剱岳 源次郎尾根から登り北方稜線へ下る
- GPS
- 23:10
- 距離
- 16.4km
- 登り
- 2,128m
- 下り
- 2,954m
コースタイム
●1日目(9.12 金)
09:10 室堂ターミナル 出発
09:50 雷鳥平テン場 -10:00
11:30 別山乗越 -11:40
12:06 剱沢テン場 テント設営
12:50 偵察出発
(剱沢雪渓はアイゼンセットしないで下降できた)
13:30 源次郎尾根取付き
16:00 剱沢テン場 幕営
●2日目(9.13 土)
04:04 剱沢テン場 出発
(剱沢雪渓はカチカチでアイゼンセットしないと下降できなかった)
05:00 源次郎尾根取付き(アイゼン外し) -5:13
10:00 喫ピーク -10:25
10:35 喫と曲のコル
11:10 曲ピーク
11:15 懸垂下降ポイントでロープセット -11:30
11:33 コルにて懸垂下降メンバー確保、ロープ回収 -12:15
13:11 剱岳頂上 -13:33
14:10 長次郎のコル
15:40 池ノ谷乗越 -16:00
(雨のなか池ノ谷ガリーを下降)
16:50 三ノ窓テントサイト 幕営
●3日目(9.14 日)
07:23 三ノ窓テントサイト
07:44 小窓ノ王の肩 -7:55
09:29 小窓(コル) -9:45
09:50 小窓雪渓先端でアイゼンセット -10:00
10:17 鉱山道取付き -10:25
10:44 展望場所
11:06 池の平小屋 昼食 -12:10
12:39 仙人峠 -12:50
13:05 仙人池 -13:30
13:43 仙人峠分岐
14:45 二股吊橋 -14:59
16:00 真砂沢テン場 幕営
●4日目(9.15 月)
05:50 真砂沢テン場
06:03 剱沢雪渓横断(三の沢あたり)
07:33 ハシゴ谷乗越 -7:50
09:00 内蔵助平の鉄橋 -9:10
10:00 内蔵助谷出合 -10:15
11:40 黒部ダム下
12:12 黒部ダム駅 着
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天候 | 9.12(金) 晴れ時々曇りガス 9.13(土) 晴れのち雨 9.14(日) 晴れのち曇り 9.15(月・祝) 曇り時々晴れ - |
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過去天気図(気象庁) | 2014年09月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
ケーブルカー(ロープウェイ/リフト)
9.12 朝一 扇沢駅→室堂ターミナル ---------------------------------------- 9.15 昼すぎ 黒部ダム駅→扇沢 ロイヤルホテルにて入浴後 大阪までクルマ移動 - |
コース状況/ 危険箇所等 |
【室堂T〜別山乗越〜剱沢テン場】 一般ルートであり、多くのレポートがありますので、他の方のものを参照ください。 【剱沢テン場〜剱沢〜源次郎尾根〜剱岳】 テン場の標高は2500mで源次郎尾根の取付きの標高は2000mになるので、この源次郎尾根ルートは、ざっと500m下って1000m登ることになります。テン場から40分〜50分ほど下ることにより源次郎尾根の取付きに着けます。早朝は雪渓の表面が凍る場合があるので、アイゼンは必須です。剱沢の源次郎尾根の取付き場所は、平蔵谷の入口の大岩(写真参照)の対岸なので判りやすいです。取り付いてすぐにある岩壁が、このルートの最初にして最難関の岩です。と言っても3級+程度なので、少しでもクライミングされている方には特に問題はないかと思います。我々はテントや食糧装備を持った重装備だったので、一人が最初に空身で登って、ロープを出して登りました。残置ロープもありましたが、ゴムの様に伸びますので要注意です。 しばらくハイマツなどの樹林の中を木枝を掴んで登るルートを進みます。そのため、ザックの外付けは厳禁です。その後、ときどき岩場になりますが、注意点としては、たとえ踏み跡があっても稜線を外さないことです。右に進もうとする踏み跡が結構ありますが、これを進むと悲惨な目に遭うらしいです。体力的には喫(2709m)までが勝負です。