五色ヶ原までは行けず…内蔵助谷〜劔岳北方稜線
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- GPS
- 104:00
- 距離
- 25.7km
- 登り
- 3,311m
- 下り
- 2,357m
コースタイム
- 山行
- 3:30
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 3:30
- 山行
- 7:42
- 休憩
- 2:30
- 合計
- 10:12
- 山行
- 7:00
- 休憩
- 1:45
- 合計
- 8:45
- 山行
- 0:45
- 休憩
- 0:00
- 合計
- 0:45
天候 | 10/4・曇り /5・雨のち曇り /6・晴れのち曇り /7・晴れのち曇り /8・雨 |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車 バス
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
|
コース状況/ 危険箇所等 |
・劒沢雪渓の状況がとても悪いらしく、真砂沢ロッジもしくは警備隊のところでその日の状況を確認すること。 ・その影響で池ノ平・仙人峠方面に入山の人々に、普段人気のない内蔵助谷出合コースの需要が多くあったらしい。 ・ハシゴ谷乗越から劒沢を渡る部分は、角材の橋が結構下流に渡してあった。左岸登山道に合流してから真砂沢ロッジまで20分以上かかった。 【北方稜線】 ・小窓からすぐがガレており、踏み跡をよく確認すること。また、年により異なると思うが、雪渓最上部右岸際で流水が確認できたので水は確保できる。 ・小窓ノ王の巻きまでは所々ピンクテープあるが、なんとなくどこでも歩けそうな感じのところもあるので注意。 ・トラバース雪渓は完全になくなっていた。 ・BSは小窓、三ノ窓(ゴミ多いが多数)、池ノ谷乗越、劒P直下…ほかにもあるのかな? ・池ノ谷ガリーは前日までの雨等で石が凍結して、時間等の問題もあったと思うが割と安定していた。 ・長次郎ノ頭付近で結構迷った。ガスッていたら懸垂点に出てしまうことが考えられるので、ロープ・ハーネス等懸垂できる最低限の装備があった方がよいのでは? なお、逆ルートの場合だと取り付きが一ヵ所なのでわかりやすいかもしれない。 |
その他周辺情報 | 自家用車じゃないと薬師の湯くらいしか寄ることができない。雨だったし… 扇沢バス券売り場で割引券をもらえた。 |
予約できる山小屋 |
|
写真
感想
今年の紅葉は若干遅れ気味の感じ。どこに行ったらいい紅葉がみられるか…ここ数年、五色ヶ原に何か引っかかるところがあり、きっといいに違いないと勝手に考えていた。そもそももう20年くらい訪れていない。あそこに行っていい天気だったこともない。週間天気予報では日本海側は良好な予報。五色に行くにあたってどう周回すればいいコース設定になるか…これは北方稜線がらみしかないだろう。険しいところからなごみの場所へ。なかなかいいプランではないか!と思い立ち出発となった。
嫁からは『あなたはいいから車はないと困る』と言われていたので、荷物はやや重くなるが公共交通機関利用となるのは仕方なし。着替えは晴れ前提のものを用意したことで、帰りはとんでもないことに…傘もなく雨の温泉施設への移動、大糸線内で半そでビーサンは自分だけだった。
10/4 直前になって天気が微妙な感じになってきた。願わくば北方稜線で雨は勘弁してほしい。欲を言えばこの時期、沢以外で装備は濡らしたくないというのが本音だ。嫁に最寄駅まで送ってもらう。高尾からの松本行は割と混んでいると思っていたがそうではなかった。信濃大町は暖かかったものの、扇沢までの道路は雨が降ったようで先行き不安だ。そういえば電気バスになってから初めて乗るなぁ。時代の趨勢とはいえああいう特徴のある乗り物がなくなっていくのは寂しいものだ。ダムの下りは可能な限り逆で使いたくはないといつも思う。今日は内蔵助谷出合までの間でかなりの人数とすれ違った。なんだろう?
