両神山赤岩岳正面岩稜 藪岩マルチピッチに挑戦 赤岩尾根は時間切れ敗退
- GPS
- 09:19
- 距離
- 10.3km
- 登り
- 1,013m
- 下り
- 1,021m
コースタイム
天候 | 晴れ |
---|---|
過去天気図(気象庁) | 2015年10月の天気図 |
アクセス |
利用交通機関:
自家用車
|
コース状況/ 危険箇所等 |
バリエーションハイキング、ハイグレードハイキングというよりはアルパインクライミングの領域に入るルートです。ロープによる確保が必要な上、支点の間隔が遠くなるのでリードする際のリスクが高く絶対に落ちられません。十分な準備と安全管理が必要です。 中間支点はカムやナッツを使えるクラックも有りますが、潅木に取る方が手っ取り早い状況が多いと思います。ロープの流れを考慮し長めのスリングが有ると心強いです。藪や潅木が有るので支点を多く取ってしまうとロープの流れが途端に悪くなります。支点の数を最小限に抑えるため、中間支点を取る場所の見極めが要求されます。 難易度的には易しい箇所でUIAA/RCC競哀譟璽匹猫卦蘢度ですが、各ピッチで部分的に元蘢度の所が出てきます。リードに関しては上記の理由から中間支点を豊富に取りにくい為、核心の難易度でもフリーに近い状態での通過が求められます。 |
写真
感想
両神山は初めて一般登山道から登った後も八丁尾根の鎖場や数多くのバリエーションルート等、自分のレベルに応じて常にチャレンジの場を与えてくれる山としてして親しんできました。
数年掛けて両神山主要バリエーションルートの天武将尾根、尾ノ内沢道、赤岩尾根、狩倉尾根、西岳新道、辺見尾根を登った後、次のステップとして赤岩尾根の赤岩岳とP1583の直登が気になり情報を調べてみましたが、クライミングの領域に入るルートらしく十分な準備が必要に感じました。
両神山以外にも、他の山域ではアルパイン入門ルートを登り、月1〜2程度ですがクライミングジムに通い、外岩ゲレンデにも行くようになりました。マルチピッチの手順も迷い無くこなせる様になって来たので、今回嫁さんと挑戦することにしました。
上落合橋に駐車します。今回は赤岩峠から赤岩尾根とP1583を直登で越え、赤岩尾根P4〜P1と進み八丁峠から下山する予定の為。上落合橋からは車道歩きでニッチツ小倉沢集落へ向かいます。
ニッチツ小倉沢集落は廃墟マニアには堪らない物件ですが、数年前に比較すると解体が進み整地された場所が増え、以前より荒らされた形跡も多くなりちょっと残念です。ここから赤岩峠までは平凡な登りとなります。
赤岩峠からは東へ尾根を辿ります。赤岩岳へは通常、北側の尾根から登るため、そちらへ向かう踏み跡を左へ分け尾根上を直進します。やがて正面に大岩が見え正面岩稜の基部となります。ここで装備を身に着け登攀準備です。
今回の装備はクライミングシューズ、メット、ハーネス、9.8mm50mシングルロープ、BDキャメロット#0.5#0.75#1#2各1、BDストッパー#3#5#6#7#8#9#10各1、BDナイフブレード#1#2とバガブー#3#4#5#6各1、ダイニーマスリング120cmビナ付き4、自作6mmスリング120cmビナ付き3、自作6mmスリング180cmビナ付き1、芯詰めスリング2と懸垂支点用6mm捨て縄1ビナ付き、クイックドロー3、エイトカン、ATCガイド、カンツキ3、ハンマー、ナッツキーです。
嫁さんはクライミングシューズ、メット、ハーネス、エイトカン、ATC-XP、カンツキ3、ハンマー、ナッツキーにセルフビレイ用にスリング数本です。
取り付きの状態を確認。正面壁はカンテを境に左右に分かれており、カンテ中央はすぐ上にボテが有り被っています。その為カンテ直登は難しく左右から回り込む感じに見えます。左側はスラブ状で傾斜も立っていてホールドは乏しく、支点も取れなさそうです。右側は左側よりも傾斜が寝ており潅木とボテのクラックで支点が取れそうなので右側に取り付いてみました。