これを越えることができれば、まだまだ先は遠いですが、その勢いで曲(2770m)、さらに剱岳頂上まで達することが出来ると思います。 喫の下りは急ですがハイマツを掴んで下れば特に危ないというほどの下りではありません。曲の登りも稜線沿いにハイマツと岩のあいだを、木枝を掴んで登ります。これも見た目より急ではありません。曲のピークから少し先に進んだ場所に懸垂下降のためのりっぱな支点があります。大量の捨て縄と、残置カラビナが2個(一つは環付)ありましたので、これをチェック後、利用させてもらいました。ロープは8ミリのツインロープ30mを2本、ダブル使いで、ATCガイドにセットし、ペツル方式(その他情報参照)で懸垂下降しました。これで一番下の安定したコルに到達できます。ロープが細いので上端はオーバーハンドノットではなくナインノットで、結びしろを40cmほど残して結束しました。下端はオーバーハンドノットを使いました。これでも30mロープでちょうど良い長さになります。私が先に下りて、ロープをATCガイドにセットしたままコルにて確保し、メンバーに順に降りてきてもらいました。その先は剱岳頂上まで、一箇所だけ岩場がありますが、踏み跡を歩いて登れます。剱岳頂上は感動的で、振り返ると細長いピークを持つ曲が印象的でした。 ちなみに今回は他のパーティに待たされることも、待たせることもほとんどありませんでした。この日の源次郎尾根は知る限りにおいて3パーティで10名ほど、いっぽう、別山尾根は平均2時待ちだったそうで、ご愁傷様です。 【剱岳〜北方稜線〜池ノ谷乗越〜三ノ窓】 北方稜線は技術的にはそんなに難しくありませんが、ルーファイとコンセントレーションが必要になります。浮き石に乗ったり、岩の上の砂で滑ったりしたら致命的です。個人的に北方稜線は4度目になりますが、初見ではルーファイが結構厳しいと思いますので、一度、このルートの経験者と一緒に行くことをお勧めします。ルートは稜線かもしくは稜線の東側をまきます。長次郎の頭を東側に巻いてトラバースする場所あたりが、ルーファイ的に最も難しいと思います。ルートを間違えると行き止まりますので、戻って行き直しましょう。またこれは、戻れない進み方をしないことを意味します。モアイ像を左側に見て進むと、2枚岩のサイトに着きます。ここは万一の場合のビバークサイトなので覚えておくといいでしょう。2枚岩のサイトでは左上に巻く様に登ってから下ります。 池ノ谷乗越への下りはロープがタテに3本ほど連続して張ってあります。以前はなかったので、右側のチムニーに嵌まりながら降りたのですが、とても安全になりました。池ノ谷乗越では正面にチンネなどが聳え、右は八ッ峰方面への踏み跡があり、左は池ノ谷ガリーです。間違っても八ッ峰方面へ進まないでください。状況にもよりますが、池ノ谷ガリーを40分〜50分ほど降りたら三ノ窓に着きます。後続パーティが来ている場合は、お願いしてしばらく待ってもらったほうがいいと思います。今回は雨が降ってきて、ガリーがさらに弛んで、一抱えもある大岩ですら転がって来て、大変恐かったです。ある程度降りたら、ガリーの右側を進むようにすると、稜線ぽい道に逃げることができますので、これを降りれば三ノ窓に着きます。三ノ窓は尾根の西側にも東側にもテントスペースがあり最低でも6張りぐらいは大丈夫です。雪渓もすぐ前にあり水を確保できます。朝日を享受したいのなら東側にテントを張るといいでしょう。 【三ノ窓〜小窓ノ王の肩〜小窓〜小窓雪渓〜鉱山道〜池ノ平小屋】 もし初見なら、このあたりも難しいルーファイが強いられます。三ノ窓のテントサイトから小窓尾根の端にそって下ると、斜上するルートが見えます。これが俗称”ミサイル発射台”と呼ばれている登りで、小窓ノ王の肩で小窓尾根を東側へ乗越します。一見、難しそうに見えますが、そんなことはありません。小窓ノ王の肩に着いて振り返ると、それはもうエゲツナイ(スバラシイと言う人も)池ノ谷ガリーが一望できます。あんなガレた急坂、よく降りて来たな!!!・・・という感じです。 その先は小窓尾根の稜線のすぐ東側を平行して北上しますが、ドーンと降りたり、またトラバースしたりして進みます。このあたりの岩の表面は凍っている場合があるので注意が必要です。ほどなく幅10m弱ほどの急な雪渓をトラバースします。ステップが出来上がっている場合は、アイゼンなしも通過できますが、ステップが浅かったり、早朝で凍っていたりする場合はアイゼン装着が必須です。ここで滑ったら即死です。