冬の西穂高挑戦


- GPS
- 32:00
- 距離
- 3.8km
- 登り
- 795m
- 下り
- 35m
コースタイム
3/30 6:30西穂山荘-7:40独標-8:10ピラミッドピーク-9:00西穂高岳-10:10独標-11:00西穂山荘(昼食)-12:45西穂高口
天候 | 3/29 雪のち曇り 3/30 晴れ時々曇り |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2008年03月の天気図 |
アクセス | |
コース状況/ 危険箇所等 |
独標までは特に問題なし。 雪は普通。東側への雪屁張り出しはそこそこあり要注意。 ピラミッドピーク手前に雪屁を登る箇所あり注意 西穂山頂直下は新雪タップリ。斜度があり注意が必要。 |
ファイル |
高度記録(Pro Trek)
(更新時刻:2010/06/06 03:15) |
写真
感想
西穂行きを決めたのは、出発3日前。富士山に行こうと思っていたが、8号目以上はアイゼンが1mmしかささらないツルツルのアイスバーン状態。万一転倒して万一滑落を止められなければボブスレーのように滑り落ちてしまう。1500m滑落して死亡、とのニュースも聞いた事がある。その距離を落ちて岩にあたらない確率は極めて低い。いろいろ調べた後の結論が「やめとくか・・・」(笑) チキンの我々はあっさり富士山を中止した。ただ、これは恥ずかしい事とは思っていない。山の状態、己の力量を見極め、駄目だと判断したときに引くのは勇気ある撤退!という事にしておいてください(笑)。
前日に天気をみたが、あまりよくなさそうな雰囲気。ただし冬型が緩み天気は上り坂、吹雪く心配はなしと判断して決行することにした。
当日は行くまでに予想外の問題に見舞われた。花見まっさかりのこの土日は、どこの道も大混雑!さらに、、待ち合わせの八王子I.C.に行く途中の国道129が事故のため通行止め。。仕方なく迂回路として16号に回ったがここも大渋滞。。1時間以上ロスして新穂高温泉に向かう事になった。ロープウェーの最終は16:30。ただし、それでは山荘到着が18:00を過ぎてしまうので、我々は14:30または15:00の便を目指していた。山小屋に17:00以降に入るのはリスクがある。それも冬ならなおさらだ。終ロープウェーになったり、乗り遅れたら翌朝の始発で一気に頂上を目指すか、、などとヤキモキしながら車を進めた。結局八王子I.C.を出発したのは11:00過ぎ。。最低4時間はかかる道のりなので中央道を飛ばした。
いつもは、運転を「疲れた」などといって変わることはないUDAだが、平日の疲れがあったらしく八ヶ岳Pで運転交替。ヒサビサのマニュアル運転を楽しんだ。
松本I.C.を降りたのは、結局13:40くらいだっただろうか。ひたすら上高地方面を目指す。天気は薄曇りで山の上の方はガスが濃い。UDAは冗談めかして、山中止して温泉でも行こうぜ、などといっているがここまで来て登らずに引き返すのは二人とも絶対に避けたい思いだ。少々天気が悪くてもつっこむぞ、くらいの攻撃的な思考になっていた。冬の上高地は、釜トンネルの入り口以降は通行止めだ。そこから山道を通り、西側の新穂高温泉方面を目指す。交通量は少なく15:00過ぎにはなんとかロープウェー乗り場の駐車場についた。駐車場は無料でうれしい限り。天候が悪そうなので山小屋に確認すると、この時間からでも、小屋まではトレースがあるから問題ないとの事。15:30の便で登る事にした。大急ぎでザックのパッキングを済まして、乗り場へ。この時間から登山スタイルで上がるのは、我々以外にはいなかった。相変わらず、登山前に余裕がない我々であった(笑)。2つのロープウェーを乗り継ぐと、西穂高口だ。視界はかなり悪く、登ってきた一般観光客にとっては残念な事だろう。時間がないので、周りには目もくれず登山口方向へ。アイゼンはまだ不要そうなので即出発。曇り空で小雪舞う中を登りだした。最初は緩やかなアップダウンが続いたが、途中から結構な急登になった。思わず丹沢のバカ尾根を思い出しそうな急斜面。新雪なので、キックステップで雪を蹴りこみながらグングン高度を上げた。ルート図では夏道で1時間半のコースなので、ノンストップで1時間ちょいでいけるかな?と思っていたら、あっという間に山小屋が見えてきた。何と50分。どうやら冬季は、夏場には取れないコースを直登するルートになっているようで、逆に早く移動出来る結果となった。雪山には結構そういう箇所があり、夏場はボロボロした岩場で登山ルートにならないが、積雪期は雪のおかげで安定したルートになるのだ。八ヶ岳の主稜もそのよい例で、厳冬期は登り甲斐のあるバリエーションルートになる。
