憧れの北アルプス・燕岳(燕山荘泊)
- GPS
- 12:23
- 距離
- 13.7km
- 登り
- 1,572m
- 下り
- 1,581m
コースタイム
08:40 第1ベンチ
10:00 第3ベンチ
10:45 富士見ベンチ
11:30 合戦小屋(昼食休憩55分)
12:55 合戦尾根
13:40 燕山荘
天候 | 10/4:曇り 10/5:曇り一時雨 10/6:曇り時々晴れ |
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過去天気図(気象庁) | 2013年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
電車
飛行機
10/5 燕山荘泊 10/6 下山口11:45→穂高駅13:52発→JR名古屋経由新幹線→博多駅20:40着 |
コース状況/ 危険箇所等 |
■登山道の状況 初めての北アルプスでしたが、整備された登山道には驚きました。これで道迷いをすることはありませんね。恩師曰く「ここまで整備された登山道は北アルプス一」だそうです。 登山口からすぐ始まる急登はなかなかのものです。後半には鎖場も一応あります。それでも福岡市民であれば日課の宝満山の登りに比べると楽なものだと思えるでしょう(笑)。 ■登山前後の温泉 下山後に温泉が楽しめるのは嬉しい所です。今回は二つの温泉を楽しみました。 登山前に前泊した「中房温泉」は秘湯感たっぷり。敷地内に露天・内湯ともに幾種類もの温泉があり、ハシゴすると面白いです。ただしどれも基本的には混浴で、露天は脱衣所も丸見えなので女性は心構えを。僕が行った日にはオバチャンが気持ち良さげに入浴されていました。 下山後に入浴と昼食をしたのは「有明荘」。ここは燕山荘の経営なので、山荘の宿泊者は割引サービスがあります。さすがにグループらしく、施設・サービス・内容・笑顔ともに顧客満足度は最高ですよ。 |
写真
感想
先ず最初に。ヤマレコの山行記としては凄く長文です、スミマセン。
金曜日から三日間のお休みを頂いて憧れの北アルプス・デビューを果たしました。今年の5月に恩師から「一緒に燕岳を登りましょう」と誘って頂いたことがやっと実現し、今回は70歳の恩師・40歳の後輩君(弟弟子)、三人での山行となりました。
九州・福岡から北アルプスを目指すと時間がかかります。往路は数ルート検討しましたが、飛行機で福岡→名古屋、JRで名古屋→松本→穂高と行くのが効率的のようです。福岡→名古屋間はLCCが運行しているので新幹線よりお得ですね。結果的に、福岡空港8:40発→JR穂高14:36着ということで約6時間@10,100円の移動となりました。ちなみに飛行機は初めて利用するJetstarです。名古屋までの基本料金は驚きの4,980円。今回はザックが14kgあったので(テント泊の重さですね。酒瓶を3本入れたので仕方ありません)、オプション込みでそれでも6,680円でした。
時間的に最も早く穂高に到着するには、博多駅を6:05発のぞみ2号→名古屋しなの7号→松本の全線JR利用です。これだと12:36に穂高に到着、6.5時間@20,800円(指定席利用)ですが、高い上に僕には朝が早すぎます。ただ、これなら初日に燕山荘まで行けるので表銀座縦走には使えそうです。次回には検討しましょう。
さて初日(金曜日)はいわゆる前泊入りで中房(なかぶさ)温泉に泊まりました。ここは正しく秘湯ですね。昭和の香りが濃くします。番台と言いたくなる受付で温泉の説明を受け、早速露天風呂へ向かいます。ここで後輩君が一発やってくれました。都会育ちで今回が人生初登山の彼、受付で「あの〜、バスタオルはありますか?」と尋ねてました。受付のオジサンもそんな事を聞かれたのは、きっと初めてでしょう(笑)。
中房温泉の露天風呂は敷地内に点在しています。「はずれの露天は日が落ちると足元が見えなくて危険だから行かないように」と注意を受けるような場所にあります。ならば、と先ずは一番遠くの「白滝の湯」に行きましょう。確かにコレはワイルドです。登山道を歩いて行く感じで、宿のスリッパでは危ないかもしれませんね。しかし行く価値は十分あります。源泉から湧き出たお湯が崖を伝い落ちるうちに適温となって、実にいい湯加減でした。