夏の早い時期には、もう一箇所、こういった雪渓のトラバースがありますが、今年は融けていました。 小窓尾根から離れて”くの字”に曲がって北東方向に下るようになると、樹林のトンネルを木枝を掴むように急に下り、池平山とのコルである小窓に着きます。お天気が良ければ、とても居心地のいい場所です。すこし降りて小窓雪渓のふちまで行ってアイゼンを装着します。小窓雪渓は急ではないのでアイゼンなしでも下れますが、アイゼンがあったほうが速いです。スタート地点で時間をチェックしておきましょう。普通のスピードで15分ぐらい下ったら左側(北側)に鉱山道の取付きの赤いペンキマークがあるはずです。標高でいえば2120mあたりです。万一見落とした場合でも、標高が2100m以下まで雪渓を下ってはいけません。登り返してチェックしましょう。鉱山道の取付きでアイゼンを外し、小窓雪渓を右下に見ながら、ほぼ平らな鉱山道を東進します。岩棚が雪渓側に傾斜している部分もあるので、砂などで滑らないように注意してください。ほどなくつづらで登ります。池平山から南東に伸びる尾根を乗越すためで、頂点には展望場所があります。ここから池の平小屋が遠望できます。しっかりした道を北東に30分ほど歩けば池の平小屋に着きます。ここでバリエーションは終了です。正面に裏剱の山並みが迫り、眼下には池塘が広がる、とても素敵な場所です。我々はここで1時間の大休止をとりました。 【池ノ平小屋〜仙人峠〜真砂沢ロッジ・テン場】 一般ルートであり、多くのレポートがありますので、他の方のものを参照ください。ただ、南股ぞいの登山路は以前から一部が崩落していて壁に鎖がセットされてありますが、結構注意して進まないと危ないです。また、真砂沢ロッジのテン場はいろいろな話?がありますが、開放的でいい雰囲気のテン場です。(個人的にはやはり避けたいですが・・・) 【真砂沢ロッジ〜三ノ沢〜ハシゴ谷乗越〜内蔵助平〜黒部ダム駅】 一般ルートであり、多くのレポートがありますので、他の方のものを参照ください。ただ、内蔵助谷の登山路の崩落地は相変わらずで、ロープを張ってあるものの、ザレて相当に危ないです。感動の黒部ダム駅に着いて、ハサイダーでカンパイしました。 - |
その他周辺情報 | ●ペツル方式の懸垂下降セット方法は (今回はマルチでないので、2.の部分だけ) http://www.alteria.co.jp/sport/technique/Rock-Climbing-Rappelling-Multi-Pitch/ ●帰路に寄る温泉は、くろよんロイヤルホテルがオススメ。720円でした。温泉は近くの葛温泉からひいてきている単純泉で、露天風呂や温度が低めの檜風呂があります。なによりも穴場で空いているのがいいです。 http://www.kuroyon-royal.jp/contents/spa/spa.html - |
予約できる山小屋 |
剱澤小屋
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ファイル |
(更新時刻:2014/09/18 20:40)
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写真
感想
源次郎尾根と剱岳北方稜線のバリエーションルートをテント装備で縦走してきました。目的は会の中堅メンバーのレベルアップで、技術面と経験値をあげることの2つの意味を持たせたスキルトランスファーです。
技術面では、安全で確実な懸垂下降をトレーニングして、これを本チャンの細いロープで重い荷物を担いだ状態で実施することです。ペツル方式を採用し、事前に裏六甲の蓬莱峡にて説明し何度もやってもらいました。重い荷物を担いで懸垂下降する場合、バックアップが確実にかつ安定して効かないと恐くて下降できません。これまでのレッグループでバックアップをとる方式は、片側の足が引っ張られてバランスが悪くなります。この意味もあって、ビレイループからバックアップをとるペツル方式をしっかりマスターしてもらいました。
経験値を上げるという意味では、とにかく一度、今回のバリエーションルートを経験してもらうという意味がありました。とりわけ剱岳北方稜線はルーファイが難しく、もし初見で来るのなら、かなりのものが要求されます。一度でもこのルートを経験しておれば、今後、彼らがCLとして後輩を連れてくることも出来るでしょう。CLをほとんど経験しないで、いつも誰かに連れていってもらってる様なメンバーは、たとえ何十年、山を経験していても、所詮、初心者の域を出ません。残念ながら当会にもそんな先輩がいっぱいいます。いわゆる自立していない登山者です。今回のメンバーにはそうなってほしくないので、これを言い含めた上で企画しました。
