ヤマレコなら、もっと自由に冒険できる

Yamareco

記録ID: 570622
全員に公開
積雪期ピークハント/縦走
八ヶ岳・蓼科

北八ヶ岳彷徨(北横岳〜大岳〜双子山〜蓼科山)

2015年01月02日(金) ~ 2015年01月04日(日)
 - 拍手
体力度
3
日帰りが可能
GPS
19:33
距離
16.4km
登り
1,018m
下り
1,503m
歩くペース
ゆっくり
2.22.3
ヤマレコの計画機能「らくルート」の標準コースタイムを「1.0」としたときの倍率です。

コースタイム

1日目
山行
6:02
休憩
0:51
合計
6:53
9:49
9:54
27
10:21
10:21
6
10:27
10:27
15
10:42
10:42
5
10:47
11:04
119
13:03
13:11
9
13:20
13:21
5
13:26
13:31
160
16:11
16:23
1
16:24
16:27
2
2日目
山行
7:59
休憩
1:13
合計
9:12
9:16
9:25
141
11:46
11:57
36
12:33
12:33
288
17:21
18:07
14
18:21
18:28
0
18:28
宿泊地
3日目
山行
3:03
休憩
0:20
合計
3:23
7:16
29
宿泊地
7:45
7:49
2
7:51
7:51
78
9:09
9:09
4
9:13
9:15
3
9:18
9:31
2
9:33
9:33
29
10:02
10:02
7
10:09
10:10
29
天候 1月2日(金):晴れ→曇り/雪
1月3日(土):曇り→晴れ
1月4日(日):晴れ
過去天気図(気象庁) 2015年01月の天気図
アクセス
利用交通機関:
タクシー 自家用車
●クルマ
ピラタス蓼科スノーリゾート(無料/600台)

●行き
ロープウェイ:北八ヶ岳ロープウェイ(片道1000円)

●帰り
タクシー:女ノ神茶屋(蓼科山登山口)〜ピラタス蓼科スノーリゾート(2580円)
コース状況/
危険箇所等
【登山ポスト】
北八ヶ岳ロープウェイ山頂駅にあり。

【コース状況】
●コース全般
・北横岳〜大岳〜双子山〜蓼科山間はこの時季ほとんど人が入らず、
厳しいラッセルを強いられます。基本腿〜腰ラッセルでした。
踏み抜いて顔付近まで潜ることもしばしば。
・北横岳〜大岳、大岳〜双子池、大河原峠〜赤谷の分岐間で
何度もルートを見失いました。木の枝はもちろん木の幹も樹氷で覆われていて、
赤テープやリボンが極端に分かりづらくなっています。
・ラッセル&ルートファインディングで結局コースタイムの3〜5倍程度要し、
1泊2日で組んでいた予定が2泊3日となりました。
・北横岳北峰〜蓼科山山頂までワカンを使用。ピッケルは使用しませんでした。

●ロープウェイ山頂駅〜北横岳
山頂駅から坪庭を抜けしばらく平坦な台地を進みます。
その後登山道は針葉樹林帯に入り斜度を上げていき、
登り切ると三ツ岳との分岐を経て北横岳ヒュッテが現れます。
北横岳ヒュッテからもうひと登りすると北横岳(南峰)山頂に到着です。
南峰から北峰は指呼の間。この区間はしっかりしたトレースがあります。

●北横岳〜大岳
北峰からまずはトレースのない樹林帯を下ります。膝上〜腰ラッセルが続きます。
この区間の中間地点の平坦な樹林帯で2度ほどルートロストしました。
大岳手前で森林を抜け出すところでようやくルートを見失う心配をせずに
歩けるようになり、ほどなく進むと双子池と大岳の分岐となります。
分岐から大岳山頂まではハイマツと岩稜帯となります。

●大岳〜双子池
樹林帯の下り。雪が深く胸まで踏み抜くこともしばしば。
天狗ノ露地からルートを見失い、西側から回り込むところをまっすぐ下りました。
また、双子池ヒュッテが見えてから100メートルほど進むのに
1時間近く要しました。
双子池ヒュッテは冬季解放はしていません。