入り口には、「布団1枚につき1人」の表示。山小屋は、非難小屋になりうる性質上、宿泊者を断ることは無い。おそらく夏場の最盛期には、あの表示が「3人」に変わるのだろう。想像したくもない(笑)。ちょいと高い(9200円)宿泊手続きをすますと、金曜までの疲れが溜まっている我々はすぐ布団に入った。夕食まで1時間弱あると思い休んだ。
夕食は先着順に2組に分け時間をずらしたため、我々は7時前くらいからになった。ここの食事は、、、う〜ん、宿泊9200円にしては?という感じでぶっちゃけ今までの山小屋でワ○○トか。。食後は、図書室?のようなところがあり、山関係の本を見ながらすごした。ここはよいです。寝る前に外に出てみると星空が出ていた。薄曇りなので、自宅で見る星空と変わらなかったが明日に向け期待をもてそうだ。ベッドに入り、持ってきたウイスキーをチビチビと雪割りで飲みだした。なるべく軽く、かつアルコール量を持ってきて酔うためにはウイスキーに限る(笑)。 それにしてもこの小屋は非常に暖かい。後で知ったが、夜は最低気温-16℃くらいまで下がったらしい。にも関わらず毛布2枚でOKだった。この前の丹沢(尊仏山荘)の方がよほど寒かった感じだ。相当断熱効果のある作りなのだろう。
その後、9時くらいには寝たが、11時30分くらいに起きてしまい、またチビチビとウイスキーを飲んだ。。結局なかなか寝付けず3時半くらいまでは起きていた。
朝は5時半に起き、登山準備をした後に朝食だ。さっさと片付けすぐに外に出た。青空も出ておりいよいよという感じで胸高鳴った。
ちなみに、登山後見たヤマケイのHPでは我々が登った後の西穂情報は以下の通り。
<<本日の状況 04/01 (火)雪、風強し、最低気温-14.4℃、最高気温-8.9℃。
小屋の周辺 山荘周辺の積雪280cm。先週より積雪50cm増えました。
登山道 昨日からの降雪は30cm以上積もり、多いところは腰までのラッセルあり。山荘迄のトレースは消失しています。入山の際はアイゼンとワカンもしくはスノーシューは必携。看板やリボンを確認しながらお越しください。上高地〜西穂山荘は入山者少なく、ルートファインディングできる人のみ可能。独標より先は、冬山熟練者以外の通行は厳しいです。焼岳方面積雪期は迷いやすく、冬期は通行者ありません。
装備 4/中旬まではまだまだ冬に近い状態ですので、冬山装備でお越しください。冬山装備必携(ワカン、アイゼン、ピッケルなど)、サングラス。
注意 最近は晴れた日は一気に気温が上がり、崩れた日は視界を全く得られない程まで荒れたりと、状況は極端に変わります。春先は雪崩発生の可能性も高くなります。ルート以外の場所を歩いたり、沢筋に入ったりすると危険です。冬山では、時間に余裕をもった無理のない計画を。山荘到着目標15:00にして、早めに行動を終えてください。
その他 今日の午前中は吹雪でロープウェイも運休。午後から運行を開始しました。日の出5:37、日の入18:11。当山荘は通年営業です。天気予報は、岐阜県飛騨地方や富山県、長野県北部の予報を参考に。>>
普段は、西穂から先の奥穂方面が「熟練者以外厳しい」という書き方だが今回は独標(どっぴょう:2701m)から先でその形容詞がついた。
6:30過ぎにはアイゼンを付け、ほぼ真東に向かって登山を開始した。
天気はよく、西の笠ヶ岳方面や東の蝶ヶ岳方面の眺望が素晴らしい。独標(2701m)までは尾根ではなく、だだっぴろい斜面を登る感じだ。途中素晴らしい景色をカメラに収めながら進む。独標の直前には、こんなところで?という場所にテントを立てて泊まっているパーティーがいた。出発後1時間あまりで独標に到着。ここからの眺望はなかなか素晴らしい。東にはピラミッドピークの先、西穂山頂〜奥穂方面も見えた。このピークで朝飯?を食べているすれ違いパーティーがいた。風も無いので、格別の展望レストラン状態か。
