【白山】南白山&焼滑(白水湖右岸尾根から)
- GPS
- --:--
- 距離
- 33.3km
- 登り
- 2,177m
- 下り
- 2,177m
コースタイム
- 山行
- 15:20
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 15:40
天候 | 雪のち曇り,時々晴れ間 |
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過去天気図(気象庁) | 2020年03月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
※ 南白山の三角点「大峠」とその東隣の三角点「焼滑」について,点名の読み方や測量官の初登?ルートに関するよもやまを「感想」に追記(2020.5.4) (白水湖右岸尾根取りつきまでのアプローチ) ・岐阜県道451号(白山公園線)からアワラ谷右岸林道に入り,大白川にかかる橋を渡って700mほど進んだところでアワラ谷に降りる林道支線が分岐するのでそちらへ進み,アワラ谷を渡る橋(大白川との出合の100mほど上流に架かっている)を渡ると,今回登路とした白水湖右岸尾根の取り付き付近に出ることができます。アワラ谷の橋は地図には記載されていませんが,航空写真で確認可能です。 (ルート状況) ・白水湖右岸尾根は,踏み跡はなく基本的に藪尾根です。尾根末端の適当な斜面から取りつきますが,なかなかの急傾斜で,灌木をつかんで強引に這い上がる感じになります。尾根に乗ってからも始めはかなり傾斜が強く両側が切れ落ちているため,スリップ注意(特に下山時)。尾根が広くなってからは,初めは藪っぽいですが,雪さえつながれば快適な雪尾根歩きが楽しめます(今回は標高1200mくらいで雪がつながった。)。尾根末端の急斜面さえクリアすれば,南白山まで特に難しいところはありません。 |
写真
装備
備考 | ・まだ雪が十分締まっておらずガボるため,スノーシュー使用(ワカンでも十分かもしれない)。 ・アイゼン,ピッケルは念のため携行しましたが,不要でした。 |
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感想
南白山(みなみはくさん)は,別山の東にある2168.7m三角点(点名「大峠」)のことで,白山エリアに存在する名前が付いた山の中ではかなりマイナーな部類に入るピークだと思う。今回の山行は,南白山に単品で登りたいというよりは(もちろん,それもあるのだが),白水湖の右岸尾根と,別山東尾根を歩いてみたいという関心から出たものだった。特に,白水湖の右岸尾根は,人の気配を全く感じさせない立地に加えて,長大で緩やかに波打つような尾根のところどころに池の記載があり,どんな尾根なのか前々から気になっていた。
白水湖右岸尾根は,予想通り静かで素晴らしい逍遥が楽しめる尾根だったが,予想以上だったのはひたすら続くオオシラビソの深く美しい森だった。また,以前から地形図を眺めるたびに気になっていた尾根の中ほどにある2つの池も,深い森の中にぽっかりと現れる不思議な丸い雪原を形作っていて,今にも山の神様が目の前を横切りそうな,神秘的な空間であった。雪が解けて木々が芽吹き,これらの池が水を湛える頃には,どんな風景が広がっているのだろう。恐らく訪れる人もいないだろうその静かな池畔に思いを巡らせた。
また,南白山のある別山東尾根は当然のごとく眺望絶佳で,別山〜御前峰にかけての稜線の大パノラマは,この稜線からでないと味わえないものだと思う。黒い岩をむき出しにし,幾筋もの雪稜を逆落としにした大屏風の迫力ある姿を間近に眺めることができるのも高ポイントである。
静かな稜線をぽくぽく歩き,初めて見る角度からの素晴らしい眺望にも囲まれて,心に残る一日だった。
※ 新型コロナウイルスのこともあるので,行き帰りは極力車から降りずに,寄り道せずに帰りました。今のところ地元では外出自粛までは出ていませんが,十分気を付けないといけませんね。
【後日追記(2020.5.4) 〜三角点「大峠」と「焼滑」について〜】
(南白山の三角点「大峠」を設置した測量官の辿ったルート)
南白山の三角点「大峠」について,この三角点を設置した陸地測量部(当時)の測量官は一体どんなルートを辿ってこの人跡まれなピークに到達したのか興味が湧いたため,国土地理院の点の記を閲覧してみました。
それによると,明治39年8月にこの三角点を設置した測量官は,市ノ瀬から別山道(現在のチブリ尾根ではなく後述の吹向尾根。当時は吹向尾根が市ノ瀬・別山間のメインルートだった)を登って当時別山平にあった別山室堂に至り、そこから「四海波の谷」(別山の別名が四海波岳。四海波谷は地理的に考えて尾上郷川を指すと思われる)を下り,別山の下を廻って別山東尾根に登り返し,このピークに至ったようです。
