北岳〜間ノ岳〜農鳥岳 縦走
- GPS
- 32:00
- 距離
- 23.4km
- 登り
- 2,519m
- 下り
- 3,216m
コースタイム
7月29日 北岳山荘4:50ー6:50間ノ岳ー7:45農鳥小屋8:00ー8:50西農鳥岳ー9:40農鳥岳ー12:55大門沢小屋13:30ー15:50奈良田登山口16:00ー16:30第一発電所ー16:50奈良田駐車場
天候 | 7月28日:曇り 7月29日:雨 |
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過去天気図(気象庁) | 2013年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
奈良田から先はシーズン中マイカー規制となる。 奈良田から第一発電所(大門沢、農鳥方面登山口)、広河原(北岳方面登山口) 行きの路線バスが運行されていて、両方の駐車場にバス停がある。 広河原まで行く場合は、約50分バスにゆられることになるので、第一駐車場のバス停に早めにならんでバスの座席を確保するのがベター。 |
コース状況/ 危険箇所等 |
左股コースにある雪渓は、はじっこがもろくて崩れそうな部分が多く、踏みぬかないよう要注意。トラバースする個所もあったが、我々は登りだったこともありアイゼン履かずに足あとのトレースでいけたが、下る方々はアイゼン履いたほうが無難だと思う。 北岳バットレスにに沿って登る区間から八本歯のコルに出る手前に、細めの丸太で作った梯子がたくさん登場するが、足元が滑りやすく、また手すりも丸太で、その多くが直径10cm以上あり、握ることができず手すりの役目を果たしていない。特に下りには注意が必要。 大門沢小屋からの下りで何度も沢を渡るが、架かっている橋には手すりなし、スリルあり。(手すりの代わりにロープが一本張られてはいる.....) |
写真
感想
早めの梅雨明けと同時に襲いかかってきた猛暑と集中豪雨が気になるなか、誰が言ったか、一年で最もいい天気になる確率の高い7月第4週に、我々が選んだ山は、南アルプスの象徴北岳、そして3000メートル超えの白峰三山縦走コース!富士山を間近に感じながら雲の上を空中散歩!!もう、想像しただけでよだれが出ちゃう、もとい、うっとりしちゃう山行である。一週前、足慣らしに大日ヶ岳に登り、前広に買出しを済ませ、準備万端で当日を迎えたつもりだったが・・。
出発直前にバタバタとパッキングをしたのがいけなかった。登山用ズボンを忘れてしまったのである。奈良田第一駐車場での仮眠から目覚めて着替えを始めるまで気がつかなかった。Gパンかカッパで行くしかないかとあせったが、不幸中の幸いか、着替え類のなかに三本線のトレパン(ジャージ)が紛れ込んでいた。仮眠のときに履こうと思って持ってきたのだ。かくして、トレッキングパンツならぬトレーニングパンツでの、うれしはずかし白峰三山トレパン登山が幕を開けた。相方よ、頼むから離れて歩かないでおくれ。
今回は北から南下する予定で、奈良田第一駐車場から北の出発点である広河原まで、山梨交通の路線バスに乗り、約50分かけて移動する。体力温存のためにはバスの座席を確保したいところである。駐車場にいた周りの方々がバス停に並びだしたため、我々も朝食を後回しにして乗車待ちの列についた。先頭から5番目だからバス座席はゲットできそうだ。やがてやってきたのは、場にそぐわない白黒縞模様の、年季の入ったバス。こやつサファリパークとの掛け持ちなんかな。バスの座席は40席ぐらいあったが、始発の第一駐車場でそのほとんど
