赤兎山〜経ヶ岳縦走☆雪稜の追憶を辿って錦繍の尾根へ
- GPS
- 06:29
- 距離
- 14.6km
- 登り
- 1,130m
- 下り
- 1,661m
コースタイム
- 山行
- 5:49
- 休憩
- 0:40
- 合計
- 6:29
天候 | 曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2020年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
タクシー 自家用車
タクシーで小原林道に移動、 (タクシー代は予想以上の高額、運転手によると最近、運賃が値上げされたらしい。数人で割り勘にするのでなければこの方法はお勧めできない) 小原林道が通行可能なのは7時から17時まで(8時過ぎには駐車場が満車のために閉鎖) http://kan-hakusan.jp/web/links/fukui/ohara.pdf |
コース状況/ 危険箇所等 |
赤兎山〜経ヶ岳は刈払いがされており登山道が明瞭 |
写真
感想
今回の山行計画である赤兎山から経ヶ岳を経て六呂師高原に至るコースは今年の3月に長男と共に辿ったところである。小原林道は勿論、冬期通行止めなので林道の入り口から延々と積雪した林道を登山口まで歩き、ほとんど雪に埋もれた赤兎岳の避難小屋の雪を堀り、避難小屋に泊まったのだった。翌日、赤兎山から経ヶ岳への縦走は絶好の好天に恵まれたものの、途中から鋭利なナイフリッジの上の一歩一歩、足場を確保しながらの苛烈な山行となるのだった。そして、この雪稜が果たして無雪期にはどのようなところなのか、改めてその姿を見てみたいというのは長男との念願となった。そして無雪期に訪れるのであれば、美しい紅葉が期待されるこの時期にと以前から照準を定めていた。当然ながら車は一台しかないので車の回収が大きな問題となるのだが、下山口となる六呂師高原の青少年自然の家に車をデポし、ここから小原林道終点までタクシーで向かうことにする。
琵琶湖の南はすっかり空は晴れているが、湖北のあたりは重苦しく雲が垂れ込めている。嶺南地方は朝まで早朝まで雨との予報である。福井平野にさしかかると空はすっかり晴れている。雨上がりの朝なので、お決まりのようにところどころで濃厚な霧が発生している。
雲海の名所で知られる大野盆地に入るとやはり濃霧の中に入る。しかし、経ヶ岳の南西麓、六呂師高原へと登って行くと大野盆地の雲海を下に望み、蒼穹を背景に荒島岳の稜線が綺麗に姿を見せてくれる。
タクシーで小原林道の入り口に到着すると驚いた。何と林道の入り口が封鎖されているではないか。どうやら林道終点の登山口の駐車場が満車になったらしい。林道の通行が可能となるのは7時からではあるが、まだ8時を少し回ったところである。入り口で追い返されたJimnyの運転手が何とも無念といった表情でUターンされる。その後も続々と車が到着する。勿論、タクシーは問題なく通してくれた。
林道の入り口では紅葉はまだこれからといったところであったが、登るにつれて広い谷の周囲には見事な錦繍が広がるようになる。左手の稜線の奥には冠雪した山が見える。大長山だ。先程までは快晴だった空はすっかり雲に覆われている。
登山口に到着すると二つの駐車場には合わせてまだ余地があるように思われた。タクシーの運転手も「詰めればあと10台は行けそうやな」と呟く。駐車場には誘導員もいないので、一定の台数が入ったら入場を制限せざるを得ないのだろう。
駐車場からは2〜30人の団体が出発しようとしているところだった。登山口から先も多くの登山客が登っている。ということは林道への入山が締め切られたのは我々の乗ったタクシーが到着する直前だったのだろう。
小原林道の終点から赤兎岳にかけては一昨年の秋に白山へと縦走した山行で辿ったところではあるが、この登山路の印象は積雪期の鮮烈な記憶に置換されてしまっている。登山口からは早速にもルート・ファインディングに苦慮したところだったが、2〜3mほど積雪した状態を想像してみると、樹々の枝をかき分けて進まねばならない羽目に陥ったことが容易に理解できる。夏道が全く分からなくなるのも無理はない。
やがて山毛欅の樹林に入ると見事な黄葉が広がっている。下生えの樹々も黄葉しているので、林の中は眩いばかりの一面の黄色の世界が広がる。雲の間から光が差したかと思うと、途端に黄葉の透過光が林の中に光が溢れる。再び前方の20人程のパーティーに追いつくが、すぐさま先に通してくれる。
