シレイ沢[白井沢]左俣遡行


- GPS
- 10:46
- 距離
- 13.8km
- 登り
- 1,638m
- 下り
- 1,793m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2021年07月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
バス 自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
【二俣まで】 ・入渓は白井沢橋右岸上流側からだが、ガレと泥が堆積していて悪い。たまたま近くにあったトラロープを灌木に適当に結んでゴボウしながら下降したが、残置がなければ懸垂下降が無難かもしれない。 ・ガレ場を越え、沢が多少ゴルジュ状になるところにある8mCS滝は、頑張れば直登出来そうにも見えるが、容易に巻ける。 ・左から小沢が入る先にある3段20m滝、10m斜瀑、5m滝は連瀑で、右から直登できる(最後の5mは小さく巻く)が、ぬめっていてやや悪い。左から容易に巻けそう。 ・登れそうにない7m滝は、その手前で左から入る小沢から巻いたが、その上で沢に戻っても次の12m滝が登れそうにないため、まとめて大高巻となった。12m滝は左岸の方が小さく巻けそうに見えたので、まとめて右から巻く方がいいかもしれない。 ・ひょんぐっている2段12m滝は左の岩のバンドを登り小さく巻いた。 ・標高2000m附近で沢床が花崗岩になる。 ・多段20m滝は水流左を直登できるようだが、下部は右の方が容易。一方上部は右も左も難しいので、樹林帯から巻いた。 ・シレイ沢のシンボルといえる34m滝は、右から巻くのが一般的なようだが、左から巻いてみた。小さく巻けて良いが、部分的にやや悪いスラブがあり、今回は都合よくあった倒木を利用した。 ・以降は癒し系のまま二俣に至る。 【左俣】 ・円形劇場のような20m斜滝と10m滝の連瀑は、遠目には登れそうにないが、20m斜滝を左から巻き気味に登り、10m滝の右の岩から取りついて一段上がってトラバースすることで、フリーで直登可能。 ・2350mの二又は、右が伏流しているのか、分かりにくい。 ・その先の7m樋状の上にある10mCS滝は登れそうにないので、まとめて大きく巻くことになるが、左から巻いたところ、小尾根に上がるところが急でRFもやや難しく、悪かった。沢に戻るところも見逃さないように要注意。 ・2440mでは左から入る沢に水が多いが、稜線に詰められるのは右の谷。滝があって直登は難しそうだが、左の沢を少し登ってからトラバースすれば問題ない。 ・詰めはやや長い白ザレで、景色は良いが足が沈むのでそれなりに大変。 【下山】 メジャーな登山道であるため省略 |
その他周辺情報 | ※ヤマビルなし 【シレイ沢左俣の他の記録】 ・沢登ルート図集100選(1976.7) ・日本登山大系9 ・ヤマレコ https://www.yamareco.com/modules/yamareco/detail-2530912.html 手持ち資料とオンラインから見つけ出せたのはこれらのみ。右俣のメジャーさに比べ、非常にマイナーである。 |
写真
装備
備考 | ・ロープは30m1本で不足感じず。 ・下部はぬめりが激しいが左俣に入るとぬめりは殆ど無くなる。下山も考慮するとラバーソールの方がどちらかというと良さそう。今回はラバーソール。 |
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感想
【経緯】
シレイ沢と言えば、超メジャーな沢だが、バスに乗り換える面倒さ、高い標高差、下山の長さがネックで、これまで行っていなかった。今回chelsea620(以下、K坂)に行ってみたいと言われたので、余裕があれば殆ど記録の無い左俣に行ってみるつもりで、計画した。
【アプローチ】
夜叉神峠駐車場が土日は満車になることもあるとか、バスが満員で乗れないこともあるとか、いろいろ不安があったため、2時40分に起床し、4時前に夜叉神峠駐車場に着いたところ、がらがら。5時半ごろに来たバスも空席だらけで、杞憂だった。そうと分かっていれば、もっとぎりぎりまで寝てたのに。
バス運賃はICカードも使えたが、協力金は現金のみ。まとめてsuicaで払いたいところ。車窓から見える景色は険しく、よくぞこんなところに道を通したという感じ。途中、かつての野呂川林用軌道のものと思われる廃隧道も見かけ、興味深かった。山側に目を向けると、交わる沢は悉く堰堤で固められており、この道の維持の苦労が想像される。
そんな感じで車窓を楽しんでいると白井沢橋に到着。
【二俣まで】
この橋の名前は資料によって適当に書かれており、白井橋だの志れい沢橋だの、どれが正確なのかよく分からなかったが、橋の銘板では、「白井沢橋」「しれいざわはし」(「し」は「志」の変体仮名)であった。疑問解決。