明日が天気が悪いらしく、濡れ防止と停滞と明後日の行動を考えれば真砂沢まで入っておきたいところだ。この時間からでどこまで行けるのか?内蔵助谷出合に着く前に振り返れば赤沢岳が雲に隠れていた。そうなると昔よく泊まった出合の放流看板裏が頭をよぎる。でもそれは近すぎるので思いのほか疲れる内蔵助谷を進む。このルートはいい思い出がない。夏はただひたすらに暑く、特に内蔵助平の涸れ沢部分はどうにかしてほしいと思っているところだ。丸山東壁基部は急だし…スキーできても途中で雪が切れてシートラしなくてはならなかったり。ハシゴのところで下りの登山者とすれ違う。この時間からではバスもなく、ロッジくろよんは宿泊を断られたということで廊下の資材置き場の岩屋で一晩過ごすそうだ。テントもなく大丈夫だったのだろうか?ようやく平坦になり沢を鉄板で渡ると、ルート上を大量の水が流れている。これが水場ということだろう。記憶にない。内蔵助平の道標付近は大きく切り開かれていたが、先客のゴミがひどすぎる。自分のゴミくらい持ち帰れ!
真砂まではあと2時間以上かかることを考えれば、ここで泊まるのがベストであると判断し行動終了とした。まだ雨ではないが見回してみれば、結構このカール内はまだ少し早いが紅葉がよさそうだ。
10/5 夜中から雨。沈殿…あまりからっとした場所ではないが、平坦草地でグランドが濡れることはなさそうだ。ただひたすらに眠っていると、声が聞こえてきた。ここを通るなんてどれだけ物好きなんだ?真砂側の状況を聞けばほとんど降っていないとのこと。明日以降の行動を楽にするために真砂沢ロッジへ移動することにした。幅広の涸れ沢をひたすら進み二俣状となると、ペンキが左を示す。こちらも涸れ沢だが斜度が出てきてよく滑る道になる。1900くらいから道は涸れ沢を離れハシゴ谷乗越へ至る。昔の嫌なイメージは薄く色づいた紅葉により薄まった。2000mくらいがいい感じだった。
こんなに木のハシゴだったっけ?と思うくらいの下り。木の間からヒュッテが見える。どうせなら南股の沢沿いにルートを移せばいいのに…本流に出ると記憶では上流方向に行くはずだったが下流方向に向かっている。すると橋が架かっておりこれを渡る。ここから15分くらいかななんて思っていたら30分くらい歩かされた。気持ちの切れたここが一番きつかった。無雪期は久々すぎてどんな幕地か思い出せなかったが、白砂の平坦地、まさに一等地。小屋番の方はとてもいい方で結構情報をもらえた。昨日はここまで頑張れなかったことが残念だ。天場は風が思いのほか通り、沢音も気になる寒い夜となった。
10/6 朝は薄曇り、でも昨日ここまで来ていとことは正解だったと思う。左岸の道は初めて通る。スキーの時期は二俣まではあっという間で、途中の鎖場は四の沢先でシートラだと板がつかえて大変そうだ。水量なければ段差がでかいが飛び石でも行けそうだ。河原が広くなった後、しばらくで吊橋となり北股が合流する。ここから自分のあこがれの三ノ窓と認定氷河が見える。いずれ滑りに訪れようと心に誓い、仙人峠へ向かう。とてもいい道を50分程度で峠着。途中まで三ノ窓と北股から小窓雪渓にかけてが見えていたが、ガスってしまったものの仙人池ヒュッテ側はいい感じで紅葉しかけている。本当に雰囲気のいい場所だ。池ノ平小屋側に乗越すところにベンチがあるが、ここではガスで何も見えなかった。
ところが山とは不思議だなと思うのが、小屋に向かっている最中、どんどんガスが取れて裏劔が顔を出し、一気に青空まで出てきた。ここまで来てこの景色がみられなかったら、何しに来たのだろうと後悔してしまうほど素晴らしい眺めだ。自分が知っている日本の山でここまでヨーロッパ的な景色があるだろうか?トラバース道を裏劔に目移りしながら、滑りがちな木の根をよけながら歩き、真砂と事前の連絡で聞いていた水場の沢で給水し、池ノ平小屋に到着した。
小屋では管理人夫婦が作業中で、池まで行って帰ってくるとコーヒーをごちそうしてくれた。『まぁ、ここに座ってください。』と言われ、絶対に尻に根が生えると思ったのだが、誘惑には勝てずしっかりごちそうになり、色々な話を聞かせていただいた。話しているうちにほぼ無風快晴になり、とても静かな空間は音が吸い込まれてゆくようだった。今年は営業・幕営と裏劔の景色は3人の貸し切りだった。またいつか訪れたい。