が埋まってしまい、第二駐車場から乗り込んできた方々は大多数が立ちっぱなしとなった。その場にいた全員が乗り込んだ時には満員御礼状態。「乗りきれず残された場合はどうするんだろう、その時点でタクシーを呼ぶのかなぁ?」と、相方共々素朴な疑問を感じているうちに、シマウマバスは重くなった体を揺らしながらのっそりと出発した。座れたのはいいが、なんだか立ちっぱの方々に申し訳ない…彼等を代弁してひとこと「トラ模様でいいから、もう1台出さんかい」
乗車券にはさみを入れていたバスの車掌さん、そして、彼女が持っていた大きな「がまぐちカバン」、テレビのなつかし映像をみているような、少し時間が逆戻りしたような不思議な感覚を味わえた、広河原までのプチバス旅であった。これでシマウマバスがボンネット型だったら完璧だったのに。
広河原に到着後、用を足し、ストレッチを済ませていざ出発!今日の天気予報は曇り時々晴れだが、明日にかけてだんだん悪くなるような、嫌な感じだ。でも相方はさすがのポジティブシンキング、こういう曇りがちの日だからこそ雷鳥やブロッケン現象と出会えるかもしれないよ、だって。たしかにそうだよね、なにかご褒美がないと報われないし。
なかなかにタフな登り、思いのほか大きな雪渓、細めの丸太でできた滑りやすい梯子の連続、八本歯のコルに出てからの岩場と、変化に富んだ左股コースを、時折現れるかわいい花々を愛でながら進む。後ろを振り返ると、たまに雲が切れて山々がひょっと顔を出してくれることもあったが、前方はまるでダメ、厚い雲に覆われており、さらに後ろからガスに追いかけられているような状態だった。眺望のご褒美がおあずけなら、せめて雷鳥、せめてブロッケン、と周囲をキョロキョロしながら登るが、一向に現れてくれない。この日唯一といっていい眺望は北岳バットレスだった。ガスの合間から姿をみせてくれ、その岩壁上方に何人かのクライマーが張り付いているのを相方が見つけた。アンビリーバブル!勇者の無事を祈るばかりである。
縦走路と交わった分岐で相方のザックをデポして北岳を目指す。周囲は相変わらず雲に覆われたままだったが、粛々と歩を進め、想定どおりの所要時間で北岳登頂となった。山頂での山ランチはレーズンパン&ひとくちサイズのベビースターラーメン、そして冷たいフルーツゼリー。手軽で美味しかったなぁ。(カップラーメンを持っているのに水を持ってこなかったことはあえて言うまい・・。)すぐ近くで7,8人のグループが登頂記念にワインで乾杯してた。北岳山頂で味わう美酒は格別だろうな。飲んだのは少量ではあろうけど、この先の道中、気をつけて行って下さい。
てっぺんはとったものの、なんも見えない、このまま待っても富士山達に会えそうもないため、後ろ髪を引かれながらも日本第2の高峰を後にして、今日の寝床を早めに確保すべく、一路北岳山荘を目指した。
サクサク降りてきたおかげで、15時過ぎには北岳山荘に到着した。チェックインの際、二人で1セットのフトンとなる可能性が高い2階大部屋か、狭いが一人で1セットのフトンが使える3階屋根裏部屋かを選ぶことができ、我々は迷わず後者を選択した。
3階屋根裏部屋への移動手段は、2階大部屋を2分する通路のど真ん中に設置されている梯子で、驚いたのは、梯子を上ったあたりの屋根裏部屋の床と天井(屋根)の間が50cmぐらいしかないことだ。天井は斜めになっていて、奥(窓側)へ行くほど高くなるが、窓際の一番高いあたりでも1m20〜30cmあるくらいで立つことはできない。幸運?にも我々は窓側から並びの場所を確保できたからまだよかった。梯子側の場所にいた方々は、普通に座っていても頭が天井に当たりそうなほどであった。圧迫感あふれる部屋内の主な移動手段はハイハイか芋虫ゴロゴロである。ただし、隣の方との間隔は限りなく狭く、皆がフトンを敷き詰めて就寝体制に入った場合、寝ている方をよけてハイハイすることはどう考えても不可能に思える・・・。ということで、梯子から一番遠い奥の位置に陣取った我々は、就寝の際には一番早く奥に入り、明朝部屋を出る際には梯子側の方々が起きるまで待たねばならないということになる。やっぱ、何にでも一長一短があるんだなぁ、と妙に納得してしまった。