ここから先が。。ヤマケイの週報通り一気に難易度が上がる感じがした。まず独標の下りがいきなり急斜面で難しい。雪山でここまでの岩場は中央アプルスの宝剣岳以来か。。正直少しビビってしまったが、アイゼンとピッケルを効かせ、気分を夏道同様にもって後ろ向きに下っていくと段々と落ち着いてきた。ここからがこの登山の核心部。西穂まで大小いくつものピークが連なるが、それを超えたり巻いたりする道はかなりの危険箇所。ナイフリッジ状の痩せ尾根がいくつもあり緊張感が高まる。ただし景色は本当に抜群の素晴らしさで、前日の雪で奥穂方面はあまり岩が露出している箇所もなくまさに純白の穂高。相当数の写真をD300に蓄える。
ナイフリッジ状の尾根は、雪庇が発達していて踏み抜けばあの世行きか。ただしトレースがしっかりあるのでそれほど危険は感じない。ただ、一箇所だけ小規模で斜面は緩やかだが、雪庇を登らざるを得ない斜面があった。雪崩れてもそれほどの規模にはならないから大丈夫、と自分に言い聞かせ無事に通過。8時過ぎには、ピラミッドピークに到着。少々水分をとってすすむと途中で雷鳥に出会った。2003年の室堂以来か? かなり近い位置にいるのだが、あまり逃げようとはしない。レンズが超広角のみだったのであまりアップでは撮れなかったが、まっしろい保護色となった姿が印象的だった。。その後は写真を撮るのも危険な斜面が続く。西穂山頂直下は、55度以上はあるだろうという急斜面か。しかも新雪でアイゼンがあまり効かないので、ピッケルを深々と突き刺して一歩一歩登った。
そして、9時丁度に西穂山頂(2909m)に到達した。
西穂頂上。天気はやや薄曇りになってきたが、近くの穂高連峰は一望出来る。日本第3位の奥穂高を中心に、右に前穂、左に北穂の眺望は壮観だ。左奥には槍ヶ岳がみえるはずだが、視界が悪くなり残念ながらはっきりは見えなかった。寒さはほとんどない。(厳冬期は過ぎたが)冬の北アルプスの山頂でここまで風がないのも珍しいのではないかと思えるほどだった。記念写真をタップリ撮りつつ景観を脳裏に焼き付けた。ちなみにここから東方向は全くトレースがない。西穂〜奥穂間は無雪期でも一般ルート最難関と言われる危険コースであり、冬季は格段に難易度が上がる。ザイルを使ったスタカットクライム(支点を使った確保をしながらの登攀)の上級技術が無い限り通行不可能だ。トレースは全く無くこの冬も何パーティーが通ったのだろうか?というほど危険な気配が漂う。
頂上を十分堪能し、いよいよ元きたルートを戻る事になる。上り最後の急斜面は降りるにはかなりの緊張を要した。雪が深く安定感がない中、ピッケルのスピッツェを深く刺す事でバランスを取る。もちろん前向きに降りるのは不可能だ。ピッケルを使ってこのような急斜面を下るのは初めての経験でかなり緊張した。というのもバランスをとってるようでもずるずると滑る感触が常にあるからだ。ただ、あまりにビビると逆に体が縮こまって斜面への結合力が弱まり危険だ。ある程度思い切りよくピッケルとアイゼンを効かせ少しずつ降りた。ここをのりきると、あとは正直怖い箇所はない。リッジ状の尾根がいくつも連なるピラミッドピークまでの帰り道をゆっくり楽しんだ。帰りのルートで気付くのだが、南東側斜面はどこも雪庇が発達している。実際の地形がわからなくなるほど雪が張り出すので、うっかり足を乗せたら本当に危険だ。
帰りのルートでは霞沢岳が尾根越しに見える素晴らしい景観だ。中でも超広角レンズでパースを付けた、ピラミッドピークを臨むこの写真は自分のお気に入りだ。独標を登り返すとあとは、一気に下るのみ。雪のクッションで膝に負担がかからず体力的には楽な下りだ。あっという間に西穂山荘まで降りた。ここで昼食をとり12:30前には西穂高口に到着し、この冬4回目の冬山は無事終了した。
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