次に向かったのが蒸し風呂です。地面からもうもうと湯気が立っています。これはどうやって入るものなのでしょうか? 取りあえず脱衣所にあるムシロを敷いて、その上に寝転がってみると…う〜む岩盤浴な感じ?でも地表以外は寒い…。ここは早々に切上げ、お次は…とココで温泉レポしても仕方ありませんね(笑)。まあとにかく楽しい温泉宿でした。夕食で恩師と僕はビールを開けましたが、後輩君はワイン。このワインの注文時にお宿の人が「いいんですか?値段高いですよ?」と念を押すあたりが(笑)。
さて明けて土曜日、いよいよ登山口から出発です。実はこの日は新調した靴で臨みました。それまで使用していたモンベルのツオロミーがへたってしまったのと、冬の九重を登りたくてライトアルパインブーツが欲しかったのです。検討の結果、ノースフェイス・ヴェルトS4Kを購入。卸したてで燕岳登山に使うのはちょっと不安もありますが、まぁ何とかなるでしょう。…と思っていたら恩師も真新しい靴。しかもガルモント・タワープラスGTX…これ僕も狙ってたんですよね。
登山中の様子は主に画像のコメントに任せますが、想像していたほど寒さもなく、強い雨もなく快適な登山となりました。
まず登山口を出てすぐに始まる急登です。うーん、さすがに北アルプス三大急登と呼ばれるだけあるかな…と最初は思いましたが、70才の恩師のペースに合わせたためさほど辛くもありません。ちなみに登山口:1,462m〜合戦小屋2,375mまでの急登は距離(沿面)にして2.9kmなので、平均斜度(勾配)は31.5%か。宝満山が27.5%だからツバクロの方が確かに急なんだけど…登山道が圧倒的に歩きやすい!だからきつくないのですね。
登山口から合戦小屋まで休憩を挟んで約3時間40分かけて登ってきました。恩師は70才で左足を故障中(今回は痛み止めを飲んでの山行と無理をさせてしまいました)。それでこのタイムは凄いのではないでしょうか。さすがの山男ぶり。後輩君と「40代の我々が70才になったとき、あのように山に登っていたいものだね」と話しました。また別に感じたことは、裏山って大切だなぁと言うこと。ウチの裏山は標高802mの低山ですが、月に二度ほど登るおかげで北アルプスを登れるのですから。
そう言えば、第3ベンチの手前で先行していた女性二人組みに道を譲って頂きました。いわゆるイマドキの山ガールですね。僕らもスローペースなのですが、彼女たちも僕ら以上に…。休憩中に追いついてきた彼女たちと立ち話をすると、なんでも北海道からやって来たとか。北海道名物のオカキをお裾分けして頂いたり、写真を撮ってあげたり、その後も山荘で顔を合わせたりしたので、夕食後に一緒に飲みましょうと言う話になりました。いや〜、山っていいですね(笑)。
ところで新調したヴェルト、合戦小屋の手前辺りで左足先に違和感が出始めました。微妙なのですが気になり始めると、どうもイケません。購入の際に、もうワンサイズ大き目にするかどうか悩んだのを思い出します。紐を締めなおして対処できたのですが、縦走などで8時間程歩く時のことを考えると多少不安です。ツオロミーで縦走10時間歩いた時は5時間目辺りで両足とも爪先が痛くなり、紐を締めなおしても上手くゆきませんでした。その時よりはすっとマシな感じすが。靴選びは難しいですね。試し履きは良くても、5時間後のことは分かりません。
さて合戦小屋で昼食をとることにしましたが、恩師が「この日の昼食は僕がラーメンを作るから任せて」と言っておりましたので甘えることに。僕は調理用の水にとして1L担いで来たのですが、何と恩師は4Lの水を担いできていました。先生、言って下されば僕が担ぎましたのに…。そういえば後輩君は自分の調理水も担いでいません(-_-;)。キミ、昨夜は僕の酒瓶も「一本担ぎますよ!」と言っていたよね…酔って覚えていないみたいだけど?