●双子池〜双子山〜大河原峠
双子池から西側斜面を登って尾根に乗った後、樹林帯の尾根筋を忠実に上がっていき、
森林限界を超えるとほどなく、ノッペリ平な双子山山頂となります。
森林限界以上は強風でした。
山頂から広い尾根を下っていくと大河原ヒュッテに到着です。
双子池から双子山までは高低差約200メートルを登り、
双子山から大河原峠までも同じく約200mの下りとなります。

●大河原峠〜赤谷の分岐
大河原峠から赤谷の分岐までは高低差およそ300m登ります。
2300メートル付近で急登が和らぎ前掛山の広い稜線に出ますが、
ここでルートロスト。方角を頼りに樹林帯を突き進むも、
密な樹林と踏み抜きの連続で進退窮まる場面も数知れず。
前掛山付近からの行程は精神的にも肉体的にも参りました。
この区間、コースタイムが90分のところおよそ5時間半ほどもかかってしまいました。

●赤谷の分岐〜蓼科山
赤谷の分岐から平坦な道を進むと将軍平に到着。
ここから蓼科山山頂まで200メートル急登します。
この区間はトレースはあるものとばかり思っていましたが消えており、
膝〜腿ラッセルが続きます。
2460メートル付近で森林限界を超えますが、急斜面のため滑落には注意。
森林限界を超えてからほどなく蓼科山頂ヒュッテを経由して山頂に到着です。

●蓼科山〜女ノ神茶屋(蓼科山登山口)
山頂から南斜面までしばらくトラバースした後、急下降します。
急斜面は2170メートル付近でいったん緩んでしばらく進むと
2100メートル付近から再び急な下りとなります。
蓼科山山頂から女ノ神茶屋までは高低差約800メートル。
ボブスレーのルートのようにしっかりしたトレースがありました。
 
