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Yamareco

記録ID: 5246707
全員に公開
無雪期ピークハント/縦走
大台ケ原・大杉谷・高見山

まほろば跋渉記#50 大鯛木馬道から今西錦司先生1500山目の白鬚岳

2023年03月07日(火) [日帰り]
 - 拍手
体力度
3
日帰りが可能
GPS
06:13
距離
7.5km
登り
960m
下り
961m
歩くペース
速い
0.70.8
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

日帰り
山行
6:01
休憩
0:12
合計
6:13
7:31
216
スタート地点
11:07
11:07
41
11:48
11:59
1
12:00
12:01
103
13:44
ゴール地点
天候 快晴
過去天気図(気象庁) 2023年03月の天気図
アクセス
利用交通機関:
自家用車
林道大鯛線の中奥地区簡易水道浄配水場付近に駐車。
アプローチは国道169号線から奈良県道258号中奥白川渡線に入り、中奥集落の先から分岐する林道大鯛線のやや荒れた舗装路を辿ります。その舗装路の終点にあるのが中奥地区簡易水道浄配水場で、路肩に車を駐めてここから出発します。
アプローチは国道169号線から奈良県道258号中奥白川渡線に入り、中奥集落の先から分岐する林道大鯛線のやや荒れた舗装路を辿ります。その舗装路の終点にあるのが中奥地区簡易水道浄配水場で、路肩に車を駐めてここから出発します。
林道そのものは浄配水場からヘアピンカーブを描いてさらに上へと登って行きますが、100mも進めばご覧のように大きく崩れて車の通行はできません。その崩落の手前にある古びた鉄製の階段が、木馬道跡への取り付きです。
林道そのものは浄配水場からヘアピンカーブを描いてさらに上へと登って行きますが、100mも進めばご覧のように大きく崩れて車の通行はできません。その崩落の手前にある古びた鉄製の階段が、木馬道跡への取り付きです。
階段を登って上流側へ少し進めば、かつての木馬道跡がはっきりと遺ります。ちなみに林道と交差する付近は工事で無くなっていますが、下流側にも木馬道跡は続き、最終的には車で登ってきた林道大鯛線と重なるようです。
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階段を登って上流側へ少し進めば、かつての木馬道跡がはっきりと遺ります。ちなみに林道と交差する付近は工事で無くなっていますが、下流側にも木馬道跡は続き、最終的には車で登ってきた林道大鯛線と重なるようです。
振り返ると、足元には立派な石積み。
振り返ると、足元には立派な石積み。
そして山側には切取工。この先いくつもの石積みや切取工が現れます。
そして山側には切取工。この先いくつもの石積みや切取工が現れます。
そして小さな谷を渡る箇所にはこれまた立派な橋台。通常、木馬道の場合は森林軌道などと比較して大規模な土工を施さないことが多いようですが、この大鯛木馬道はまるで軌道だったかのような土工がしっかり施されているのが特徴です。
そして小さな谷を渡る箇所にはこれまた立派な橋台。通常、木馬道の場合は森林軌道などと比較して大規模な土工を施さないことが多いようですが、この大鯛木馬道はまるで軌道だったかのような土工がしっかり施されているのが特徴です。
出発から30分程で、落差40mとも云われる大鯛滝に到着です。木馬道跡から一旦沢床に降りて近寄ってみますが、直下からだと上段はよく見渡せません。
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出発から30分程で、落差40mとも云われる大鯛滝に到着です。木馬道跡から一旦沢床に降りて近寄ってみますが、直下からだと上段はよく見渡せません。
見上げると、その大鯛滝に覆いかぶさるような岩山の中ほどに、岩璧に刻まれた木馬道の跡が!
見上げると、その大鯛滝に覆いかぶさるような岩山の中ほどに、岩璧に刻まれた木馬道の跡が!
ということで木馬道跡に戻り、大鯛滝の全貌を樹林越しに眺めながら進みます。
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ということで木馬道跡に戻り、大鯛滝の全貌を樹林越しに眺めながら進みます。
振り返ると、脇にはぽっかり口を開けた穴が。中はそこそこ奥行きがあって、なにか採掘したのか、それとも自然のものなのか…。
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振り返ると、脇にはぽっかり口を開けた穴が。中はそこそこ奥行きがあって、なにか採掘したのか、それとも自然のものなのか…。
そして、その先には大鯛滝を望む険しい岩壁に掘られた木馬道の隧道。よくぞまぁこんなところに…。
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そして、その先には大鯛滝を望む険しい岩壁に掘られた木馬道の隧道。よくぞまぁこんなところに…。
長さは15mほどでしょうか。木馬道らしからぬ迫力ある隧道ですが、隧道内はけっこうな勾配があって、そのあたりはやはり木馬道といった感じです(写真は振り返って入口側を撮ったもの)。