別れを惜しんで三ノ窓へ向かう。鉱山道の途中で展望台に寄って迫力の景色を見ていってくださいと言われたので、展望台へ立ち寄るが…急激にガスってきてしまった。あの時間の晴れ間は何だったんだろう?気を取り直し出発、補助ロ−プもそれなりに整備していただいており、小窓雪渓を眼下に見下ろしながら岩棚をジグザグに下った後、ガレ場を下って雪渓に降り立つ。雪渓側から来た場合、下を見ながら下ってくると鉱山道へのとりつき赤ペンキ文字を見逃す可能性がるので注意。
よく事故のある横断雪渓は今年は消えていると見込んでいたが、小窓雪渓はガチガチで、まぁ新調したアイゼンは軽いし、持っていってもいいかなくらいの気持ちだったことが正解だった。最上部まで見えない雪渓を登り始めると、上部から2名下ってきた。上部の情報を聞くと、雪渓終了後、すぐの崩れたところがわかりにくいかもと言っていた。ここも氷河だと思ったのだけれど、南極で最近見かける表面の流水が著しく、カチカチでありながらにして気温が高いということなんだろう。雪渓は亀裂があちこちに入り、中間部にはかなりの大穴があり、端によって落ちたらと思うと覗ききれなかったものの、まるで底が見えないような深さだった。
雪渓は小窓の少し下で終わっていたが、水は取らなかったものの右岸ガレに流水を発見。今年だけだろうか?適当に踏み跡をたどり小窓に到着。2か所あるBPはコルのところのものが快適。風をよけるために一段下にあるもう一つの方で休憩。
出発後、しばらく踏み跡はバッチリ、そして先ほど言われた崩れたところはガスで見通しが悪かったので、新しい足跡を探しながら登る。その後、左が大岩の灌木帯にあるルンゼ状を通り、ほとんど自分の周囲20mくらいしか見えないまま、踏み跡やピンクテープを探して進む。2550mくらいでトラバースからの斜上というのを繰り返すが、下から見るとテープが確認できないところあるので注意する。ハイ松トラバース後スッキリ草付きトラバースに変化し、しばらくで例の雪渓横断点に到着。やはりなくなっており、ガレを渡って対岸の踏み跡に。数年前に残置されていた赤の補助ロープはなくなっていた。
さらに斜上&トラバースを繰り返し、稜線まで上がり切ってしまうとよくないと思いつつルートが上に向かっているのを見ると、間違ってしまっていないか不安になる。結果、ペンキ印もテープもあるしたどってたどり着いたのは稜線上で、現場確認のためとりあえず休憩。ガスの粒がでかい。岸壁が正面に見えており、この先巻くんだっけと思っていたらその通り。右から巻くと案の定、発射台の下り。ガスでよくわからないが、補助ロープはあっても池ノ谷へ発射してしまいそうな傾斜。下り切れば本日の幕場、三ノ窓である。はじめは池ノ谷側からの吹き上げが思いのほか強かったので、三ノ窓雪渓側に幕営した。携帯の電波を拾うことができ、ちょうど仕事場の後輩から大キレットに行った報告が届いていたので、すかさずこの状況を返信した。そんなことをしていると急に風向きが変わり、一段上の完全に『窓』のところに引っ越す。この頃ガスも晴れだし、小窓ノ王、チンネなどが見えてきた。
幕場は結構先人猛者たちのゴミで汚れており、平坦なところは池ノ谷側に多い。トータルいくつくらい張れるのだろうか?あこがれていた三ノ窓宿泊は貸し切りで、東正面は鹿島槍、西は池ノ谷の狭い空間から見える滑川方面?の雲海だった。夜は夜景や星も見え、ガリー通過はいい天気のままできそうだった。
10/7 しっかり起きれたはずだったが思いの外、出パに時間がかかった。ガリーは夜間の気温が低く、石ころが土に凍結した状態だったので、前回来た時より足元が崩れていくことはなく、はじめは左側、右からルンゼが入るあたりは右側、真ん中の大岩のところからは右側で徐々にガリー幅が狭くなり、踏み跡もはっきりしてくるとヒョッコリ池ノ谷ノコルに出る。そして右手に控える岸壁のチムニーを登り切れば、私のお気に入りの池ノ谷ノ頭に到着。三ノ窓から急激に上がってくるので北側に遮るものがなく、八ツ峰、チンネ、小窓尾根、毛勝三山やらなんやらとすべてが見える。しばらくここで休憩したかったが、午後からの下り天気が気になり、風もあったことから下りの単独を見送って出パ。この先の岩と岩の間に最高なテント場が1か所あり、ここでも泊まってみたいものだ。ただ、早い者勝ちなので、ここまで来て張れなかったらちょっと困ってしまう。