【1日目】
ロープウェイ山頂駅よりスタート
5
【1日目】
ロープウェイ山頂駅よりスタート
山頂駅からいきなりこんな景色が待っています
15
山頂駅からいきなりこんな景色が待っています
南アルプス
予想よりも良い天気です
8
予想よりも良い天気です
太陽キラキラ
坪庭を過ぎると正面に針葉樹林帯が迫ります
3
坪庭を過ぎると正面に針葉樹林帯が迫ります
たっぷりの雪
お手軽にこんな景色が楽しめる北横岳はやっぱりスゴイですね
3
お手軽にこんな景色が楽しめる北横岳はやっぱりスゴイですね
白と青が映えます
1
白と青が映えます
樹氷のトンネルを進みます
2
樹氷のトンネルを進みます
北横岳ヒュッテに到着。ステキなフォントです
5
北横岳ヒュッテに到着。ステキなフォントです
北横岳ヒュッテから少し登ると樹林帯を抜けます
1
北横岳ヒュッテから少し登ると樹林帯を抜けます
(photo komemame)
あっという間に北横岳南峰に到着
3
あっという間に北横岳南峰に到着
天狗〜編笠まで南八ヶ岳を一望できます
9
天狗〜編笠まで南八ヶ岳を一望できます
こちらは南アルプス
1
こちらは南アルプス
蓼科山。近くに見えるのですが…とんでもないルートが待っていました
7
蓼科山。近くに見えるのですが…とんでもないルートが待っていました
南峰から北峰を望みます
2
南峰から北峰を望みます
北峰に向かいます
4
北峰に向かいます
非日常な景色ですね〜
7
非日常な景色ですね〜
松本零士の描く異星の街みたい
5
松本零士の描く異星の街みたい
北横岳北峰に到着
4
北横岳北峰に到着
北峰より蓼科山とこれから歩く前掛山の稜線
6
北峰より蓼科山とこれから歩く前掛山の稜線
北峰より浅間山と四阿山
2
北峰より浅間山と四阿山
北峰より天狗と南八ヶ岳
2
北峰より天狗と南八ヶ岳
さていよいよ大岳に向かいます。ここからが本番といった感じ
3
さていよいよ大岳に向かいます。ここからが本番といった感じ
まずはワカンを装着
3
まずはワカンを装着
大岳が見えました
大岳が見えました
北峰からの急降下でいきなり腰まではまります
10
北峰からの急降下でいきなり腰まではまります
北八ヶ岳〜南八ヶ岳のほぼ全貌
3
北八ヶ岳〜南八ヶ岳のほぼ全貌
北横岳〜大岳への縦走路からはラッセル
3
北横岳〜大岳への縦走路からはラッセル
あんなに近くに見えている大岳が遠かった〜
2
あんなに近くに見えている大岳が遠かった〜
テープやリボンも樹氷で隠れてしまっているようです
3
テープやリボンも樹氷で隠れてしまっているようです
深いラッセルが続きます(photo komemame)
6
深いラッセルが続きます(photo komemame)
踏み抜くと立ち上がるのがタイヘン
5
踏み抜くと立ち上がるのがタイヘン
寒気が入り込みジッとしていると寒いので先頭でラッセルして体を暖めます(photo komemame)
3
寒気が入り込みジッとしていると寒いので先頭でラッセルして体を暖めます(photo komemame)
ルーファイに苦しみ2回ほど彷徨してしまいました
1
ルーファイに苦しみ2回ほど彷徨してしまいました
ようやく岩場に出ることができルーファイで悩むことはなくりましたが暗雲が立ち込め始めます
3
ようやく岩場に出ることができルーファイで悩むことはなくりましたが暗雲が立ち込め始めます
大岳までもう少しです
大岳までもう少しです
双子池方面との分岐でザックをデポして大岳に向かいます
2
双子池方面との分岐でザックをデポして大岳に向かいます
双子山をバックに
双子山をバックに
大岳に到着。寒いし風はビュービュー。すぐに退散です
10
大岳に到着。寒いし風はビュービュー。すぐに退散です
大岳より北横岳
大岳より蓼科山と前掛山
2
大岳より蓼科山と前掛山
大岳より双子山
分岐まで戻ります
1
分岐まで戻ります
再びザックを背負って双子池へ向かいます
再びザックを背負って双子池へ向かいます
大岳から双子池までも変わらずラッセルが続きます
3
大岳から双子池までも変わらずラッセルが続きます
すぐに股まではまってしまいます。頭上には樹氷で全身雪まみれ(photo komemame)
16
すぐに股まではまってしまいます。頭上には樹氷で全身雪まみれ(photo komemame)
天狗の露地でルートロストしてようやく復帰。前方には双子山
1
天狗の露地でルートロストしてようやく復帰。前方には双子山
双子池ヒュッテが見えてきましたが…
双子池ヒュッテが見えてきましたが…
100メートルほど進むのに1時間近くを要しました
7
100メートルほど進むのに1時間近くを要しました
もううんざり