小さな流れを横切る。渡渉するのに何の問題がないような小さな流れではあるが、冬季はこの小さな流れが数mの積雪に刻まれた深い溝となり、渡渉することが出来ずに右手の斜面を登る羽目になったのだった。山毛欅の樹林を抜けて紅葉した低木の間を進むうちに意外なほど呆気なく小原峠に到着する。
赤兎山にかけての尾根に取り付くと峠の反対側には手前の刈安山の背後に冠雪した大長山が再び姿を見せる。大長山の標高が1671mであるのに対して、赤兎山の山頂は約1629mとほとんど変わらないので、赤兎山もも山頂部は冠雪が期待出来そうだ。小原峠からの登りは積雪期は急傾斜に降り積もったばかりの新雪のラッセルに苦労したところだが、ジグザグと九十九折に進むせいか、積雪期の苦労がもはや想像できない程、容易に登ってゆく。尾根がなだらかになると間も無く大舟山の分岐に到着する。
山頂が近づくにつれ、なだらかな尾根登山道の周囲の笹の葉の上には新雪が薄く積もるようになる。山頂に到着すると一人の男性が携帯で電話しているのが聞こえる。どうやら赤兎山に初雪が降ったことを報告しておられるようだ。山頂からは望む白山の峰々はいずれも雲の中であるがl、雲の下に覗かせる山裾まで雪が積もっている。鳩ヶ湯から登ってくる登山道の方に少し下ると、これから辿る予定の経ヶ岳へと続く尾根を俯瞰することが出来る。尾根は紅葉により一面に赤橙色に色づいているようだ。
赤兎山の山頂からはなだらかな山頂台地の端にある避難小屋に向かう。避難小屋の彼方の白山の山々は南縦走路の銚子ヶ峰のあたりのみが雲の下であるが、それよりも北の峰々はすっかり雲の中の中だ。雲の下から覗かせる白山の斜面はすっかり雪に覆われている。
山頂台地は広範囲に笹原に覆われているが、笹の上には降ったばかりの新雪がまばらに残っているところが多い。歩くと登山道脇の笹原から突然ガサッと音がする。動物でもいるのかと思って注意深く目を向けるが、どうやら笹の葉の上に積もった雪が下に落下する際に立てた音のようだ。
登山道がなだらかになり、木道が現れると、その上には雪が残っており、今年初めて踏みしめる雪の感覚が嬉しい。しかし、木道以外の地面の上は既に雪が融けて泥濘みが酷い。みるみるうちに足元が汚れてゆく。
このあたりでは樹々の紅葉は終盤ではあるが、所々でツツジが鮮やかな朱色が目を愉しませてくれる。避難小屋の手間の池塘群の周りは雪ですっかり白くなっている。雲の合間から晴れ間が覗けばすぐに融けてしまうような積雪ではあるが、近づきつつある冬の気配を感じさせる光景だ。
避難小屋に到着すると、小屋の中からは賑やかな声が聞こえてる。小屋の中ではかなりの人が休憩しておられるのだろう。「この小屋が雪に埋もれる程、積雪していたんだよな〜」と長男に云うと、隣にいらし二人組の女性が「えっ、そそうなんですか?」と仰る。雪に埋もれた小屋に入るために長男と二人で必死に雪を掘らねばならなかったというのも今の小屋の状態からは俄かに信じがたいことだろう。
避難小屋を通り過ぎて、山頂台地の東の端に向かう。錦繍に染まった裏赤兎山への登り返しを登ってゆくパーティーが見える。この尾根から一昨年の秋に辿った三ノ峰への山行の追憶が蘇るが、三ノ峰の手前で尾根は雲の中に入ってゆくようだ。
赤兎山へと引き返すと大人数のパーティーと何組もすれ違う。これだけのパーティーが何組も入れば駐車場が瞬く間に満車になってしまうのも無理はないだろう。大長山の山頂部の雪がわずかばかりの間にも少なくなっているように思われた。おそらくこの赤兎山と同じように笹の葉の上に積もった雪がどんどん下に落下しているのだろう。
大舟山への分岐に戻ると、経ヶ岳の山頂部に雲がかかり初めている。この日は午後からは天気が良くなるとの予報であったので、我々が到着する頃には山頂部の雲が晴れることを期待したいところだ。
いよいよ経ヶ岳への尾根への踏み出すと、先刻までのほぼ行列に近い赤兎山の登山道とは一転して人の気配のない静寂の尾根となる。最初は低木の中の急下降である。以前は一面の雪の斜面を下降した憶えがあるが、これらの低木は全て雪の下に埋もれていたようだ。以前、辿った時にはこの分岐から先には道らしいものはなかったが、昨年に刈払いが行われたお陰で細いながらも明瞭な道が続いている。しかし、雨上がりのせいか、急坂の登山道はとにかく滑りやすく、気が抜けない。