取り付いてすぐに潅木に支点を取りましたが、下が切れており高度感抜群です。登れそうなラインを辿ると自然と右上する形となり、潅木に2つ目の支点を取りましたが右へ行けば行く程に足より下には何も無くなり、落ちたら宙吊り間違いなしです。また右上する事でボテのクラックからも遠くなり次の支点が取れません。そしてやはりと言うべきか、下から見ていたよりも難しく、この先も5.9〜5.10aくらいの感じが続いています。ジムで5.10台をウロウロしている自分にはこのグレードは危険過ぎます。本チャンでは基本落ちる訳には行かない、というか絶対に落ちたくないので撤退です。高度感と恐怖で泣きながら支点を回収しつつクライムダウンしました。
仕切り直しで、正面岩稜基部を左へ続く踏み跡を5mほど辿ると凹んだ壁が有り、ここはどうかと取り付いてみました。こちらは出だしが被っており、支点を取れない状態で一瞬元蕕米餔彭戮魎兇犬燭里念戝驚羯澆掘△気蕕忘犬諒匹傾斜が緩そうなので試して見ましたが湿ったコケが靴のフリクションを完全に奪ってしまうので危なくて登れません。
1ピッチ目 40m卦蕁銑元
という訳で正面岩稜基部から左へ5mの凹んだ壁から再スタートです。出だしのハング上には潅木があり、これを掴めれば万事okですが一手目では届きません。上手く足を使って一段身体を上げる事が出来れば潅木に届きますが、その形を作る為にやや微妙なホールドとスタンスを拾う所が核心です。リードはこれをフリーでこなさなければならないので結構な緊張感です。個人的にはここが元蕕任后
ハングを越え右上すると崩れたチョックストーンのルンゼ状に至り、これの右側カンテを辿ります。1箇所クラックにキャメロット#0.5を使った以外は潅木に支点を取りました。岩伝いに高度を上げ、頭上正面に大岩が立ちふさがるテラスで1ピッチ目終了です。
テラス左側の潅木2本からそれぞれセルフとセカンド確保用支点を取りました。笛のコールでロープを引き上げセカンドを確保します。藪岩壁なのでセカンドの様子は見えませんが、セカンドが登ってくれば張り気味にしたロープが緩む感触で判ります。しかしいつまで経ってもロープが緩む気配が有りません。何か問題でも有ったのか?若干不安になりながら暫く待っているとロープが緩み、セカンドが登ってきました。
セカンドをテラスに迎えてセルフを取らせ、事情を聞いてみると最初のハングが越えられずに随分苦労をしたとの事でした。嫁は身長が低くリーチが短いので確かに厳しかったかもしれません。
2ピッチ目 30m卦+
テラスから見上げる大岩を右側に回り込むとクラックが有り、上部ではクラックの間から樹が生えています。2ピッチ目はここを登りました。セカンドはクラックの基部にキャメロット#0.75でセルフを取ります。ロープをセカンドのセルフに掛けて1ピッチ目で回収したギアを受け取り、2ピッチ目スタートです。クラックはやがて中に樹が生えたチムニー状になりますがチムニーの中に入らず樹をホールドとし、左側の岩にスタンスを求めて登るとチムニー左側の岩がテラスになった所に立つ事が出来ます。支点は樹に取りました。
チムニー右側の岩は左側のテラスよりも高くカンテになっているので、カンテを右側に回り込むように登ります。下にはチムニーが口を開ける感じでホールドもやや微妙です。この辺りが2ピッチ目の核心になると思います。
この先は岩のリッジ伝いに登って行きますが、開放感が有り高度感も気持ち良いクライミングになります。枯れ木が目印の広いテラスで2ピッチ目終了です。しっかりした樹からセルフとセカンド確保用支点を取りました。
1ピッチ目同様に笛のコールでセカンドが登り始めますが、やはり時々ロープが動かなくなり登ってくる気配が有りません。1ピッチ目で状況は判ったので気長に待ちます。