ようやく双子池に到着
3
ようやく双子池に到着
雪も散らついています
3
雪も散らついています
あたりは静寂に包まれています
1
あたりは静寂に包まれています
今日はここまでで精一杯。テントを張ります
4
今日はここまでで精一杯。テントを張ります
【2日目】
前日夜に降雪があり20センチくらい積もりました
5
【2日目】
前日夜に降雪があり20センチくらい積もりました
朝方はガスの中から時折光が差し込みます
3
朝方はガスの中から時折光が差し込みます
双子山への登り始めは快調にラッセルできましたが…
2
双子山への登り始めは快調にラッセルできましたが…
雪は徐々に深くなり…
1
雪は徐々に深くなり…
途中からはこんなありさま
4
途中からはこんなありさま
振り返って北横岳と大岳
振り返って北横岳と大岳
尾根筋を忠実に辿りたいのですが雪が深そうで遠回りしようとするkomemame
3
尾根筋を忠実に辿りたいのですが雪が深そうで遠回りしようとするkomemame
でも結局行き詰まりそうなのでまっすぐ進みます
2
でも結局行き詰まりそうなのでまっすぐ進みます
このようなタイムロスがしばしば発生して時間がどんどん過ぎていきます
1
このようなタイムロスがしばしば発生して時間がどんどん過ぎていきます
深い深い
ようやく森林限界を超えました
3
ようやく森林限界を超えました
双子山より蓼科山を望む。ホントに今日中に越えられるのかな〜
2
双子山より蓼科山を望む。ホントに今日中に越えられるのかな〜
双子山より北横岳と大岳
8
双子山より北横岳と大岳
風が強く雪煙が舞い天体撮影みたいです
3
風が強く雪煙が舞い天体撮影みたいです
広く平坦な山頂を進みます
3
広く平坦な山頂を進みます
双子山山頂の頂上標は大河原峠寄りにありました。小さく山のポーズ
14
双子山山頂の頂上標は大河原峠寄りにありました。小さく山のポーズ
この雪の量の感じだと蓼科山を登って明るいうちに下山するのはちょっとヤバそうです
この雪の量の感じだと蓼科山を登って明るいうちに下山するのはちょっとヤバそうです
双子山から大河原峠に下りますがもう樹氷がキレイなんて言ってられません
6
双子山から大河原峠に下りますがもう樹氷がキレイなんて言ってられません
深い雪が恨めしい
5
深い雪が恨めしい
大河原ヒュッテが見えましたが…
1
大河原ヒュッテが見えましたが…
なかなか近づきません
7
なかなか近づきません
大河原峠に到着
この日の写真はここで最後ですが、この後深い樹林帯を幾度となく彷徨してしまい赤谷の分岐に着いたのは暗くなってからでした。予定外のもう1泊となってしまいました
7
この日の写真はここで最後ですが、この後深い樹林帯を幾度となく彷徨してしまい赤谷の分岐に着いたのは暗くなってからでした。予定外のもう1泊となってしまいました
【3日目】
赤谷の分岐から将軍平もトレースレス。そしてさすがに誰か歩いてるだろうとあてにしていた将軍平から蓼科山山頂までもなんとトレースはありません。依然としてラッセルは続きます
6
【3日目】
赤谷の分岐から将軍平もトレースレス。そしてさすがに誰か歩いてるだろうとあてにしていた将軍平から蓼科山山頂までもなんとトレースはありません。依然としてラッセルは続きます
北横岳〜大岳〜双子山と歩いてきたルートが見えます
1
北横岳〜大岳〜双子山と歩いてきたルートが見えます
続いて双子山〜前掛山の歩いてきたルート
4
続いて双子山〜前掛山の歩いてきたルート
山頂直下で森林限界を超えます
4
山頂直下で森林限界を超えます
キレイです
浅間山と四阿山がキレイに見えます
5
浅間山と四阿山がキレイに見えます
山頂直下は急斜面です
10
山頂直下は急斜面です
ようやく、ようやく蓼科山に到着。山のポーズ
12
ようやく、ようやく蓼科山に到着。山のポーズ
うれしさのあまり謎のポーズ
22
うれしさのあまり謎のポーズ
山頂より。南八ツ方面は黒い雲に覆われています
1
山頂より。南八ツ方面は黒い雲に覆われています
山頂より北横岳と大岳
1
山頂より北横岳と大岳
山頂より双子山
山頂より浅間山〜四阿山
1
山頂より浅間山〜四阿山
下山はボブスレーのコースのようになっています。何日ぶりのトレースだろう
5
下山はボブスレーのコースのようになっています。何日ぶりのトレースだろう
帰りはコースタイム2時間のところ1時間ほど
3
帰りはコースタイム2時間のところ1時間ほど
ボブスレーのコースだけにシリセードもバッチリです
5
ボブスレーのコースだけにシリセードもバッチリです
女ノ神茶屋の駐車場に到着。お疲れさまでした!
6
女ノ神茶屋の駐車場に到着。お疲れさまでした!

