槍ヶ岳北鎌尾根(湯俣ルート)
- GPS
- 60:31
- 距離
- 43.4km
- 登り
- 2,712m
- 下り
- 2,259m
コースタイム
- 山行
- 11:27
- 休憩
- 0:52
- 合計
- 12:19
- 山行
- 7:34
- 休憩
- 1:54
- 合計
- 9:28
- 山行
- 4:20
- 休憩
- 0:20
- 合計
- 4:40
過去天気図(気象庁) | 2020年08月の天気図 |
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アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
帰り アルピコバス+電鉄+あずさ |
コース状況/ 危険箇所等 |
登山ポスト 七倉ゲート前 |
その他周辺情報 | 上高地の日帰り入浴は今シーズン休止中 |
予約できる山小屋 |
七倉山荘
|
写真
装備
共同装備 |
50mダブル1本
カム#0.5~2
ナッツ小さい方
アルヌン8本
捨て縄5m&10m
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感想
1日目
8:20晴嵐荘10:30-千天出合-11:40 P2取付-13:30 P2-15:00 P3-16:10 P4付近
前夜22:30竹橋発のアルペン号に乗る。途中のSAで小一時間ほど停車したときにトレーラーの振動がうるさくて眠れなくなる。うっつらしながら4時頃、七倉着。外は満天の星空。バスからは他に1組降りたが、湯俣に向かうのは私達だけだった。
今回の一番の不安は湯俣の渡渉。厳しい渡渉がある沢は行ったことがなく、渡渉敗退になるのが心配だった。8月は少雨だし水量は減っていそうだが、今年は山に入る人が少ないのか、お盆を過ぎても湯俣から入る記録が見当たらず、様子がわからない。出発数日前に晴嵐荘に電話したところ、晴天続きで水量もだいぶ減り、北鎌に入っているパーティーもいるとのこと。それを聞くと少し安心した。
高瀬ダムから歩きやすい湖畔の林道をずいずい進み、対岸に晴嵐荘が見えてきた。本来は山荘に行くために少し上流にある橋を渡るそうだが、今は靴も濡れない程度の小川がちょろちょろと流れている。
小屋番の方に挨拶し、末端から北鎌尾根に行くと言うと「今時あまりいないねー」と少し驚かれた。天気や渡渉や千天ではクマが出る等のアドバイスを頂き、沢装備に切り替える。
沢装備は2人で色々悩んだが、私はネオプレンソックス+沢スパッツ+アプローチシューズにした。結果的に気温も高く、深い渡渉もなかったが、水から出た直後は冷たさにちょっと痺れたので、ネオプレンにして良かった。北アルプスの沢はきっと雪解け水だから有機物が少なくて臭わない!アプローチシューズで遡行してもそんなに臭わない!と希望的観測をしていたが、入渓地点から沢の臭いがぷんぷんし、ちょっとショック。遡行後に履き替えた靴下も1日半濡れたままで歩くと強烈な臭さとなった。いたしかたない。
水俣川の遡行は、天気も良く、山の深みに入っていく感覚が気持ちよかった。千天までに渡渉は15回くらい、1番深くて2回ほど股くらいになったが、水流が強いところではなかったので危険なポイントはなく、千天手前の右岸の高巻きもせずに済んだ。2人で力を合わせて突破!的な場面も妄想していたので、雰囲気づくりにあえてスクラムを組んだくらい。沢の条件は良く、想定の半分の2時間で千天出合に着いた。
ここから天上沢は右岸よりに遡行。出合から2つ目の枝沢で水を3L補給。水が美味しい。
P2の取り付きあたりで浅い場所から左岸にわたり、踏み跡をたどると付近にピンクリボンが3つあった。沢装備を解除したが、この先藪漕ぎだったので、スパッツ履いてればよかった。P2までは木の根っこをつかみながらぐいぐい標高を上げる。ロープを出すような場所はないが、あまりの急登に途中落ち着かなくなり、ハーネスを装着。ビバーク予定のP2に到着したが、2時間巻いていたのと、山頂の木に新しそうなクマ剥ぎがあったので、先に進むことにした。鈴があまり鳴らないので、声を出し、笛を吹きながら警戒にあたる。P3、P4まではハイマツ多めの藪漕ぎ。空もガスってきて長時間行動に最後の藪漕ぎは辛かった。P4から少し下りたところにツェルトを張り、お酒もないのでさっさとご飯を食べて明るいうちから寝る体制に入った。下は乾いた砂利で、背中だけマットとスパッツを当て、足にザックを敷けば割と快適。寝ている間にクマが来たらどうしようとか、交代で声出そうかとか、最初はツェルトが風でゆれる音にもビビッていたが、寝始めたらぐっすり寝れた。ただ結露でシュラフが結構濡れたので、最初から足だけでもビニールに入っておいた方が良い。