急下降が一通り終わると、なだらかな樹林の尾根が続く。大舟山までは全く展望はないものの、樹々の黄葉を愛でながら歩くうちに快調に進む。大舟山が近づくと山毛欅の大樹が目立つようになる。前方から単独行の男性が降ってこられる。赤兎山からのピストン往復らしい。大舟山の大舟山は「おおふな山」と読んでいたが、実は「おおぶな山」と読むのが正しいらしい。大きな山毛欅の樹が多いことに由来するのではないだろうか。
大舟山の山頂からは赤兎山の山頂以来、久しぶりに眺望が得られる。経ヶ岳へと蛇行しながら登ってゆく尾根が見えるが、経ヶ岳の山頂部にかかる雲はますます低く重くなっているようだ。振り返ると赤兎山も同様に雲がかかっている。それでも稜線の周囲の紅葉の谷を見渡すことが出来るのは。ここから経ヶ岳にかけての尾根上には笹原が広がっているが、黄葉の樹々の間に混じる笹原の灰緑色が美しく感じられる。
大舟山から小さな鞍部に下降するとここからは笹原のパノラマ尾根が続く。しばらくは尾根の両側の斜面は緩やかであり、p1421を過ぎたところから尾根は極端な痩せ尾根となる。積雪期にはここから鋭利なナイフリッジが始まり、このピークでスノーシューをアイゼン、ストックをピッケルに替えたところだ。
地図からは予想できないが、次のコルにかけての下降が意外と急峻である。ナイフリッジの急下降を想像すると、今更ながらにこんなところを良く通過したものだと思う。次の登りで稜線はついに雲の中へと入ってゆく。急峻な登りが続くが、尾根芯には霧の中からまるで進路を阻むかのように牙のような岩が現れる。
積雪時はこの岩のトラバースが最大の核心部であり、岩の北側の斜面を薄氷を踏む思いでトラバースしたのだが、夏道は大きな岩の間を右から左へとすり抜ける。果たして積雪期に同じようにすり抜けたら良かったのだろうかと思うが、残念ながら再びそれを確認する機会はもうないだろう。難所は先ほどのp1421からこの岩まで、距離にしてわずかに1kmもないくらいなのだが、ここの通過にかなりの時間と緊張を要したのだった。
この岩を乗り越えると尾根も傾斜もましになり、笹原を登りつめて北岳と呼ばれる経ヶ岳の北峰に到着する。ここからは経ヶ岳の山頂にかけて丈の高い笹の藪漕ぎとなる。経ヶ岳の三角点があるピークを過ぎて、笹が刈り払われた展望地が近づくと人の話し声が聞こえる。山頂では二組のパーティーがおられ、若い男性二人のパーティーが出発しようとしているところであった。
我々の出現に驚かれ「どこから来られたんですか?」と聞かれた男性の顔には見覚えがあった。小原林道のゲートで何とも無念な顔で引き返されていってJimnyを運転手されておられた方だ。そのことをお話すると当然ながら男性は非常に驚かれたが、すぐその後に到着したタクシーの乗客であったことを伝えると、男性もそのことはよく覚えておられた。
男性の話によるとつい数日前に福井放送だろう、地元のテレビ局が赤兎山の紅葉が見頃だとTVで紹介したらしく、それで元々、紅葉の季節に人気であった山にさらに人が集まったらしい。しかも昨日は1日中雨が降り続いていたので、晴天が期待される筈であったこの日に人が集中したようだ。これまでに何度か訪れているが、8時過ぎに満車で追い返されるとは予想外の事態だったとのこと。
山頂で持参したブドウを摘んで休憩すると下山の途につく。ここでも笹原の中の急峻な登山路は融けたばかりの雪のせいだろうか、ヌルヌルとなりかなり滑りやすい。笹を掴みながら慎重に下る。
切り窓に下ると笹原の稜線の下には霧の名から紅葉の樹々が幻影のように浮かび上がる。杓子岳のかけては白い闇のような霧の中を進むことになる。杓子岳を過ぎて樹林帯に入ったところでようやく霧が晴れる。
雲の下に出て途端に周囲の眺望が広がると、杓子岳から保月山にかけてはやせ尾根の急下降が続く。牛岩を過ぎるて保月山への登り返しを登り詰めると岩場の好展望地となる。尾根を振り返ると周囲の錦繍が紅に橙、黄色、緑と何とも色鮮やかだ。
保月山を過ぎると林相は一転し、黄葉の山毛欅の林が続く。やがて雲の間から再び陽光が山毛欅の林に差し込み、黄葉が煌めく。ここでも20人ほどのパーティーが降っていた。林道との交差点に出るとすぐそばの駐車場には大きなバスが待機していた。先ほどのパーティーのものだろう。
林道を過ぎると青少年の自然の家をめがけて尾根をまっすぐ辿る。最後はススキの穂が揺れる六呂師高原のスキー場跡を降って青少年自然の家の裏手に出る。
紅葉の盛りに縦走する贅沢を堪能することが出来たが、新たな冬の足音を聞いた山行でもあった。