感想

何から書けばいいのか…。
とにかくここまでシンドイ山行になるとは思ってませんでした。
山行というよりも彷徨でした。

大晦日〜元旦にかけては山は大荒れ。年明けからもパリっとは晴れない感じ。
じゃあ眺望を求めるというよりもラッセル三昧で静寂の八ヶ岳を楽しもう、
ということになりました。

ボクは北八ヶ岳〜蓼科山間が繋がれば、
積雪期の南北八ヶ岳〜蓼科山までの赤線がすべて繋がり、
komemameは蓼科山は未踏でちょうどいいじゃない、
ということで北横岳〜大岳〜双子山〜蓼科山を1泊2日の予定で縦走することにします。

北横岳の北峰を過ぎてからトレースが無くなると同時に雪が深くなることは
織り込み済みでしたが、枝だけではなく木の幹にまで付いた樹氷がテープやリボン類を
キレイさっぱり隠してしまっています。
正規ルート上を進んでいても深い雪のラッセル。
ひとたびコースを外すと、低い木の上に積もった雪の下が空洞になっていて
胸から顔付近まで踏み抜き、アリ地獄のようになかなか這い上がることができません。
これが3日間ずっと続きました。

特に2日目の大河原峠から前掛山を経て赤谷の分岐に至るまでは、
密樹林の中を踏み抜きながら進んでは樹氷をまとった木が立ちはだかって行き詰まり、
別のルートを模索して再び踏み抜きながら少し進んではまた行き詰まり…、
を繰り返しているうちに次第に暗くなり、肉体的にも精神的にもキビしいものがありました。
何とか正規ルートに合流して赤谷の分岐に着いた時には18時30分。
この日のうちの下山を諦めてテントを張ることに。

翌日。
将軍平からはトレースがあるものばかりだと思っていましたが、
結局山頂直下の森林限界を超えた辺りまでラッセル&ルーファイが続き、
赤谷の分岐から山頂までコースタイム40分のところ3倍の2時間かかりました。

お正月から寒気が入り込みただでさえ寒かった八ヶ岳で、
飲み物もほとんど飲まず夜までの長時間行動や暗くなってからのテント設営などで
指先に凍傷を負ってしまい、今もキーボードを打つ指がジンジン痺れています。
しばらく雪山はお休みかなぁ。
 
 

目の前の木を、森を、山を、そして自然を
こんなにも憎く感じたのははじめてです。
そしてそう思ってしまう自分に嫌気がさしました。
雪山にはもう行かない。
ラッセルがしたいなんてもうぜったい言わない。
そんな思いで道をかき分け進んだ3日間となりました。

青い空と白い雪のコントラスト、樹氷にモンスター、
そしてあたりは動物の存在すら感じず、静まり返る。
たっぷりの雪がまわりの音いっさいをかき消してしまう。
絶好の文句ない雪山です。
最初はそう思いました。
でも、それは1日目の午後あたりから不安に変りました。
そして不安は2日目午後には恐怖と憎しみの気持ちに変りました…。

正規ルートの目印は雪にかき消され、
この日は正規なのかどうか分からないまま、歩きつづけました。
太ももをお腹のあたりまであげなくては進めないラッセルがつづきました。
ときどき足が上がらなくて、手も使って四つん這いで進みました。
なんども踏み抜いて、午後になると、疲れ切って涙が出そうでした。
最初でこそ、力を振り絞って抜け出していましたが、
だんだんとそんな気力もなくなって、しばらくうずくまるばかり。
あっちへ行って、こっちへ行って…
もう方向すらよく分からなくなってきました。
下りるはずの2日目は、みるみるうちに暮れていきました。

暗くなっていくのはほんとうに怖かった。
きょうはやっぱり帰れないのかな。テントをまた張るのは面倒だな。
テントの中でもう1日過ごすなんて寒いな。
それより、あしたもこのまま彷徨い続けることになったらどうしよう…
体を動かし続けているのに寒いし、
寒いのに眠いし。私、大丈夫なのか?
どんどん弱気になっていく自分がいました。

でも、一方で「歩き続ければいいんだ!」と
まだまだいける気持ちもほんの少し残っていました。
どうにかまずは心を落ち着けようと、ちょっと立ち止まりました。
そして目をつぶってひと呼吸。さらにもうひと呼吸…
深い呼吸をして目をあげました。
すると、真っ黒い空にまんまるの月がぽっかり。
真っ暗だと思っていた森は、なんと月明かりでうっすら明るかったのです。
私のまわりを明るく照らしてくれていたのです。
それに気がついたとき、すこし救われた気がしました。
そしてこのときはじめて、山に対して恐れや憎しみの思いを
ふつふつと沸き上がらせていた自分に気がつきました。
「あぁ、大好きな山なのに」。
「大好きな山、もっとちゃんと歩かなくちゃ」。
そう思った瞬間、弱気な気持ちがすこし消えました。

そして再び歩くこと数十分(もう時間の感覚はよく分からない)、
遠くに、横に伸びる細い木の枝のようなものが見えました。
でも、木の枝にしては綺麗な弧を描いている…もしやロープ?
凝視しました。なんども見直しました。
それでも確信が持てなくて、近くに走るように寄ってみると、
それは正規ルートを示すロープだったのです。
「わーーー!!!ロープ!ロープ!ロープが見えた!」
後ろにいたdanyamaに大声で叫びました。
寒さと黙って歩いていたのもあって、
口が固まりちゃんと動かせず、なんども叫びました。
このときの気持ちは言葉では言い表せません。
安堵感だったのか、喜びだったのか、それでもまだ不安があったのか…