ようやく登ってきた嫁さんに聞いた苦労ポイントは、チムニーの外からではなく、チムニーの中からテラスに登った為、樹の枝にロープが回り込んでしまい一旦ロープをハーネスから外さなければならなかったこと(恐ろしい!)と左のテラスから右へカンテを回り込む所で苦労したとの事でした。
3ピッチ目 30m卦+
何も考えずに2ピッチ目終了点からスタートしましたが、2ピッチ目終了点のテラスから先は藪の緩い斜面になっています。ロープを引いてここを通過してしまったため、このピッチはロープが非常に重くなってしまい苦労しました。藪の先、岩の立ち上がりから3ピッチ目を始めれば良かったと思います。
岩のリッジ伝いに高度を上げる気持ちの良いクライミングで、途中に縦型ハーケンが1枚残置されています。その右側1m程に横型ハーケン1枚の残置が有り、これにクイックドローで支点を取り、カンテを右へ越えます。この辺りのスタンスが微妙で3ピッチ目の核心になると思います。残置ハーケンはその先にも兼用型が1枚ありました。岩のリッジ伝いに登り、山頂が近い感じのテラスで3ピッチ目終了です。しっかりした樹が有り、ここからセルフとセカンド確保用支点を取りました。
例に寄ってセカンドは時間を掛けて登ってきましたが、途中で岩のリッジから逃げて横から登った事でロープが藪を回り込んでしまい、一旦ロープをハーネスから外さなければならなかったそうです(また恐ろしい!)それと残置ハーケンから右へ登る箇所が越えられなかったので、この部分はロープで引き上げとなりました。
3ピッチ目から先はロープを仕舞い、卦薜焚爾隆簇根を少し登って赤岩岳山頂に到着しました。この先のP1583も直登し赤岩尾根を進む予定でしたが、この時点でお昼過ぎになっていたので先の行程は無理と判断し、赤岩岳で休憩し北側の尾根から赤岩峠、ニッチツ小倉沢集落へ下りました。
ニッチツ小倉沢集落から上落合橋へ車道歩き。こんな事なら小倉沢集落に駐車しておけば良かった気もしますが、事故も無く下山出来ただけでも感謝です。
今回の山行は、自身のレベルアップを感じる事が出来たと同時に、パーティとしての総合力不足を認識させられる山行となりました。一発では成功させてくれない辺りに山からは、まだまだ力不足だと教えられた気がしますが、また再チャレンジして赤岩岳、P1583直登の赤岩尾根を完成させたいと思います。
直前にmisuzu様、mmg様、kunikon様のレコが公開され大変参考になりました。
この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。
コメント
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yamamossan さん、初めまして。
いつも藪岩レコ、参考にさせて頂いております。
支点が無くて、スリル一杯だったことでしょう。何げにロープの流れも悪くて、重くなるルートでした。カム使えるところ有ったのですね。気が付きませんでした。
こちらスッキリ感はないですが、高度感はあって、なかなか楽しめるところです。
正面稜は、このルートが良いと思います。
P1583 は、1Pitch 40M です。こちらも支点は、ほぼありません。爽快な岩稜登攀を味わえますので、是非是非 。
面白いところのレコ、楽しみにしています。
こちらこそ、misuzuさんのレコを憧れと羨望の気持ちで勉強させて頂いています。
正面稜のリードはメンタルに効くルートですが、それに応じた達成感が素晴らしく、マルチピッチの練習にもなるのは良いですね。
misuzuさんのレコを見て、実はP1583こそ爽快感が素晴らしく期待していたのですが、今回は時間切れで残念でした。でもまたチャレンジしたいと思います。
今後ともよろしくお願いします 素晴らしいレコを楽しみにしています。
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