※赤兎山〜経ヶ岳への積雪時のレコです
https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2268203.html
コメント
この記録に関連する登山ルート
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マキノのコンビニでバッタリ会ったのにはビックリ。
それより、3連チャンだなんてもっとビックリ。
もう何も申しあげることはありません
こちらもビックリです。
3連チャンとはいえ、それぞれの山行が短いので二泊三日の山行に比べれば可愛いもんでしょう。
山猫さん、こんにちは。
先日、ヤマレコにてiamrosenさんのレコを見ておりまして、赤兎山はこの季節とても人気と聞きました。小原林道を利用するととても便利とか。人気の反面、車両数制限にての通行止めは痛いですね。
赤兎山ピストンだけでは物足りなく思って山プラを見ておりますと、小原林道終点に自転車をデポして折り返し、766地点の登山口から上がると北岳、経ヶ岳を踏んで大船山、赤兎山へと上手いこと周回できそうだななんていつものプランニングしておりました。
ただ、北岳〜大船山分岐までが破線ルートなのと所要タイムが表示されないので時間が読めませんでしたが、山猫さんのレコを見て難度が高そうなことを知りました。
下山時刻が読めず、ゲートが締まってしまいそうなので、このプランはお蔵入り〜
写真を拝見しておりますと「錦繍の尾根」の表現がぴったりの場所は、杓子岳・保月山辺りなんだろうと想像しますが、奥越高原から経ヶ岳ピストンが無難でしょうね。
と、言いながらプラン倒ればっかりです(笑)
ののさん コメント有難うございます。
>766地点の登山口から上がる・・・
法恩寺山の伏拝に上がるルートですね。そのルートはいつか私も試したいと思っているのですが、赤兎山の山頂の避難小屋に泊まるのでなければ、夕方17時にゲートが閉まる時間までに下山しなければならないという時間制限との勝負になりますね。
おそらくレコがあると思いますが、登山口〜伏拝まではかなり藪っぽいルートと聞いたおぼえがあります。伏拝〜北岳は積雪期に歩きましたが、ここもそれなりに藪っぽく、時間を要するところだと思います。
確かに途中で出会った方々もこの時期の赤兎は大人気・・・と仰っておられましたが、錦繍は経ヶ岳の手前の山々の方が遥かに凄かったです。
これからいよいよ京都も紅葉の季節を迎えますね。
こんにちわ、yamanekoさん…
同じ赤兎ちゃんのレコだと思ってみたら…25日じゃないですか…同日
小原林道からはそんなに人が多かったのですね…誰にも会わない赤兎でしたよ…夕方6時近かったもんなぁ…
雪もだいぶ消えていました。
暗くて見えなかった山頂景色の写真だ…ありがとうございます
そうか…避難小屋の扉が開いていたのは昼間に使った人が多かったからですね。
中に熊がいたらどうしようかと思いました。
雪のある時に歩いていらっしゃるのですか…すごいですね〜。
あの小屋が雪に埋まるとは…驚きです。
経ヶ岳〜赤兎も考えたのですが…出発時間が遅いのでアプローチの近いところを選びました。
おもしろい縦走路ですね…タクシーを使うところなど、すごいなぁと思います。
ニアミス、ニアミス…残念
それにしても赤兎の紅葉はキレイでした…ねっ
akakiriusagiさん コメント有難うございます。
赤兎山に登っている最中、突然、akakiriusagiさんのことを思い出しました
まさか同じ日に登っておられるとは
>避難小屋の扉が開いていたのは・・・
昼間に使った人が多かったからではなくて、最後の人が閉めなかったからでしょう
>経ヶ岳〜赤兎も考えたのですが・・・
車二台を使わない限りここは難しいですよね。でも日帰りの場合には林道のゲートの時間があるので、慌ただしくなりますね。
出来れば経ヶ岳から入って鳩ヶ湯に降りて温泉に浸かりたいと思っていたのですが、そうしたらakakiriusagiさんに再びお会い出来たかと思うと残念。
やはり冬のコースを踏襲したいと考えて、このようなコース取りになってしまいました。3人くらいでタクシー代を割り勘にするならありでしょうが、そうでなければ決しておすすめ出来ません。
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