凄まじいルート取りですが,特に驚くのが,「四海波の谷」(尾上郷川?)を下った,というのを文字通り信じれば,カラスノ谷を下降したことになるということ。カラスノ谷は昨年9月に遡行しましたが,険しい連瀑帯が続くV字谷で,下降は容易ではないと思われるのですが…。
ただ,当時は尾上郷川を遡って三ノ峰付近に乗り上げ,別山平のすぐ南の稜線上にあった「追分」から現在は廃道となっている吹向尾根(石徹白道の西側,別山谷と岩屋俣谷に挟まれた三角点1881.5mのある尾根。この尾根もいつか探訪してみたい…)を下って市ノ瀬に至る間道があったそうなので,その道を辿ったのかもしれませんが。ただし,「別山室堂から谷に下降した」という記述とは矛盾します。
もしくは,点の記の「別山の下を迂回して(別山下ヲ廻リテ)」という言葉を文字通りに信じるなら,尾上郷川の源頭部(つまり,大平壁の真下)を真東にトラバースして(もしくは枝谷をつないで)別山東尾根に乗り上げたか…。確かにあの辺りは笹原で歩けそうにも見えます。それにしても奇想天外なルート取りであることに変わりはないですが。
(三角点「焼滑」の読みは「ヤケゾリ」)
ついでに,今回通過した三角点2082.7m「焼滑」についても点の記を閲覧してみました。三角点を設置した測量官のルートとしては,まず三角点「大峠」(南白山)まで上記と同じルートを通り,そこから別山東尾根を正直に東進して当該ピークに至ったようです(明治39年8月)。藪漕ぎはさぞ猛烈だったろうと思われますが,この測量官は淡々とした人だったようで,そうした苦難を垣間見せる記述は見当たりません。普通,こういう場合は「道険阻ナリ」とか「丈余ノ笹薮ヲ分テ…」とか道中の苦労をアピールする文言があることが多いのですが…。
しかし点の記に記載されていた事実で驚いたのは,「焼滑」の読みが「ヤケゾリ」だということ(点の記の字が若干不鮮明で「ヤケヅリ」に見えなくもないですが,当面「ヤケゾリ」説を取らせていただきます)。恥ずかしながら「滑」は「ナメ」と読むかと思い込んでいました。沢登りのやりすぎかもしれません。しかし興味深いのが,「ヤケゾリ」はおそらく焼畑に関係する地名ではないかということです(「ソリ」は焼畑の休耕地を指す全国的に見られる地名。オオソリやソリタなど。そもそも「ヤケ(焼)」自体が焼畑を連想させる)。白川郷周辺は平地が少なく稲作に適さないため,焼畑が盛んな土地柄だったようです。さすがにこんな奥地で焼畑をやっていたかどうかとなると少し疑問ですが,もっと下のほうの山腹の出作り小屋で焼畑をやっていて,その奥山ということでこの名前で呼んだとも考えられます。白峰村の民俗誌で尾上郷川のサブ谷まで出向いてワサビを育てていたという人の話を読んだこともありますし,さきほどの尾上郷川沿いに市ノ瀬に越える道の話につけても,秘境のように思えるこの山域も,昔の人は生活の場として結構歩き回っていたのかも知れません。
※ ちなみに、日本山名事典では焼滑の読みは「やきすべり」となっている…出典は何なんだろう(^^;
(それでは,三角点「大峠」は何と読むか)
一方,南白山の三角点「大峠」については,点の記に読み方を示唆する記述は見当たりません。ごく普通の読み方をすれば「おおとうげ」なので,当たり前すぎて書かなかった,とも考えられますが,この「大峠」という点名にも個人的にひっかかるものを感じます。峠(とうげ)というからにはもちろん峠道がなければならないと思うのですが,別山東尾根の最も奥深いあの位置に果たして峠道が通じていたか,ということです。あの位置を別山東尾根をまたいで南北に越えたとしても,ほとんど交通上の意義がないようにも思えます。そう考えると,とても人が近づきそうにない場所にあるこの三角点が「大峠」と名付けられていることが,少し不思議に思えてきます。
これは完全に憶測ですが,「大峠」は「おおとうげ」ではなく,「おおたわ」又は「おおだわ」と読むのかもしれない,と想像したりしています。「峠」という字は「たわ」とも読みますし(「垰」「乢」という字もありますが,「峠」も「たわ」と読みます),白山麓では尾根上のへこんだところ(鞍部,つまり峠状の地形)を「ダワ」「ダルミ」と呼んでいたそうです(「白山麓焼畑出作り民の山地語彙」橘礼吉・山口一男,2000)。南白山,つまり三角点「大峠」のある別山東尾根は,なだらかなピークと鞍部がまさに大きくたわんだように連続する地形で,その特徴から地元民があの辺りを漠然と「オオダワ」と呼んでいたのを,測量官が漢字を当てて「大峠」としたのかも知れません。つまり,人が行き来する「峠(とうげ)」としての機能ではなく,地形的な特徴(タワ,ダワ)から付けられた俚称に由来しているのではないか,ということです。
「オオダワ」という山名といえば,奥美濃の土蔵岳の隣にあるピークである「大ダワ」が思い浮かびます。あのピークも,なだらかなピークと鞍部が連続する稜線上にあるたおやかなピークで,南白山にそっくりです。