結局この日はもう一泊。
いつもの賑やかな夕食もなく、
とにかく温かいものをと、ラーメンをすすって、
後片付けもそこそこに、冷たい体のままいつのまにか眠っていました。

翌朝、またもラッセルからスタートしましたが、
もうぜったいにルートから外れたくない一心で、
とにかく慎重に慎重に歩きました。
ちょっとでも違っていそうだったら、戻る。見直す。やり直す。
そうやってだんだんと道に確信が持て、もうここを登り切れば山頂というとき、
久しぶりに人に会いました。蓼科山から下ってこられた方です。
私、やたらとしゃべって、はしゃいでしまったような気がするけど、
その人はいたって平然とした様子。そりゃそうです、笑。
その方とさよならして、トレースのある道を進むと、
なんだかやっといつもの日常に戻れた気がしました。

自然に対して恐怖と怒り、憎しみまで感じてしまった今回。
いろいろ思うことはたくさんあります。学ぶこともたくさんありました。
今も強烈に覚えているのは、私を照らしてくれていた丸い月。
これが私の固まってしまった思いを解かしてくれました。
自然はものすごく怖い。でも、ものすごくやさしい。
今までよりも、私の中でさらに山の存在が大きくなりました。
もうこの時期のこのコースは二度とゴメンだけど、
雪が溶けたら…また同じコースを歩いてみたいです。

おしまい。

お気に入りした人
拍手で応援
拍手した人
拍手
訪問者数:3790人

コメント

このルートは、、、、ラッセルトレーニングですね
明けましておめでとうございます。
それにしてもすごいラッセルですね。
積雪期に北横岳以北はまず人が入る事は稀ですので、予想通りだったとは思いますが、夏道90分を5時間半とは、、、、。
パワフルなお二人ですから余裕ですが、普通なら半分遭難ですね。
まあひと冬分のラッセルを満喫したので、当初の目的は大成功という事で。

ところで、非常に残念な事が、3日は私は日帰りで蓼科山でした。
予定通り進んでいれば、山頂でお目にかかれましたね。
去年も確か予定通り行けば金峰山でお会い出来たのに、林道が通行止めで残念!と言うことが有った様な、、、、。
なかなかうまく行かないものですね。
次回に期待します。
ちなみに私の蓼科山は楽しい雪遊びでした。
2015/1/7 19:22
yamayaさん、今年もよろしくお願いします♪
3日に蓼科山だったんですね!!!
すぐそばにいたのに、あのときの私には蓼科山はとぉーい、とぉーい存在でした
でもほんとに予定どおり順調だったら、お会いできたかもだったんですね〜。残念っ。
それにしても深い雪とテン泊装備でのラッセルは、予想以上で、本気で焦りました…
なんで私こんなことしてるんだろうって。。なんども考えてしまいました。
でも今になって思うのは、yamayaさんのおっしゃるとおり
ひと冬分のラッセルをやり切ったので、もう深い雪でも乗り切れちゃう気がしています。
雪山はそんなに甘いものじゃないと思いますが。。

蓼科山は未踏で、登りたいってずっと思っていた山でしたが、
たどり着くまでの道が強烈すぎて、実は薄〜い存在になってしまっています。
もう一度ちゃんと蓼科山が主役になるような山歩きをしたいですっ。

2015年の山行もyamayaさんにとって素晴らしいものになりますように。
レコ楽しみにしていますね〜!
2015/1/7 22:38
ゲスト
はじめまして
danyama さん、komemame さん。
いつもレコを拝見させてもらってます。
そのお二人をもってしてもこの感想。北八恐るべしです。雪が深いですね。確かに北八の方だけは樹氷になったりする気がします。
いつものレコですと、さらっとラッセルをこなされているイメージがありました。レコを拝見していると、星野さんが書いた雪山の本の写真に北八を縦走して疲れ切って雪面に倒れこんでいる写真があったことを思い出しました。身近な感じがしていましたが、それだけきついところなんですね。自分もチャレンジしてみたいなと思っていますので、参考にさせていただきます。danyamaさん 凍傷お大事にしてください komemameさんの自然に対する思い
「自然はものすごく怖い。でも、ものすごくやさしい」
・・・同じように思いました。
今年もたくさんのレコ拝見できるのを楽しみにしております。
2015/1/8 8:55
Re: はじめまして
meta_bomanさん

こんばんは
ほんとうに恐るべしでした。
こんなに深いとは、こんなに誰も入っていないとは思いも寄らず、、、
最初は楽しいラッセルがだんだんと恨めしくなっていきました
ほんとうに心身ともに疲れました…

でも、meta_bomanさんの小渋川からの赤石も壮絶でしたね!!!