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長さは15mほどでしょうか。木馬道らしからぬ迫力ある隧道ですが、隧道内はけっこうな勾配があって、そのあたりはやはり木馬道といった感じです(写真は振り返って入口側を撮ったもの)。
出口には現役当時のものかはわかりませんが、まさに木馬道のように組まれた丸太が遺されていました。
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出口には現役当時のものかはわかりませんが、まさに木馬道のように組まれた丸太が遺されていました。
立派な吉野杉を育んできた深い山並の中に、かつての賑わいを物語る大土工の痕…いかにも吉野林業発祥の地・川上村らしい風景だなぁと思います。
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立派な吉野杉を育んできた深い山並の中に、かつての賑わいを物語る大土工の痕…いかにも吉野林業発祥の地・川上村らしい風景だなぁと思います。
隧道の先ももう少し断崖の道が続きます。普通に歩いているだけでも危険なこんな場所を、木材を積むと500圓砲發覆襪箸い重たい木馬を制御しながら曳き下っていたわけですから、いかに木馬曳きの仕事が常に命の危険と隣り合わせの大変な労働だったことを身をもって感じます。
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隧道の先ももう少し断崖の道が続きます。普通に歩いているだけでも危険なこんな場所を、木材を積むと500圓砲發覆襪箸い重たい木馬を制御しながら曳き下っていたわけですから、いかに木馬曳きの仕事が常に命の危険と隣り合わせの大変な労働だったことを身をもって感じます。
大鯛滝の落ち口を過ぎると、木馬道跡は一転して穏やかな雰囲気となります。
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大鯛滝の落ち口を過ぎると、木馬道跡は一転して穏やかな雰囲気となります。
といっても先程の場所に比べれば穏やかに感じるだけで、相変わらず気合のこもった土工が続きます。
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といっても先程の場所に比べれば穏やかに感じるだけで、相変わらず気合のこもった土工が続きます。
ここにも木馬道のように組まれた苔むした丸太が。
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ここにも木馬道のように組まれた苔むした丸太が。
少し大きな谷を渡る箇所には再び立派な橋台。一体どんな橋が組まれていたんでしょうか。
少し大きな谷を渡る箇所には再び立派な橋台。一体どんな橋が組まれていたんでしょうか。
かつて川上村には数多くの木馬道が敷設されていました。奈良県が出版した『林道の歩み』によれば、この大鯛木馬道は1944(昭和19)年開設、その延長は2035mと記されています。
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かつて川上村には数多くの木馬道が敷設されていました。奈良県が出版した『林道の歩み』によれば、この大鯛木馬道は1944(昭和19)年開設、その延長は2035mと記されています。
木馬道跡を断ち切るちょっと深いガリー。ブッシュを掴みながら乗り越えましたが、林道から木馬道跡を辿ってきてここが一番厄介な場所でしょうか。
木馬道跡を断ち切るちょっと深いガリー。ブッシュを掴みながら乗り越えましたが、林道から木馬道跡を辿ってきてここが一番厄介な場所でしょうか。
ガリーの先はすぐまた小さな谷で、ここにも綺麗な橋台が。
ガリーの先はすぐまた小さな谷で、ここにも綺麗な橋台が。
その小さな谷を渡った少し先で右へカーブすると(前の写真の右カーブ)、木馬道跡を辿り始めておよそ1.8km、広場も何もなく唐突に終わりを迎えた大鯛木馬道の終点です。
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その小さな谷を渡った少し先で右へカーブすると(前の写真の右カーブ)、木馬道跡を辿り始めておよそ1.8km、広場も何もなく唐突に終わりを迎えた大鯛木馬道の終点です。
木馬道終点から先はグズグズの斜面となり、荒々しい雰囲気の谷を渡ってから白鬚岳北尾根の稜線目指してガラガラの急斜面を登って行きます。
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木馬道終点から先はグズグズの斜面となり、荒々しい雰囲気の谷を渡ってから白鬚岳北尾根の稜線目指してガラガラの急斜面を登って行きます。
木馬道終点から標高差380mを登り、1286mピークで北尾根ルートと合流します。白鬚岳は大峰三大急登のひとつで、どこから登ってもしんどい急登が続きますが、細かいことを言えば白鬚岳は大峰ではなく、台高山脈の支稜線上に位置しています。
木馬道終点から標高差380mを登り、1286mピークで北尾根ルートと合流します。白鬚岳は大峰三大急登のひとつで、どこから登ってもしんどい急登が続きますが、細かいことを言えば白鬚岳は大峰ではなく、台高山脈の支稜線上に位置しています。
小白鬚の丸いピークの左奥には、今なお女人禁制を守る山上ヶ岳。