以前警備隊で言われた『頭からは稜線を長次郎谷側メインでトラバースするように』を忠実に再現して進んだが、ガスったらマジでわからなくなりそうなルート。すべての小Pを巻いて進む。途中バンドにシュリンゲ2か所が残置され、これをつかんで通過。この先からがわかりにくく、先程のすれ違いの人に情報収集しておけばよかった。新しい踏み跡をたどりつつ進み、もともと目をつけておいた部分はやや登ってからガレルンゼに下る感じ。下部に補助ロープの下がっているのが見えたが、これが皆が間違う懸垂支点では?と思い込んでしまい、またガレも少し嫌な感じがしたので少し戻っての下に向かってゆく踏み跡を進む。たどり着いたのは懸垂支点…このままさらに下部へは行けない状況だったので、別の踏み跡を探しつつ戻り、結果、先程避けたルンゼを下る。するといい感じでテラスが出現、そこを通過し岩をトラバースすると長次郎コル稜上の踏み跡があと少しの位置に見え、さらにかぶった岩をトラバると踏み跡に到着した。絶対ガスったら迷う自信ある。長次郎ノ頭を振り返ればたくさんのシュリンゲがぶら下がっていた。
劔本峰は踏み跡を忠実にたどる。少しわからないところもあるがしっかり見極める。稜線が平らになると本峰上に人がいるのが確認できる。今まで貸し切りみたいな感じだったので、なんだか騒がしい感じだったけれど眺めの休憩とした。下山にかかると東大谷側は雲海で、時間経過とともに山に接近してきて上がってきた。割と難ルートを通過してきたはずなのにヨコバイは緊張した。
前劔から劒沢を見ると中腹の紅葉がきれいに見え、思わず『マエケン体操』をしてしまった…以前もそうだがここで緊張感も切れ、足取りも重くなる。剣山荘から劒沢へのトラバースは牛歩戦術となったが、足元のチングルマ紅葉と劔の眺めに思いの外感動、警備隊詰所まで何とか頑張れた。詰所前に水は引いてあり、炊事場では出てない感じ。警備隊の人と今年のルート状況について少し話し、そして明日の天気は確実にダメなのを悟り、劔沢宿泊をあきらめて雷鳥平へ向かった。空いていて最高だったのに…
当初予定の五色ヶ原がなくなったことで、完全に緊張感も切れ足も重く、別山経由で行こうかとも考えたが、振り返ればガスというよりも雲が剣山荘を飲み込み始めていたので、大走り経由もあきらめ最短オーソドックスに下る。よく考えれば夏に室堂乗越経由で歩いたことなかったのを結構下まで来て思い出す。失敗した。惰性で下り雷鳥平に到着。この天場も無雪期に幕営するのは十数年ぶりか?受付は厳重なコロナ対策だった。
夕方に雲は晴れ、最高の星空となっており、いったい本当に降るのだろうか?可能な限り交通費も抑えたいので、タンボ沢経由で下れたら最高だと思いつつ眠りについた。
10/8 夜半から降ってくると思われる雨は、台風の影響で降ってくるようで、風の方向性なども聞いたうえで張ったつもりだったが、そればかり気にしていたことが裏目に出てしまうことになる。微妙な流水溝の上に張っていたようで、銀マットの下は結構浸水していた。なんとなく予想していた通りの一択、室堂へ向かうことにする。
大観峰で窓をのぞけばタンボ沢は今が紅葉のピーク。一番いい部分を逃した。結果、ロープウェイも中間部から下はガスの中…
温泉で乾いた着替えにしたかったので、ビショビショのまま交通機関を乗り継ぎ、大町温泉へ向かった。車で行けば最近は『上原の湯』か『心笑館』ばかりだったけれど、久々に薬師の湯の新館で入浴し、近年の秋山行は完走できないことが多いこと、計画が無謀なのかそれとも根性がなくなっただけなのか、そんなことを考えつつ各駅停車を乗り継いで帰宅した。
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