山岳指導員として・・・などと言うのもおこがましいですが、日頃から指導と言うことの難しさを感じています。会には良い先輩もいますが、悪い先輩もいます。悪い先輩はプライドだけが高くて、実力や経験が伴っておらず、デタラメを言います。そのデタラメを教えられた後輩は戸惑ってしまいます。その戸惑いを今回もいくつか訂正させていただきました。ただ、今回のようなモチベーションの高いメンバーを引き上げていくのは、とてもやりがいがあります。また、かなりの手応えもありました。楽しいだけの山行も、私自身、大好きですが、たまにはこういった指導的な山行もいいものだと感じた次第です。
やってみせ、
言って聞かせて、
させてみせ、
ほめてやらねば、
人は動かじ。(人は育たじ。)
まさに山本五十六のこの言葉通りなのですが、最近、体力的に、最初の”やってみせ” がなかなか出来なくなってきているのが、歯がゆいところです。(悲笑)
(以上、三田市民病院待合室にて)
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コメント
この記録に関連する登山ルート
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こんばんは!
この先キケン、といわれると行ってみてたくなるkanosukeです。
「よいこ」ではないのでいつか行くつもりで、
そのときはソロでと妄想してますが、
ルーファイが難しいというのは聞いてましたが、なんとかなるだろうって思ってましたけど、クマさんが言うと説得力があります。
クマさんのレコはポイントが的確ですね。
これまでいろんなレコやガイド記事もたくさん読んでてすでに脳内では踏破しちゃったつもりでしたが、
実際には地図や写真ではわからない微妙なルート取りとか、今回クマさんたちが雨の中池ノ谷ガリーを下ったように、天候によってはかなり危険な状況もあるだろうし、ちょっと甘く考えてたような気がします。
イケルと思えるにはもう少し先でしょうか
しかしこういう写真を見せられちゃうとウズウズしてきますね〜
知り合いがクマさんたちの次の日に源次郎尾根を登ったそうですが、事故で大渋滞だったそうです。
1日早くここを突破してよかったですね。
この3連休はどこも殺人的に混んだみたいですが、さすがに北方稜線はすいてたみたいですね。
もしまた指導的な山行がしたくなったらおつきあいしますよ
え?間に合ってる?
まいどです。
今回、我々は、あわよくば、池の平小屋まで行く予定だったのですが、
パーティではとても無理でした。三ノ窓でせいいっぱいでした。
我々の翌日に源次郎尾根で事故があったんですか?
それは知りませんでした。
少なくとも尾根ルートでは、そんなに危ない場所はないのですがね・・・
カノスケどんはメンバーに気を使うタイプなので、
ソロで行った方がいいと思いますし、大丈夫だと思います。
その際、2点だけ約束してください。
・天候の良いときに突入してください。天候が悪くなると急に難易度があがります。
・時間に余裕を持って、少々の行き直しでもあせらないようにしてください。
これで、悪い子に太鼓判を押します。
クマ
10ヶ月後の2015年7月26日、池の平小屋から剱岳に抜けました。
その後過去の記録を見返し、くまさんのレコが読んで面白く、ガイドとして素晴らしいと感じました。自分で行ってみて初めてよく分かります。これで次は逆コースも大丈夫と思います。
あらら、ニシデンさん、
ワルイ子にようこそ!歓迎します。
レコにお褒めの言葉までいただき、
まことにありがとうございます。
しかし、いったんこの道に入ったら最期、
その人跡未踏な雰囲気のトリコになってしまい、
もう足抜けできないカラダになってしまいます。
くれぐれもご注意ください。
いや、もう手遅れのようですね。
いずれ、ちょーワルイ子コースのチンネなど
いかがなものでしょうか?
流星号も2999にしたいクマ
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