もっとも,肝心の点の記に読み方のヒントになる記載がない以上,上記は憶測の域を出ませんし,「焼滑」の読み方の項で書いたように,昔の人は現代人が思う以上にこの山域を歩き回っていて,「大峠」も本当に「峠(とうげ)」として人が行き来する機能を果たしていたのかもしれません。真相は藪の中ですが,白山の中でも最も隔絶されたエリアの一つと思われる別山東尾根の最奥部に,「大峠」というある意味場違いな名前の三角点が設置されていることは,この山域の2万5千図を眺めるときに,様々な想像を惹起して興味深いものがあります。
コメント
この記録に関連する登山ルート
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こんにちは たまたま記録を発見しました。
このコース取りでワンディは価値ありますね。7月の白水湖から行った時は随分難儀しましたから、是非このコースでスキーで挑戦してみたいと思いました。
はじめまして。YSHR様の美しいルート取りとスケールの壮大な山行の数々、いつも勉強させていただいております。
私も山スキーは好きなのですが、それほど上手くないので、こういうアップダウンの多いルートになるとどうしてもスノーシューに逃げてしまいます(^^; でも、ルート取りを工夫すれば確かに素晴らしい展望スキーとツリーランが楽しめそうな尾根でした。別山〜大屏風方面に周回してみても面白いかも知れませんね(かなり長大なルートになってしまいますが)。
コメントをいただき、ありがとうございました!
今晩は、2082.7焼滑には別山東尾根を見る度に行ってみたいとずっと思っていましたが、もう行けるような年齢ではなくなり、今回の素晴らしい記録を見せていただいて地図と並行してワクワクしながら楽しませてもらいました。南白山は雪の多い年だったかな、5月初旬に別山からピストンしたことがあります。手前の2163が岩峰で雪の付き方次第では厳しく、私達は難なく通過しましたが、友人が行った時はハイハイして通過したとか。日照からずっとつないでみたいとも思いましたっけ。夢を見せていただいてありがとうございました。
syounenk様、こんにちは。別山〜南白山間を歩かれたことがあるんですね。羨ましい限りです。南白山の山頂から別山方向を眺めて、綺麗な稜線だなと思いました。私も是非辿ってみたいと思っています。2163の岩峰には気をつけますね。
別山東尾根のトレースは、私も是非いつかやってみたいと思っています。本当に長大でしかも孤立していて、地図で眺めているとわくわくするような稜線ですよね。コメントをいただき、ありがとうございました!
秋に別山から南白山まで尾根どおしで歩きましたけど、南白山に近づけば近づく程、藪が濃くなっていきます。もし行かれるなら時間のマージンを長めにとっておかれることを強くオススメします
情報ありがとうございます!無雪期に南白山まで歩かれるとは、すごいですね。確かに別山山頂からこの尾根を見ると、一見、笹原で割と歩けそうにも見えますが、問題はその先、ということですね。
別山東尾根の「無雪期」縦走(日照岳〜別山の通し)、いつかやってみたいことの一つです。
それはチャレンジングですね。せやけど無尽蔵の体力を誇る蛭ワンダラーさんならダイジョブではないかと
3日間くらい(藪の状態によっては、もっと?)かかるかもしれません。もちろん、どっちかというと先に積雪期をやりたいですが(^^;
誰かトライしてたと思います。ワンゲルだったか、なんか若い人たちだったような。水汲みは降りてもいい(登り返すの大変ですけど)ってことにするなら、なんとかなりそうな気もしますけど。藪漕ぎ鬱になりそうですw
僕自身も残雪期の登山に興味があり、今まで何度か低山には登ったのですが、いつか焼滑、南白山までソロで往復してみたいと考えています。この記事を見させて頂いてさらにこのコースを登りたいという意欲が湧いて来ました。
道中危険な箇所や気をつけなければならない箇所というのはありましたでしょうか?
はじめまして!コメントいただきありがとうございます。
このルートは,基本的に穏やかな尾根が続くので,危険な箇所は特にないのですが,尾根の取り付きが結構急で,初めは藪や木の根をつかんでがむしゃらに登る感じになるので,そこだけちょっと大変です。それから,基本ヤブ尾根なので,特に尾根の下部で雪が切れている場合は,下山時にルートミスしやすくなるので,慎重な読図が必要になると思います。
それから,私がこの尾根を辿った年は雪が少なかったので問題になりませんでしたが,今年のように雪が多い年は,この尾根にアプローチするまでの道路(平瀬からの白山公園線)に雪崩の片斜面がいくつもできて危険な状態になっている可能性があるので,他の方の記録などを参照されて,状況を確かめられたほうが良いと思います。
あとは天気さえよければ(ガスっていると稜線に出てからホワイトアウトでちょっと大変だと思います),素晴らしい山行ができると思いますよ。良い山行をお祈りしています!
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