入渓は悪く、残置ロープを使うとのことだったが、埋まっていて使えない。何故か橋に結びつけてあったトラロープを灌木に結び、これを使って沢に降りた。謎のロープがあってラッキー。
沢名と、よく見る写真から白い花崗岩の沢かと思っていたが、赤みがかった黒褐色の変成岩が主体だった。最初の滝は、岩のぬめりもなく快適だった。
直登は骨が折れそうな8mCS滝を左から簡単に巻いて少しで、立派な3段20m滝。左から簡単に巻けそうだが、それではつまらないのでシャワーを浴びて右を直登。ぬめっていてやや怖いのでK坂にはロープを出した。
その先の10m斜瀑もぬめっていて、束子を使用の上、K坂にはお助け紐。次の逆くの字滝は容易だが、その次の7mは登れそうになく、巻きやすそうだった右岸の枝沢から巻いた。しかし下からは見えなかった登れそうにない12m滝が立ちはだかり、これは左岸の方が巻きやすそうだったが、今から左岸には移動できないので右岸を大高巻。ここは藪っぽく割と面倒だったが、沢にはスムーズに戻れた。
2000m附近で急に沢床が好きな花崗岩になり、渓相の変化に期待を持つ。
銘渓62選に、王様のような滝とかよく分からないことが書かれている20m滝の下部は、左から登れるらしいがやや悪かったので、簡単な右から下部を登る。古い記録では上部も直登しているようだがかなり厳しそうなので右岸から大きめに巻いた。
すると、左岸に大きなザレスラブと正面に「白い滝」と呼ばれる茶色い滝が見えて、この沢のハイライト。しかし、茶色くて噂ほど綺麗ではない。
通常左岸から巻くようだが、右岸の方が小さく巻けそうだったので試してみたところ、1箇所ハンマーのピックを挿すくらい悪いところがあったが、概ね快適に巻けた。倒木に助けられたところもある。
その後はナメ主体の渓相に癒されながら二俣に着いた。
【左俣遡行】
さて、ここまではスムーズに辿り着いたので、協議の末、最近の記録の殆どない左俣へ入ってみることに。
最初の方の滝はまああまり印象に残らない感じで巻いたり登ったりし、多段20m滝とその上の直瀑10mが見えてくるが、弧を描く側壁に囲まれた下部ハングの直瀑で、直登も巻きもかなり厳しそう。一応近づいてみようということで、多段20mを左から巻き気味に登って、10mの下へ。すると、確かに水線はハングしていて登れないが、右を登ってからトラバースすれば行けそうだと分かる。ここでこの日初めてロープを使ってリードし、渾身のトラバースを決めて直登した。これでこの沢の核心は終わりかと思ったが...
2350m附近の分かりにくい二俣の先でゴルジュの中にCS滝が落ちていて、登れそうになく、巻くことにする。両岸とも岩が立っていて厳しそうだったが、沢登りルート図集100選のトポに従い右岸から巻く。しかし予想通り岩が多くてクライミング的で、1箇所ロープを出して登ろうとしたが、木が折れたりA0しようとしたカムが抜けたりして2度フォール。下地が良かったので擦り傷程度だったが、諦めてもっと大きく巻くと、これまた高度感のある木の根クライミングで何とか小尾根状に出て、そこから意外にもスムーズに沢床に復帰できた。
登れる滝と狭い樋状を楽しく越えて、2440mでは左の水量が明らかに多いが、稜線登山道に直接出られる右を選択。とはいえ実際には滝が登れず、左の沢筋に入ってから巻いた。
その後も3つ出てくる涸棚を登ったり巻いたりすると、谷は不明瞭になり、白ザレとなる。この辺りも景色は良いが登るには疲れる。しかし藪よりはマシで、休み休み登っていくと、スムーズに登山道に出た。
【稜線と下山】
沢ばかり登っていて縦走登山などしたことのないtamoshimaにとっては初めての南ア主稜線。とりあえず荷物を置いて観音岳まで往復したが、青空と白砂、灰色の岩塊のコントラストが美しい、素晴らしい景色を楽しめた。しかし、最初の30分くらいはいい気分だったものの、やはり稜線の景色は沢に比べると変化が乏しく、だんだん飽きてくる。
砂払岳を過ぎると樹林帯に入り、景色もあまり楽しめなくなるので、ただただ下山。勾配が緩くなるようにうまく登山道がつけられているので歩きやすく、どんどん下山できるのはありがたい。途中、南御室小屋で冷水が供給されていたのもありがたかった。ペースを落とさずどんどん下山し、結局地蔵岳から登山口までは時間で下山できた。
【総評】
メジャーな沢でも、ルートの取り方次第で開拓的な遡行が出来ることもある。メジャーな沢の良いところと、新規性のあるところと、両方を楽しめた上、天気に恵まれて初の南ア主稜線の景色も堪能でき、大変充実した山行となった。
余力があれば、このシレイ沢左俣はお勧めである。おそらく、右俣より遡行価値が高い。3級上。
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