夜叉ヶ池〜三周ヶ岳☆雨上がりのニッコウキスゲの稜線に
- GPS
- 06:11
- 距離
- 8.6km
- 登り
- 827m
- 下り
- 825m
コースタイム
天候 | 曇り時々雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年06月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
写真
感想
しばらく前は日曜日は一日中、雨の予報だったのだが、日が近づくにつれ午後からは晴天の予報となる。前日の夜はかなりの強雨が降っており、激しい雨音で目が覚めるほどである。天気予報通り期待して夜叉ヶ池に出かけることにする。
ニッコウキスゲの咲く時期に訪れたいと思っていたのだが、例年、この時期は仕事による出張でほとんど関西にいないことが多い。それが今年はコロナ禍のせいで2月以降、全ての出張がキャンセルとなってしまっている。
琵琶湖の湖西を運転していても果たして「本当に天気が良くなるの」と家内が訝るほど、篠つくような雨が降り続いている。長い八草トンネルを越えて、池の又林道に入るとようやく雨が上がる。
林道に入りかけたところで先行する三重ナンバーの車が道を譲って下さるが、行く先は同じだろう。我々の車のすぐ後ろをついて来られる。林道は細い道がクネクネと続いてゆく。離合はかなりの困難が予想されるが幸い、この時間は対向の車はないだろう。
夜叉ヶ池登山口の広い駐車場に到着したのは9時前であったが、3台の車があるばかりだった。流石にこの悪天では登山を見合わせる方も多いのだろう。すぐに三重ナンバーの車が到着される。既に到着されておられた一台の車の主は三重からの車の方々と待ち合わせされておられたらしい。
駐車場から登山道に入ると、最初はいくつかの沢を渡渉する。登山道脇では多くのコアジサイとヤマアジサイの花が咲いている。二つ目の沢にかかる橋を渡ると早速にもササユリの花が出迎えてくれる。
すぐにも道は沢を離れ、九十九折に斜面を登ってゆく。登りが終わり、トラバース道に入ったところで登山道脇には流れ出ている清水が現れる。「山の清水はどうしてこんなに冷たくなる?」と家内が素朴な疑問を口にするほど、水は冷たい。登りで喉が渇いたせいもあるかもしれないが、非常に美味な水だ。
登山道の脇ではヤマツツジの朱色がよく目立つようになる。ほとんど高低差のないトラバース道の周りでは次第に立派な山毛欅の樹が多く目立つようになる。山毛欅の樹々の間からは夜叉壁と呼ばれる険阻な岩壁の稜線が目に入る。稜線の上の方は雲がかかり、深山幽谷の趣きが増す。先行する3名のパーティーに追いつく。
樹林を抜けたところで二段の滝が現れる。幽玄の滝だ。普段の状態を知らないが、水量が少ないと評されることが多いようがが、強雨の後だけあって、期待通り、それなりの水量があるように思われる。滝の下段の落ち口には一輪のニッコウキスゲの花が咲いている。
対岸に渡り、峻険な夜叉壁を見上げながら潅木帯の中を進むと、すぐにも正面に落差のある滝が目に入る。今度は昇竜の滝だ。
滝を見ながら斜面を登るともう一組のパーティーに追いついた。名古屋から来られた方達らしい。水が流れる岩場に差し掛かると足元には多くの小さな星芒状の花をつけた花が数多くの咲いている。キンコウカの花だ。私が思わず歓声をあげて早速にもカメラを向けて写真を撮ると、パーティーの男性が「珍しい花なんですか?」と聞かれる。滋賀県ではわずかに数ヶ所咲く場所が知られているが、少なくとも関西においては稀少な花だ。とはいえ上信越地方の沢筋では嫌というほど咲いているのだろうが。
夜叉ヶ池にかけては最後は岩場が頻繁に現れる急登となるが、岩場には悉く足場を得るためのステップが刻み込まれているので至れり尽くせりの登山道だ。池の直下になると霧の中へと入ってゆくが、いよいよ間近にニッコウキスゲの花々が現れる。
池の畔から夜叉丸の方に向かって少し登ってみる。池の上にかかる霧が幽玄な雰囲気を漂わせる。池の姿を眺めているうちに次第に霧が晴れてくる。
池のほとりを歩いて、北側にある桟敷にたどり着く。池のほとりの樹々には白い果実のような数多くのモリアオガエルの卵がぶら下がっている。
池の中を覗き込むと数多くのイモリがいる。よくよく見てみるとせわしなく動く小さな水生昆虫に長男が気がつく。この池のみに棲むというヤシャゲンゴロウだ。ヤシャゲンゴロウの後をイモリが追いかけるが、食べる気配はないようだ。ゲンゴロウが幼虫のうちはイモリが天敵らしいが、イモリにはモリアオガエルのオタマジャクシの方がはるかに好物らしく、そのせいで成虫まで生き延びることの出来るヤシャゲンゴロウが多いらしい。
後から先ほどのパーティーが続々と到着する。桟敷でレインスーツの下を履くと、ご挨拶して三周ヶ岳を目指して出発する。池のほとりを周回しながら、再び池の中を覗き込むと場所によってはかなり数多くのヤシャゲンゴロウがいることに気がつく。