目の前の自然は、苦しみを生むものにもなるし、
喜びを味わえるものにもなりますよね。
その見え方の違いは、結局は自分の精神状態や捉え方が
大きいんだとあらためて感じました。
いつでもどんな状況であっても、
目の前にあるありのままの自然を受け入れられるような
強い人になりたいなぁ、、な
〜んて、思っています、笑。

danyamaへのお気遣いありがとうございます。
しばらく雪山は休むようで、meta_bomanさんの記録をみて、
行った気になる!…と言っていました。
厳冬期の山に行けなくて残念ですが、
もう少ししたらまたたくさん山に行きたいって思っています。

コメントありがとうございました。
2015/1/8 22:50
壮絶ですね
danyamaさん、komemameさん明けましておめでとうございます。
冒頭のコースタイムを見たとき、健脚なお二人には珍しくゆったりとした山行きだなぁと思いましたが、段々とレコを読んでいく内に言葉を失い身震いしました。
私は以前北横岳の少しマイナーな周回ルートの途中で胸まではまり、すぐに途中で引き返しましたが、蓼科山まで進まれたとは・・・凄すぎます。
写真にも北横岳までの華やかなものと段々と重苦しくなっていくものの差がよく出ていますね。
とにかくご無事で何よりです。ゆっくり療養された後、いつものアクティブな山行きを再開されることを陰ながら祈願しております。本当にお疲れ様でした。
2015/1/8 12:50
Re: 壮絶ですね
hissy369さん

こんばんは ごぶさたしています。
ハマってもハマっても、何も考えずに進んでいて…
気づいたときには1日目が終わり、眠るときになってようやく、
「あぁずいぶん深いところに来ちゃったなぁ…」と思いました。遅っ、、笑

たしかに!hissy369さんのおっしゃるように、
あらためて並んだ写真を見てみると、だんだん重苦しいかんじになりますね。
写真って、撮り手の気持ちも写っちゃうんですかね〜。
だとしたら、やっぱり写真って面白いです。

しばらくゆっくりして、またガンガン山歩きできたらいいな〜って思っています。
あたたかなお気持ち、うれしいです。コメントありがとうございました。
2015/1/8 23:02
狙い通りのはずが・・・
北横より北は狙い通りにラッセル三昧。。。
最初は『雪山』って感じでテンション上がったと思いますが、それが延々と続けば苦行ですよね
寒気で気温は低く、風は冷たい・・・せめてもの救いは青空でしょうか??
正月早々大変な山行になりましたね(-_-;)

danyamaさん、早く凍傷を直してまた雪山登ってください
お大事にー
2015/1/8 13:06
Re: 狙い通りのはずが・・・
yama_poundさん

こんばんは
はぁ〜、、苦行そのものですよね、このレコ
でも、あそこから抜け出し、
今ここにいるからそう思えるのでしょうけど、
歩きながらいろんなこと考えたし、
いろんなこと学べたし!といい経験したなと。
人間、自分の安全圏から出て行かないと、次は見えてこないですものね〜、
と、前向きに捉えてみたりしています、笑。

danyamaへのお気遣いありがとうございます。
雪山復帰できるよう、大事にさせます!
コメントありがとうございました。
2015/1/8 23:09
次回はまったりと!
こんにちは、danyamaさん、komemameさん(^^)v

ハードラッセル、お疲れ様でしたm(__)m
この時期、北横岳と蓼科山の山行記録はよく見掛けますけど、
その間の記録って目にした記憶がありませんが、そういうことだったのですねぇ。。
ワタシも・・11月にお二人が歩かれた逆のようなコースを歩きましたが、
あの時ですら双子池〜北横岳の区間、なぜかあそこだけ雪が多く、人気が少なかったです。
今年の冬は今のところ特に雪の量が多いらしいですから、よくぞ蓼科山までたどり着いたという感じですねぇ。

