、ここはまさにその外輪の中。ガスが漂い、風も強まる。黙々と高度を上げ、外輪からの道を合わせると、ガスの中にボ〜ッと鳥居が現れ、石積みの上に建物が見える。鳥海山大物忌神社に到着。ザックを下ろして、きっちりと組まれた石積にの囲いの中に入ると、な、なんと、チョウカイフスマが咲いているではないか。時期的に遅いと諦めていたが、よくぞ残っていて呉れた。カシャ、カシャ、かしゃ。鳥海山大物忌神社本社に参拝。ここから新山山頂までは、溶岩ドームを登る事になる。溶岩と云う言葉から想像される、所謂軽石状のものではない。身の丈ほどある大石が積み重なった斜面を、石に掴まり、へつりながら登る。この火山岩は、流紋岩かデイサイトか、いずれにせよ、地球の中から吹き上げられたシリカ含有量の高い石である。岩山が真っ二つに割れた間をくぐり降り、再び大石に掴まりながら登って山頂直下に至る。狭い山頂は登る人と下る人で大混雑、しばし渋滞。しばし待ってからわたしも登頂。周囲の景色を眺める間もなく、記念写真を撮っただけで次の人に山頂を譲る。いずれにせよ、このガスでは山頂でゆっくりする理由は無い。七高山に向けて新山を下る。大石が重なった中の空間がトンネル状、そこをくぐり抜ける。七高山は外輪山の最高峰。一旦下って雪渓を渡り、外輪山に登り返す。外輪山に登り着き、見上げると烏帽子の形をした七高山の頂に、白い柱が一本すくっと立っている。大石重なる新山とは違って、七高山はゴツゴツした軽石様溶岩の塊り。頂上に登ると、そこは案外広く、柱だけではなく色んなものが立っている。ガスは流れ、向かいに石に積み重なった新山が現れる。およそ2500年前、鳥海山の山頂部が大崩壊を起し、その抜けた跡が馬蹄形カルデラとなっている。1801年の噴火で出来た溶岩ドームである新山と、外輪の間、馬蹄形となった部分の向こうに、海岸線と日本海が広がり、水平線が霞んでいる。月山から見た鳥海山は、日本海へゆったりと裾を広げた優美な姿であったが、ここは火山、遠くから見ただけでは計り知れないものがある。七高山からは矢島口ルートに向かう。外輪を辿る康新道と、谷筋を下るルートの2本があるが、前者は崩壊して危険、と云うことで谷筋ルートを辿る。谷筋に入ると風は弱まり、ウインドブレーカーを脱ぐ。いつからあるのだろう、登山道には扁平な石が組まれ、階段状に整備されている。チョウカイアザミ、すでに終わったもの、今が盛りのもの、まだツボミのものと色々。ウゴアザミの大群落。途中、雪渓を渡り、1時間半程下って、康新道と合流。すぐに「七ツ釜滝」、その名の通り、お釜のような滝壺が段々に並んでいる。「康ケルン」、「七ツ釜避難小屋」を経て10分程、段差のある登山道を下り、「御田」に降り着く。湿原が広がり、今までとは全く違った風景が広がっている。しばし木道歩き、それも終わり、石ゴロゴロの下山が続く。「賽の河原」を抜け、1時間程で広々とした竜ヶ原湿原に到着。木道を歩いて袜川ヒュッテに到着した。
チョウカイアザミ、チョウカイフスマ、影鳥海と、全部見る事が出来たが、それよりも、大きな鳥海山をたっぷり味わう事が出来たのが何よりであった。
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