三周ヶ岳への登山道に入ると、踏み跡は明瞭ではあるものの道は細く、最初の小ピークを越えると熊笹が繁茂するようになる。先ほどまでの雨のせいで熊笹は濡れているので、瞬く間にレインスーツのズボンが濡れる。レインスーツのズボンを着用していなければ下草からの露で靴の中まで濡れてしまうことになっただろう。
登山道ではところどころにニッコウキスゲや笹百合が現れる。潅木の中ではホツツジやアカモノの小さな花も咲いている。
ca1230mのピークに出ると山頂部に小さな広場がある。晴れていれば360度の展望が開けるのだろうが、残念ながら雲の中だ。ピークを越えると笹薮が一層、濃密になるように思われる。足元の踏み跡を辿るが、西側の斜面に少し入り込んだところで忽然と踏み跡が消える。どうやら獣道を辿ったようだ。ここで引き返せばよかったのだが、尾根芯に出ればすぐに登山道に復帰するだろうと藪を漕いで尾根に出る。
果たしてすぐに踏み跡に出るが、藪が濃い。踏み跡を辿ると大きな泥濘みが現れる。どうやら二重尾根の間の湿地のようだ。慎重に泥濘みを越えるが、家内はくるぶしあたりまで靴が泥濘みにはまったようだ。泥濘みの先で右手の尾根に上がるとようやく本来の登山道に復帰する。登山道はこの二重尾根の東側を通過していたようだ。
三周ヶ岳への尾根自体はアップダウンは少なく、緩やかな起伏を繰り返しながら山頂へと向かう。再び雨が降り出すが、低木の樹林の中に入ったので、通り雨であることを期待して様子をみる。再び潅木帯に出たところでは雨は止んでいた。振り返ると雲の中からca1230mピークから辿ってきた稜線が一瞬姿を見せる。
突然、潅木の藪の中に切り開かれた小さな広場に出たと思うとそこが山頂だった。潅木の藪に囲まれた山頂からは展望は見えない。行動食のノンアルコール・ビールでの簡単なランチをとるうちにわずかに陽射しが出てきた。
復路につくと岐阜県側はすっかり雲が晴れており、稜線の左手には大きく高丸(黒壁)が見えている。その右手彼方に見える山は土蔵岳だろう。振り返ると三周ヶ岳のピークが見えるが、そのわずか一瞬の後には山頂部は雲が覆い隠してしまう。
往路で道を把握したせいか復路は快調に進む。熊笹の葉が乾くのは驚くほど速い。
ca1230mのピークからの下りは振り返るとかなりの下降に思えるが、往路では登りの辛さをあまり意識することがなかったのは霧で見えなかったためかもしれない。このピークも振り返るとみるみるうちに雲の中に呑み込まれてゆく。丁度、この越美国境尾根のあたりは依然として天気がよくないようだ。
夜叉ヶ池に戻ると、桟敷には多くの人が休憩しているのが見える。夜叉丸の方に尾根を少し登ったところで池を見ながら小休止をとる。
夜叉ケ池からお花畑を降って下山の途につく。朝はコアジサイの香りは感じなかったが、湿度が下がったせいだろうか、辺りにはコアジサイの濃い香りが充満している。
山毛欅の樹林に入ったところで再び雨が降り始める。午後からの晴天の予報は外れたのだろうか。
駐車場が近づく頃には再び雨は上がっている。長い池の又林道から八草トンネルを抜けて滋賀県に入ると途端に青空が大きく広がり始める。車の窓を開けると涼しく快適な風が吹き込んでくるのだった。
龍神伝説や、泉鏡花氏の戯曲で有名と聞きましたが、ニッコウキスゲでも有名な場所なんですね。
山開きとニッコウキスゲの開花時期が微妙とかネットで目にしましたが、間に合われたご様子。
固有種の「ヤシャゲンゴロウ」も普通に見られるんですか。モリアオガエルの卵塊は偶に山中の池で見掛けますが、これほど大きな池にて広範囲に見掛けられるのは珍しいかも。
アプローチを見ると、岐阜県側?って思いましたがR303を使えば最短距離のようですね。調べていると少し遠回りかもしれませんが、今庄からの福井県側アプローチは道がいいように今回知りました。
登山道は…滝も見られて岐阜県側に軍配が上がるのかな?
行ってみたくなるレコでした。早速メモです。いつもありがとうございます。
ののさん いつもながらさすがの薀蓄ですね。
ヤシャゲンゴロウは池の中を注意深く見ればあちこちでせわしなく動き回っているのが見えるかと思います。今回は高倍率の望遠が効くカメラを持参しなかったことを後悔しました。
アプローチは滝の水量が期待できることに加えて池の又林道の様子を知りたかったので今回はこちらを選択しました。このルートははキンコウカの花という魅力もあります。
ニッコウキスゲは今週末でも十分、花期には間に合うと思いますが、先週の時点では今週末は土日いずれも雨の予報だったので先週にしました。しかし今週末は意外と雨が降らない予報に変わっているようです。
ののさんも機会があれば是非いらしてみて下さい。ののさんはその前に鶏鳴の滝かな。今週あたり行かれるとカメラマンと同行しているHBさんに出遭うかもしれませんよ。
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