ラッセルって、体力的にも疲れますけど精神的ダメージが大きいですよね。
急登でもロングコースでも頑張った分だけ進めるルートならばやる気も出ますが、
あの雪の中で泳ぐ感じはきっと永遠に好きにはなれないんでしょうね(^-^;
特に北八ツは、この前歩かれた南アルプスのように頑張ってもスゴい稜線が待っているというワケでもないから、ホントにしんどかっただろうと思います
2015年一発目からスゴい山行となりましたね。
今回はこの頑張りでしたから、次回は温泉にでも行きましょう、温泉に

あ、danyamaさん凍傷お大事に・・
2015/1/8 15:01
Re: 次回はまったりと!
カマセンさん
こんばんは〜
逆コース歩かれていたの、覚えています!
今回は私たちがカマセンさん&Dちゃんさんのストーキングしてしまいましたねっ、笑
でも、だいぶ前からこの冬はこのルートを行こうって考えていたので、
ほんと行く山被りまくりで、すごすぎる〜

今回は延々にラッセルで、ピークを目指す感じでもなかったので、
なんだか区切りもなく、よりながーく、ながーく感じました。
カマセンさんの「泳ぐ」って表現、まさにそんなです!
掻いても掻いても進まないあの感じは、
悪い夢を見ているようでした。

2015年の山初めはすごいことになりましたが、
すでにどっぷり山に浸かったので、
なんでもこいーってな気持ちにもなっています
とはいえ、ひと休みも必要かなと思って、
danyamaに「今週の連休、温泉いこうよー」って提案したら、
あっさり却下されました…家で究極にダラダラしたいみたいです。。

こんどの連休は、カマセンさんたちはどこ行ってるんだろね〜???
と、想像したり、妄想したり、テレパシー送ったりして過ごします、、笑
レコが楽しみです!
2015/1/8 23:36
プロフィール画像
ニッ にっこり シュン エッ!? ん? フフッ げらげら むぅ べー はー しくしく カーッ ふんふん ウィンク これだっ! 車 カメラ 鉛筆 消しゴム ビール 若葉マーク 音符 ハートマーク 電球/アイデア 星 パソコン メール 電話 晴れ 曇り時々晴れ 曇り 雨 雪 温泉 木 花 山 おにぎり 汗 電車 お酒 急ぐ 富士山 ピース/チョキ パンチ happy01 angry despair sad wobbly think confident coldsweats01 coldsweats02 pout gawk lovely bleah wink happy02 bearing catface crying weep delicious smile shock up down shine flair annoy sleepy sign01 sweat01 sweat02 dash note notes spa kissmark heart01 heart02 heart03 heart04 bomb punch good rock scissors paper ear eye sun cloud rain snow thunder typhoon sprinkle wave night dog cat chick penguin fish horse pig aries taurus gemini cancer leo virgo libra scorpius sagittarius capricornus aquarius pisces heart spade diamond club pc mobilephone mail phoneto mailto faxto telephone loveletter memo xmas clover tulip apple bud maple cherryblossom id key sharp one two three four five six seven eight nine zero copyright tm r-mark dollar yen free search new ok secret danger upwardright downwardleft downwardright upwardleft signaler toilet restaurant wheelchair house building postoffice hospital bank atm hotel school fuji 24hours gasstation parking empty full smoking nosmoking run baseball golf tennis soccer ski basketball motorsports cafe bar beer fastfood boutique hairsalon karaoke movie music art drama ticket camera bag book ribbon present birthday cake wine bread riceball japanesetea bottle noodle tv cd foot shoe t-shirt rouge ring crown bell slate clock newmoon moon1 moon2 moon3 train subway bullettrain car rvcar bus ship airplane bicycle yacht

コメントを書く

ヤマレコにユーザー登録いただき、ログインしていただくことによって、コメントが書けるようになります。
ヤマレコにユーザ登録する

この記録に関連する登山ルート

この場所を通る登山ルートは、まだ登録されていません。

ルートを登録する

この記録で登った山/行った場所

関連する山の用語

この記録は登山者向けのシステム ヤマレコ の記録です。
どなたでも、記録を簡単に残して整理できます。ぜひご利用ください!
詳しくはこちら