2日目
5:10 P4付近-6:40 P5-8:00北鎌のコル-10:20独標-12:30北鎌平-13:10穂先基部-14:00槍ヶ岳
3時起床。身支度が早く済んでしまったが、まだ暗い。ツェルトの中から頭だけ出して星空を眺めながら、明るくなるのを待つ。初めてツェルトを張ったけど、雨が降らなければだいぶ開放的に過ごせることがわかった。
P5までも藪を進み、もろい岩場を登ったあと、天上沢の草付きのトラバースが超怖い。ザレとか草付きとか悪い沢のツメっぽい感じであまり慣れておらず、北鎌で一番いやらしく感じた。
P6は途中千丈沢側をトラバースするが、ザレザレな上に切れ落ちていて危険なので、念のためロープを出す。さっさと進まないとザレで足元が流されるので怖い。
P7を越えてからは急な下りで、懸垂支点があった。手前はクライムダウンできそうなのでそのまま行ったが、途中2mくらいの高さからフリーで降りるには怖いところがあり、5mのロープで懸垂。その後はすぐに北鎌のコルに到着。前のパーティーの声も聞こえてきて、ここまでくれば人も良く通るし藪漕ぎもないと思うと、ほっとした。
北鎌のコルから先は稜線上の岩場をなるべく直登する。北鎌沢から上がってきたソロの方と女性2人組に追いつく。今日はこの3パーティーしかいないようだ。独標も直登するつもりだったが、いつのまにか巻き道に誘いこまれ、気づいたら独標の横にいた。そこからも登ったあとがあったので、3級くらいのチムニーっぽいところを抜けて独標に到着。ここからやっと槍がバーンと現れる!はずだけどガスって見えない。ただ、今日中に山頂に着けそうなことで気持ちに余裕が出てきて、キャピキャピしながらルーファイを楽しめた。穂先の取り付きから記録でみたプレートやケルンや残置スリングなど目印が豊富なので、迷うこともないが、チムニー登りをするあたりで雨が降ってきた。岩が濡れないうちにチムニーを越えて祠の裏から山頂に飛び出す。誰もいない!笑
真っ白で小雨降る中の山頂だったけど、やりきったという満足感が大きい。湯俣から行っても2日間だけど、ここに来るまでかけた時間はとても長い。
春先から2人でいくこと決めて、コロナで2カ月山に行けず、自粛後は急いで練習を組んで、ルート調べや装備も考えて、たくさんの時間をかけた。本当に今年行きたかった目標なので、出発した時点で既に嬉しかったけど、こうして無事に山頂に立てて一層嬉しいし、同じ温度感でバディを組み、私の苦手なところをフォローしてくれたノリちゃんに感謝しかない。
あとから登ってきた方に写真を撮ってもらい、一般道で下山。雨だし、ご褒美に小屋泊にしちゃおうということで、完全にリラックスモードで飲んだビールは、キンキンに冷えてやがる・・・!北鎌尾根で会った女性2人組とも一緒に盛り上がり、とても楽しいお酒だった。
3日目
7:20子槍コル-2P-8:10子槍-懸垂2P-子槍コル-1P-ひ孫槍-2P-10:20孫槍-11:30大槍
翌朝は晴れる予報だったけど、朝からガスって岩が濡れている。小屋でゴロゴロしていたら日が出てきたので、取り付きに行ってみることに。ヘリポートからトラバースして15分くらいで子槍の取り付きに到着。1パーティが既にひ孫槍まで行っていたが、他にはおらず、岩もだいたい乾いていたので、登攀開始。
〇卅筺2P とみー→のりちゃん
出だしのトラバースが緊張したけどクライミングらしくて楽しい。50mロープで足りるか心配していた懸垂は途中で懸垂支点があったので2回に切れた。
△丗港筺,箸漾
岩がもろくて大きな浮石が多い。下は子槍のアプローチなので落石注意。
B港筺2P のりちゃん→とみー
ピナクルの終了点が狭くて引き上げしにくいけど、かっこいい。終了点から大槍取り付きまでのリッジが切れ落ちているのでロアーダウンしながらクライムダウン。
ぢ臍筺,里蠅舛磴
登攀は一番やさしいけど、カムが回収できなくなり、のりちゃんにバトンタッチ。何とか回収してもらえてよかった。
カムの回収とピッチ切ったりで想定より時間がかかり、上高地の17時半の終バスに間に合わせるため、めっちゃ急いで下山した。
いやー3日間よく歩いた!本当に疲れて同じルートはもういいやと思ったけど、写真を何回も見返すと不思議とまた行きたくなる。(すぐじゃなくていいけど)
いつかまた行きたいと思います。
今年、たしか城山からの帰り道に車の中で出た「北鎌計画」。
はじめは湯俣から行くことは全く考えてなかったけど、色々調べていくうちにどこかで気が変わった。
湯俣末端ルートを行く前提でトレして、厳しそうなら北鎌沢から上がるルートにしようと。
最終的には、天気にも恵まれ湯俣末端ルートへ!