山荘のおいしい夕食後、明日に備えて早めに就寝、翌朝は4時に起床した。梯子側にいた方々はすでに部屋を出ておられたので、昨日の心配も杞憂に終わり、チャッチャと出発準備を整え、水を補給し(宿泊者は1リットル無料で水をもらえるのだ)、朝食代わりのお弁当を受け取って北岳山荘を出発した。
出発時の天候は曇りで西側斜面からの風強し、時々雨が降るという感じ、ガスに覆われて右も左もまっしろけだ。せっかくの3,000M超え空中散歩も眺望ゼロでは、クリープを入れないコーヒーか、イモトのいないイッテQか、とにかく味気ない。モチベーション下がりっぱなしのまま1時間ほど歩いたところで朝食タイムにした。食べたのは北岳山荘で注文した弁当、五目寿し風ご飯に数種類のおかずがついていて美味しゅうございました。お腹がふくれたら元気が湧いてきて、冷たい雨粒に顔を叩かれながらも、吹きつける強風にあおられながらも、ひるむことなく(宮沢賢治か)、一歩間違えば人生サヨナラとなりそうな霧中の断崖を縫いように登り下りし続け、まずは間ノ岳を、続けざまに西農鳥岳、そして農鳥岳をやっつけたのだった。食べるって大切なのね。
途中、農鳥小屋でトイレ休憩したのだが、我々に続いて韓国人のグループがやってきた。あとで聞いたら35名の大所帯だった彼等が農鳥小屋以降けっこうなスピードで追ってくるので、我々は何度となく道を譲ったが、なかなか全員をやり過ごすことができなかった。彼らは幾つかのグループに分かれていたようで、歩くペースが我々と同じか、少し遅いグループもあったからだ。結果、我々はチーム韓国に前後を挟まれながらの縦走となった。歩の遅いグループのリーダーは、グループの前に行ったり後ろに行ったりしながら、メンバーのケアをしたり他のグループの様子を見たりしているようだったが、我々の前後もウロチョロ、失礼、行き来するのではっきり言ってU・ZA・I。それでも、山肌に映える花の群生に癒されながら大門沢小屋までの道のりを先に進む。
今日は大門沢小屋に泊まるか、下まで降りるか決めないままスタートしたが、小屋付近まで来たところで相方と話をして、下まで頑張って降りることにした。やっとこさ小屋にたどり着いたのはよかったが、あいにく雨が強く降ってきた。我々より先に着いていたチーム韓国勢で天幕を張った休憩スペースは寿し詰め状態、仕方ないので天幕の片隅で立ったままで行動食を食べたのだった。カップラーメンはまたお預け・・・。
もうひとつ困ったのは、奈良田の旅館に連絡しようとしたが電波が通じなかったことだ。事前に確認した際、当日でもお昼までに連絡すれば泊めさせてくれそうだったのに。小屋の横にいるのになぜ通じないのか理由はよくわからない。天候不順のためなのか?小屋に着く手前の道には携帯(docomo)が通じるような案内版が掲示されていたが、そういえば天候の具合に左右されるようなことが書いてあったかな。
大門沢小屋には泊まらないが、下山後の宿舎の確保もできていない。まあ、降りてから当日予約のできる宿を探してみて、なければ泊まらずに帰ってもいいか、ということで奈良田に向けて再出発した。
大門沢小屋からは沢沿いの道となる。途中、休憩していたチーム韓国の先発隊をサクッと抜いて、彼らに追いつかれないようほぼ休憩無しでガンガン下る。水を得た魚状態で飛ばす相方についていくのがやっとだったが、彼等からはかなり先行したようだ。これで国際紛争、もとい国際交流も終わり、落ち着いて歩を進められるかな。