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小白鬚の丸いピークの左奥には、今なお女人禁制を守る山上ヶ岳。
山頂直下まで来ると足元は雪に覆われていました。
山頂直下まで来ると足元は雪に覆われていました。
そして雪の斜面をひと登りで、標高1378.19m、二等三角点「神ノ谷」が埋設された白鬚岳山頂です。
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そして雪の斜面をひと登りで、標高1378.19m、二等三角点「神ノ谷」が埋設された白鬚岳山頂です。
山頂からは大峰北部の山並を一望します。大普賢ファミリーの後ろには弥山・八経ヶ岳、左奥には仏生嶽、釈迦ヶ岳、孔雀岳の大きな山体。
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山頂からは大峰北部の山並を一望します。大普賢ファミリーの後ろには弥山・八経ヶ岳、左奥には仏生嶽、釈迦ヶ岳、孔雀岳の大きな山体。
大普賢ファミリーから目線を下に落とすと、国道169号線の伯母谷ループ橋が。こうやって見ると改めて凄いところを通っているなぁと思います。
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大普賢ファミリーから目線を下に落とすと、国道169号線の伯母谷ループ橋が。こうやって見ると改めて凄いところを通っているなぁと思います。
小さく素朴な山頂の一角には、「今西錦司先生一五〇〇山目の山」の記念碑。霊長類研究の創始者であり「棲み分け理論」で知られる生物学者の今西錦司先生は、日本山岳会の会長を務めるなど国内外で幾多の学術調査や探検を行った登山家でもありました。白鬚岳はその今西先生が国内1500山を達成した節目の山でした。
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小さく素朴な山頂の一角には、「今西錦司先生一五〇〇山目の山」の記念碑。霊長類研究の創始者であり「棲み分け理論」で知られる生物学者の今西錦司先生は、日本山岳会の会長を務めるなど国内外で幾多の学術調査や探検を行った登山家でもありました。白鬚岳はその今西先生が国内1500山を達成した節目の山でした。
その際に登られたルートが林道大鯛線終点からの北尾根ルートで、先生御年83歳の時でした。北尾根は小さなアップダウンが続く痩せ尾根で、高齢の今西先生もこの道を歩かれたんだなぁとちょっと感慨深い気持ちで下り、山頂から1時間程で林道終点へ出ました。
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その際に登られたルートが林道大鯛線終点からの北尾根ルートで、先生御年83歳の時でした。北尾根は小さなアップダウンが続く痩せ尾根で、高齢の今西先生もこの道を歩かれたんだなぁとちょっと感慨深い気持ちで下り、山頂から1時間程で林道終点へ出ました。
今西先生が登られた時はまだ終点まで車で入れたようですが、今はご覧の通り荒れ放題となっています。
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今西先生が登られた時はまだ終点まで車で入れたようですが、今はご覧の通り荒れ放題となっています。
対岸に登り尾国有林の荒々しい岩壁を眺めながら廃林道を下り、出発地点の浄配水場へと戻ります。
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対岸に登り尾国有林の荒々しい岩壁を眺めながら廃林道を下り、出発地点の浄配水場へと戻ります。
最後に北麓の中奥集落に立ち寄ります。かつては「鳥も通わぬ瀬戸中奥」と謡われるほど秘境だったようですが、標高550m前後の東斜面には比較的大きな集落が拓かれ、今も14世帯27人(2020年国勢調査)の方が住まれています。鋭く天を突く姿が印象的な白鬚岳ですが、集落最上部から望むその姿は、山頂から今西先生がそっと見守る優しい山に見えました。
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最後に北麓の中奥集落に立ち寄ります。かつては「鳥も通わぬ瀬戸中奥」と謡われるほど秘境だったようですが、標高550m前後の東斜面には比較的大きな集落が拓かれ、今も14世帯27人(2020年国勢調査)の方が住まれています。鋭く天を突く姿が印象的な白鬚岳ですが、集落最上部から望むその姿は、山頂から今西先生がそっと見守る優しい山に見えました。

感想

東に台高山脈、西は大峰山脈に囲まれ、紀の川(吉野川)源流部に位置する奈良県川上村。室町時代末期から500年に渡って続く吉野林業発祥の地で、100年単位で育てられた立派な吉野杉の森は、天竜杉・尾鷲檜と並ぶ日本三大人工美林のひとつとして知られます。
そんな川上村のほぼ真ん中、台高山脈の赤倉山から西に延びる長い支稜線上に位置するのが近畿百名山にも選定されている白鬚岳で、その北麓の鳥渡谷(大鯛谷)にはかつて「木馬道(きんまみち)」と呼ばれた木材搬出の為の林道がありました。今回は、まるで軌道(トロッコ道)跡と見紛うような立派な石積みや橋台、そして岩壁を貫く隧道(トンネル)まで存在する大鯛木馬道(おおたいきんまみち)の跡を辿り、今西錦司先生ゆかりの白鬚岳に登ります。

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