【28日】(1日目)
・七倉〜晴嵐荘
4時、七倉着。支度を整えて出発。
バス到着後身支度を整えて暗いうちに出発。
高瀬ダムに着く頃にはすっかり明るくなっていた。
すでに踵の豆が痛くて心配になったのでキズパワーパッドを貼る。
・晴嵐荘〜P2取付き
小屋に寄っておじさんに天気を聞くと色々話してくれた。
沢の水量は少ない、千天出合あたりは熊出るから注意、巻かなくてもP2まで行ける、等々。
ガチャ付けてたら、多分使うことないよとのアドバイスから外していくことにした。結果使わなかったし、渡渉で濡れて重くて臭くなったと思うので外していて良かった。
渡渉は最初から数えて千天出合まで15回。水量はたしかに少ないようで2,3回太もも〜股下くらい浸かったけどあとは膝上くらいで済んだ。
数日間降雨がなかったことと、今年雪渓が少なかったことからなのか、これ以上少なかった記録は見ていない。
天上沢に入ってからは右岸沿いに踏み跡あり、高巻き気味に進む。
水はP2取付き手前の右岸で取れる。
・P2取付き〜P4
旧登山道くらいの歩きやすさから始まり、段々傾斜が立ってモンキークライミングの急登となっていく。P2以降傾斜は緩まり藪こぎが始まる。P4に近づくほど、藪が強くなる。藪をかき分けると踏み跡見える。各ピーク付近幕営可(P2P3は2テンサイズ、P4は大型サイズ)。
P4にてビバーク。ガスが切れると、右手に硫黄岳、左手に表銀座、前後に北鎌尾根のピークが連なる最高のテン場だった。久々に北アルプスの星空を見て、綺麗で感動した。ただ、ずっと熊に怯えてた。
【29日】(2日目)
・P4〜北鎌沢コル
明るくなってから出発。
P5は天上沢側草付きのザレを巻く。
P6は千丈沢側のザレが切れ落ちてたのでロープ出した。見た目より悪くなかったけど、なかったらやっぱり怖かったと思う。(※このあたりtoomyさんと記憶違い?ピークありすぎて覚えきれない!)
P7はあまり記憶にないけど「懸垂あるかも」という情報が頭にあって悪い方に向かってしまった。懸垂してるっぽいとこは捨て縄いくつかあったけど、クライムダウンできそうなのでロープなし。でも結局下の方が悪かったので捨て縄用のロープ使ってごぼうで降りた。
この辺から北鎌沢を上がってきたらしい人の声が聞こえだしてホッとした。
・北鎌沢コル〜槍穂先
だんだんピークの数が数えられなくなってきた。
ずーっと岩稜帯!という感じ。だいぶ歩きやすくなった。コルの前に比べて人の辿った気配が100倍に。
全部直登だ!と登れるところは登ってたつもりなのに、黙々と歩いていたらなぜか独標だけ巻き気味になっていることに気づいた。千丈沢側を半分近く巻いたところで気づいてそこから登る。なんか途中から悪くて、toomyさんと「今のは3プラ(+)あったよねー!?」と笑った。
繰り返すピークと岩稜帯を越え、独標を越えると見えるはずの槍の穂先はガスの中。
北鎌平あたりで残置ザックを見つけ、そのあたりからは早い。これを登れば山頂だというところでさらに元気になった。
お先にどうぞという言葉に甘えて山頂へ!直前に降り始めた雨で人はいなかったけど、しばし二人で山頂を独占!
一週間くらい前からこの瞬間を妄想してたからなんだかデジャブみたい!実現して本当に嬉しい!ヤリきったー!
【30日】(3日目)
・小槍〜大槍登攀
朝起きると窓の外に見える岩とベンチがビショビショ。私のコンディションもよくない。あとちょい飲んだら絶対二日酔いだった。。
二人の間に、天気悪ければなしでいいよね的な雰囲気が流れたが一応少し待って乾いているか取り付きまでは見に行こうということに。
アプローチはヘリポート横をトラバースというけど見た目あんまよくなかった。行ってみれば行けるかという感じ。こういうガレガレなところ見るとすぐ無理じゃない?って思ってしまう。
小槍〜大槍はつるべで快適なクライミング!私は沢靴、toomyさんはアプローチシューズ。子槍だけどうかな〜と思ったけど問題なかった。沢靴は万能だ。
登っているうちにだんだん楽しくなってきて、こんな北アルプスの中でクライミングしているなんて最高だな〜と言う気持ちが、気がついたら声に出てしまった。
・槍ヶ岳〜上高地
この日のバスに乗るために高速下山!