なんと言うことか、恩師のザックからは大鍋とバーナーが二つも出てきました。叉焼入りのラーメンと餅入りのカレーうどんを二つの鍋で作る恩師…。もちろん完食しましたが、涙でしょっぱくなりましたよ。そんな時に隣で後輩君が「もう腹一杯です!」と…コラ、スープまで飲み干せ(-_-メ)。ヤマではスープ一滴と言えど捨てたらイカンのやぞ。ましてや恩師が作ったラーメンやんか(涙)。
「あ、そうすね。じゃこの鍋も水で洗ったらダメなんすか?僕、トイレットペーパー持って来てるんで、それで拭きますよ。で、このペーパーも持って帰るんですよね」そうそう、分かってきたな…と彼が取り出したトレペの巨大なこと!
「あ、コレこないだアメリカ出張の時に買ってきたんですよ。デカイでしょー(笑)」ってオイ…。水と酒瓶は担がずにソレかい! ええ、初登山で経験も知識もない若者だと分かっていますけど、僕も登山初心者ですけど、ココはつっこませて下さい(-_-;)。
さて合戦小屋で軽く降り始めた雨も、尾根に出る頃には気にならない程度に。レインウエアを脱いで、目指す山荘まではあとわずか。天気予報は雨だったので、この状態でも御の字です。尾根筋から見えるはずの山荘もガスで見通しが利きません。鎖場とも言えないような鎖場を過ぎてしばらくすると、突然目の前に山荘が現れました。おお!着いた〜。ここまでで休憩込みの5時間50分でした。
宿泊手続きを済ませ、山荘にザックをデポしてガスの中、燕岳山頂を往復。山荘前のテーブルでビールを飲んでいるとガスがうっすらと晴れてきました。おお、おぉ〜(遠峰一青風に)。美しい燕岳の稜線が眼前に。ふと目を返すと槍の穂先も…。この時の感動はうまく言葉にできません。来たんだなぁ、北アルプスに…。恩師との再会とお誘いがなければ一生眼にすることのなかった風景です。ご縁ってスゴイ…。人の縁。この景色との縁。もちろん後輩君とも素敵な縁です(笑)。
恩師と20数年前に出会い、燕山荘の代表である赤沼さんと10数年前に出会い、恩師が燕山荘でたまたま赤沼さんとお話した時に出た話題で僕が共通の知人と分かり、様々な偶然が重なって今ここにいる。
「我々は常に他人の中で生きているのだよ。過去の自分も実は他人。未来の自分もね。真の自分は今、ここにしか存在しない。だから縁が大切なんだ。縁を大切にしなさい」…そう恩師は諭します。頭では分かっているけれど、実践できない自分にもどかしさを感じる毎日。でも今日は実感しました。この雄大な景色の前では、実感しない訳にはいかなかった。
陽が落ちて山荘での夕食が始まりました。今日のメニューはハンバーグ。チーズ入りです。美味い!ヤマメシって何でこんなに旨いんだろ。赤沼さんの計らいで、友人が経営しているというスイスワインをご馳走になります。しばらく経って赤沼さんのお話が始まりました。
「みなさん、本日はようこそ燕山荘へお越しくださいました」、と切り出した赤沼さんの話は機知に富んでとても楽しい。各メディアで絶賛される燕山荘の人気の一つは、赤沼さんのお人柄によるものだと思います。お話の中で赤沼さんは北アルプスの厳しい環境について語りました。
「北アルプスでは2500m辺りから森林限界、つまり高い樹木が生えません。合戦尾根辺りがそうですね。その代わりハイマツが出てきたでしょう。なぜこう言った森林限界ができるのでしょうか。それは北アルプスが世界の3000M級の山では類を見ない程の厳しい環境にあるからです。
北アルプスでは、日本海の暖流から立ち上った湿気のある空気がシベリア寒気による気流によって吹きつけられ、大量の雪と寒さをもたらします。時には風速30Mにも及ぶ風の中では高い樹はなぎ倒され育ちません。そこで育つのは例えばハイマツのような風を避ける低木になります。しかし、本来は気温がマイナス数十度にも下がる中では幹の中まで凍りつき、やはり育つことは出来ないのです。