下りの道中では何度も沢を渡るのだが、架かっているのは八本歯のコルで出会ったような細丸太の梯子に近い橋で、手すりはなく、代わりにロープが1本渡されているだけの代物だった、丸太の間隔は一定ではないわ、平行に打ち付けてないものもあるわ、表面は雨に濡れてツルツルスベスベだわ、で危なっかしい!フィールドアスレチックやりにきたんじゃないんスけど。このような橋を何本か渡ると、今度は若干斜めに傾いてる定員1名の吊橋が出現。ところどころにスリルあるアトラクション(?)が仕込まれていてなんだか楽しかった。スリルといえば、出会いのスリルもあった。ひとつは体長20cmほどのガマ蛙との遭遇だ。足元に突如出現したガマに相方おおいに驚き、ギャーっと悲鳴をあげたのだが、ガマはその悲鳴にビックリして変な角度で飛び跳ね、着地に失敗してた。ガマのほうが怖かったにちがいない・・。
もうひとつは、登山者とは思えない服装で、カッパ代わりに工事現場にあるような青いビニールシートの切れ端を背にまとい、木の枝を杖にしてヨロヨロと歩いているオジサンとの遭遇。相方は何も感じなかったようだが、オレには、南アルプス山中を逃げまどう理由ありの逃亡者というふうに見えてしまった。我々が追いつくとにわかに彼は立ち止まった。すれちがう瞬間彼はぐすっと嗤い、突然両手を広げて覆いかぶさるように襲い掛かって・・・くることはもちろんなく、道を譲るとともに軽く会釈をくれたようだった。オジサン、変な想像をしてごめんなさい。
大門沢小屋をスルーしたため、都合約17kmの長丁場となった2日目の行程はさすがにこたえた。体力も気力も使い果たした感じで、奈良田にたどり着いた時にはもうヘロヘロヘトヘト、やはり無理は禁物ということか。きしむ体を車に押し込んで、すぐそばにある町営奈良田の里温泉へ向かう。雨やら汗やらでグッショリの服を一刻も早く脱ぎすて、熱いシャワーを浴び、温泉に浸かってさっぱりしたい、それ以外のことは考えられない、考えたくない。
さて、この温泉、幹線道路からわき道を150mほど登った坂の途中にあるのだが、駐車場が隣接されていない。駐車場はどこかというと、え?坂の下なの?意味が分からない。文句を言ってもが仕方がないので、車を駐車場に置き、けっこうな傾斜の坂をトボトボ登り返す。なかなか楽をさせてくれない。
温泉には他のお客さんがおらず貸切状態だった。これはありがたい、絶景との出会いも野生動物(ガマを除く)との出会いもなかった2日間だったが、最後の最後にご褒美をいただきました、と、いい気分で熱くもぬるくもない滑らかなお湯に一人浸かってホッと一息ついたとたん、脱衣所がにわかに騒がしくなり、すぐに20人ぐらいの団体が、まるで喧嘩しているような大声でわけのわからない言葉を喋りながらドヤドヤと入ってきた。体も流さずにドボンドボン湯船に入ってきたおかげで、大きくない湯船はイモ洗い状態になり、4つのカラン(5つあるうち1つが使用禁止になっていた)には順番待ちの人だかり・・・。喧噪とは無縁のひなびた温泉は一瞬にして週末のスーパー銭湯と化したのである。湯船の片隅に追いやられ、彼らの出入りで大きく波打つお湯に体を揺らされ、洗い場から時折飛んでくるシャワーの冷水を後頭部に浴びながら、何故だかこみ上げてくる笑いをこらえつつ、しばらく動けずに固まってしまったのであった。最後のご褒美がチーム韓国のおまけつきだなんて、山の神様も粋な計らいをしてくれたものである。(涙目)
堪忍してやぁ もう
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