途中「よくこんな足動くよな〜」と自分に感心!
徳沢あたりから「もうCT通りでも間に合う」感が出てきてスピードダウン。
ソフトクリーム休憩込みで4時間40分。新記録だけど、もうこの記録は更新したくない。
【感想】
絶対に今年達成したかったこの山行。
このために二人でやってきたトレもすごく楽しかった。
トレそのものより、天候判断やロープ出したいかなど二人の感覚のすり合わせができたのがとても良かったと思う。
北鎌尾根は、すごく難しいところはないし、バリエーション初級者もたくさん入るところだけど、ちょっとした気の緩みで事故に繋がりそうな低中度の緊張シーンは100回くらいある。それが一日10時間以上数日間続くわけで、まだまだ経験の浅い私にとって、toomyさんというパートナーはとても心強かったし信頼できた。
体力★★★★根性★★★技術★という感じ(バリエーションの基礎は前提)。私たちにもってこいのルートだったと思う。
私が通過できるところはtoomyさんも通過できるし、その逆も然り。
toomyさんの方が「あそこは登れる」と言って私が「え〜悪くない?」というやりとりも100回くらいあった気がする笑。結局全部登るんだけども。
このやりとりを見ていた他会の女性パーティーから「全部直登するから、ガツガツしてんな〜って話してたのよ!」と後から一緒にお酒を飲んだ時に聞かされて一緒に大笑いした。北鎌尾根に子槍大槍登攀の装備を持って来たというのもガツガツらしい。
同じ日に北鎌尾根を歩いてきた女性2人組という共通点でとても意気投合できた気がする。
一週間ビール断ちしていたせいか、1200円の生ビールが美味しくて2杯も飲んだ上にボトルワインも追加!最高だ!
出来すぎなくらい計画していたことすべて達成できたけど、地図を半分忘れたり残りも藪こぎで落としたこと、たくさん調べたはずなのに記憶が薄い脳内メモ、下山後のスケジューリングなどtoomyさん頼りだった。その場しのぎ気味な私だけど、フォローしてくれてありがとう!
最初は不安だった渡渉も、熊に怯えて心細かった1日目の夜も、コルに出た安心感も、岩稜のワクワクも、山頂の達成感も、足が棒になるってこういうことねって感じの下山も、雷による停電で動かなくなる電車トラブルも、最初から最後までずっと冒険的で終わってみれば良い思い出!
※50mロープ一本で行ったので、小槍の懸垂に長さが足りないのが不安で事前に二人で色々と策を練った。一瞬60mダブルを買おうかと悩んだけど、「今後懸垂でロープが足りないという状況になったときにどう対応するか」を考えた方が経験になるよねってことで50mで行った。
実際は途中にラッペルあったので2回に切って問題なく下降。(2回の場合は小槍のトップからの下降ちょっと右寄りにおりると◎)
※悩んだ結果装備は、沢靴、ネオプレンソックス&スパッツ、替えの靴下1、カッパ、ライトダウン、4日分の行動食、ダブルロープ50m、ガチャ類(カムはパートナー)、メット、ストック1本、シュラフ、シュラカバ、ツェルトという感じ。沢に入った服が3日経過して槍や上高地でも臭くて恥ずかしいけどドンマイ。沢靴は乾かなかったけど、小屋泊のおかげで乾燥室使えてそこで乾いた。35Lザック(実際40リットル以上の大きさになってた)。いつも多すぎた行動食が今回も多かったので減らしたい。
私とかみさんは高瀬ダムができたての40年以上前の3月に歩きましたが、雪がない方が怖そうです。
山頂から一般ルートだと思いザイルをしまって下を見ると全面ベルグラで驚きました。
覚悟を決めて降り始めて雪の下に梯子があることを知り、それを支点に懸垂ができてほっとしました。
我々は湯又とP2に雨のためにそれぞれ2泊停滞して雪崩をやり過ごしました。
槍でお会いした方にも、夏より冬のほうが歩きやすいと言われましたが、なんやかんや冬のほうがリスクは多そうです!
そのうち冬も行ってみたいですが渡渉で心が折れそう。。3月でもう雨だったんですね!
40年以上も記憶に残るような山行、素晴らしいですね!そんな登山がしたいです!
私たちが歩いたときはすべて右岸をトラバースしました。
河原も歩けそうでしたが抜けたら死にそうなので止めました。
左岸にわたるのはP2の取り付きだけで簡単に渡れました。
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