ハイマツが生きることが出来るのは、雪に埋もれるからなんです。稜線では強風で雪が飛ばされ積もることがありませんが、稜線を外れた吹き溜まりには柔らかい雪が積もります。雪の下は気温が1℃から4℃程度なんですね。だから雪に埋もれたハイマツは生きることが出来るのです。そのハイマツに守られた雷鳥も生きることができます。
この高山地帯に生息する動植物は、実に見事なバランスの上でこの厳しい環境を生き抜いています。そこで皆さんに幾つかお願いがあります。それは、登山を楽しむために、この美しい自然を守るために、協力して欲しいことです。自然のものは、自然のままに。登山道から外れないように歩く。持ち込んだものはすべて持ち帰る。野生動物に餌を与えない。気温・風・体温維持に注意し、汗をかかない程でゆっくり登る。これからも北アルプスで多くの人が登山を楽しみ、感動を分かち合えるよう、よろしくお願いします」
お話の内容は正確では無いかも知れませんが、時にはユーモアを交えつつ赤沼社長は真摯に我々に呼びかけました。そこには「一つしか無い命を愛しもう。一度しかない人生を豊かに過ごそう」と言うメッセージが込められたように聴こえました。このお話は多分、何度も幾度もされてきたことなのでしょうが、それでも伝えきれないほどの思いが赤沼さんの内にはあると感じました。
その後、談話室に移って消灯時間まで恩師・後輩君・赤沼さんの4人で、赤沼さん自慢のワインや僕の自慢の日本酒を酌み交わしながら語らいました。経営について、人生について、自然について…こう言う時間は、まさに至福の時間です。夕食後に北海道の女性二人組みと飲みたいな〜等とヨコシマな事を考えた己を恥じましたね^^;。いや、実際その後は会えず仕舞いだったのですが…。ともかく最高の夜を過ごした翌朝もまた最高でした。
午前4時半頃に起き出した恩師の気配で目が覚めました。恩師はこれから燕岳山頂でご来光を拝むとのこと。僕はモルゲンロート(朝陽の事を山ではこう呼ぶのですね。ドイツ語でしょうか)に輝く燕岳を見たいので同行しませんでした。ちなみに夕焼けは「アーベントロート」。昨日は曇りで見ることは叶いませんでしたが、今朝は晴れています!この時間は星空も素晴らしいものでした。ちなみに後輩君はまだぐっすり寝ています(笑)。
午前5時過ぎ、山荘前で朝陽を待ちます。雲海が赤く染まり始めると神秘的な光景が眼前に広がりました。まだ昨夜の酔いが残っているのではないか、と思うほど自分の目の前の光景が信じられません。その時の写真はアップしていますが、未熟な腕前のせいかカメラで切り取ることが出来ません。いやいや、どんな腕前でもコレは無理でしょう。南を眺めれば幻想的な雲海に富士や南アルプスが。その左手には噴煙を上げる三原山。北には常念岳へ続く表銀座の縦走路とその奥に穂高連峰…。
朝から胸が一杯です。でも朝飯は腹一杯食いました(笑)。
ちなみに後輩君は朝飯の時間まで(恩師が戻ってくるまで)寝ていました。
さあ、名残りは尽きませんが下山しなければなりません。コーヒーを飲んで、赤沼さんに別れを告げ(と言っても実は赤沼さんとは来週また勉強会でお会いするのです)、出立です。帰路の間中、思っていたことは「このまま山に居たいなぁ」でした。後輩君に「どんだけハマっているんですか。ヤバイですよ」とたしなめられましたけどね(笑)。それだけ幸せだったってことよ。あ、でも下界が不幸せってことじゃないからね。
山はいいなぁ。
山に登ると頭がからっぽになって、心がいっぱいになる。
この年齢になって、山の魅力を教えて頂いた恩師と、楽しい山行にしてくれた後輩君と、素晴らしいおもてなしと計らいを頂いた赤沼さん、燕山荘のスタッフの皆さんに感謝します。さて、来週はどこ行こうかな!
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